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第一章
幸せを呼ぶもの
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※※※
驚かせてごめんなさい。きっと心配しているわね。貴方はいつも、私のことを気にかけてくれたから。私自身驚いているの。まさか、こんなことになるなんて。事の顛末を聞いたのはつい先ほどで、急ぎ手紙を書くためペンを手に取ったけれど、何から書いていいのか。
最初に言っておくべきね。私は元気よ。怪我一つないわ。アルフレッドも同じ、今船に乗り、無事に港を出たところよ。
何から何まで、大公殿下が手配してくれていて、怪しまれることなく検問も通過できたわ。使用人の中に北部の者がいて、私達をあの崖へと誘導したの。そこで大公殿下の部下が待っていたわ。殺されるかと思ったけれど、アルフレッドが大丈夫だというから馬車を下りたの。彼らは馬車を崖から落として、事故に見えるように色々細工をしていたわ。
私達は移動して、馬に乗ったり荷物に紛れ込んだり、とにかく大冒険をして港まで逃げられたの。もちろん、船も用意されていて、無事に乗ることができたわ。貴方と離れて、いつもどれほど守られていたのか実感しているわ。私は何も見えていなかった。自分勝手に貴方を巻き込んでしまったこと、後悔しているわ。本当にごめんなさい。そして、今まで本当にありがとう。この手紙が届く頃、私は泥だらけになって頑張っていると思う。
アルフレッドの親類が営む農場で働く予定なの。落ち着いたらまた手紙を送るわ。送り先は北部になるのね。ステファン、大公殿下によほど気に入られたみたいね。貴方の幸せを願っているわ。
アナスタシア
※※※
ガタガタと揺れる車輪の音を聞きながら、ステファンはそっと手紙を閉じた。
何回か読んで、やっと現実だと分かり、そしてまた読み返している。
何度も見てきたから分かる。間違いなくアナスタシアの字だ。
絶望的だと思っていたアナスタシアが、無事でいてくれたことが何より嬉しい。なぜ逃げた先にリュシアンの手の者が待ち構えていたのか、リュシアンに聞いてもはぐらかされてしまった。
分からないことだらけだ。
皇帝からのリュシアンの秘密を探れと命令され、新たな問題が出てきてしまった。
ステファンは手持ち無沙汰に、手紙を上着のポケットに入れたり出したりを繰り返す。少しも心が落ち着かない。
馬車に一人で乗っているという状況も、またそれに拍車をかけた。
まだ夜も開け切らぬうちに、リュシアンと北部騎士の一行は、アドラー公国へ戻るため離宮を出発した。ステファンはアドラー家の所属となり、北部へ向かうことになった。だが、それがどうもおかしいのだ。
豪奢な馬車の中に一人で乗せられ、寒くなるからと膝掛けまで用意された。窓から外を見ると、北部の騎士達が隊列を組み、精悍な顔つきで馬に乗っている。
そしてその中心、堂々たる姿で指揮をとっているのがリュシアンだ。男から見ても惚れ惚れするほどカッコよく思ってしまうのだが、そういう話ではない。
騎士としての腕を見込んでくれたと聞いていたのに、お客様状態で馬車に乗せられたのだ。どういう取り決めでここに入れられたのか、サッパリ分からない。本来なら自分も馬に乗り、あの集団に加わっているはずだ。それともまだ、北部の人間には騎士として認められていないのだろうか。
「ステファン、乗り心地はどうだ?」
ぼんやり考えていたら、いつの間にか窓の近くへ来ていたリュシアンに声をかけられる。
「振動も少なくて、すごく快適です。こんな豪華な馬車に乗れるなんて、まるで私が姫にでもなったような気分に……」
「はははっ、その通りじゃないか。ゆっくり休んでくれ」
上品な顔に似合わない豪快な笑い方をしたリュシアンは、魅惑的に微笑んだ後、隊列に戻っていった。また一人だけの時間となった馬車の中で、ステファンは首を傾げる。
「ん? その通りとは……どういうことだ?」
せめて話し相手がほしい。長椅子の端に座ったステファンは小さく縮こまった。
二週間と少し、馬車に揺られ続け、ようやく北部領との境までたどり着いた。今は魔獣が出る時期ではないらしいのだが、もしものことを考えて最短で移動する必要があった。
これでも、北部人にしか知られていない近道を通って来たので、時間が短縮されているらしい。
ステファンは、本当にずっとお客様扱いをされるので、人形のようにただ座って過ごしていた。
さすがにこんなに長い時間、置物のようになっていてはおかしくなってしまう。休憩のため立ち寄った湖の近くで馬車を下り、リュシアンを探す。すると木の側で腰を下ろしている騎士達の中から、ギルバートが出てきた。相変わらず誰よりも大きいので、息を呑んで見上げてしまう。
