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(後)
しおりを挟むさっそくもう一度榊原の体を求めた。上にのった榊原が腰を上下に振りながら自らの奥を責めている。
「それにしても、どうして、あの坊やを、助けたんです?」
切れ切れの問いに俺は首を捻る。
「坊や?」
「あの、高校生、ですよ」
「助けて、ないぞ」
上下を入れ替わって、榊原を追い詰める。
「ああ、イく、もう、あっ」
榊原の腹に迸りが飛んだ。それをティッシュで拭いてから、俺も榊原をひいひい言わせて上り詰めた。
二人でまた風呂に入りながら、伸ばした体を抱き合い、寄せ合っていた。
「俺はただ、単純に電車の中で痴漢するのは楽しいのか、痴漢を痴漢するのは面白いのか知りたかっただけ。高校生は勝手に逃げたんだよ」
ええーっと榊原が言った。
「あの坊や、絶対信田さんに惚れましたよ」
「まさか」
「熱い目で見つめてましたもん、トイレに行く信田さんの背中を」
俺は額に手を当てる。
「電車変えるか」
「坊や、がっかりしますよ」
「正義の味方が実は変態、の方ががっかりするぞ」
榊原が笑った。
「確かに」
見詰め合って笑うと、一眠りして疲れた体を癒やしてから、ホテルを出た。
車の中で榊原に訊かれた。
「夕飯どうします?」
「牛丼」
「気持ちいいくらいの即答ですね」
俺はにやりと笑った。
「やめとくか、セフレ?」
「やめませんよ。いずれその口に野菜も突っ込んであげますからね」
牛丼屋へ寄って晩飯を済ますと、レンタカーを返した。それから電車で俺の最寄り駅へ向かう。
「今日はよかったです」
揺れる車両の中で、榊原が耳打ちしてきた。
「お前もな」
「光栄です」
声を抑えて笑い合う。
電車が駅に着いた。
「お疲れ様です。また明日」
「ああ、お疲れ様」
本当に疲れたぞ。
俺は、車両の中の榊原に片手をあげ、去って行く電車を見送った。
もう俺は朝楽しんだ痴漢の感触も、少年の顔も曖昧になっている。セフレの件だって、俺から呼び出すことはそうはないだろう。
明日になればいつもの紺色のスーツで、何食わぬ顔をして電車に乗り、会社に行くのだ。
俺はただの会社員だからな。
――了――
おまけに続く
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