Mag Mell -喜びの国-

二見 遊

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第2章 魂に触れる熱

第20話

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あちこちから生徒達の叫び声が響く中、一行は戦闘の中心部に辿り着いた。中央ではマシューとノアを起点として校舎組の生徒を取り囲んでいる。しかし校舎側は先ほど壊したものと同じらしい不可視の結界を展開しており、突破に苦戦しているようだ。

 「さっきみたいに破れないのかな」
 「階段の結界は一人が張ったものだったけれど、今は何重にも張っているようね。別ルートを探すのも手かもしれないわ」
 「でもここへの道は全部押さえてあるんじゃないか?」

ブリジットはその言葉を聞いて、小さくウインクをして答えた。

 「忘れていた道があるわ。私たちがどこから来たと思っているの?」

その言葉に三人はハッとし、同時に頷いた。そしてすぐに来た道を戻り始める。


校舎の外側に移動した三人は、非常用の階段を利用して一気に屋上まで移動した。戦闘の中心地を確認し、ロープで一気にそこまで降り、窓から一気に校舎内へと転げ込んだ。

 「何だ、どこから来た!」

背後から現れた新手に布を付けた生徒たちが慌てふためいている。動揺する彼らの隙をつき、四人は一気呵成に教室内を縦横無尽に走り回り、目的の物を奪い取った。形勢の動きを感じ取ったのだろう、教室の外にいったマシュー達の味方も攻勢に出た。前から、後ろから攻められ、布を付けた生徒はあっという間に減っていった。

このまま全員捕まるだろうか。そんな余裕を誰もが感じていた時、隣の教室から大声が響き渡った。

 「情けないぞお前ら! こっちも一点突破で攻めやがれ!!」

今までどこにいたのだろうか。ガイルを含む一部隊が怒涛のように教室になだれ込んでくると、流れは完全に逆転した。彼は一瞬で第一グループをまとめ上げ、入り込んできた敵を結界の応用で締め出していく。

レナード達もまた、窓際から出口に追いやられそうになる。このままではまずい。焦ったレナードは一点の隙をついて、結界の内側に転がり込んだ。そして中央で結界を形成している男子生徒に突進した。

 「うわ、何だこいつ!」

横っ腹に張り付いてきた彼に驚いたのだろう、結界を維持することが困難になったのは目に見えてよくわかった。その揺らぎを見逃さず、ブリジットやビハムを戦闘に再び侵入者側が勢いづく。

レナードが作った小さな穴を、あっという間に大穴へと押し広げて言った。ガイルはその様子を見て再度波を押し戻そうとして押し合いになったが、勢いに負け、乱戦の最後に布を巻いたものは誰一人いなかった。


 「かった……よな?」

呆然とレナードが小さく呟く中、突然マシューが大声をあげた。

 「かったああーー!! やったぞ、勝ったんだ!!」

静かだった周囲がその声に後押しされ、段々と勝利の喜びが広がっていく。第一グループ以外のメンバーがそこら中で肩を組み、抱き合い、ガッツポーズをして嬉しさを表現する中、ガイルはその様子をどこか誇らしげに眺めていた。

しかし一方で意気消沈している面々が三分の一いることも忘れておらず、慰めるように一人ひとり肩をぽんぽんと叩き、よく頑張ったな、と労って回っていた。

 「レナード! 最後のタックル、最高だったぜ!」
 「お前やったなあ! ナイスガッツだぜ!」

話したことのない生徒たちがわっとレナードを取り囲む。名前も顔も知らない大勢が、彼を笑顔で見て、肩を叩き、声を上げて笑う。それにつられてレナードもようやく勝利の喜びが追いついてきた。両手を上げて生徒たちの集団に混じり、揉みくちゃにされながらも笑い転げている内に、余所者として扱われてきた疎外感がすこじずつ薄れていくのを感じた。

ふと後ろを見ると、ビハムがその様子を離れた場所からぼんやり皆を眺めていた。ついさっきまでの自分を見ているようで、胸が苦しくなる。気づけばレナードは皆の輪から抜け、寂しい1人の元へとかけていった。


 「やったなビハム、お前のおかげだよ!」

はしゃぐ声に対応する声はない。けれどビハムは驚いたように目を丸くし、両手を胸の前でふるふると振った。

 「ビハムがあの時俺を引き戻してくれなかったら、俺たちのグループはきっと勝利争いどころじゃなかった。だから、ありがとう」

晴れ晴れとした笑顔を向ければ、ビハムは未だ戸惑った様子を浮かべながらも、小さく、しかし確かな笑みを返した。その笑顔を見たレナードの体の奥で、小さな熱の塊が生まれていく。奇妙な感覚に首を傾げ、思わず無言で相手の顔を見つめてしまう。

 「二人とも、そんな所でどうしたの? 食堂で皆夕食兼反省会で集まるそうだよ」

唐突に近くで聞こえた声に、無言のままビハムを見ていたレナードははっとして一歩後ろに下がった。気付かぬ内に距離が近づいていたようだ。レナードは誤魔化すように咳払いをし、ビハムは少し戸惑ったように目線を斜め下にそらした。

 「それなら行こうか」
 「うん、僕もうお腹ぺっこぺこ」

アトラスは余程空腹を我慢していたのか、薄い腹を擦りながら歩き出した。未だ微妙な空気が流れる2人は妙な距離感を保ったまま、相手の顔を見る事無く食堂への道を歩き出した。
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