24 / 33
第3章 折り重なる感情
第24話
しおりを挟む
体が重い。レナードはベッドに戻りたがる体を引きずるようにして身を起こした。洗面所で顔を洗うものの、こびりつく疲れは芯に残ったまま、どことなくぼーっとしながら身支度を整える。そんな最中、ふと入り口の扉前に見慣れないオレンジ色のカードを見かける。
『土曜の夜、教会に来てください セクレト』
簡素なメッセージだけが書かれたカードだ。念のため裏返してみるものの、他に言葉は綴られていないようだった。
「一体なんだろう?」
言葉少なというのは時にどうしようもない不安を掻き立てる。セクレトは校内案内で世話になった人物だが、それ故にあの時感じた得体の知れなさから少しばかりお近づきになりたくない人種だった。とにかく今日の学校で真意を確かめよう。レナードは一気に覚醒した頭でそう考え、きびきびと朝食に向かった。
全校生徒の人数はそう多くない学校のはずだが、特定の人物を探すとなると中々難しい。レナードは三回目になる会長の居場所はどこか、という質問を道端の生徒に繰り返し、また歩き始める。
移動先が知れているのは注目度の表れだろうが、それにしても目的の人物と出会うことがこんなにも難しいとは思わずに、レナードはへとへとになって中庭に腰を下ろした。少し休憩しようと目を閉じたが最後、次に目覚めたのは自身のクシャミが原因で辺りはすっかり暗くなっていた。夕食に間に合わなくなると慌てて立ち上がり、その日は結局会えずじまいだった。次の日も、そのまた次の日も、放課後に校舎内を走り回る。だが結局セクレトの姿さえ見ることはないまま、遂に土曜日の朝を迎えてしまったのだった。
「はぁ、一体何するんだろ……」
大いに不安を抱えたまま、レナードは重い足を引きずりながら教会への道を辿っている。夕焼けの過ぎた夜の空は曇っていて、雲間に見える満月だけが彼を照らす。
寮で借り受けたランタンは薄オレンジ色のぼんやりとした光で足元を照らすのみであり、一度行ったきりの教会に果たして辿り着けるのか不安になってくる。懐中電灯の一つも備えていないなんてどうなっているのかと1人ごちる。
加えて宴会でもしているのか、学園から少し離れているはずの民家から時折微かに叫び声のような物が微かに聞こえてくる。森からは不気味な呻き声が聞こえ、嫌な思い出が蘇る。
早く用事を済ませてしまいたい。レナードは縮こまったまま足を早めた。
「こんばんは、道に迷いませんでしたか?」
暗い教会の扉の前で、セクレトが同じくランタンを手に立っている。ようやく人の姿を認め、レナードは詰めていた息をそっと吐き出した。
「どうにか大丈夫でした。光る柱のお陰です」
「よかった、ではこちらからどうぞ」
彼は正面の大扉ではなく、教会に沿って歩き出した。。側面の途中に表に比べれば随分と小さな扉があり、そこをセクレトが取り出した金色の鍵で開く。不思議な程静かに、軽そうな扉は奥に開いた。内部は真っ暗で明かりが全くなく、レナードの不安を更に煽る。
扉近くの蝋燭に火が灯されてようやく、そこが小さな部屋だと気付いた。端にはシングル用らしきベッドが置かれ、小さなテーブルと一脚の椅子が備え付けられている。部屋の奥には更にドアがあるようだ。セクレトがテーブルに持っていたランタンを置くと、レナードに中に入るように促した。
「ここで少し待っていてください。儀式の準備をしてきますので」
「あの、今更何ですが今日何をするんでしょうか?」
レナードの質問にセクレトははてと首を傾げる。
「言いませんでしたか? 能力の開花をします」
「えっ! それってつまり……」
セクレトの顔をちらりと見る。まさかとは思うが、ここで彼と寝るという事だろうか。特に気にしていなかったベッドがやけに生々しく思え、レナードは足を踏み入れた部屋から思わず後ずさりしたくなる。男を抱く趣味も、抱かれる趣味もない。