「ギルバートさん」
「ステファン様、今軽食をお持ちしようかと……」
「食事は大丈夫です。それより、大公殿下はどちらへ?」
「あの……今はその……」
「天幕のあの向こうですね?」
「ステファン様、お、お待ちを……」
「今日という今日は話があるのです! いくらなんでも、騎士が馬に乗らず移動など、私の騎士道精神、志に反します。体がおかしくなります!」
リュシアンは移動中忙しくしているので、ろくに話す時間がなかった。太い木の間に張られた布をバサリと捲り、ステファンは勇んで顔を上げる。
「リュシアン様、話があ……」
「ああ、ステファン。どうした? 何かあったのか?」
ニコリと微笑を浮かべるリュシアンは全裸だった。
かろうじて大事な部分は、手に持っている布で隠れているが、がっしりとした体、綺麗に割れた腹筋、日焼けを知らない白い肌、胸元の赤い蕾、全てが目に飛び込んできた。
「あ…………あ……あ……あの……」
「汗をかいたから湖で流してきた。ステファンもどうだ?」
「わ……わわ私は……けけ結構で……」
動揺して上手く口が回らない。さっきまで言ってやると意気込んでいたのに、全て頭から抜けてしまった。
「遠慮するな。俺とお前の仲だろう?」
主君と騎士の仲で遠慮しかないだろうと、ステファンは頭の中でツッコむ。とにかくこれ以上見てはいけないと、リュシアンに背中を向ける。
「何か、用があったのではないのか?」
「え? あ、そうですね。か、体が鈍っておりまして、運動の許可をいただきたいと……」
馬車ではなく馬に乗りたいと訴えるはずが、混乱して頭に浮かんだことを口にしてしまう。ただ体を動かしたいだけの話になってしまった。
「そうだな。やるか」
妙に明るいリュシアンの声を聞いて、ステファンの心臓はドキッと揺れる。恐る恐る振り返ると、いつの間に着替えたのか、服を纏ったリュシアンが立っていた。シンプルなシャツとパンツで、ここまで美しく着こなせるのかと、ため息を漏らしそうになる。
「ここでは狭いから、あちらに行こう」
耳元で囁かれ、心臓が飛び跳ねる。息のかかったところが熱くなり、何も考えられない。
「あ、あの……何を……」
先に垂れ下がった布の向こうへ行ったリュシアンを追いかけると、何かを投げられ、思わず手で受け止める。
それは剣だった。
「ステファンと手合わせしたかったんだ。誘ってくれて嬉しいよ」
リュシアンはやる気満々で屈伸運動をして、ギルバートが持ってきた剣を手に取る。カルシフではなく、練習用のシンプルな剣だった。
リュシアンの動きは、まるでダンスでも踊るみたいに姿勢正しく、構えまで優雅に堂々としている。なぜかよく分からないが、剣を交えることになり、今度は緊張で体が硬くなる。
騒ぎを聞きつけたのか、わらわらと北部の騎士達が集まってきた。見物のため、あっという間に周囲を囲んだ。
リュシアンのような相手には、下手な小細工などせず、真正面からぶつかるのが正解だろう。ステファンは自分へ冷静になれと言い聞かし、頭を切り替えた。
「こちらから、行かせていただきます」
先手必勝、ステファンは得意の俊足を活かし、リュシアンの懐に潜り込む。そのまま剣を下ろしたが、剣で弾き返される。かなりの重い一撃に、手が痺れてしまう。
勝てるはずのない相手だ。圧倒的な実力差を前にし、胸に迫り上がってきたのは、楽しいという気持ちだった。
ステファンは再び間合いを詰め、リュシアンに向かい剣を振る。簡単に避けられたが、食らいついていく。リュシアンは余裕の表情で避けるので、見ていてもっと楽しくなってきた。
どうにか、一撃だけでも与えたい。
腹を狙っても防がれ、足を狙っても払われる。それならばと後ろに回り込むが、少しも乱れなく攻撃を弾かれてしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「息が切れているな。どうした? そろそろやめるか?」
「まだです」
汗を拭ったステファンは、再び剣を構えた。どうにかならないかと動きを頭の中で考える。
「いい顔だ。活き活きしているな」
「はい。全然ダメですが、リュシアン様との手合わせは新鮮で……とても楽しいです」
興奮し、取り繕うことも忘れ、ステファンは心から嬉しい気持ちになり笑った。ずっと作り笑顔ばかり浮かべていたので、すっかり忘れていたが、素直に純粋な笑顔が溢れた。
それを見たリュシアンは急にぼんやりした表情になり、先ほどまでの気迫が消えてしまう。どうしたのだろうと思いながらも、チャンスであるため、ステファンは手に力を込める。
リュシアンが瞬きした時、ステファンは両手で剣を振り上げ、残りの力を全て込めて飛び上がった。
いける!
