守らせて、俺の全てで

ゆきの(リンドウ)

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君の隣で生きていきたい

(1)

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 ああ、まずい。
 朝、いつもよりかなり早めに起きたのはいいが、緊張から汗と動悸が止まらない。

 (いいよな、陽は)

 時刻は朝の五時半。キングサイズの布団の端、まだ寝息を立てている恋人を見て、恨めしく思った。
 海は、というと可愛い寝顔で陽と同じく静かに寝息を立てている。
 二人を見るといつも和む。が、今日は和む気持ちよりどうしようという気持ちが勝っている。

 何故なら今日は、一年に数回ある、勇太が最も苦手とする行事の日なのだ。

「参観日?」
「そう、あのね、おうちの人が保育園に来てくれてね、海のこと見てくれるんだって!」

 幼い口調で海がそう教えてくれたのは、今から数年前だった。

「勇太、来てくれるよね?」
「おう、任せとけ」

 参観日なんて、親みたいだ。海の母親の優里菜はもうこの世にはいないのだから、実質、勇太と陽が親だ。が、勇太は憧れでもあったのだ。
 施設育ちのため、勇太には幼少期の親の記憶がない。もちろん、参観日の日、後ろにずらっと並ぶ親の列から自分の親を探すなんてことはしたことがなかった。

 (海にはそんな思い、絶対にさせない)

 そう、強く胸に誓っていたのに。

 (思い出すな、俺。大丈夫、今日こそは)

 というのも、勇太は鬱になってから特に人がたくさんいるところが苦手になっていたのだ。
 考えすぎると引っ込んでいた過呼吸が沸き上がってくる。ふう、と大きく息を吸って落ち着かせようとしていると、ふいに手に温かな感触が触れる。

「勇太」
「陽。起きちゃった?」
「いや、大丈夫。それより、大丈夫か?今日」
 聞きながら、陽が覗き込む。陽の目はいつだって優しくて、それだけで不安が和らぐ。

「うん、大丈夫」
「無理して勇太まで行くことない。海だって、わかってるよ。やっぱり、俺だけ行ってくる」

 ああ、また心配させている。強くなるって決めたのに。

「陽、大丈夫だから。陽のおかげで大丈夫になったから、ね?」

 決意がぶれないように、陽の手をぎゅっと握って言った。

「そっか。辛くなったらすぐ言えよ?」
「…うん、ありがとう、陽」

 コツンと額を合わせて微笑みあう。カーテンの隙間から漏れる太陽の光が陽を照らす。

 (やっぱり陽は世界一、格好いいや)

 少しだけ、全身を張り巡らせていた緊張が解れた、そんな気がしていた。
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