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身体
第七話【綺麗な爪】
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俺の住んでいるアパートの近くに、落ち着いた雰囲気で珈琲の美味いカフェがある。
住宅街の奥まった所にあるこのカフェは、知る人ぞ知るといった店で、どちらかというとお客も、年輩の紳士や淑女といった常連の方々が殆どだった。
だから俺みたいな二十代前半の若い男が、一人でゆっくり読書をしながら、まったりとした時間を過ごすのにも心地いい場所なんだ。
ただ、最近。
俺と同じくらいの若い女性を、よく見かけるようになったんだ。
いつも俺は店の奥のテーブルが定位置になっていて、その女性は丁度、柱の影になる中央のテーブルに座るもんだから、どんな雰囲気の人なのかはよく分らないけれど。
ただ、黒くまっすぐな長い髪と、毎回、綺麗にネイルされている形の整った爪が印象的で。
きっと美しい人なんだろうなぁって、どこかその彼女の容姿を想像することも、俺の楽しみになっていたんだ。
ある日。
その日はたまたま、奥のテーブルに見た事のないカップルが座っていて。
マスターが申し訳なさそうに、「新規のお客様で……」と頭を下げるものだから、たまには日当たりのいい窓際もいいかと思い、そちらのテーブルに着いたんだ。
温かい日差しに、心地よいジャズの音。
穏やかな時間がそこには流れていたんだ。
そこに例の彼女がやって来た。
今日は柱が邪魔する事もなく、彼女の姿が全て見える位置ではあるものの。
不躾な視線を送るのも失礼だと思い、コッソリと目を向けると、自分の位置からでは彼女の顔を見る事は出来なかったが、やはり、長く綺麗な髪とスレンダーな体型。
そして、ほっそりスラっとした指には、鮮やかなネイルが施されていた。
これほど身嗜みに気を遣っている女性も中々珍しい……と思い、思わず見惚れていると、彼女の元に珈琲が運ばれてきたんだ。
すると彼女は、自分のバッグからシガレットケースみたいな物を出して。
あぁ。
勿論、このお店は禁煙。
珈琲の香りと味を台無しにしてしまうからね。
その事は、常連になりつつある彼女であれば分かっている筈なのに、『どういう事だ?』と、さっきまで見惚れていた癖に、一気に憤りを覚えて。
この後の行動次第では、マスターに代わって注意してやろうといらぬ正義感が湧きだした。
ジッと見ていると、そのケースからは煙草ではなく、何か飴のようなラムネのような。
もしくは、フリスクのような。
俺の位置からでは、何を出しているのか分らないけれど、その得体の知れない物を自分の口に含んだんだ。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
そしてまた、新たにケースから取り出し、口に放り込む。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
その、何とも形容しがたい噛み砕く音と咀嚼音が耳につく。
第一、ここは、カフェだ。
そんな所に、自分が持ってきたお菓子を……あぁ。
でも、フリスクや飴くらいは皆、やっていることか。
そう思って気にせず、いつものように読書と珈琲を堪能しようと、視線を本に落としたものの、一度気になった音は、気にしないようにしていても耳につくもので。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
いつまでも鳴りやまないその音に、いい加減頭に来て注意しに行ったんだ。
「すみません。少し、その、“お菓子”食べるのやめて貰えませんか?」
彼女の目の前に立った瞬間、思わず金縛りにあったかのように、あまりの怖さに立ち尽くしたね。
人間。
あまりに信じられないような出来事が目の前で起こると、悲鳴すら上げられなくなるんだなって、初めて知ったよ。
その彼女……
長い髪で、顔は見えなかったんだけど、彼女の食べてた物がさ……
そのケースに入ってたものがさ。
色とりどりの、様々な形をした【爪】だったんだよ。
で、俺が固まったまま。
彼女の前に俺が立っている事すら、彼女は気が付かなくて。
声を掛けられているっていうのにもかかわらず、俺の存在なんて無視で。
一心不乱に爪を
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
って食べてんの。
で、珈琲カップに手をのばしたと思ったら……
カツンッ!
取っ手部分に、彼女の人差し指の綺麗な爪が当たったかと思ったら、その爪が、パリンって、飛んできてさ。
付け爪だったんだ……って思って、彼女の手を見たら……
ひとさし指には爪が無くてさぁ。
剥き出しの肉が……赤いような、ピンクいような。
ぶにょぶにょした肉が見えてさ。
思わず、吐き気が込み上げて来たかと思ったら、いきなり『バッ!』と、彼女が俺の方を見たんだよ。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
口の咀嚼だけは止めずに、ゲッソリとやつれてて。
落ち窪んだ目には、生気が一切宿っていなかった。
あまりにも狂気じみた出来事に驚かない人間はいないだろ?