そう思った瞬間、リュシアンは振り下ろしたステファンの腕を掴んだ。物凄い力で引き寄せられ、投げられると思ったステファンだったが、次の瞬間、ガッシリとした力で受け止められる。
「え…………」
カランカランと音を立てて、ステファンの持っていた剣が地面に落ちる。気がつくと、なぜかステファンは、リュシアンに抱き止められて、そのまま腕の中に収まっていた。
「あ、あの……大公殿下?」
地面に足がついておらず、泳いでいる。持ち上げられたまま、どうしていいのか分からず混乱してしまう。
見ると、周囲を囲み声援を上げていた騎士達が、さぁ終わったとばかりに、持ち場へ戻っていく。こんな状態で、置いて行かないでくれと叫びたい気分だ。
「わ、わかりました。降参です。私の負けですから、もう離してください」
こんな勝ち方があるのだろうかと思ったが、北部流なのかもしれないと無理やり納得する。仕方なく、リュシアンの背中を叩くと、ようやく下ろしてもらえた。
「すまない。あまりにも可愛くてつい……」
「はい!?」
確かにリュシアンの剣に比べたら、自分など子供のようなものだと思った。遊びに付き合ってくれた気分なのだろうと、ステファンは悔しくなり唇を噛む。
「……戻ります」
「ああ、疲れたら横になってくれ。毛布も用意させよう」
手加減されてちょっと怒っているつもりだったが、リュシアンは気づかないようで、甲斐甲斐しく世話を申し出てくる。もう面倒になったステファンは、大人しく馬車に乗り込んだ。
「くっ……しばらく動いていなかったからだ。きちんと訓練していれば、あそこでいけたはず……」
悔しさで悶々としながら馬車に揺られていたら、いつの間にか眠っていた。認めたくないが、毛布が気持ちよくて、これ以上ないくらいぐっすりとよく寝てしまった。
どのくらい経ったのだろうか。
馬車が大きく揺れ、ステファンは目を覚ました。
空は明るくなっており、夜通し走り続けたのだとわかった。目を擦りながらムクリと起き上がったステファンは、軽くあくびをする。
賑やかな音が聞こえてきて、馬車の扉を開けた。
「わ……すごいな……」
見渡す限り一面雪景色だった。
外へ出たステファンは、雪を踏み締めて近くを歩いてみる。足の裏に伝わる感覚が楽しい。
キラキラと輝く白銀世界だ。見上げると、雪を纏ったアドラー大公城が空高く聳え立っていた。思わず漏らしたため息が白く広がった時、ドンと背中を押される。
荷物運びのためたくさんの兵士が出てきて、荷を下ろして運んでいた。ステファンが木箱の端に当たったのは、橋のど真ん中に立っていたからだ。ここにいては邪魔だなと思ったステファンは、近くの建物に移動しようとする。その時、ガッと腕を掴まれた。
「ステファン様、どこに行かれたのかと!」
腕を掴んできたのはギルバートだった。すぐに手を離し、頭を下げてくる。
「式のお時間が迫っております! 支度がありますので、どうかお急ぎでこちらへ!」
「え、は、はい」
式と聞いて、帰還式でもやるのかと思った。確かに、祝いの席で薄汚れた格好は失礼にあたるだろう。
「着替えは用意しております。全てお任せください」
北部の人々が忙しそうに行き交う中、こちらも忙しなく大公城に入り部屋へ通されると、その中にはメイド達が何人も並んでいた。
「話は聞いているな。後は頼んだぞ、しっかり準備をしろ」
「かしこまりました。完璧に整えさせていただきます!」
心なしか、メイド達の目がキラリと光った気がして、ステファンは後退りする。しかし、ギルバートによって扉が閉められてしまった。
「あの、支度は自分で……」
「私はメイド長のヘレネと申します。ステファン様、これは私達の大事な仕事です! 湯浴み係!」
