贄の婚姻

善奈美

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17 契り

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 皇子の体は王子から受ける愛撫をしっかり覚えていた。乱暴かと思えばそうではなく、優しいかと言われればそうでもない。
 
 声を出さないようにする事など、とうの昔に諦めていた。王子はそうなるよう、皇子の体を最初の頃に仕込んでいた。
 
 どの道、此処は隔離された場所だ。感情など必要ではなく、あるのは義務だけだ。だが、王子は義務だけで長い時間を過ごす事が難しいのも知っている。皇子とてそうだ。
 
 今のところ、二人は良好な関係を維持している。今回の事で、互いの考えも分かった。二人にとって必要なのは、両国の関係性だ。周りの国が二国が互いに潰し合うのを手ぐすねを引いて待っている。
 
 裏で秘密裏に動き、潰し合うだけではなく、自滅する事を狙っている国もある。そんな中で強国と目される獣王國と倭国が協定を結んだ。それは、周りの小国にとって歓迎出来ないものだ。
 
 王子は皇子の帯を解く。そして、皇子の肌を単の着物が滑る。露わになった肌に、傷一つない。それどころか、肌は日に焼けによるシミすらない。背を流れる黒髪が唯一、皇子の肌を覆っていた。
 
「これでも武人だとはな」
「……私は特に筋肉が付かなかった」
 
 皇子は鍛錬を怠ってはいない。それはこの地に送られても同じ事だ。鍛錬をサボれば体に不調をきたす。何も戦うだけが目的ではない。皇子は本来、幽閉をされたとしても、体を鍛えていただろう。
 
「顔もおそらく倭国の中で一番。誰もが愛でたいと思う容姿だろう」
 
 王子は目を細める。
 
「帝は敢えてお前を軍属に置いた。その姿を多くの者の瞼に焼き付ける為にな」
 
 王子は確信に満ちた様子で言い切る。帝は陰陽師から皇子の容姿についても聞いていたに違いない。皇子を育てた祖父母の性格もだ。姿に左右されない人物に育てる。言うのは容易いが、簡単ではない。
 
 容姿に溺れ、何もせず言いなりになる皇子や皇女も多いだろう。だが、皇子は何時でも自分自身に厳しい。
 
「貴方が私の姿に溺れる事はない」
「そうだな。獣人と人間では感覚が違う。だが、そんな俺でもお前の姿は美しいと感じる」
「社交辞令か」
「どう取るかはお前次第だ」
 
 王子は言うなり、皇子の腰に右腕を回し引き寄せた。その反動で皇子の髪が乱れる。皇子は少し上半身を外らせ、王子の顔を凝視した。
 
「分かっている。無駄な抵抗だと」
「抵抗と言うか、反射的なものだろう? お前は俺に体を開くが、心は屈していない。凄い精神力だ」
「心まで屈すれば私ではなくなるっ」
 
 王子の長い舌が王子の耳朶を舐め上げた。人のそれとは違う感触に、皇子の体はヒクリと反応を示す。舌は人より長く、強い刺激を与えるのだ。
 
「だが、体は俺に屈してるな?」
「……っ」
 
 王子が皇子を言葉で嬲る。皇子とて分かっている。体は意志とは関係のない反応を示す。それは快楽に従順だからだ。腰に回された力強い腕に、体は次の刺激を期待しているのだ。体の奥の奥が蠢き、皇子の思いとは裏腹に開こうとしている。
 
 それが分かるだけに皇子は頑なになるのだ。逃げる事が叶わないのも分かっている。それでも、両の手で王子の体を押しのけるように突っ張らせた。
 
「やれやれ、強情だ」
 
 王子はそう言うなり、皇子を担ぎ上げた。まるで抵抗などなかったかのような扱いだ。皇子は目を見開き、戦慄いた唇を噛み締める。
 
 王子が大股で進んだ先がベッドであると思っていた皇子は、足の裏に感じた冷たい感触に視線を向ける。板の間の床の上に立たされ、背に感じるのは冷たい壁だ。何をするのかと王子は皇子を仰ぎ見た。
 
「普通では楽しくないだろう?」
「この行為を楽しむ必要はっ」
「あるだろう。俺達は子供を作る為に交わるんじゃない。両国の絆のためだ。義務で続くと思うのか?」
 
 王子が言っている事は正しい。楽しくなくては何時か二人の関係に亀裂が生じるだろう。種族も違うのだ。
 
 王子は徐に、皇子の左脚を持ち上げた。当然、片脚で立たねばならない皇子は慌てて背にある壁に体を押し付ける。そんな事をすれば、皇子のあられもない場所が、王子の視線に晒される。王子は左の手を皇子の秘部に這わせ刺激を与えて来た。
 
 皇子はいきなり来た違和感に唇を噛み締める。だが、体は正直で無意識に力を抜いていた。ゆっくり入り込んでくる異物に肌が粟立つ。皇子は何とかやり過ごそうと息を吐き出した。
 
