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episode 12
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本郷さんと神崎さんとの話がつき、互いにやるべきことが決まると、早速行動に移る。
「よし。じゃぁ、タカシと荒川さん。頼んだよ!」
「ラジャー」
「私達が戻って来るまで、頼みましたよ」
軽く敬礼の真似をして颯爽と駆けだすタカシさんと、神妙な面持ちで本郷さんと神崎さん二人の顔を交互に見てから、鶴岡さんへ視線を向け、目だけで会話した後、その後を追う荒川さん。
彼らの背を見ながら、俺は何かを忘れているような。
奇妙な不安感を覚えていた。
《なんだ? 俺、何か重大なものを忘れていないか?》
建物の方に向かう二人の数十メートル先には、とっくの昔に砂埃は立ち消え、あちこちに手足や頭部らしき塊が散乱している。
爆発の威力が凄まじかったせいか、大量の血だまりだとか、大地が真っ赤に染まっているということは無い。
細かい部位が石ころのように転がっているものもあれば、何人もの人間に向かって投げられたのだから、あまり損傷を受けずに大きな図体を横たえたまま動かない者もいるようだ。
あの時はたしか、矢田さんが手榴弾を投げつけた一人と。
その後で建物からワラワラと七人も出て来たんだっけ?
それで、足をもつれさせ、転んだ矢田さんに群がって……そこに、広い範囲に破片が飛散するタイプの手榴弾を投げ込んだ。
たった一人に群がっていたハイエナどもは八人全員だったか?
群がってはいなかったにしろ、さほど離れた距離にいた奴はいなかった筈。
あの後、立ち上がったヤツは居なかった。
この胸のザワめきは一体何だ?
思い出せ!
「ちょっと。あれ……」
晴香さんが指差すのは、白い建物とプレハブのような造りの建物との間にある隙間。
人一人が通れる程度のその空間から何かがこちらの様子を伺っているように見える。
ここからでも、感知できる程の大きさなのだから、虫や鼠といった小さな生き物ではない。
「あぁっ!」
「どうしたっ?」
何か思い出したかのような俺の声に本郷さんが振り向く。
そうだ。
そうだよ。
俺は見たじゃないか。
大東モドキとタカシさん達が対峙している間、周辺に異常が無いか見渡している時に、建物の方で黒い影が動くのを、この目で見たじゃないか。
だが、あの時、俺が見たのは、あの場所だったか?
建物と建物の間を横切った影は、あんな隙間に隠れようとしていたというよりも、むしろ、建物のどれかに侵入したんじゃないのか?
俺は口早に本郷さんへ自分が見た不確かなものを簡単に説明すると、難しい顔をしたまま頷いた。
そして、再び視線を白い建物とプレハブ小屋の隙間へと移す。
場所が場所なだけに陰になっていて、そこにいるモノが何なのかはハッキリとは分からないが、良くないモノだというのは確かだろう。
俺達の場所からでは見えるものでも、タカシさん達の位置からでは気付かないようで、彼らは速度を変えず、真っ直ぐ白い建物に向かって歩いている。
「タカシィーッ! 前方左、斜度三十に矢場。建物内部にタマ!」
大声を上げる本郷さんの言葉に即座に反応しライフルを構える。
ところどころ、おかしな単語が入っているのは多分ではあるが彼らの中で決められた隠語のようなものだろう。
隙間にいる生き物も彼が発した言葉の意味が分からないのか、じっと様子を伺ったまま身動きしない。
だが俺は。
いいや、俺達全員が、重大な事を忘れていたが為に、恐るべき事態が起きた。
タカシさん達に迫っていた危険は、そんな離れた場所にいるモノではなかったのだ。
大地を伝う足音。
空気を震わせる声。
それらで測っていた距離。
ヤツは待っていたのだ。
『獲物』が自分のテリトリーに入って来るのを。
手榴弾の爆発が起きた場所の数メートル手前まできていたタカシさん達。
あちこちに飛び散っている人間の部位。
その中でも、大きめの塊。
多分、あの大きさから胴体部分だろう赤黒く染まった物体が、突然、タカシさん達目がけて飛んできた。
「よし。じゃぁ、タカシと荒川さん。頼んだよ!」
「ラジャー」
「私達が戻って来るまで、頼みましたよ」
軽く敬礼の真似をして颯爽と駆けだすタカシさんと、神妙な面持ちで本郷さんと神崎さん二人の顔を交互に見てから、鶴岡さんへ視線を向け、目だけで会話した後、その後を追う荒川さん。
彼らの背を見ながら、俺は何かを忘れているような。
奇妙な不安感を覚えていた。
《なんだ? 俺、何か重大なものを忘れていないか?》
建物の方に向かう二人の数十メートル先には、とっくの昔に砂埃は立ち消え、あちこちに手足や頭部らしき塊が散乱している。
爆発の威力が凄まじかったせいか、大量の血だまりだとか、大地が真っ赤に染まっているということは無い。
細かい部位が石ころのように転がっているものもあれば、何人もの人間に向かって投げられたのだから、あまり損傷を受けずに大きな図体を横たえたまま動かない者もいるようだ。
あの時はたしか、矢田さんが手榴弾を投げつけた一人と。
その後で建物からワラワラと七人も出て来たんだっけ?
