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episode 8
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【俺達のことを調査済み】
そのことを想い出し、ハッとして米澤さんの顔をガン見すると、彼女は脳内にインプットした情報を引き出そうとしているのか、視線を一度、左上に彷徨わせた。
「百瀬 洋一郎。父親は、外務省大臣官房外務報道官・百瀬 琥太郎。母親の慶子は、日本屈指の脳神経外科医・福磨 孝喜を祖父に持つ、関東きっての大病院、福磨記念病院の院長・福磨 慶喜の娘。全国学力テストでは中学時代三年連続トップテン入り。語学にも長け、尚且つ、ITに関しても、そんじょそこらのシステムエンジニアやプログラマーなんかじゃ太刀打ちできない程の知識と腕前。確か――」
そこで一旦言葉を切ると、ニヤリと口角を上げて洋一郎へと首を向けた。
「三年前、世界中で多くの企業や組織が集団的なクラッカー:WOF(Wheel of Fortune)によって、コンピューターネットワークに不正に侵入され、システムの破壊や改ざんをされた事件があったわよね?」
当時、中学生だった俺や大介にとっては、パソコンなんて、ぶっちゃけ言えば、ゲームやネットサーフィン、友人同士でチャットをするぐらいしか使い道なんてなくて。
ニュースでネットウィルスだのハッカーだの騒いでいたって、興味もなければ、その意味すらあんありよく分かっちゃいなかった。
ただ、洋一郎に関しては、物心ついた時からパソコンに触っていたっていう話しだけあって、かなり興味津々で、目を輝かせてたっけな。
「その時、あるSNSを通じて知り合った多国籍のハッカー数人が手を組み、WOFに狙われたデータやプログラムを、その攻撃から守るだけでなく、犯人を絞って追い詰め、犯人グループ逮捕へと大きく貢献したっていうのは有名な話。でも……。その中に、政治家の息子がいるだなんてことは、公には出来ない秘密よね?」
かわいらしく小首をかしげて同意を求める彼女に対し、俺達は素直に、「はい。そうですね」なんて言えずに、ただただ絶句した。
だって、そうだろ?
俺達だって、当時、本人からその話しを聞くまでは、そんな事信じられなかった訳だし。
ホワイト・ハッカー達の人権を守る為に、ハンドルネームだけしか公表されず、個人情報に関しては、かなりの規制をかけてあった。
特に――コイツに関しての事はトップシークレットにしていた筈だ。
「ハンドルネーム・MORONICだっけ?」
彼女の言葉を聞き、最早、誤魔化すことなんて出来ない事を悟った洋一郎は、「ええ。その通りですよ」と、両手を上げて降参の意を表した。
政府からの指示によって規制された個人情報は、大手マスコミだって手が出せない筈。しかし、MORONICが洋一郎だという情報を彼女が手に入れているという事実は、高瀬という人物が、本当に裏社会にも通じている事を意味しているともとれる。
「ちなみに、身長・体重・スリーサイズや靴のサイズ。握力からアソコのサイズだって調べて――」
「僕の事はもう結構です」
指を折り曲げながら発言を暴走させようとする米澤さんを冷静に止める洋一郎。
アソコのサイズって……なぁ?
