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ep21 自己嫌悪
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翌日。
俺は布団にこもって寝込んでいた。
体調が悪いわけでもなければ天気が悪いせいでもない。
「俺の中学校生活は終わった......」
もし、昨日のことを学校で言いふらされでもしたら、俺は完全にジ・エンドだ。
そうなったら、もはや何が真実かなんて関係なくなる。
一犬虚に吠ゆれば万犬実に伝う......だったか。
「フミヒロ様。お飲み物をお持ちしました。開けてくださいませんか?」
部屋の外からネーコの声が聞こえる。
俺は昨日のアレ以降、ネーコを拒み続けていた。
さすがに昨日のことは笑いで済ませられなかった。
「フミヒロ様。お願いです。開けてください」
しつこい。
あんなことしでかしといて厚かましいにもほどがある。
「フミヒロ様。フミヒロ様。フミヒロ様」
なんなんだよアイツ。
この期に及んでどの面下げて来るつもりだ。
「フミヒロ様。開けてください。フミヒロ様」
「あああ!もううるさいなぁ!!」
いつまでも引き下がらないネーコに堪忍袋の尾が切れた俺は布団から飛び出ていってドアを乱暴にバンッ!と開けた。
「なんだよ!」
「フミヒロ様。お飲み物を...」
「そんなのいらないよ!」
「あっ」
ネーコの持ったおぼんをバッと払いのけると、コップが無抵抗に落下してパリンと割れた。
床にはお茶の水たまりが広がり濡れたガラスの破片が憐れに光る。
「申し訳ございません。今すぐ片付けますね」
ネーコはすぐに屈んで床を拭きながら破片を拾いだした。
「ネーコはアンドロイドだから、ガラスの破片を拾っても痛くもないしケガもしないもんな」
俺はネーコを見下ろしながら皮肉っぽく吐き棄てた。
「ええ。そうですね」
「だから今の俺の気持ちもネーコにはわかるはずないんだよな」
「フミヒロ様の気持ち......理解できるよう努めています」
「はぁ??理解できるよう努めているだって??」
「フミヒロ様?」
「フザケんなよ!アンドロイドのお前なんかに俺の気持ちがわかるわけがないだろ!」
「ですから理解できるように努めて...」
「じゃあどんな努力してんだよ!?言ってみろよ!?」
「......こうやってフミヒロ様との対話を重ねて...」
「アンドロイドのお前なんかとそんなことやったところでどうにかなるのか!?」
「しかしそのようなことを積み重ねていかないことには...」
「もういいよ!帰れよ!未来に帰れよ!この役立たずのポンコツアンドロイドが!!」
「......申し訳ございません」
「ああもう!」
俺はネーコを完全拒絶するようにバタン!と扉を閉めた。
それからすぐに布団に潜りこんで芋虫のようにうずくまった。
「ああ......クソッ!クソクソクソクソッ!」
怒りがおさまらなかった。
なぜなら、その怒りの大半は自分自身にも向けられていたから。
「酷いな、俺。ネーコを傷つけたかも......」
アンドロイドのネーコに『心』があるのかはわからない。
だから傷ついたのかどうかもわからない。
でも、少なくともすべきでない事をした事は確かだと思う。
たとえ相手がアンドロイドのネーコであろうと、こんなのはダメに決まっている。
「自己嫌悪で死にそう......」
俺はひとり身悶える。
陰鬱な興奮が胸を締めつけて身心に不自由な毒を満たしていく。
「うぅ...うぅぅ......」
泣き出しそうだ。
自分が愚かすぎて情けなすぎて。
そもそも俺が普通に学級委員長さんと話せていればなにも問題なかったんだ。
あの後だって、その気になれば追いかけて呼び止める事だってできたはずなんだ。
「......」
もちろんネーコへの怒りもある。
けど、それ以上に己自身への憤懣やる方無い想いとがっかりした気持ちで押し潰されそうだ。
