多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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恋じゃないなら、何だったのか

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 何故、こんな自分なんかの恋人がユウリなのか。

 ユウリの愛を疑っていたわけではない。堂々とされる愛情表現は時に恥ずかしくもなるけれど、自信の持てない俺にとっては勇気をくれるものだった。

 だからこそ、思った。ユウリには俺みたいな奴ではなく、もっとふさわしい奴がいるんじゃないかと。

「奏?奏?聞こえてる?」

 つい、過去の記憶を遡っていたようで、心配そうに俺を覗き込むユウリの姿に意識を戻らせる。

「聞こえてる、大丈夫」

「僕の方こそごめん。具合悪いのに大きな声出して」

 ベッドの脇にある小さな椅子に腰掛け、ユウリがしょぼくれたように呟く。

「いや、俺が悪いから。最近、いろいろあってちょっと疲れてたみたいだ」

「そっか。そのいろいろは僕が聞いてもいいことかい?」

 ぱっと俯いていた顔を上げた。もちろん、聞いてほしい。ユウリになら全部、聞いてほしかった。

 けれど、その資格がない。今、ユウリに打ち明ければきっと俺は、そのことを後悔する。

 昔、俺なんかが相応しくないとユウリを振ったあの時のように。

「奏。今日の夜は何食べたい?」

「え?」

「だから今日の夜だよ。奏が寝てる間に見ちゃったんだけど食材、全部傷んでたから今から買い出し行ってくる。リクエストくれる?」

 なんでもないことのように言う。きっと聞きたいことは山ほどあるだろう。

 たとえばここ最近の連絡のなさ。良樹とも仲が良ければ余計に気になっていただろうし、一番はこのホテル暮らし。

 最近では片付ける気力も湧かずに、見るからに生活感が漂っている。

 なのに、敢えて聞かないのは、ユウリだからだ。

 ユウリ、だから。

「…じゃあ、アクアパッツァが食べたい」

「オーケー。やっぱり奏はアクアパッツァが大好物だよね」

 だってお前の作るアクアパッツァがめちゃくちゃ美味いんだよ。

 気を緩めた瞬間、涙が溢れそうでグッと目元に力を込めるため、握った拳にも力を入れた。

「…でも、奏。言いたいことはしっかり、はっきり言ってね。僕はいつでも聞くから」

 駄目だろ、ユウリ。そういうこと言ったら。

 視界が滲み、頬に熱い涙が伝っていた。

「奏ッ!」

 限界だった、もうずっと溢れる一歩手前のコップだったんだ。
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