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それは恋以外の何者でもない
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「そういえばもうテストは終わったんですよね?」
「はい、先週に。ようやく楽器に触れるって、生徒たちみんな喜んでますよ」
「なるほど、それは良かった」
談笑しながらの階段は思いの外、すぐに登り切れてしまう。
音楽室と目線を高くした位置に掲げられたプレートと、木製のささくれが目立つ扉の前に立ち、藤原さんを中へと促した。
…しかし、なんとなくだが不自然な沈黙が漂う。
あれ、と俺は思った。こんな妙な間を作る人だったかと。
しかし、芸術家というのは風変わりな人が多いとも聞く。藤原さんだって見た目は温和そうな女性だが、いざ指導となると人が変わったかのようにビシバシと生徒の心に刺さる言葉を浴びせる。
「あの~、どうかしましたか?」
じっと見つめられる視線に耐えられずにそう言うと、藤原さんは「失礼しました」と、きっとさほど思ってもいなさそうな言葉を吐き出す。
「顔に何かついてますか?」
「いえ、とんでもないです。先生も随分、お元気になられたようで安心してしまいました」
「え?それはどういう…?」
「このところ、とても元気がなさそうに見えたので、先生もテスト期間は大変なのかと思ってたんです」
まじか。藤原さんの言葉を受けた真っ先に思ったのは、その一言だった。
確かにここ最近、鬱々と悩みこむ時間が随分と減った気はしていた。
克巳とはあれからも今現在も特に変化があった訳でもない。
むしろ、時が経てば経つほどに引けなくなる分、収拾のつけどころがわからなくなりつつあり、つまり事態は悪化傾向とも言えるだろう。
東雲先生の方も相変わらず、克巳にべったりとくっついていて、実は最近、職員の中でもあれはどういうことなのかとヒソヒソ噂になってしまっているのだ。
しまいには克巳と東雲先生が実は付き合っているのでは説まで流れ始める始末だ。
以前の俺ならこんな事態に頭を悩ませるどころか、克巳に対して怒り心頭状態で良樹に愚痴っていた。
なのに、今の俺ときたらどうだ。全くそんな気すら起こっていない。
…それが何故かなんて、考えるまでもなくわかっていた。
あの日、ユウリに本音をぶちまけたからだ。
幼い子どものように泣きじゃくって、馬鹿だバカだと目の前にいないのをいいことにいいだけ罵って、けれどそんな俺を否定せずに受け止めて。
「はい、先週に。ようやく楽器に触れるって、生徒たちみんな喜んでますよ」
「なるほど、それは良かった」
談笑しながらの階段は思いの外、すぐに登り切れてしまう。
音楽室と目線を高くした位置に掲げられたプレートと、木製のささくれが目立つ扉の前に立ち、藤原さんを中へと促した。
…しかし、なんとなくだが不自然な沈黙が漂う。
あれ、と俺は思った。こんな妙な間を作る人だったかと。
しかし、芸術家というのは風変わりな人が多いとも聞く。藤原さんだって見た目は温和そうな女性だが、いざ指導となると人が変わったかのようにビシバシと生徒の心に刺さる言葉を浴びせる。
「あの~、どうかしましたか?」
じっと見つめられる視線に耐えられずにそう言うと、藤原さんは「失礼しました」と、きっとさほど思ってもいなさそうな言葉を吐き出す。
「顔に何かついてますか?」
「いえ、とんでもないです。先生も随分、お元気になられたようで安心してしまいました」
「え?それはどういう…?」
「このところ、とても元気がなさそうに見えたので、先生もテスト期間は大変なのかと思ってたんです」
まじか。藤原さんの言葉を受けた真っ先に思ったのは、その一言だった。
確かにここ最近、鬱々と悩みこむ時間が随分と減った気はしていた。
克巳とはあれからも今現在も特に変化があった訳でもない。
むしろ、時が経てば経つほどに引けなくなる分、収拾のつけどころがわからなくなりつつあり、つまり事態は悪化傾向とも言えるだろう。
東雲先生の方も相変わらず、克巳にべったりとくっついていて、実は最近、職員の中でもあれはどういうことなのかとヒソヒソ噂になってしまっているのだ。
しまいには克巳と東雲先生が実は付き合っているのでは説まで流れ始める始末だ。
以前の俺ならこんな事態に頭を悩ませるどころか、克巳に対して怒り心頭状態で良樹に愚痴っていた。
なのに、今の俺ときたらどうだ。全くそんな気すら起こっていない。
…それが何故かなんて、考えるまでもなくわかっていた。
あの日、ユウリに本音をぶちまけたからだ。
幼い子どものように泣きじゃくって、馬鹿だバカだと目の前にいないのをいいことにいいだけ罵って、けれどそんな俺を否定せずに受け止めて。
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