Ｐａｒａｓｉｔｅ

ｅｐｉｓｏｄｅ１

１

　二ＸＸＸ年

　日本は相変わらずの長寿国として、世界№１を維持していた。
　その為、高齢化社会の抱える問題――――「医療」「介護」「福祉」「就労」等。
　少子化が進む中、税金で賄える事にも限度があり、各々の家庭で賄うにも人手も金銭的余裕も無いのが実情であった。

　そこで、政府はある政策を打ち出した。

『paraíso』（パライソ）計画

　六十五歳で定年を迎え、七十歳までは年金が支給され、医療も介護も福祉も……様々な恩恵が、各々の条件によって与えられる。
　しかし、七十歳になった時点で、政府が作った施設『paraíso』に収容されるのである。
　そこは、衣食住がきちんと保障され、医療や介護、そして娯楽に関しても、きちんと設備されている場所。
　その代り、昼間は一定時間、それぞれの特技、性格、体力にあった「就労」をする事が条件となっており、それ以外は、まさに『paraíso』という名に相応しい『楽園』である。
　寝たきりの人以外は、それこそ、本当に小さな事でも仕事として与えられる為、『paraíso』の中では、何の遠慮もなく、幸せな老後生活が出来ると言う“噂”である。

　何故はっきりと断言せずに“噂”だと言うのか？

　それは、『そこ』に収容された人間は、死ぬまでそこから出る事はなく、どんな生活をしているのか、どんな仕事をしているのか、一切、謎だからである。
　ただ、政府が公的発表した内容では、莫大な資金を投入して、どこかの無人島を丸ごとその施設……そう……『楽園都市』として建設し、実際に、法律で定められた歳になった時、政府の人間がやって来て、そこへ連れていかれる。
　それだけが、世間が知る事実であった。