多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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かつてそれは恋だった

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 一昔前の日本は今よりも肌の色、瞳の色、髪の色による差別意識が強く、そのために俺のクラスにいた瞳の青いクラスメイトが知らずのうちに転校して行ったこともあった。

 ユウリがどんな状況でどんな揶揄いを受けてきたのかはわからない。だが、もし俺が目にしてきたものと同じならそれは良い記憶ではないはず。

 そんなユウリが故郷のイタリアン料理の中に、日本を感じさせる味を入れてくれた。

 その事実がただ、ただ嬉しかったんだ。

「奏は、どう?」

「…うん、めっちゃ美味いよ」

 そう言うと、不安気にこちらを窺う顔を見違えるほどに明るくさせ、ユウリは良かったと呟いた。

 …その顔に、安堵を感じたなんて。

 皿に溢れそうなくらいに盛られた料理は気付けばあっという間に底が見え始め、良樹は「やっぱりお金払います!」と何度もユウリに言い、その度にユウリを苦笑させていた。

「もしかして、良樹さん寝ちゃった?」

 時刻は午後21時。良樹はリビングテーブルに顔を突っ伏している。

「うわ、まじかよ。ごめんな?お客さんが来てるのに寝るような奴じゃないんだけど」

「全然気にしてないよ?それに、今日無理言ってお邪魔させてもらったのは僕だからね?」

「そうだ、それ聞きたかったんだよなぁ。なんで家に?」

 一度寝てしまうとよっぽどのことがない限り目覚めない良樹をユウリと担ぎ、ベッドへと横たわらせ、そっと扉を閉めながら聞く。

 といっても、俺の家ではないけれど。

「ん~まあ、成り行きってとこだけど、正直それでも嬉しかったよ、僕は」

「なんでだよ」

「だって奏に会いたかったからさ」

 …本当にこいつは!昔からさらりと人の心臓を跳ねさせるのが得意技だった。

 付き合った当初、「愛してるよ」「会いたいよ」が口癖のようなユウリに、俺は些か驚いていた。

 しかも、所構わずそう言うのだから困っていた時もあった。

 ある時、周りの奴等に揶揄われることに腹を立てた俺は「いい加減にしてくれ。」と声を荒げた。するとユウリは…あれ、何て言ったのだろう。

「あ、ちょっと待って!今のは日本人的に言うとラブの方で取っちゃったよね?」

 そうじゃなくてライクの方でと、ユウリが慌てて言い直す。

 ふと、笑いが込み上げてきた。ユウリと別れてからもう何年も会いもせずに連絡すらも途絶えさせていたというのに、まるで昨日一昨日とずっと会っていたような、そんな感覚に襲われる。
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