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episode 3
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日曜日。
眩しいくらいの強い日差し感じて目が覚めた。
昨日は道場で内弟子だけの稽古に特別に参加させて貰えた。
最高師範の直接指導の元、息がガンガン上がり、汗だくになりながらも、一日中道場に篭りっきり。
技を繰り出すタイミングや間合や角度をしっかり取るよう最高師範より常に注意されながら、限界まで体を動かす。
力の強弱や緩急、どこを狙うか、どういう風に相手の意識を釣るかなど、頭で考えるよりも身体が覚え、反応するまで繰り返した。
そんなハードな稽古の翌日なのだから、体は怠いし節々は痛む。
時計を見れば、既に十時を回っている。
しかし。
もう少し、ゆっくり寝ていたい……
そんな思いも虚しく、ピンポーンと家中に鳴り響くインターホン。
そう。
今日はあいつらが我が家にやって来るんだった……
「克也~!」
階下から、母親の呼ぶ声が聞こえる。
“まだ、ベッドの上でゴロゴロしてたいんだよ! こっちは!”と、悪態をつきながらも、渋々ベッドから降りると同時に勢いよく開けられる扉と同時に発せられる声。
「おっす!」
「よぉ」
声だけで誰が来たのかは分かっていたが、振り返ると案の定、ニシシっと笑う大介と、涼しげな顔をした洋一郎が立っていた。
『こいつらには、デリカシーというものが無いのか?』
『ノックぐらいしろよ!』
声には出さないものの、不満げな表情で二人を睨むと、洋一郎がすまなそうな顔をして口を開いた。
「すまん。陽子さんが“どうぞ、上がって”って言った瞬間、靴を脱いで、まるで犬っころのように、駆け上がって……」
陽子というのは、俺の母親の名前。
いつまでも若い気分でいたいらしく、“おばさん”とは呼ばせないのが、うちの母親のポリシーらしい。
確かに、俺が言うのも何だが、かなり若く見えるし、四十歳をとうに超えているというのに、スタイルも維持している。
それよりも……
チラリと大介の顔を見ると、今度はプゥっと頬を膨らませていた。
「だって! 陽子さんが、いいって言ったんだぜ?」
拗ねたワンコのように見えるのは、目の錯覚であろうか?
まぁ……確かに、コイツは昔っから、遠慮という言葉を知らない。
しかも、それが許されてしまうキャラだ。
あまりに子供時代と変わらない(成長していない)コイツが、なんだか可笑しくて、思わずフッと笑みが漏れる。
「あ! 今、かっつん、オレの事、馬鹿にしただろ?」
こういう所だけは勘がいい。
「はぁ? してねーよ」
「嘘だね! ぜってぇ、馬鹿にした! オレの事、お子ちゃまとか思ったんだろ?」
おぉ……鋭いな。
「いや。それより、シャワー浴びて着替えてきてぇんだけど」
正直、これ以上このやり取りを続けるのも面倒くさい。
ここは逃げるが勝ちだ。
その間に、母さんに飲み物とお菓子でも持って来てもらおう。
そうすれば、直ぐにご機嫌になる。
俺は、ギャーギャー騒ぐ大介を華麗にスルーし、苦笑いする洋一郎に口パクで、「あ・と・は・た・の・ん・だ」と伝えると、仕方ねぇなぁって顔をして小さく頷いた。
『さてと……さっさとシャワー浴びて戻らねぇと、大介の奴、部屋ん中、ゴソゴソ探り回るからな……』
大介がクンクンと、麻薬捜査犬のように、部屋を嗅ぎまわる姿が頭に浮かぶ。
俺は、手短にシャワーを浴びて着替えると、直ぐに自室へと戻った。
眩しいくらいの強い日差し感じて目が覚めた。
昨日は道場で内弟子だけの稽古に特別に参加させて貰えた。
最高師範の直接指導の元、息がガンガン上がり、汗だくになりながらも、一日中道場に篭りっきり。
技を繰り出すタイミングや間合や角度をしっかり取るよう最高師範より常に注意されながら、限界まで体を動かす。
力の強弱や緩急、どこを狙うか、どういう風に相手の意識を釣るかなど、頭で考えるよりも身体が覚え、反応するまで繰り返した。
そんなハードな稽古の翌日なのだから、体は怠いし節々は痛む。
時計を見れば、既に十時を回っている。
しかし。
もう少し、ゆっくり寝ていたい……
そんな思いも虚しく、ピンポーンと家中に鳴り響くインターホン。
そう。
今日はあいつらが我が家にやって来るんだった……
「克也~!」
階下から、母親の呼ぶ声が聞こえる。
“まだ、ベッドの上でゴロゴロしてたいんだよ! こっちは!”と、悪態をつきながらも、渋々ベッドから降りると同時に勢いよく開けられる扉と同時に発せられる声。
「おっす!」
「よぉ」
声だけで誰が来たのかは分かっていたが、振り返ると案の定、ニシシっと笑う大介と、涼しげな顔をした洋一郎が立っていた。
『こいつらには、デリカシーというものが無いのか?』
『ノックぐらいしろよ!』
声には出さないものの、不満げな表情で二人を睨むと、洋一郎がすまなそうな顔をして口を開いた。
「すまん。陽子さんが“どうぞ、上がって”って言った瞬間、靴を脱いで、まるで犬っころのように、駆け上がって……」
陽子というのは、俺の母親の名前。
いつまでも若い気分でいたいらしく、“おばさん”とは呼ばせないのが、うちの母親のポリシーらしい。
確かに、俺が言うのも何だが、かなり若く見えるし、四十歳をとうに超えているというのに、スタイルも維持している。
それよりも……
チラリと大介の顔を見ると、今度はプゥっと頬を膨らませていた。
「だって! 陽子さんが、いいって言ったんだぜ?」
拗ねたワンコのように見えるのは、目の錯覚であろうか?
まぁ……確かに、コイツは昔っから、遠慮という言葉を知らない。
しかも、それが許されてしまうキャラだ。
あまりに子供時代と変わらない(成長していない)コイツが、なんだか可笑しくて、思わずフッと笑みが漏れる。
「あ! 今、かっつん、オレの事、馬鹿にしただろ?」
こういう所だけは勘がいい。
「はぁ? してねーよ」
「嘘だね! ぜってぇ、馬鹿にした! オレの事、お子ちゃまとか思ったんだろ?」
おぉ……鋭いな。
「いや。それより、シャワー浴びて着替えてきてぇんだけど」
正直、これ以上このやり取りを続けるのも面倒くさい。
ここは逃げるが勝ちだ。
その間に、母さんに飲み物とお菓子でも持って来てもらおう。
そうすれば、直ぐにご機嫌になる。
俺は、ギャーギャー騒ぐ大介を華麗にスルーし、苦笑いする洋一郎に口パクで、「あ・と・は・た・の・ん・だ」と伝えると、仕方ねぇなぁって顔をして小さく頷いた。
『さてと……さっさとシャワー浴びて戻らねぇと、大介の奴、部屋ん中、ゴソゴソ探り回るからな……』
大介がクンクンと、麻薬捜査犬のように、部屋を嗅ぎまわる姿が頭に浮かぶ。
俺は、手短にシャワーを浴びて着替えると、直ぐに自室へと戻った。
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