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十二話――《死者数》
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ピピピッ、ピピピッ――。
《現在の時刻、午前六時。これより休息時間帯を解除する。――繰り返す。現在の時刻、午前六時。これより休息時間帯を解除する》
《終始連絡――昨日、休息時間直後に戦闘が数件勃発。星条司、陸継遼一、木莵彰並びに早乙女恵美を一時、禁牢へ隔離。これにより、彼らの処分が決定するまで禁牢に近づくことを固く禁ずる》
壁際に腰を掛けて俯きながら眠りこけていた私は携帯端末を見ながらの寝落ち。アラームの機械音声とそれに伴って生じる振動によって起こされると「ハッ」と目を覚ます。
「もう、朝か。そういえば昨日、大規模な争いがあったようだけど何名くらい殺されたんだろうか」
携帯用端末を操作しながら《死亡数と生存数》が表示されている項目へと移動させる。
「えっ? 嘘でしょ⁉」
大声で叫ぶ私の声で杏子は目を覚ます。地べたで雑魚寝をしていた杏子は大きなあくびをしながら起き上がると寝ぼけ眼を擦りながら、
「どうしたんだ? そんな大声で驚いて」
「杏子! ちょっとこのデータ見てよ!」
私は杏子の目の前に携帯用端末を差し出すと、《死亡数》が表示された項目を見せつけた。
《死亡数百五十三名、生存数二千百八四十七名》
「おいおい、一日でこれだけの人が殺されたっていうのかよ」
「多分、監理者側はこういったことも起こるのだと想定しているんだと思う」
だから、助け合い、協力し合えと。だけど、普段からこういったことが起きているのなら、初心者の私たちにもう少し情報提供してもいいと思う。敢えて、苦境に立たせているようにも取れるこの状況。意図的と考えるのが普通ね。
昨日の殺伐とした状況で逃げ回っていた琴葉は疲れ切っている。その為か、私の驚いた様子にも気づかず未だに安心しきって寝ている。しかし、今はそんな場合ではない。
私は寝ている琴葉の背中を擦って起こすと、琴葉は眼を擦りながら起き上がり、
「あ、ごめんなさい。長時間、寝てしまっていたようで」
「いや、いいのよ。仕方ないことなんだから。――それよりも、少し聞きたいことがあるのだけど」
僅かに声のトーンを落とし真剣な眼差しで琴葉を見つめると、携帯端末に表示された《死亡数》を琴葉に見せた。
「こんなに……」
うつら眼が大きく見開き、言葉を詰まらせる琴葉の顔は次第に悲痛な表情へと変化していく。
「ごめんなさい。急に、こんな見たくもない数値を見せてしまって。――でも、私はこれをあなたに見せて聞く義務があると思うの」
そう、《予知》を引き起こした現象と昨日の起きた出来事を裏付ける何か。
そして何故、こんなにも大勢の命を襲う出来事をしなければならないのかを。
私は直感的に気づく。全ての『見たもの、聞いた事』を把握できる琴葉なら、必ず何か、こうなってしまわければならなかった原因を知っていると。
琴葉は俯き黙り込む。やはり、余程昨日の出来事を思い出したくないのだろう。その悲痛で過酷な状況を掻い潜り、生き延びることが出来た琴葉の胸の内は表情を見る限り、悲惨だったんだと思う。
私は奮える琴葉の思いを少しでも和らげるようにと肩に手を差し伸べ、
「お願い、三乃下さん。何故、昨日の休息時間前に大規模な争いが始まったのか教えて欲しいの。――私達が少しでも多くの時間を生き延びるために」
「分かりました。私の知っている限りの情報を。見て感じたことと、襲ってきた人たちがどんな会話をしていたのかを伝えます」
琴葉は両手を交差するように自分の震えを抑えていた両腕を解き、力を緩めると震えた口調で静かに話し始めるのであった。
《現在の時刻、午前六時。これより休息時間帯を解除する。――繰り返す。現在の時刻、午前六時。これより休息時間帯を解除する》
《終始連絡――昨日、休息時間直後に戦闘が数件勃発。星条司、陸継遼一、木莵彰並びに早乙女恵美を一時、禁牢へ隔離。これにより、彼らの処分が決定するまで禁牢に近づくことを固く禁ずる》
壁際に腰を掛けて俯きながら眠りこけていた私は携帯端末を見ながらの寝落ち。アラームの機械音声とそれに伴って生じる振動によって起こされると「ハッ」と目を覚ます。
「もう、朝か。そういえば昨日、大規模な争いがあったようだけど何名くらい殺されたんだろうか」
携帯用端末を操作しながら《死亡数と生存数》が表示されている項目へと移動させる。
「えっ? 嘘でしょ⁉」
大声で叫ぶ私の声で杏子は目を覚ます。地べたで雑魚寝をしていた杏子は大きなあくびをしながら起き上がると寝ぼけ眼を擦りながら、
「どうしたんだ? そんな大声で驚いて」
「杏子! ちょっとこのデータ見てよ!」
私は杏子の目の前に携帯用端末を差し出すと、《死亡数》が表示された項目を見せつけた。
《死亡数百五十三名、生存数二千百八四十七名》
「おいおい、一日でこれだけの人が殺されたっていうのかよ」
「多分、監理者側はこういったことも起こるのだと想定しているんだと思う」
だから、助け合い、協力し合えと。だけど、普段からこういったことが起きているのなら、初心者の私たちにもう少し情報提供してもいいと思う。敢えて、苦境に立たせているようにも取れるこの状況。意図的と考えるのが普通ね。
昨日の殺伐とした状況で逃げ回っていた琴葉は疲れ切っている。その為か、私の驚いた様子にも気づかず未だに安心しきって寝ている。しかし、今はそんな場合ではない。
私は寝ている琴葉の背中を擦って起こすと、琴葉は眼を擦りながら起き上がり、
「あ、ごめんなさい。長時間、寝てしまっていたようで」
「いや、いいのよ。仕方ないことなんだから。――それよりも、少し聞きたいことがあるのだけど」
僅かに声のトーンを落とし真剣な眼差しで琴葉を見つめると、携帯端末に表示された《死亡数》を琴葉に見せた。
「こんなに……」
うつら眼が大きく見開き、言葉を詰まらせる琴葉の顔は次第に悲痛な表情へと変化していく。
「ごめんなさい。急に、こんな見たくもない数値を見せてしまって。――でも、私はこれをあなたに見せて聞く義務があると思うの」
そう、《予知》を引き起こした現象と昨日の起きた出来事を裏付ける何か。
そして何故、こんなにも大勢の命を襲う出来事をしなければならないのかを。
私は直感的に気づく。全ての『見たもの、聞いた事』を把握できる琴葉なら、必ず何か、こうなってしまわければならなかった原因を知っていると。
琴葉は俯き黙り込む。やはり、余程昨日の出来事を思い出したくないのだろう。その悲痛で過酷な状況を掻い潜り、生き延びることが出来た琴葉の胸の内は表情を見る限り、悲惨だったんだと思う。
私は奮える琴葉の思いを少しでも和らげるようにと肩に手を差し伸べ、
「お願い、三乃下さん。何故、昨日の休息時間前に大規模な争いが始まったのか教えて欲しいの。――私達が少しでも多くの時間を生き延びるために」
「分かりました。私の知っている限りの情報を。見て感じたことと、襲ってきた人たちがどんな会話をしていたのかを伝えます」
琴葉は両手を交差するように自分の震えを抑えていた両腕を解き、力を緩めると震えた口調で静かに話し始めるのであった。
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