「忘れてはいないようだな」
 
 皇子は悔しさに涙が滲んだ。仕込まれた体は久し振りであっても、奥で感じる快感を忘れてはいないのだ。
 
「貴方でなければ、誰がこんな事をっ」
 
 皇子は国の為でなければ、男に体を開く事はなかった。否、女性とも関係を持つ事はなかったのだ。下手に子供などを儲けてしまえば、後々、面倒事が増える。
 
 王子は皇子の様子を観察しながら、指を差し入れる。秘めた場所は皇子が快感を感じ淫液で濡れていた。本来なら香油などを利用しなくては体を傷つけてしまう。しかし、その必要がない程、皇子の体はその行為に染まっていた。
 
 皇子には元々、素質があったのだろう。何より、体が防衛本能を発揮したのだろう。無理矢理体内に異物を捻じ込まれてしまえば、傷が付いてしまうのだ。それは、体に負担を強いる。
 
 皇子はゆっくりと埋め込まれる王子の指を鮮明に感じていた。そして、その指が向かっている場所も分かっている。何も考えられないようにする一点だ。人の指とは違い獣人の指は太い。狭い肉筒を無遠慮に侵食する。
 
 王子は探さずともその場所が分かっているとばかりに、いきなり指を曲げ強く押して来た。皇子は声にならない音を発する。まるで息をするのも苦しくなるような強烈な感覚だ。そこを容赦なく刺激してくる。唯一、体を支えていた脚から力が抜ける。王子が左脚を支え、後ろに壁がなければ皇子の体は沈んでいた。
 
 言い換えるなら、体が沈む事を王子は許してくれないのだ。一本だった指の本数が増え中を掻き乱す。皇子は快楽をやり過ごすことなど出来なくなっていた。
 
 皇子は縋るものが欲しくなり、王子の首に抱きついた。そうしなくては、体を保つ事が難しくなったのだ。
 
 王子は右腕に皇子の脚を掛け、右手で皇子の双丘を鷲掴む。女とは違う柔らかさのない感触だが、肌触りは良かった。皇子は反応している自身を、王子の逞しい腹に押し当て無意識に動いていた。
 
 思考力などグズグズに溶かされる。王子の増える指に、皇子の内部は絡みつく。出て行こうとすれば、追い縋るように締め付ける。王子はその変化を見逃してはいない。皇子の体は受け入れる準備が出来たのだ。飲み込ませていた指を一気に引き抜くと、興奮し昂ぶっている剛直を皇子の中に容赦なく埋め込んだ。
 
「……っ」
 
 皇子は喪失感を味わった後に、いきなり来た容赦ない圧迫感に、息が一瞬出来なかった。それでも、覚えていた形が内部を埋め、押し開く感覚に体が震える。灼熱を思わせる熱さと硬さ。何より、人ではあり得ない長さに奥の奥が暴かれる。
 
 しかも、二人は頭一つ分身長差があり、穿たれた灼熱を自重が更に押し開く。右脚は震え、必死に立とうと試みるも、衝撃と快楽に力を失い思いもよらない奥まで剛直を導いていた。
 
 王子は皇子のそんな様子を視界に収め、敏感な場所が温かい肉に包まれるのを直に感じ興奮が増した事を自覚した。王子はこれでは足りないと皇子の体を持ち上げる。そうなると、皇子は必死に王子の首に縋り付くしかない。必死で両足を王子の腰に絡める。
 
 皇子はただ必死で抱き付くしかない。王子はと言えば、軽々と皇子を持ち上げ、更に上下の運動を加えてくる。下から突き上げる刺激に皇子は目を見開き、ただ、喘ぐしかない。
 
「……ひっ!」
 
 皇子が感じる場所を、王子の剛直が容赦なく抉ぐる。皇子は王子に抱き付く形になる為、間で勃ち上がっている皇子のモノが逞しい腹に擦れ更なる刺激を与えていた。
 
 上り詰める体は限界を知らず、意志とは反して淫液が止まる事なく流れ続け、王子の腹を濡らしていた。
 
「忘れるな。お前は俺の妻だ」
 
 皇子は素直に何度も頷く。
 
「名前を付けてやる。そうだな。お前の国の言葉がいいだろう。一文字で其の者の本質を表せる」
 
 王子はそう言うと、動きを止めないまま更に皇子を追い詰めた。皇子は刺激が強すぎるのか、頷く事は出来ても、何を言われているのか理解までは出来ていなかった。
 
「その前に、いけ」
 
 王子はその言葉の後、一際強く皇子の中に自身を埋め込んだ。激しい突き上げは皇子の理性を完全に崩壊させ、声にならない悲鳴を上げる。体内に大量に注がれる熱を感じ、皇子の体が小刻みに震える。
 
 王子の腹に皇子は熱を放ち、そのまま、意識を閉じた。脱力した皇子の体を王子は抱き止める。
 
 今日、この日から二人は本当の意味で夫婦となる。王子は皇子の体内に埋め込んだ自身を引き抜き、器用に横抱きにすると浴室へと消えたいった。
 
 
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