メイド長が勇ましく声をかけると、端に立っていた数人がハイっとの太い声を上げる。よく見ると、女性のはずだが、全員腕に筋肉がつき盛り上がっており、スカートの下には逞しい足が見える。北部の女性は逞しいと噂に聞いていたが、噂以上に強そうだ。
こんなに大勢の女性の前で脱がされたら恥ずかし過ぎる。逃げようとしたステファンだったが、両方から腕を掴まれ持ち上げられた。
「あ……あ、ちょっと……湯浴みって……一人で……あ、あ――――!!」
足をバタバタさせてもお構いなしで、ステファンは浴室へ連れて行かれた。
小一時間、体を洗われて綺麗になった。下着だけは自分でやりたいと抵抗し事なきを得たが、用意されたのは青い変な下着だった。文化の違いに怯えてしまう。後で変えようととりあえず着てみたはいいものの、湯浴みが終わると今度は着替え用の部屋に戻された。
すぐに別のメイドが走ってきて、次々と服を着せられる。さすが寒い地域だけあり、よく分からない服を何枚も重ねていく。
最終的に白いシャツに白いコート、白のズボン、白いレースのクラバットをきっちりと結ばれた。どれも一目で高級品だと分かるもので、汚してしまいそうで緊張する。
「あの? これが北部騎士の正装ですか? 何と言っていいのか……まるでこれは……」
頭の中に浮かんできた言葉を口にしようとしたが、どう考えてもおかしいだろうと思い、喉から出てこない。仕方なく鏡の前でパクパクと口だけ動かしていると、ドンと扉が開かれた。
「失礼します! おおっ、完璧だな。ステファン様! 行きましょう。みんな集まっております」
「えっ、ちょっ、待って。待ってください。どこへ……」
パーティー会場にでも行くのかと思ったが、連れて行かれたのは、色鮮やかなステンドグラスで彩られた聖堂だった。ギルバートを問い詰めたくとも、神を祀る厳かな雰囲気の場所で騒ぐこともできず、ステファンは言われた場所に立つ。目の前には背丈を越える豪華な扉があり、辺りは物音一つせず、静まり返っている。
どうすればいいのか、一人でキョロキョロしていると、間も無くして音楽が鳴り出した。弦楽器の軽やかな音楽だが、穏やかな音色とは逆に、何が起こるのか緊張で足が震えた。
そこにやってきたメイド長が、ステファンの頭に何かを載せる。それはレースで縁取られた白いベールだった。
「こ……これは……いったい……」
二人の兵士が静かに頷いた後、ガチャリと扉を押し開く。目の前に飛び込んできたのは、真っ直ぐに伸びた赤い絨毯と、両端に並んだ椅子へ座る参列者。そして絨毯の伸びた先には、ステファンと同じ、白い豪華な衣装に身を包んだリュシアンが立っていた。
ベール越しに目が合うと、リュシアンはふわりと微笑んだ。スタスタと歩き、ステファンの横に立ったリュシアンは、腕を突き出してきた。
「あの……これは……何かの冗談では?」
「何を言っている? 私と同じ気持ちだと言っただろう。ステファンの気が変わらないうちに、帰ったらすぐ式を挙げるように準備させていた」
人は思いもよらぬことが起こると、頭の中が真っ白に染まり、何も考えられなくなってしまうらしい。ステファンは目眩を覚え、体がフラついてしまった。しかし、掴まったのがリュシアンの腕だったので、エスコートの体勢が完成してしまった。
「さぁ行こう。俺の花婿」
リュシアンと結婚するのはアナスタシアだった。確かに、そんなアナスタシアを逃した騎士ではあるが、自分が代わりに結婚するなんて聞いていない。
「……てない……聞いてない! 聞いていないです――――――!!」
ステファンが叫んだ声は、参列者の拍手と歓声、そして盛大に鳴り始めた音楽で見事にかき消された。
(第一章 終)
驚かせてごめんなさい。きっと心配しているわね。貴方はいつも、私のことを気にかけてくれたから。私自身驚いているの。まさか、こんなことになるなんて。事の顛末を聞いたのはつい先ほどで、急ぎ手紙を書くためペンを手に取ったけれど、何から書いていいのか。
最初に言っておくべきね。私は元気よ。怪我一つないわ。アルフレッドも同じ、今船に乗り、無事に港を出たところよ。
何から何まで、大公殿下が手配してくれていて、怪しまれることなく検問も通過できたわ。使用人の中に北部の者がいて、私達をあの崖へと誘導したの。そこで大公殿下の部下が待っていたわ。殺されるかと思ったけれど、アルフレッドが大丈夫だというから馬車を下りたの。彼らは馬車を崖から落として、事故に見えるように色々細工をしていたわ。
私達は移動して、馬に乗ったり荷物に紛れ込んだり、とにかく大冒険をして港まで逃げられたの。もちろん、船も用意されていて、無事に乗ることができたわ。貴方と離れて、いつもどれほど守られていたのか実感しているわ。私は何も見えていなかった。自分勝手に貴方を巻き込んでしまったこと、後悔しているわ。本当にごめんなさい。そして、今まで本当にありがとう。この手紙が届く頃、私は泥だらけになって頑張っていると思う。
アルフレッドの親類が営む農場で働く予定なの。落ち着いたらまた手紙を送るわ。送り先は北部になるのね。ステファン、大公殿下によほど気に入られたみたいね。貴方の幸せを願っているわ。
アナスタシア
※※※
ガタガタと揺れる車輪の音を聞きながら、ステファンはそっと手紙を閉じた。
何回か読んで、やっと現実だと分かり、そしてまた読み返している。
何度も見てきたから分かる。間違いなくアナスタシアの字だ。
絶望的だと思っていたアナスタシアが、無事でいてくれたことが何より嬉しい。なぜ逃げた先にリュシアンの手の者が待ち構えていたのか、リュシアンに聞いてもはぐらかされてしまった。
分からないことだらけだ。
皇帝からのリュシアンの秘密を探れと命令され、新たな問題が出てきてしまった。
ステファンは手持ち無沙汰に、手紙を上着のポケットに入れたり出したりを繰り返す。少しも心が落ち着かない。
馬車に一人で乗っているという状況も、またそれに拍車をかけた。
まだ夜も開け切らぬうちに、リュシアンと北部騎士の一行は、アドラー公国へ戻るため離宮を出発した。ステファンはアドラー家の所属となり、北部へ向かうことになった。だが、それがどうもおかしいのだ。
豪奢な馬車の中に一人で乗せられ、寒くなるからと膝掛けまで用意された。窓から外を見ると、北部の騎士達が隊列を組み、精悍な顔つきで馬に乗っている。
そしてその中心、堂々たる姿で指揮をとっているのがリュシアンだ。男から見ても惚れ惚れするほどカッコよく思ってしまうのだが、そういう話ではない。
騎士としての腕を見込んでくれたと聞いていたのに、お客様状態で馬車に乗せられたのだ。どういう取り決めでここに入れられたのか、サッパリ分からない。本来なら自分も馬に乗り、あの集団に加わっているはずだ。それともまだ、北部の人間には騎士として認められていないのだろうか。
「ステファン、乗り心地はどうだ?」
ぼんやり考えていたら、いつの間にか窓の近くへ来ていたリュシアンに声をかけられる。
「振動も少なくて、すごく快適です。こんな豪華な馬車に乗れるなんて、まるで私が姫にでもなったような気分に……」
「はははっ、その通りじゃないか。ゆっくり休んでくれ」
上品な顔に似合わない豪快な笑い方をしたリュシアンは、魅惑的に微笑んだ後、隊列に戻っていった。また一人だけの時間となった馬車の中で、ステファンは首を傾げる。
「ん? その通りとは……どういうことだ?」
せめて話し相手がほしい。長椅子の端に座ったステファンは小さく縮こまった。
二週間と少し、馬車に揺られ続け、ようやく北部領との境までたどり着いた。今は魔獣が出る時期ではないらしいのだが、もしものことを考えて最短で移動する必要があった。
これでも、北部人にしか知られていない近道を通って来たので、時間が短縮されているらしい。
ステファンは、本当にずっとお客様扱いをされるので、人形のようにただ座って過ごしていた。
さすがにこんなに長い時間、置物のようになっていてはおかしくなってしまう。休憩のため立ち寄った湖の近くで馬車を下り、リュシアンを探す。すると木の側で腰を下ろしている騎士達の中から、ギルバートが出てきた。相変わらず誰よりも大きいので、息を呑んで見上げてしまう。
「ギルバートさん」
「ステファン様、今軽食をお持ちしようかと……」
「食事は大丈夫です。それより、大公殿下はどちらへ?」
「あの……今はその……」
「天幕のあの向こうですね?」
「ステファン様、お、お待ちを……」
「今日という今日は話があるのです! いくらなんでも、騎士が馬に乗らず移動など、私の騎士道精神、志に反します。体がおかしくなります!」
リュシアンは移動中忙しくしているので、ろくに話す時間がなかった。太い木の間に張られた布をバサリと捲り、ステファンは勇んで顔を上げる。
「リュシアン様、話があ……」
「ああ、ステファン。どうした? 何かあったのか?」
ニコリと微笑を浮かべるリュシアンは全裸だった。
かろうじて大事な部分は、手に持っている布で隠れているが、がっしりとした体、綺麗に割れた腹筋、日焼けを知らない白い肌、胸元の赤い蕾、全てが目に飛び込んできた。
「あ…………あ……あ……あの……」
「汗をかいたから湖で流してきた。ステファンもどうだ?」
「わ……わわ私は……けけ結構で……」
動揺して上手く口が回らない。さっきまで言ってやると意気込んでいたのに、全て頭から抜けてしまった。
「遠慮するな。俺とお前の仲だろう?」
主君と騎士の仲で遠慮しかないだろうと、ステファンは頭の中でツッコむ。とにかくこれ以上見てはいけないと、リュシアンに背中を向ける。
「何か、用があったのではないのか?」
「え? あ、そうですね。か、体が鈍っておりまして、運動の許可をいただきたいと……」
馬車ではなく馬に乗りたいと訴えるはずが、混乱して頭に浮かんだことを口にしてしまう。ただ体を動かしたいだけの話になってしまった。
「そうだな。やるか」
妙に明るいリュシアンの声を聞いて、ステファンの心臓はドキッと揺れる。恐る恐る振り返ると、いつの間に着替えたのか、服を纏ったリュシアンが立っていた。シンプルなシャツとパンツで、ここまで美しく着こなせるのかと、ため息を漏らしそうになる。
「ここでは狭いから、あちらに行こう」
耳元で囁かれ、心臓が飛び跳ねる。息のかかったところが熱くなり、何も考えられない。
「あ、あの……何を……」
先に垂れ下がった布の向こうへ行ったリュシアンを追いかけると、何かを投げられ、思わず手で受け止める。
それは剣だった。
「ステファンと手合わせしたかったんだ。誘ってくれて嬉しいよ」
リュシアンはやる気満々で屈伸運動をして、ギルバートが持ってきた剣を手に取る。カルシフではなく、練習用のシンプルな剣だった。
リュシアンの動きは、まるでダンスでも踊るみたいに姿勢正しく、構えまで優雅に堂々としている。なぜかよく分からないが、剣を交えることになり、今度は緊張で体が硬くなる。
騒ぎを聞きつけたのか、わらわらと北部の騎士達が集まってきた。見物のため、あっという間に周囲を囲んだ。
リュシアンのような相手には、下手な小細工などせず、真正面からぶつかるのが正解だろう。ステファンは自分へ冷静になれと言い聞かし、頭を切り替えた。
「こちらから、行かせていただきます」
先手必勝、ステファンは得意の俊足を活かし、リュシアンの懐に潜り込む。そのまま剣を下ろしたが、剣で弾き返される。かなりの重い一撃に、手が痺れてしまう。
