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episode 28
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「ちょっ! 一般人に向けて平気で発砲してくるなんて、イカれてるっ! 国防軍っていうのは、国民を守るもんじぇねぇのかっ」
柱の陰に身を隠し、通路を飛び交う銃弾にビビり、あっちもこっちも鳴り続ける銃声に耳を塞いで、驚きと、命の危険に晒されている恐怖心を怒鳴り声に変えた。
俺の傍には、祖父と中肉中背の中年男性が一緒にいる。
ここはまだ、第六ゲートを入って、一番最初の角を曲がる手前。
俺達よりも先に入った先発隊は、この角を曲がり切ったところで待ち受けていた研究所内で警護をしていた国防軍に射殺された。
後を追っていた俺は、勢いよく角を曲がろうとしたところで、柱の陰で身を潜めていた中年男に腕を引っ張られた。
転がるようにして、そこにいた祖父の胸にダイブしたところで、柱の角を弾が掠め、コンクリートの破片が飛ぶのを目にした俺は、言葉を失ったものの、落ち着きを取り戻していくにつれて、中年男に寸でのところで助けられたのだと理解すると同時に、国防軍への怒りが爆発し、前述に至ったわけである。
「国民じゃない。『国』を守るのが国防軍。わし達が今していることは、政府に対する反逆。昔の言葉を使って言えば、非国民ってことだ」
入ってすぐに足止めを喰らっているというのに、酷く落ち着いた様子の祖父は、一人憤っている俺の大きな独り言に答えてくれた。
柱の向こうを覗こうとしようとしていた俺は、まるでこうなることを予測していたかのような祖父の言葉に振り返る。
研究所内の仲間を助ける為に、反逆軍として自分に着いて来てくれている仲間を失ってしまっては意味が無い。
何かを得ようとすれば、何かを失うなどという哲学じみた話しは聞きたくはない。
彼らを犠牲にしてまで、研究所内の仲間を助け出すことに重きを置いているのは、祖父を含む、反逆軍の全員だ。
彼らは、自分の命すらも顧みずに向かって行く。
枉尺直尋(おうせきちょくじん)といった、大きな利益を得る為に小さな犠牲は厭わないといった考え方は好きではないが、国防軍が、お国の為の研究開発を妨害する俺達に対し、攻撃しているのと同じように、彼らがしていることも、また同じ。
研究所内にいる仲間の中で、彼らにとって、自分達の命を捨ててでも救出したい人物がいるのだと、俺でも分かってしまった。
これも大介が『蟻』の話を熱弁してくれたからだ。
働き蟻や兵隊蟻は女王を守る。
彼らが目指しているのは女王奪還、それだけだ。
結局は、見た目は記憶、ある程度の思考は人間のままだが、本質的な部分は脳を占領している寄生虫が占めているっていうことが、これでよく分かった。
研究所内に女王がいるとなると、島内で増加していった感染者達はどうやって増えたのかという疑問が残るが、その辺のところは俺が考えるようなことではない。
「じいちゃん達の目当ては、仲間というよりも女王だろ?」
試すような目をして祖父の顏を見つめる。
観念したような顏をして、口を開きかけたそのタイミングで、大きな爆音と、俺達の真横の通路に粉塵混じりの爆風が通って行った。
「うわっ!」
柱によって難を免れたものの、通路に出ていたらひとたまりもなかった。
「よし。ここから一端出て、階段へ向かうぞ」
中年男が、座り込んでいる俺の腕を取り、立ち上がらせる。
「え?」
さっきまで激しい銃撃戦が繰り広げられていた中を走るのかと思いきや、柱から顏を出すと、そこは薄暗く灰色に曇りがかった空気がどんよりと立ち込めているだけで、あれだけ沢山いた人影が一切見当たらない。
「今のうちに行きますよ」
何が出てくるかも分からない視界の悪い中を、この人は進もうというのか?
馬鹿なのか?