それで、足をもつれさせ、転んだ矢田さんに群がって……そこに、広い範囲に破片が飛散するタイプの手榴弾を投げ込んだ。
たった一人に群がっていたハイエナどもは八人全員だったか?
群がってはいなかったにしろ、さほど離れた距離にいた奴はいなかった筈。
あの後、立ち上がったヤツは居なかった。
この胸のザワめきは一体何だ?
思い出せ!
「ちょっと。あれ……」
晴香さんが指差すのは、白い建物とプレハブのような造りの建物との間にある隙間。
人一人が通れる程度のその空間から何かがこちらの様子を伺っているように見える。
ここからでも、感知できる程の大きさなのだから、虫や鼠といった小さな生き物ではない。
「あぁっ!」
「どうしたっ?」
何か思い出したかのような俺の声に本郷さんが振り向く。
そうだ。
そうだよ。
俺は見たじゃないか。
大東モドキとタカシさん達が対峙している間、周辺に異常が無いか見渡している時に、建物の方で黒い影が動くのを、この目で見たじゃないか。
だが、あの時、俺が見たのは、あの場所だったか?
建物と建物の間を横切った影は、あんな隙間に隠れようとしていたというよりも、むしろ、建物のどれかに侵入したんじゃないのか?
俺は口早に本郷さんへ自分が見た不確かなものを簡単に説明すると、難しい顔をしたまま頷いた。
そして、再び視線を白い建物とプレハブ小屋の隙間へと移す。
場所が場所なだけに陰になっていて、そこにいるモノが何なのかはハッキリとは分からないが、良くないモノだというのは確かだろう。
俺達の場所からでは見えるものでも、タカシさん達の位置からでは気付かないようで、彼らは速度を変えず、真っ直ぐ白い建物に向かって歩いている。
「タカシィーッ! 前方左、斜度三十に矢場。建物内部にタマ!」
大声を上げる本郷さんの言葉に即座に反応しライフルを構える。
ところどころ、おかしな単語が入っているのは多分ではあるが彼らの中で決められた隠語のようなものだろう。
隙間にいる生き物も彼が発した言葉の意味が分からないのか、じっと様子を伺ったまま身動きしない。
だが俺は。
いいや、俺達全員が、重大な事を忘れていたが為に、恐るべき事態が起きた。
タカシさん達に迫っていた危険は、そんな離れた場所にいるモノではなかったのだ。
大地を伝う足音。
空気を震わせる声。
それらで測っていた距離。
ヤツは待っていたのだ。
『獲物』が自分のテリトリーに入って来るのを。
手榴弾の爆発が起きた場所の数メートル手前まできていたタカシさん達。
あちこちに飛び散っている人間の部位。
その中でも、大きめの塊。
多分、あの大きさから胴体部分だろう赤黒く染まった物体が、突然、タカシさん達目がけて飛んできた。
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