「うわぁぁぁぁぁ!」と、腰を抜かしたら、マスターも、奥に座っていたカップルも、慌てて俺の近くに寄って来てくれて。
俺が、「あ……あの……あの女!」と指を指すと、皆、一様に首を傾げるんだ。
“え?”と思い、いつも彼女が座る席を見てみると、誰もいない。
不思議に思ってマスターに、「いつも、あの席に座っている女性は?」と聞くと、「そのような方は、今まで来られた事も、見た事すらもございませんが……」と言う。
皆から薄気味悪がれて、その場にいられなくなった俺は、さっさと会計を済ませて、その店から逃げ出したんだ。
正直。
あの女の正体が何だったのか、未だに分らないが、あの顔は間違いなく病的な顔だった。
よく、タンパク質不足で鬱病になり、自分の爪を噛んでしまう人がいるとは聞いた事があるが、もしかしたら彼女も、そんなタンパク質不足からなのか、ストレスからなのか、爪を噛むようになってしまったのかもしれない。
それが、徐々に爪を食べるように発展して……そして……最後には自殺……
うわ!
まさかなぁ……それで、幽霊って。
じゃぁなんで、あんな昼間っから、あの店にいるんだよって話だし。
しかも、なんで、俺にしか見えなかったのかって話なんだけど。
俺も、実は前々から、爪を噛む癖があるんだ。
過度のストレスからだと、医者は言っているけれど、自分の爪を噛んで噛んで食べて食べて。
一本爪を根元から引き千切って、痛くて仕方なくても、その爪を食べたくても仕方がないくらい食べたくて。
だから、あの女の幽霊と、どこかしらリンクする所があったのかもなぁって、思ってたりするんだよ。
ま、冷静に考えたら、自分のおかしな行動を、理解してくれる人を求めていたんじゃないかってさ。
ん?
あぁ。
俺の方の話?
何の話だっけ……あぁ、そうそう。
その、爪を食べる癖ね。
あまりに、おかしい行動だっていうことと、やっぱりこのままだと爪云々よりも、爪を剥がした部分から、ばい菌や細菌が入って化膿や下手したら壊死しかねないって事で、指に包帯を巻いたり、ゴムサックみたいな物をつけたりして防止してたんだけどさ。
考えてみたら、自分の爪じゃなくてもいいんじゃないかって、ある時気が付いて。
綺麗な爪を見ると、無償に食べたくなってさ。
思わず、指ごとしゃぶっちゃったり、ペンチで剥いちゃったりするんだよね。
あまりにギャーギャー泣き喚く子もいたけれど、そんな時でも、いつの間にか静かになってたなぁ……
ま、爪なんて、生えて来るし。
減るもんじゃないもんな。
おい!
どうした?
そんな、青い顔をして。
え?
最近、この近辺で女性の行方不明者が多いって?
え?
そうなのか?
は?
俺が何だって?
何言ってるんだよ。
そんな訳ないだろ。
幽霊にだって怯える俺だぞ!
そんな事無理に決まって……それよりも。
お前。
綺麗な爪してたんだな。
しゃぶりたい程、綺麗な爪。
食べちゃいたいくらい、魅力的な爪……なんだな。
住宅街の奥まった所にあるこのカフェは、知る人ぞ知るといった店で、どちらかというとお客も、年輩の紳士や淑女といった常連の方々が殆どだった。
だから俺みたいな二十代前半の若い男が、一人でゆっくり読書をしながら、まったりとした時間を過ごすのにも心地いい場所なんだ。
ただ、最近。
俺と同じくらいの若い女性を、よく見かけるようになったんだ。
いつも俺は店の奥のテーブルが定位置になっていて、その女性は丁度、柱の影になる中央のテーブルに座るもんだから、どんな雰囲気の人なのかはよく分らないけれど。
ただ、黒くまっすぐな長い髪と、毎回、綺麗にネイルされている形の整った爪が印象的で。
きっと美しい人なんだろうなぁって、どこかその彼女の容姿を想像することも、俺の楽しみになっていたんだ。
ある日。
その日はたまたま、奥のテーブルに見た事のないカップルが座っていて。
マスターが申し訳なさそうに、「新規のお客様で……」と頭を下げるものだから、たまには日当たりのいい窓際もいいかと思い、そちらのテーブルに着いたんだ。
温かい日差しに、心地よいジャズの音。
穏やかな時間がそこには流れていたんだ。
そこに例の彼女がやって来た。
今日は柱が邪魔する事もなく、彼女の姿が全て見える位置ではあるものの。
不躾な視線を送るのも失礼だと思い、コッソリと目を向けると、自分の位置からでは彼女の顔を見る事は出来なかったが、やはり、長く綺麗な髪とスレンダーな体型。
そして、ほっそりスラっとした指には、鮮やかなネイルが施されていた。
これほど身嗜みに気を遣っている女性も中々珍しい……と思い、思わず見惚れていると、彼女の元に珈琲が運ばれてきたんだ。
すると彼女は、自分のバッグからシガレットケースみたいな物を出して。
あぁ。
勿論、このお店は禁煙。
珈琲の香りと味を台無しにしてしまうからね。
その事は、常連になりつつある彼女であれば分かっている筈なのに、『どういう事だ?』と、さっきまで見惚れていた癖に、一気に憤りを覚えて。
この後の行動次第では、マスターに代わって注意してやろうといらぬ正義感が湧きだした。
ジッと見ていると、そのケースからは煙草ではなく、何か飴のようなラムネのような。
もしくは、フリスクのような。
俺の位置からでは、何を出しているのか分らないけれど、その得体の知れない物を自分の口に含んだんだ。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
そしてまた、新たにケースから取り出し、口に放り込む。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