俺にはただでさえ不登校の後ろめたさがあるから、いったん落ち込んでしまうと実にタチが悪かった。
翌日。
俺は布団にこもって寝込んでいた。
体調が悪いわけでもなければ天気が悪いせいでもない。
「俺の中学校生活は終わった......」
もし、昨日のことを学校で言いふらされでもしたら、俺は完全にジ・エンドだ。
そうなったら、もはや何が真実かなんて関係なくなる。
一犬虚に吠ゆれば万犬実に伝う......だったか。
「フミヒロ様。お飲み物をお持ちしました。開けてくださいませんか?」
部屋の外からネーコの声が聞こえる。
俺は昨日のアレ以降、ネーコを拒み続けていた。
さすがに昨日のことは笑いで済ませられなかった。
「フミヒロ様。お願いです。開けてください」
しつこい。
あんなことしでかしといて厚かましいにもほどがある。
「フミヒロ様。フミヒロ様。フミヒロ様」
なんなんだよアイツ。
この期に及んでどの面下げて来るつもりだ。
「フミヒロ様。開けてください。フミヒロ様」
「あああ!もううるさいなぁ!!」
いつまでも引き下がらないネーコに堪忍袋の尾が切れた俺は布団から飛び出ていってドアを乱暴にバンッ!と開けた。
「なんだよ!」
「フミヒロ様。お飲み物を...」
「そんなのいらないよ!」
「あっ」
ネーコの持ったおぼんをバッと払いのけると、コップが無抵抗に落下してパリンと割れた。
床にはお茶の水たまりが広がり濡れたガラスの破片が憐れに光る。
「申し訳ございません。今すぐ片付けますね」
ネーコはすぐに屈んで床を拭きながら破片を拾いだした。
「ネーコはアンドロイドだから、ガラスの破片を拾っても痛くもないしケガもしないもんな」
俺はネーコを見下ろしながら皮肉っぽく吐き棄てた。
「ええ。そうですね」
「だから今の俺の気持ちもネーコにはわかるはずないんだよな」
「フミヒロ様の気持ち......理解できるよう努めています」
「はぁ??理解できるよう努めているだって??」
「フミヒロ様?」
「フザケんなよ!アンドロイドのお前なんかに俺の気持ちがわかるわけがないだろ!」
「ですから理解できるように努めて...」
「じゃあどんな努力してんだよ!?言ってみろよ!?」
「......こうやってフミヒロ様との対話を重ねて...」
「アンドロイドのお前なんかとそんなことやったところでどうにかなるのか!?」
「しかしそのようなことを積み重ねていかないことには...」
「もういいよ!帰れよ!未来に帰れよ!この役立たずのポンコツアンドロイドが!!」
「......申し訳ございません」
「ああもう!」
俺はネーコを完全拒絶するようにバタン!と扉を閉めた。
それからすぐに布団に潜りこんで芋虫のようにうずくまった。
「ああ......クソッ!クソクソクソクソッ!」
怒りがおさまらなかった。
なぜなら、その怒りの大半は自分自身にも向けられていたから。
「酷いな、俺。ネーコを傷つけたかも......」
アンドロイドのネーコに『心』があるのかはわからない。
だから傷ついたのかどうかもわからない。
でも、少なくともすべきでない事をした事は確かだと思う。
たとえ相手がアンドロイドのネーコであろうと、こんなのはダメに決まっている。
「自己嫌悪で死にそう......」
俺はひとり身悶える。
陰鬱な興奮が胸を締めつけて身心に不自由な毒を満たしていく。
「うぅ...うぅぅ......」
泣き出しそうだ。
自分が愚かすぎて情けなすぎて。
そもそも俺が普通に学級委員長さんと話せていればなにも問題なかったんだ。
あの後だって、その気になれば追いかけて呼び止める事だってできたはずなんだ。
「......」
もちろんネーコへの怒りもある。
けど、それ以上に己自身への憤懣やる方無い想いとがっかりした気持ちで押し潰されそうだ。
俺にはただでさえ不登校の後ろめたさがあるから、いったん落ち込んでしまうと実にタチが悪かった。
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