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第3章 折り重なる感情
第25話
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レナードの顔色を見て、セクレトが笑い声を零し始めた。
「ああ、一般的な開花方法を聞いたんですね。ご心配なく、貴方が想像しているようなことは起きませんから」
「でもその、そういう行為以外に開花方法はないんじゃ?」
「その為に特別な儀式があるんです。とはいえ秘儀ですので、今日私が儀式を施したことは広めないで下さい。暫くは開花したことは伏せた方がいいかもしれません。貴方も誤解されたくはないでしょう?」
この村での一般認識がセックスによる開花であれば、筆おろしをしたと一発で分かる能力開花については確かに暫く伏せておきたい所だ。レナードは一も二もなく頷き、隣の部屋に消え行くセクレトを見守った。数分も経たない内に再び扉が開き、彼は手に不思議な形の陶器を持っている。無数に開いた穴から薄い煙が立ち上り、甘い匂いが漂っていた。
「それでは儀式を始めましょう。まずこちらの聖水を飲んでください」
セクレトがレナードに手渡した小瓶は小指程のサイズだ。大きな不安は残るものの、無能力者を貫く強い意思もなく、もし何か発現するのであれば超能力を得てみたいという好奇心がある。しかしその方法となる相手が出来るかも分からずにいたため、彼は半ばあきらめていたのだ。降ってわいた幸運のような機会に、レナードは意を決して瓶の中身を飲み干した。
「準備が整うまで、暫くお喋りでもしましょうか」
彼はそう言いながら、いつの間にか手にし嵌めていたブレスレットの鈴をリーン、と鳴らした。涼し気な音だ。
「この聖水って、なんの意味があるんですか?」
「後だしで申し訳ないんですが……これには村の方の血液の成分などが含まれています」
レナードは未だ手に持っていた小瓶を放り投げそうになった。正式な方法ではないと聞いていたとはいえ、予想だにしなかった答えだ。そう考えると口の中が急に錆を舐めたような味がしてくるから不思議なものだ。
「すみません。最初に言ったら飲んで貰えないと思いまして」
しれっと言うセクレトに対し、よほど瓶を投げつけようかと思ってしまう。しかしレナードは大きくため息を吐いた後、気持ちを抑えるべく手の中の物をテーブルに置いた。
「いえ、まあいいです。確かに言われてたら躊躇したと思いますし」
「これから貴方は一種のトランス状態に入ります。これによって体に錯覚を起こさせ、能力開花を補助するわけですね」
「本当にそれだけなんですか? そんな簡単に……?」
「後の一押しを私が担うわけです。そろそろ体が熱くなってきませんか?」
その問いで、不意に体の中に生まれた熱に気付く。そして一気に全身に巡りだした。
汗が吹き出しそうな程の熱量にレナードは驚き、戸惑う。
「上半身だけで構いませんので、脱いでうつ伏せになってベッドに寝てください」
「ええっ、でも」
「気になるならランタンは消しますので」
止める間もなく、セクレトはテーブルの上のランタンの火を二つとも消してしまった。明かりを失った室内は天窓から漏れる月明りしか光がなく、相手の姿が輪郭だけぼんやりと見える程度だ。
「ツボ押しをするだけですよ。気持ちよかったら寝てくださいね。その後貴方は夢を見るはずです。夢の中では、衝動を押さえてはいけませんよ。本能の解放によって開花に繋がるわけですから」
若干恐々と靴をシャツを脱いでベッドに寝転がる。下着は迷ったものの、暑さに負けて一緒に脱ぎ捨ててしまった。レナードが移動する気配を受けて、セクレトが近づく。その動きによって、再び鈴の音が鳴った。
「眠ったら、私は出ていきます。起きたら寮に戻ってもらって構いませんよ。鍵は明日閉めておくので、気にしなくて大丈夫です」
ベッド際に立ったセクレトがふっと笑った気配だけがあった。
「ああ、一般的な開花方法を聞いたんですね。ご心配なく、貴方が想像しているようなことは起きませんから」
「でもその、そういう行為以外に開花方法はないんじゃ?」
「その為に特別な儀式があるんです。とはいえ秘儀ですので、今日私が儀式を施したことは広めないで下さい。暫くは開花したことは伏せた方がいいかもしれません。貴方も誤解されたくはないでしょう?」
この村での一般認識がセックスによる開花であれば、筆おろしをしたと一発で分かる能力開花については確かに暫く伏せておきたい所だ。レナードは一も二もなく頷き、隣の部屋に消え行くセクレトを見守った。数分も経たない内に再び扉が開き、彼は手に不思議な形の陶器を持っている。無数に開いた穴から薄い煙が立ち上り、甘い匂いが漂っていた。
「それでは儀式を始めましょう。まずこちらの聖水を飲んでください」
セクレトがレナードに手渡した小瓶は小指程のサイズだ。大きな不安は残るものの、無能力者を貫く強い意思もなく、もし何か発現するのであれば超能力を得てみたいという好奇心がある。しかしその方法となる相手が出来るかも分からずにいたため、彼は半ばあきらめていたのだ。降ってわいた幸運のような機会に、レナードは意を決して瓶の中身を飲み干した。
「準備が整うまで、暫くお喋りでもしましょうか」
彼はそう言いながら、いつの間にか手にし嵌めていたブレスレットの鈴をリーン、と鳴らした。涼し気な音だ。
「この聖水って、なんの意味があるんですか?」
「後だしで申し訳ないんですが……これには村の方の血液の成分などが含まれています」
レナードは未だ手に持っていた小瓶を放り投げそうになった。正式な方法ではないと聞いていたとはいえ、予想だにしなかった答えだ。そう考えると口の中が急に錆を舐めたような味がしてくるから不思議なものだ。
「すみません。最初に言ったら飲んで貰えないと思いまして」
しれっと言うセクレトに対し、よほど瓶を投げつけようかと思ってしまう。しかしレナードは大きくため息を吐いた後、気持ちを抑えるべく手の中の物をテーブルに置いた。
「いえ、まあいいです。確かに言われてたら躊躇したと思いますし」
「これから貴方は一種のトランス状態に入ります。これによって体に錯覚を起こさせ、能力開花を補助するわけですね」
「本当にそれだけなんですか? そんな簡単に……?」
「後の一押しを私が担うわけです。そろそろ体が熱くなってきませんか?」
その問いで、不意に体の中に生まれた熱に気付く。そして一気に全身に巡りだした。
汗が吹き出しそうな程の熱量にレナードは驚き、戸惑う。
「上半身だけで構いませんので、脱いでうつ伏せになってベッドに寝てください」
「ええっ、でも」
「気になるならランタンは消しますので」
止める間もなく、セクレトはテーブルの上のランタンの火を二つとも消してしまった。明かりを失った室内は天窓から漏れる月明りしか光がなく、相手の姿が輪郭だけぼんやりと見える程度だ。
「ツボ押しをするだけですよ。気持ちよかったら寝てくださいね。その後貴方は夢を見るはずです。夢の中では、衝動を押さえてはいけませんよ。本能の解放によって開花に繋がるわけですから」
若干恐々と靴をシャツを脱いでベッドに寝転がる。下着は迷ったものの、暑さに負けて一緒に脱ぎ捨ててしまった。レナードが移動する気配を受けて、セクレトが近づく。その動きによって、再び鈴の音が鳴った。
「眠ったら、私は出ていきます。起きたら寮に戻ってもらって構いませんよ。鍵は明日閉めておくので、気にしなくて大丈夫です」
ベッド際に立ったセクレトがふっと笑った気配だけがあった。
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