その、何とも形容しがたい噛み砕く音と咀嚼音が耳につく。
第一、ここは、カフェだ。
そんな所に、自分が持ってきたお菓子を……あぁ。
でも、フリスクや飴くらいは皆、やっていることか。
そう思って気にせず、いつものように読書と珈琲を堪能しようと、視線を本に落としたものの、一度気になった音は、気にしないようにしていても耳につくもので。
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ
くちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃくちゃ
いつまでも鳴りやまないその音に、いい加減頭に来て注意しに行ったんだ。
「すみません。少し、その、“お菓子”食べるのやめて貰えませんか?」
彼女の目の前に立った瞬間、思わず金縛りにあったかのように、あまりの怖さに立ち尽くしたね。
人間。
あまりに信じられないような出来事が目の前で起こると、悲鳴すら上げられなくなるんだなって、初めて知ったよ。
その彼女……
長い髪で、顔は見えなかったんだけど、彼女の食べてた物がさ……
そのケースに入ってたものがさ。
色とりどりの、様々な形をした【爪】だったんだよ。
で、俺が固まったまま。
彼女の前に俺が立っている事すら、彼女は気が付かなくて。
声を掛けられているっていうのにもかかわらず、俺の存在なんて無視で。
一心不乱に爪を
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で、珈琲カップに手をのばしたと思ったら……
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取っ手部分に、彼女の人差し指の綺麗な爪が当たったかと思ったら、その爪が、パリンって、飛んできてさ。
付け爪だったんだ……って思って、彼女の手を見たら……
ひとさし指には爪が無くてさぁ。
剥き出しの肉が……赤いような、ピンクいような。
ぶにょぶにょした肉が見えてさ。
思わず、吐き気が込み上げて来たかと思ったら、いきなり『バッ!』と、彼女が俺の方を見たんだよ。
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口の咀嚼だけは止めずに、ゲッソリとやつれてて。
落ち窪んだ目には、生気が一切宿っていなかった。
あまりにも狂気じみた出来事に驚かない人間はいないだろ?
「うわぁぁぁぁぁ!」と、腰を抜かしたら、マスターも、奥に座っていたカップルも、慌てて俺の近くに寄って来てくれて。
俺が、「あ……あの……あの女!」と指を指すと、皆、一様に首を傾げるんだ。
“え?”と思い、いつも彼女が座る席を見てみると、誰もいない。
不思議に思ってマスターに、「いつも、あの席に座っている女性は?」と聞くと、「そのような方は、今まで来られた事も、見た事すらもございませんが……」と言う。
皆から薄気味悪がれて、その場にいられなくなった俺は、さっさと会計を済ませて、その店から逃げ出したんだ。
正直。
あの女の正体が何だったのか、未だに分らないが、あの顔は間違いなく病的な顔だった。
よく、タンパク質不足で鬱病になり、自分の爪を噛んでしまう人がいるとは聞いた事があるが、もしかしたら彼女も、そんなタンパク質不足からなのか、ストレスからなのか、爪を噛むようになってしまったのかもしれない。
それが、徐々に爪を食べるように発展して……そして……最後には自殺……
うわ!
まさかなぁ……それで、幽霊って。
じゃぁなんで、あんな昼間っから、あの店にいるんだよって話だし。
しかも、なんで、俺にしか見えなかったのかって話なんだけど。
俺も、実は前々から、爪を噛む癖があるんだ。
過度のストレスからだと、医者は言っているけれど、自分の爪を噛んで噛んで食べて食べて。
一本爪を根元から引き千切って、痛くて仕方なくても、その爪を食べたくても仕方がないくらい食べたくて。
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ま、冷静に考えたら、自分のおかしな行動を、理解してくれる人を求めていたんじゃないかってさ。
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あぁ。
俺の方の話?
何の話だっけ……あぁ、そうそう。
その、爪を食べる癖ね。
あまりに、おかしい行動だっていうことと、やっぱりこのままだと爪云々よりも、爪を剥がした部分から、ばい菌や細菌が入って化膿や下手したら壊死しかねないって事で、指に包帯を巻いたり、ゴムサックみたいな物をつけたりして防止してたんだけどさ。
考えてみたら、自分の爪じゃなくてもいいんじゃないかって、ある時気が付いて。
綺麗な爪を見ると、無償に食べたくなってさ。
思わず、指ごとしゃぶっちゃったり、ペンチで剥いちゃったりするんだよね。
あまりにギャーギャー泣き喚く子もいたけれど、そんな時でも、いつの間にか静かになってたなぁ……
ま、爪なんて、生えて来るし。
減るもんじゃないもんな。
おい!
どうした?
そんな、青い顔をして。
え?
最近、この近辺で女性の行方不明者が多いって?
え?
そうなのか?
は?
俺が何だって?
何言ってるんだよ。
そんな訳ないだろ。
幽霊にだって怯える俺だぞ!
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