レナードの脳裏にありえない絵面が浮かび、絶望の未来に顔を青く染めた。
『土曜の夜、教会に来てください セクレト』
簡素なメッセージだけが書かれたカードだ。念のため裏返してみるものの、他に言葉は綴られていないようだった。
「一体なんだろう?」
言葉少なというのは時にどうしようもない不安を掻き立てる。セクレトは校内案内で世話になった人物だが、それ故にあの時感じた得体の知れなさから少しばかりお近づきになりたくない人種だった。とにかく今日の学校で真意を確かめよう。レナードは一気に覚醒した頭でそう考え、きびきびと朝食に向かった。
全校生徒の人数はそう多くない学校のはずだが、特定の人物を探すとなると中々難しい。レナードは三回目になる会長の居場所はどこか、という質問を道端の生徒に繰り返し、また歩き始める。
移動先が知れているのは注目度の表れだろうが、それにしても目的の人物と出会うことがこんなにも難しいとは思わずに、レナードはへとへとになって中庭に腰を下ろした。少し休憩しようと目を閉じたが最後、次に目覚めたのは自身のクシャミが原因で辺りはすっかり暗くなっていた。夕食に間に合わなくなると慌てて立ち上がり、その日は結局会えずじまいだった。次の日も、そのまた次の日も、放課後に校舎内を走り回る。だが結局セクレトの姿さえ見ることはないまま、遂に土曜日の朝を迎えてしまったのだった。
「はぁ、一体何するんだろ……」
大いに不安を抱えたまま、レナードは重い足を引きずりながら教会への道を辿っている。夕焼けの過ぎた夜の空は曇っていて、雲間に見える満月だけが彼を照らす。
寮で借り受けたランタンは薄オレンジ色のぼんやりとした光で足元を照らすのみであり、一度行ったきりの教会に果たして辿り着けるのか不安になってくる。懐中電灯の一つも備えていないなんてどうなっているのかと1人ごちる。
加えて宴会でもしているのか、学園から少し離れているはずの民家から時折微かに叫び声のような物が微かに聞こえてくる。森からは不気味な呻き声が聞こえ、嫌な思い出が蘇る。
早く用事を済ませてしまいたい。レナードは縮こまったまま足を早めた。
「こんばんは、道に迷いませんでしたか?」
暗い教会の扉の前で、セクレトが同じくランタンを手に立っている。ようやく人の姿を認め、レナードは詰めていた息をそっと吐き出した。
「どうにか大丈夫でした。光る柱のお陰です」
「よかった、ではこちらからどうぞ」
彼は正面の大扉ではなく、教会に沿って歩き出した。。側面の途中に表に比べれば随分と小さな扉があり、そこをセクレトが取り出した金色の鍵で開く。不思議な程静かに、軽そうな扉は奥に開いた。内部は真っ暗で明かりが全くなく、レナードの不安を更に煽る。
扉近くの蝋燭に火が灯されてようやく、そこが小さな部屋だと気付いた。端にはシングル用らしきベッドが置かれ、小さなテーブルと一脚の椅子が備え付けられている。部屋の奥には更にドアがあるようだ。セクレトがテーブルに持っていたランタンを置くと、レナードに中に入るように促した。
「ここで少し待っていてください。儀式の準備をしてきますので」
「あの、今更何ですが今日何をするんでしょうか?」
レナードの質問にセクレトははてと首を傾げる。
「言いませんでしたか? 能力の開花をします」
「えっ! それってつまり……」
セクレトの顔をちらりと見る。まさかとは思うが、ここで彼と寝るという事だろうか。特に気にしていなかったベッドがやけに生々しく思え、レナードは足を踏み入れた部屋から思わず後ずさりしたくなる。男を抱く趣味も、抱かれる趣味もない。
レナードの脳裏にありえない絵面が浮かび、絶望の未来に顔を青く染めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる