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episode 8
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話次第では、自分達は彼女と共に行動することになる。
そんな覚悟を持ち、彼女に続きを促そうと口を開けかけた時、大介の拍子抜けするくらい軽い口調が、この場の空気をぶち壊しにしてくれた。
「表と裏の顔? なにそれ。オネエサンとこのシャチョサン、二重人格なの?」
全く的外れな質問。
いや。
おいおい。
今の話の流れと、俺達の間に流れる緊張感あふれる雰囲気から、何でそうなった?
「おぉいっ! 大介。お前はおバカか? 大馬鹿なのか?」
じいちゃんに関わる重大な話だからと、大介の言動に振り回されないようにしようと、心に誓って挑んだ話し合いだというのに、結局、コイツのどうしようもない発言に身を乗り出してツッコミを入れてしまった。
「え? は? だってよぉ、今、言ったじゃねぇかよぉ。表と裏に顔が効くって。そんなアブネェ性格の人と仲間になったりしちゃったりなんかしたら、後々ヤバくね?」
ああ。うん。
確かに、危ない人だとは思うよ。
しかも、後々、ヤバくなる可能性もゼロとは言い切れない。
……だがな。お前の言っている『アブナイ』も『ヤバイ』も、まったくもって次元が違う話だがな。
テーブルに片肘をつき、頭を抱える俺と、天井を仰ぎ、片手で額を押さえる洋一郎を見て、「え? だ? 俺、何かおかしな事言ったか?」と慌てる大介。
なんともカオスな三人組の様子に米澤さんは、ついに噴き出してしまった。
「ちょっと。三人共、ここ、シリアスな場面なのにっ」
笑い過ぎて目元に涙を浮かばせた米澤さんは、その雫を目尻から拭う。
「ほんっと、これから政府を相手に事を起こすっていう話しをしているっていうのに……三人共肝が据わっているっていうか、何ていうか……。空気が軽すぎない?」
「あ、すみません」
口を尖らせ、どこか拗ねたような口振りの米澤さん。
真面目な話しをしている最中に、何度も俺らがコントみたいなやり取りをしだして、話しを中断させることで、気分を悪くさせたのかと思い、素直に謝る。
「あ、別に怒っている訳じゃないわよ。ただ、何て言えばいいのかしら……。肝が据わっているのか、それとも、若さゆえの怖いもの知らずなのか……」
米澤さんの、品定めをするようにネットリとした視線に、俺達は蛇に睨まれた蛙のごとく固まってしまう。
たった数秒が物凄く長い時間に感じ、変な緊張感に襲われ、生唾を飲み込めば、ようやく彼女の頬が上がった。
「ふふっ。君達、何て顔をしているのよ。ちゃ~んと、三人のことは調べがついているんだから、前者ってことぐらい分かっているわよ」
そうだ。
洋一郎や、高瀬さんの件ですっかり忘れていたけど、彼女は俺達の身辺調査をしていたんだった。
そんな覚悟を持ち、彼女に続きを促そうと口を開けかけた時、大介の拍子抜けするくらい軽い口調が、この場の空気をぶち壊しにしてくれた。
「表と裏の顔? なにそれ。オネエサンとこのシャチョサン、二重人格なの?」
全く的外れな質問。
いや。
おいおい。
今の話の流れと、俺達の間に流れる緊張感あふれる雰囲気から、何でそうなった?
「おぉいっ! 大介。お前はおバカか? 大馬鹿なのか?」
じいちゃんに関わる重大な話だからと、大介の言動に振り回されないようにしようと、心に誓って挑んだ話し合いだというのに、結局、コイツのどうしようもない発言に身を乗り出してツッコミを入れてしまった。
「え? は? だってよぉ、今、言ったじゃねぇかよぉ。表と裏に顔が効くって。そんなアブネェ性格の人と仲間になったりしちゃったりなんかしたら、後々ヤバくね?」
ああ。うん。
確かに、危ない人だとは思うよ。
しかも、後々、ヤバくなる可能性もゼロとは言い切れない。
……だがな。お前の言っている『アブナイ』も『ヤバイ』も、まったくもって次元が違う話だがな。
テーブルに片肘をつき、頭を抱える俺と、天井を仰ぎ、片手で額を押さえる洋一郎を見て、「え? だ? 俺、何かおかしな事言ったか?」と慌てる大介。
なんともカオスな三人組の様子に米澤さんは、ついに噴き出してしまった。
「ちょっと。三人共、ここ、シリアスな場面なのにっ」
笑い過ぎて目元に涙を浮かばせた米澤さんは、その雫を目尻から拭う。
「ほんっと、これから政府を相手に事を起こすっていう話しをしているっていうのに……三人共肝が据わっているっていうか、何ていうか……。空気が軽すぎない?」
「あ、すみません」
口を尖らせ、どこか拗ねたような口振りの米澤さん。
真面目な話しをしている最中に、何度も俺らがコントみたいなやり取りをしだして、話しを中断させることで、気分を悪くさせたのかと思い、素直に謝る。
「あ、別に怒っている訳じゃないわよ。ただ、何て言えばいいのかしら……。肝が据わっているのか、それとも、若さゆえの怖いもの知らずなのか……」
米澤さんの、品定めをするようにネットリとした視線に、俺達は蛇に睨まれた蛙のごとく固まってしまう。
たった数秒が物凄く長い時間に感じ、変な緊張感に襲われ、生唾を飲み込めば、ようやく彼女の頬が上がった。
「ふふっ。君達、何て顔をしているのよ。ちゃ~んと、三人のことは調べがついているんだから、前者ってことぐらい分かっているわよ」
そうだ。
洋一郎や、高瀬さんの件ですっかり忘れていたけど、彼女は俺達の身辺調査をしていたんだった。
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