無能の瞳 その者は世界の共犯者〜魔力なしで無能と蔑まれ、他力本願の力に依存する。【憑依召喚】で体を乗っ取られて、もうすぐ俺が最強だ〜

一章

第9話：意思の静寂と憑依者の脈動（10/10）

　レンはルナとクロウの側にいることで、自分の選択肢がより確かなものになると確信していた。彼らの存在は、レンにとって価値ある知恵と保護の源である。特に、悪魔による精神攻撃に対する防御方法について、ルナに尋ねることにした。

「ルナ、君やクロウは、先の言っていた純力の防御壁は、常に展開しているのか？」

　ルナは、レンの質問に真剣に耳を傾け、答えた。「精神攻撃のことだよね？　そうだよ、ほとんど常時精神の周りに防御壁を形成しているよ。これは習得が難しいけれど、慣れれば自動で行われるようになるよ」

　レンはこの技術の効果と実践について考え込んだ。「そうか、それでいつでも守られているわけだな」

「うん、正確には魂の生命力を細やかに操り、自我を外部の脅威から守るの。練度が必要だけど、一度身につければ非常に強力よ」ルナの説明は、レンに新たな視点をもたらした。

　レンは、人が同じ方法で精神防衛を行うことの難しさを理解しながらも、他に効果的な手段があるのではないかと推測した。「人はどうやってこれを乗り越えるんだ？　何か対抗手段があるはずだよな？」

　ルナは苦笑しながら答えた。「たしかに精神攻撃への直接的な防御は、生命力の消費が大きいから、人間には向いていないわ。でも、他の魔法や戦術でカバーする方法が考えられるの」

　この議論はレンにとって切実な問題だった。村人たちの命運がかかっているからだ。「つまり、今のところ村人たちにできることは限られているってことか。悪魔の憑依から完全に救出するには、時間が足りない……」

　ルナは悲しい現実を伝えた。「残念だけど、悪魔に完全に支配されるまでの時間は、通常よりずっと短いわ。解決策を見つけ出す時間は本当に限られているわね」

　レンはこの深刻な状況に直面し、村人たちを救うための解決策を必死に探し始めた。ルナとクロウの知識と力が、これからの苦難を乗り越えるために不可欠だと感じていた。


　レンは、悪魔に召喚されている間に起きる、村人たちの行動パターンを深く考えていた。悪魔の目的は明白で、自己の利益に直結することだけを行う。レンの心には疑問が渦巻いていた。彼はルナにその思いを伝えた。

「悪魔は自分に不利なことは、絶対にしないんだよな？」

　ルナは、深刻な表情で頷きながら答えた。「そう、体を乗っ取るのが彼らの目的。だから、自分たちが弱体化するような情報、例えば精神攻撃から守る術などは決して教えないわ」

　この回答を受け、レンはさらに深く考え込んだ。村人たちの状況が急激に悪化していることを受け、特に翔子をどう守るべきかに焦点を当てる。彼とルナの会話は、即座に行動を起こす必要性を強調していた。

　夕刻、村に戻るとレンは、村人たちの間に漂う異様な雰囲気を肌で感じた。人々は人間性を失いつつあり、その一部は魔獣の生肉に群がっていた。この状況は、悪魔の影響が彼らの本能にまで及んでいることを示していた。

　レンは、まだ正気を保っている村人たちに耳を傾け、彼らが悪魔の囁きに苦しんでいることを知る。その囁きは、彼らを狂気へと追いやり、やがては仲間同士を敵視させることだろう。

　この厳しい現実を前にしてレンは、自分の力を高め村人たちを守るために、階位上げを急がなければと焦りが募る。彼は翔子を安全な場所へ避難させるとともに、村の危機に立ち向かう準備を急いだ。