勝てるはずのない相手だ。圧倒的な実力差を前にし、胸に迫り上がってきたのは、楽しいという気持ちだった。
ステファンは再び間合いを詰め、リュシアンに向かい剣を振る。簡単に避けられたが、食らいついていく。リュシアンは余裕の表情で避けるので、見ていてもっと楽しくなってきた。
どうにか、一撃だけでも与えたい。
腹を狙っても防がれ、足を狙っても払われる。それならばと後ろに回り込むが、少しも乱れなく攻撃を弾かれてしまった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「息が切れているな。どうした? そろそろやめるか?」
「まだです」
汗を拭ったステファンは、再び剣を構えた。どうにかならないかと動きを頭の中で考える。
「いい顔だ。活き活きしているな」
「はい。全然ダメですが、リュシアン様との手合わせは新鮮で……とても楽しいです」
興奮し、取り繕うことも忘れ、ステファンは心から嬉しい気持ちになり笑った。ずっと作り笑顔ばかり浮かべていたので、すっかり忘れていたが、素直に純粋な笑顔が溢れた。
それを見たリュシアンは急にぼんやりした表情になり、先ほどまでの気迫が消えてしまう。どうしたのだろうと思いながらも、チャンスであるため、ステファンは手に力を込める。
リュシアンが瞬きした時、ステファンは両手で剣を振り上げ、残りの力を全て込めて飛び上がった。
いける!
そう思った瞬間、リュシアンは振り下ろしたステファンの腕を掴んだ。物凄い力で引き寄せられ、投げられると思ったステファンだったが、次の瞬間、ガッシリとした力で受け止められる。
「え…………」
カランカランと音を立てて、ステファンの持っていた剣が地面に落ちる。気がつくと、なぜかステファンは、リュシアンに抱き止められて、そのまま腕の中に収まっていた。
「あ、あの……大公殿下?」
地面に足がついておらず、泳いでいる。持ち上げられたまま、どうしていいのか分からず混乱してしまう。
見ると、周囲を囲み声援を上げていた騎士達が、さぁ終わったとばかりに、持ち場へ戻っていく。こんな状態で、置いて行かないでくれと叫びたい気分だ。
「わ、わかりました。降参です。私の負けですから、もう離してください」
こんな勝ち方があるのだろうかと思ったが、北部流なのかもしれないと無理やり納得する。仕方なく、リュシアンの背中を叩くと、ようやく下ろしてもらえた。
「すまない。あまりにも可愛くてつい……」
「はい!?」
確かにリュシアンの剣に比べたら、自分など子供のようなものだと思った。遊びに付き合ってくれた気分なのだろうと、ステファンは悔しくなり唇を噛む。
「……戻ります」
「ああ、疲れたら横になってくれ。毛布も用意させよう」
手加減されてちょっと怒っているつもりだったが、リュシアンは気づかないようで、甲斐甲斐しく世話を申し出てくる。もう面倒になったステファンは、大人しく馬車に乗り込んだ。
「くっ……しばらく動いていなかったからだ。きちんと訓練していれば、あそこでいけたはず……」
悔しさで悶々としながら馬車に揺られていたら、いつの間にか眠っていた。認めたくないが、毛布が気持ちよくて、これ以上ないくらいぐっすりとよく寝てしまった。
どのくらい経ったのだろうか。
馬車が大きく揺れ、ステファンは目を覚ました。
空は明るくなっており、夜通し走り続けたのだとわかった。目を擦りながらムクリと起き上がったステファンは、軽くあくびをする。
賑やかな音が聞こえてきて、馬車の扉を開けた。
「わ……すごいな……」
見渡す限り一面雪景色だった。
外へ出たステファンは、雪を踏み締めて近くを歩いてみる。足の裏に伝わる感覚が楽しい。
キラキラと輝く白銀世界だ。見上げると、雪を纏ったアドラー大公城が空高く聳え立っていた。思わず漏らしたため息が白く広がった時、ドンと背中を押される。