そんな風に思ったのも束の間。
祖父までもが、彼の意見に賛成し、さっさと柱の陰から通路に出て、一メートルどころか、数十センチ先すらも見えないような通路を、口元と鼻を腕で押さえながら進みだした。
「ちょっ! じいちゃん、危ないってば!」
慌てて祖父の背中を引っ張ろうとするも、「大丈夫です。さっき投げた爆弾の威力であれば、この通路にいた兵士達は皆、木っ端みじんですから」と、さりげなく恐ろしいことを言ってのける中年男性に阻まれ、ついでに背中を押されて祖父の後に続いていく羽目になった。
背後から照らされる強力なライト。
前方に何があるかは分からないが、その光のお陰で、目の前にいる祖父の影を頼りに進んでいける。
足元に転がっている瓦礫の破片に躓きそうになりつつも、一歩一歩足を踏み出すの躊躇したくなるのは、時々踏みつける、ヌルリとしたものや、微妙に柔らかい感触を靴裏からでも感じ取れる何か。
頭の芯の部分ではそれが何かを分かっているのだが、この状況下では目で確認出来ない分、自分自身を誤魔化せる。
火薬と塵の匂い、そして、興奮と緊張感のお陰で、飛行場で嗅いだ、あの独特の臭いも鼻腔を刺激しない点も助かる。
あぁ。
それでか。
俺の背後を守るようについて来てくれる彼が、「今のうち」と言ったのは。
視界が悪い中を進むのは、敵にとってもリスクが高い。
もし、敵兵が生き残っていても、彼らは視界が良くなるまで待つだろうことを見越して、敢えて、リスクを冒してまで通路を進む選択をしたのかと思ったがそうではない。
俺に惨状を見せない為でもあったんだ。
それに気が付いた今、無償に後ろにいるムサっ苦しいオッサンと固い握手を交わしたい(抱きつくのには、ちょっと抵抗がある)と思ったが、それよりも先にやるべきことをやらなくては。
なるべく、下にあるモノを気にしないようにして、足を進めていくと、祖父がピタリと足を止めた。
「どうし……」
口を開いた瞬間に口を押さえ付けられる俺。
どうやらT字になっている場所の手前まで来たようだ。
いつの間にかライトも消され、ボロボロになった壁に身体を押し付けられる。
「いいか。やけに静かなのが気になるが、左に曲がるとすぐに階段が見える筈だ。そこまで全力で駆け抜けるんだ」
小さな声で指示を出す祖父に、口元を手で押さえられたままの格好で頷く。
「岡島。お前は地下へ。地下二階には、まだ実験前の島民達が監禁されている。あそこのドアであれば、お前の作ったプラスチック爆弾でも破壊出来る」
「しかし、それよりも所長室に行けば、全てのロックを解除出来るのでは?」
「もしも、そこまで辿り着けなかったらどうする?」
「それは……」
「研究員や、観察段階の者達の解放は、他のルートの管轄。わし達の受け持った場所の中で、一番確実に、しかも早く解放出来るのは一般島民だ」
自分の反論を認めない祖父に対し、不満げな表情をする岡島に、祖父はもう一言付け加えた。
「何もされていない、何の能力も持たない弱い者から救ってやる。それが強い者の役目だろ」
この言葉を聞き、岡島さんの表情が変わった。
「そうですね。でも、上田リーダー。我々のQUEENだけは、必ず。必ず頼みましたよ」
小声ではあるものの、その言葉にはかなりの信念が込められていた。
それは、QUEENの存在がどれだけ大切なのかを改めて感じさせると共に、彼の「仲間」への想いと正義感がありありと表れているように感じた。
柱の陰に身を隠し、通路を飛び交う銃弾にビビり、あっちもこっちも鳴り続ける銃声に耳を塞いで、驚きと、命の危険に晒されている恐怖心を怒鳴り声に変えた。
俺の傍には、祖父と中肉中背の中年男性が一緒にいる。
ここはまだ、第六ゲートを入って、一番最初の角を曲がる手前。
俺達よりも先に入った先発隊は、この角を曲がり切ったところで待ち受けていた研究所内で警護をしていた国防軍に射殺された。
後を追っていた俺は、勢いよく角を曲がろうとしたところで、柱の陰で身を潜めていた中年男に腕を引っ張られた。
転がるようにして、そこにいた祖父の胸にダイブしたところで、柱の角を弾が掠め、コンクリートの破片が飛ぶのを目にした俺は、言葉を失ったものの、落ち着きを取り戻していくにつれて、中年男に寸でのところで助けられたのだと理解すると同時に、国防軍への怒りが爆発し、前述に至ったわけである。
「国民じゃない。『国』を守るのが国防軍。わし達が今していることは、政府に対する反逆。昔の言葉を使って言えば、非国民ってことだ」
入ってすぐに足止めを喰らっているというのに、酷く落ち着いた様子の祖父は、一人憤っている俺の大きな独り言に答えてくれた。
柱の向こうを覗こうとしようとしていた俺は、まるでこうなることを予測していたかのような祖父の言葉に振り返る。
研究所内の仲間を助ける為に、反逆軍として自分に着いて来てくれている仲間を失ってしまっては意味が無い。
何かを得ようとすれば、何かを失うなどという哲学じみた話しは聞きたくはない。
彼らを犠牲にしてまで、研究所内の仲間を助け出すことに重きを置いているのは、祖父を含む、反逆軍の全員だ。
彼らは、自分の命すらも顧みずに向かって行く。
枉尺直尋(おうせきちょくじん)といった、大きな利益を得る為に小さな犠牲は厭わないといった考え方は好きではないが、国防軍が、お国の為の研究開発を妨害する俺達に対し、攻撃しているのと同じように、彼らがしていることも、また同じ。
研究所内にいる仲間の中で、彼らにとって、自分達の命を捨ててでも救出したい人物がいるのだと、俺でも分かってしまった。
これも大介が『蟻』の話を熱弁してくれたからだ。
働き蟻や兵隊蟻は女王を守る。
彼らが目指しているのは女王奪還、それだけだ。
結局は、見た目は記憶、ある程度の思考は人間のままだが、本質的な部分は脳を占領している寄生虫が占めているっていうことが、これでよく分かった。
研究所内に女王がいるとなると、島内で増加していった感染者達はどうやって増えたのかという疑問が残るが、その辺のところは俺が考えるようなことではない。
「じいちゃん達の目当ては、仲間というよりも女王だろ?」
試すような目をして祖父の顏を見つめる。
観念したような顏をして、口を開きかけたそのタイミングで、大きな爆音と、俺達の真横の通路に粉塵混じりの爆風が通って行った。
「うわっ!」
柱によって難を免れたものの、通路に出ていたらひとたまりもなかった。
「よし。ここから一端出て、階段へ向かうぞ」
中年男が、座り込んでいる俺の腕を取り、立ち上がらせる。
「え?」
さっきまで激しい銃撃戦が繰り広げられていた中を走るのかと思いきや、柱から顏を出すと、そこは薄暗く灰色に曇りがかった空気がどんよりと立ち込めているだけで、あれだけ沢山いた人影が一切見当たらない。
「今のうちに行きますよ」
何が出てくるかも分からない視界の悪い中を、この人は進もうというのか?
