多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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恋だと思っていたものと、そうじゃなかったもの

(2)

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 それ以来、俺は克巳に対して違和感を拭えなくなってきていた。

 思えば以前から違和感を感じさせる節は多々あったのだ。

 行動を監視するようになったり、会う人を制限したりとそれは俺の知る克巳らしくないものだった。

 けれど、そもそもそれが始まったのは俺が家出をしたからであり、つまり俺のせいでもある。

 そう言い聞かせて見ないフリをしてきたツケなのかもしれない。

 今やユウリはもちろん、良樹にも連絡をすることすら億劫になっている自分に、ほとほと嫌気が差す。

 …それでも俺は、克巳の彼氏で。克巳が好きなんだ。

 必死で懸命に言い聞かせていた、綻びなんか一つも出ないように。

 しかし、時として運命は良い方向に向かう時もある。

 九月も半ばを過ぎ、蒸し暑い風から涼しい風が注ぐ中、俺は電車で30分も離れた駅にいた。

 時刻は午前11時。待ち合わせの時間より一時間前。

 ウキウキとも言い切れないけれどウキウキしていないとも言えない気持ちで克巳を待っている。

 事の発端は数日前、涼しくなったとは言えどもいまだに半袖を着ながらそれでも何故かシチューを食べていた時のこと。

「奏、週末、デートしない?」

 唐突にそう言われたことがきっかけだった。

「デートって、まあ、いいけど」

「じゃあ、待ち合わせしたい!いい?」

 無論、その提案は謎なものだ。何故なら俺たちは一つ屋根の下に住んでいる。

 けれどもこうして大人しく指定された駅前に立っているのは、そう言った克巳が俺の知る克巳だったからだろう。

 俺は密かに今日のこの機会に賭けていた。

 あの日、デートに誘ってくれた克巳を思い出す。あの日の克巳はどこか頼りなさげで可愛らしくもあったのだ。

 つまり、もしかしたら今日、以前までの克巳に会えるかもしれないと期待していたわけである。

 それでも、もし、俺の知る克巳に会えなかったらー。

『奏、もう一回だけ聞くよ。本当に大丈夫なの?』

 ふと、ユウリの声が頭に過ぎる。ユウリの声は狡い。あの時も多分、克巳に腕を取られていなければ大丈夫じゃないと考えるよりも先に口をついていたと思うからだ。

 あれから一度だけ、ユウリからメールが入っていた。

 ー連絡してごめんね?どうしても奏のことが気になって。奏、もし、大丈夫じゃなかったらおいで。僕ならいつでも大丈夫だから。

 読んだ瞬間、思った。ユウリは馬鹿だ、やっぱり馬鹿だと。
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