多分、愛じゃない

リンドウ(友乃)

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それは恋以外の何者でもない

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 なんとか宥めて向かったのは、紛れもない我が家。

 正直なところ、まだ克巳と会って話す度胸が座っていなかった。

 何を話すとか何から話せばいいとか、そんなことをぐるぐると考えていた最中だったんだ。

 けれど、そろそろなんとかしなければとは思っていたことも事実だ、それなら願ったり叶ったりじゃないのか。

 それでも踏ん切りがつかないのは、克巳らしくない態度のせいだ。

 ずんずんと音がするほどに俺の手を引っ張って歩く克巳が部屋の扉を開けた。

 約一ヶ月ぶりの我が家は、何にも変わっていなかった。

 物の配置も置かれている家具も何もかもがあのままで、だけど何かが変わっていた気がして気持ち悪い。

「座って、奏」

「お、おう」

 まるで克巳じゃないみたいだ。多分俺はほんの少し、恐怖を感じていた。

 言われるがままにソファに座る。克巳も俺の横に座る。

 ふいに圧迫感が俺を襲った。よく考えてもみれば巨人並みにデカい男なのだから、二人掛けのソファは狭いに決まっている。

 なのに、今まで感じなかったのは克巳の雰囲気のおかげだろうか。今日の克巳はなんだか怖い。

「奏はさ、もう俺とは終わらせようと思ってたの?」

「は?何だそれ」

「怒ってたのは知ってたし、俺が悪いのもわかってたよ。でも家出して他の男と仲良くしてるなんて聞いてない」

「ちょっと待てって。他の男って良樹だぞ?お前も知ってる奴」

「違うよ。俺、知ってるんだよ?奏が良樹さん以外の男と会ってるの」

 ドキリ。心臓が嫌な音を立てた気がした。

 良樹以外の男、即ちユウリのことを克巳は言っているのだ。

 けれど、どうして克巳がユウリのことを。

「…良樹さんの家に迎えに行ったんだ、二週間前くらいに」

 俺の心を読んだかのように、克巳は事の経緯を話し始める。

「そしたら奏が背の高いカッコいい人と出てきた。奏の腰に腕を回して奏も嫌がってなくて、むしろ嬉しそうに笑ってた。あの人、誰なの?」

 克巳が言うのは良樹の家にユウリを泊めた翌朝のことだろう。

 確かにあの日、大丈夫と言い張るユウリを駅までだからと半ば強引に送っていった。

 しかし、腰に腕を回されていただろうか。最早、ユウリにとってそれは自然なことすぎるから俺もそれが特別なことだと思っていなかった。
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