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episode 9
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俺にだって守りたい人がいる。
微力ではあるが、この国の将来の為に、自分達が少しでも力になれるのならば、それはそれでいいのではないか?
しかも、彼女達が俺達を利用するのならば、俺達だって、島に入る為に彼女達を利用すればいいだけのこと。
誰が政府の言いなりになる?
俺達の親や兄弟が、たかが自分の息子や弟の不始末でどうにかなるような輩じゃない事くらい、身内である俺達自身が一番理解してるっつーの。
一度島に入っちまえばこっちのもん。
あそこには、きっと俺の兄貴もいる。
たとえ施設内を調査中、日本国防軍に掴まったとしても、兄貴に会いに来たとか上手く誤魔化せば何とかなるだろう。
後々の事は、運を天に任せ、俺達は俺達の好きなようにさせて貰おうじゃないか。
よくよく考えて見れば、得体の知れない女性の話を鵜呑みにして、家に上げた時点で俺の進むべき道は決まっていたようなものだ。
俺達を『人質』に使おうなんていう物騒な話しを耳にしても、別段、驚くこともないし、後々裏切られてショックを受けるよりもいい。
むしろ、そっちがその気なら、ドーンと受けてやる。かかってこいや! と思い始めている自分自身に驚き、自然と笑いが込み上げて来る。
「ふはっ」
ついに噴き出してしまった俺を、とうとうコイツ気でも狂ったのかといった表情で頬を引きつらせる面々に向かって、堂々と宣言してやる。
「上等だ。利用されるなら、コッチも利用してやる。これでお互いフィフティ・フィフティってヤツだろ?」
不安や恐れは勿論ある。
だが、ここで何もせずに後悔するよりも、せっかくのチャンスを活かして、せめて、祖父を救出出来れば、それだけで充分だ。
あとの事は、米澤さん達のグループが全国民に政府の計画の真実を知らしめてくれるだろう。
うまくいけば、計画そのものを壊滅させることだって不可能ではない。
腹の内は分からないが、ただ一つ言えるのは、彼女達と俺達の方向性が一緒だって事だ。
だったら――――
決意に満ちた瞳を親友二人に向ければ、肩を竦め、「やれやれ」といった雰囲気。
これは否定ではなく、俺の意見に渋々ではあるが、賛成してくれているという意志表示だ。
「お前ら、スマン。助かる」
「あらあら。ってことは、一緒に島に来てくれるって事でOK?」
あれだけ話しが横に逸れたり、混乱したりし、終いには、自分達が彼女達の作戦の駒だの、政府に人質を取られ、操り人形役に徹しなければならないだの散々な言われ方をされたというのに、アッサリ島への同行を了承するものだから、半ば拍子抜けといった様子。
「OKですよ。俺達は政府の言いなりにも、貴方方の都合のいい人間にもなるつもりはありませんから。お互いに利用し合えるものはし合って。助け合える部分は助け合っていきましょうよ。一応、お互いの狙いは同じなんですし……ね?」
軽い口調で話しているが、内容は結構ハードなもの。
それでも、最後まで重々しい雰囲気にならないよう、ウィンクして目交ぜすれば、彼女も、ようやく第一段階突破といった面持ちで、安堵の溜息をついた。
「あなた達。夏休みはいつから?」
「七月二十日っすよ!」
休みの日にちだけは絶対に忘れない大介が間髪入れずに答える。
「そう……約一カ月。今年は忘れられない熱い夏になりそうね」
目を細め、どこか遠い目をした彼女の呟きが酷く重く感じた。
微力ではあるが、この国の将来の為に、自分達が少しでも力になれるのならば、それはそれでいいのではないか?
しかも、彼女達が俺達を利用するのならば、俺達だって、島に入る為に彼女達を利用すればいいだけのこと。
誰が政府の言いなりになる?
俺達の親や兄弟が、たかが自分の息子や弟の不始末でどうにかなるような輩じゃない事くらい、身内である俺達自身が一番理解してるっつーの。
一度島に入っちまえばこっちのもん。
あそこには、きっと俺の兄貴もいる。
たとえ施設内を調査中、日本国防軍に掴まったとしても、兄貴に会いに来たとか上手く誤魔化せば何とかなるだろう。
後々の事は、運を天に任せ、俺達は俺達の好きなようにさせて貰おうじゃないか。
よくよく考えて見れば、得体の知れない女性の話を鵜呑みにして、家に上げた時点で俺の進むべき道は決まっていたようなものだ。
俺達を『人質』に使おうなんていう物騒な話しを耳にしても、別段、驚くこともないし、後々裏切られてショックを受けるよりもいい。
むしろ、そっちがその気なら、ドーンと受けてやる。かかってこいや! と思い始めている自分自身に驚き、自然と笑いが込み上げて来る。
「ふはっ」
ついに噴き出してしまった俺を、とうとうコイツ気でも狂ったのかといった表情で頬を引きつらせる面々に向かって、堂々と宣言してやる。
「上等だ。利用されるなら、コッチも利用してやる。これでお互いフィフティ・フィフティってヤツだろ?」
不安や恐れは勿論ある。
だが、ここで何もせずに後悔するよりも、せっかくのチャンスを活かして、せめて、祖父を救出出来れば、それだけで充分だ。
あとの事は、米澤さん達のグループが全国民に政府の計画の真実を知らしめてくれるだろう。
うまくいけば、計画そのものを壊滅させることだって不可能ではない。
腹の内は分からないが、ただ一つ言えるのは、彼女達と俺達の方向性が一緒だって事だ。
だったら――――
決意に満ちた瞳を親友二人に向ければ、肩を竦め、「やれやれ」といった雰囲気。
これは否定ではなく、俺の意見に渋々ではあるが、賛成してくれているという意志表示だ。
「お前ら、スマン。助かる」
「あらあら。ってことは、一緒に島に来てくれるって事でOK?」
あれだけ話しが横に逸れたり、混乱したりし、終いには、自分達が彼女達の作戦の駒だの、政府に人質を取られ、操り人形役に徹しなければならないだの散々な言われ方をされたというのに、アッサリ島への同行を了承するものだから、半ば拍子抜けといった様子。
「OKですよ。俺達は政府の言いなりにも、貴方方の都合のいい人間にもなるつもりはありませんから。お互いに利用し合えるものはし合って。助け合える部分は助け合っていきましょうよ。一応、お互いの狙いは同じなんですし……ね?」
軽い口調で話しているが、内容は結構ハードなもの。
それでも、最後まで重々しい雰囲気にならないよう、ウィンクして目交ぜすれば、彼女も、ようやく第一段階突破といった面持ちで、安堵の溜息をついた。
「あなた達。夏休みはいつから?」
「七月二十日っすよ!」
休みの日にちだけは絶対に忘れない大介が間髪入れずに答える。
「そう……約一カ月。今年は忘れられない熱い夏になりそうね」
目を細め、どこか遠い目をした彼女の呟きが酷く重く感じた。
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