馬鹿なのか?
そんな風に思ったのも束の間。
祖父までもが、彼の意見に賛成し、さっさと柱の陰から通路に出て、一メートルどころか、数十センチ先すらも見えないような通路を、口元と鼻を腕で押さえながら進みだした。
「ちょっ! じいちゃん、危ないってば!」
慌てて祖父の背中を引っ張ろうとするも、「大丈夫です。さっき投げた爆弾の威力であれば、この通路にいた兵士達は皆、木っ端みじんですから」と、さりげなく恐ろしいことを言ってのける中年男性に阻まれ、ついでに背中を押されて祖父の後に続いていく羽目になった。
背後から照らされる強力なライト。
前方に何があるかは分からないが、その光のお陰で、目の前にいる祖父の影を頼りに進んでいける。
足元に転がっている瓦礫の破片に躓きそうになりつつも、一歩一歩足を踏み出すの躊躇したくなるのは、時々踏みつける、ヌルリとしたものや、微妙に柔らかい感触を靴裏からでも感じ取れる何か。
頭の芯の部分ではそれが何かを分かっているのだが、この状況下では目で確認出来ない分、自分自身を誤魔化せる。
火薬と塵の匂い、そして、興奮と緊張感のお陰で、飛行場で嗅いだ、あの独特の臭いも鼻腔を刺激しない点も助かる。
あぁ。
それでか。
俺の背後を守るようについて来てくれる彼が、「今のうち」と言ったのは。
視界が悪い中を進むのは、敵にとってもリスクが高い。
もし、敵兵が生き残っていても、彼らは視界が良くなるまで待つだろうことを見越して、敢えて、リスクを冒してまで通路を進む選択をしたのかと思ったがそうではない。
俺に惨状を見せない為でもあったんだ。
それに気が付いた今、無償に後ろにいるムサっ苦しいオッサンと固い握手を交わしたい(抱きつくのには、ちょっと抵抗がある)と思ったが、それよりも先にやるべきことをやらなくては。
なるべく、下にあるモノを気にしないようにして、足を進めていくと、祖父がピタリと足を止めた。
「どうし……」
口を開いた瞬間に口を押さえ付けられる俺。
どうやらT字になっている場所の手前まで来たようだ。
いつの間にかライトも消され、ボロボロになった壁に身体を押し付けられる。
「いいか。やけに静かなのが気になるが、左に曲がるとすぐに階段が見える筈だ。そこまで全力で駆け抜けるんだ」
小さな声で指示を出す祖父に、口元を手で押さえられたままの格好で頷く。
「岡島。お前は地下へ。地下二階には、まだ実験前の島民達が監禁されている。あそこのドアであれば、お前の作ったプラスチック爆弾でも破壊出来る」
「しかし、それよりも所長室に行けば、全てのロックを解除出来るのでは?」
「もしも、そこまで辿り着けなかったらどうする?」
「それは……」
「研究員や、観察段階の者達の解放は、他のルートの管轄。わし達の受け持った場所の中で、一番確実に、しかも早く解放出来るのは一般島民だ」
自分の反論を認めない祖父に対し、不満げな表情をする岡島に、祖父はもう一言付け加えた。
「何もされていない、何の能力も持たない弱い者から救ってやる。それが強い者の役目だろ」
この言葉を聞き、岡島さんの表情が変わった。
「そうですね。でも、上田リーダー。我々のQUEENだけは、必ず。必ず頼みましたよ」
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