お前もちったぁ、顔を赤らめるなり、慌てるなりしろよって思いつつも、それ以上に、女性がそんなことを平気な顔して言うもんじゃないだろぉ。
ちょっとドン引きしていれば、「あら、そう? アソコって、何か勘違いしているんじゃない?」とか、何故か、セクハラ親父っぽい発言をニヤニヤ洋一郎に投げかけている。
今までの、情に溢れるクールな女性のイメージが台無しだ。
あまりに凄い情報網に、驚きと感心を示していた洋一郎も面倒くさそうに顔を顰め、おちゃらけ大好きな大介も、大人の女性の下ネタまがいな発言に若干引き気味。
口端をヒクヒクと引き攣らせ、『こっちくんなよぉっ! オレに興味持つなよぉ!』というオーラ全開な大介の方へと、彼女の視線は移動した。
そのことを想い出し、ハッとして米澤さんの顔をガン見すると、彼女は脳内にインプットした情報を引き出そうとしているのか、視線を一度、左上に彷徨わせた。
「百瀬 洋一郎。父親は、外務省大臣官房外務報道官・百瀬 琥太郎。母親の慶子は、日本屈指の脳神経外科医・福磨 孝喜を祖父に持つ、関東きっての大病院、福磨記念病院の院長・福磨 慶喜の娘。全国学力テストでは中学時代三年連続トップテン入り。語学にも長け、尚且つ、ITに関しても、そんじょそこらのシステムエンジニアやプログラマーなんかじゃ太刀打ちできない程の知識と腕前。確か――」
そこで一旦言葉を切ると、ニヤリと口角を上げて洋一郎へと首を向けた。
「三年前、世界中で多くの企業や組織が集団的なクラッカー:WOF(Wheel of Fortune)によって、コンピューターネットワークに不正に侵入され、システムの破壊や改ざんをされた事件があったわよね?」
当時、中学生だった俺や大介にとっては、パソコンなんて、ぶっちゃけ言えば、ゲームやネットサーフィン、友人同士でチャットをするぐらいしか使い道なんてなくて。
ニュースでネットウィルスだのハッカーだの騒いでいたって、興味もなければ、その意味すらあんありよく分かっちゃいなかった。
ただ、洋一郎に関しては、物心ついた時からパソコンに触っていたっていう話しだけあって、かなり興味津々で、目を輝かせてたっけな。
「その時、あるSNSを通じて知り合った多国籍のハッカー数人が手を組み、WOFに狙われたデータやプログラムを、その攻撃から守るだけでなく、犯人を絞って追い詰め、犯人グループ逮捕へと大きく貢献したっていうのは有名な話。でも……。その中に、政治家の息子がいるだなんてことは、公には出来ない秘密よね?」
かわいらしく小首をかしげて同意を求める彼女に対し、俺達は素直に、「はい。そうですね」なんて言えずに、ただただ絶句した。
だって、そうだろ?
俺達だって、当時、本人からその話しを聞くまでは、そんな事信じられなかった訳だし。
ホワイト・ハッカー達の人権を守る為に、ハンドルネームだけしか公表されず、個人情報に関しては、かなりの規制をかけてあった。
特に――コイツに関しての事はトップシークレットにしていた筈だ。
「ハンドルネーム・MORONICだっけ?」
彼女の言葉を聞き、最早、誤魔化すことなんて出来ない事を悟った洋一郎は、「ええ。その通りですよ」と、両手を上げて降参の意を表した。
政府からの指示によって規制された個人情報は、大手マスコミだって手が出せない筈。しかし、MORONICが洋一郎だという情報を彼女が手に入れているという事実は、高瀬という人物が、本当に裏社会にも通じている事を意味しているともとれる。
「ちなみに、身長・体重・スリーサイズや靴のサイズ。握力からアソコのサイズだって調べて――」
「僕の事はもう結構です」
指を折り曲げながら発言を暴走させようとする米澤さんを冷静に止める洋一郎。
アソコのサイズって……なぁ?
お前もちったぁ、顔を赤らめるなり、慌てるなりしろよって思いつつも、それ以上に、女性がそんなことを平気な顔して言うもんじゃないだろぉ。
ちょっとドン引きしていれば、「あら、そう? アソコって、何か勘違いしているんじゃない?」とか、何故か、セクハラ親父っぽい発言をニヤニヤ洋一郎に投げかけている。
今までの、情に溢れるクールな女性のイメージが台無しだ。
あまりに凄い情報網に、驚きと感心を示していた洋一郎も面倒くさそうに顔を顰め、おちゃらけ大好きな大介も、大人の女性の下ネタまがいな発言に若干引き気味。
口端をヒクヒクと引き攣らせ、『こっちくんなよぉっ! オレに興味持つなよぉ!』というオーラ全開な大介の方へと、彼女の視線は移動した。
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