荷物運びのためたくさんの兵士が出てきて、荷を下ろして運んでいた。ステファンが木箱の端に当たったのは、橋のど真ん中に立っていたからだ。ここにいては邪魔だなと思ったステファンは、近くの建物に移動しようとする。その時、ガッと腕を掴まれた。
「ステファン様、どこに行かれたのかと!」
腕を掴んできたのはギルバートだった。すぐに手を離し、頭を下げてくる。
「式のお時間が迫っております! 支度がありますので、どうかお急ぎでこちらへ!」
「え、は、はい」
式と聞いて、帰還式でもやるのかと思った。確かに、祝いの席で薄汚れた格好は失礼にあたるだろう。
「着替えは用意しております。全てお任せください」
北部の人々が忙しそうに行き交う中、こちらも忙しなく大公城に入り部屋へ通されると、その中にはメイド達が何人も並んでいた。
「話は聞いているな。後は頼んだぞ、しっかり準備をしろ」
「かしこまりました。完璧に整えさせていただきます!」
心なしか、メイド達の目がキラリと光った気がして、ステファンは後退りする。しかし、ギルバートによって扉が閉められてしまった。
「あの、支度は自分で……」
「私はメイド長のヘレネと申します。ステファン様、これは私達の大事な仕事です! 湯浴み係!」
メイド長が勇ましく声をかけると、端に立っていた数人がハイっとの太い声を上げる。よく見ると、女性のはずだが、全員腕に筋肉がつき盛り上がっており、スカートの下には逞しい足が見える。北部の女性は逞しいと噂に聞いていたが、噂以上に強そうだ。
こんなに大勢の女性の前で脱がされたら恥ずかし過ぎる。逃げようとしたステファンだったが、両方から腕を掴まれ持ち上げられた。
「あ……あ、ちょっと……湯浴みって……一人で……あ、あ――――!!」
足をバタバタさせてもお構いなしで、ステファンは浴室へ連れて行かれた。
小一時間、体を洗われて綺麗になった。下着だけは自分でやりたいと抵抗し事なきを得たが、用意されたのは青い変な下着だった。文化の違いに怯えてしまう。後で変えようととりあえず着てみたはいいものの、湯浴みが終わると今度は着替え用の部屋に戻された。
すぐに別のメイドが走ってきて、次々と服を着せられる。さすが寒い地域だけあり、よく分からない服を何枚も重ねていく。
最終的に白いシャツに白いコート、白のズボン、白いレースのクラバットをきっちりと結ばれた。どれも一目で高級品だと分かるもので、汚してしまいそうで緊張する。
「あの? これが北部騎士の正装ですか? 何と言っていいのか……まるでこれは……」
頭の中に浮かんできた言葉を口にしようとしたが、どう考えてもおかしいだろうと思い、喉から出てこない。仕方なく鏡の前でパクパクと口だけ動かしていると、ドンと扉が開かれた。
「失礼します! おおっ、完璧だな。ステファン様! 行きましょう。みんな集まっております」
「えっ、ちょっ、待って。待ってください。どこへ……」
パーティー会場にでも行くのかと思ったが、連れて行かれたのは、色鮮やかなステンドグラスで彩られた聖堂だった。ギルバートを問い詰めたくとも、神を祀る厳かな雰囲気の場所で騒ぐこともできず、ステファンは言われた場所に立つ。目の前には背丈を越える豪華な扉があり、辺りは物音一つせず、静まり返っている。
どうすればいいのか、一人でキョロキョロしていると、間も無くして音楽が鳴り出した。弦楽器の軽やかな音楽だが、穏やかな音色とは逆に、何が起こるのか緊張で足が震えた。
そこにやってきたメイド長が、ステファンの頭に何かを載せる。それはレースで縁取られた白いベールだった。
「こ……これは……いったい……」
二人の兵士が静かに頷いた後、ガチャリと扉を押し開く。目の前に飛び込んできたのは、真っ直ぐに伸びた赤い絨毯と、両端に並んだ椅子へ座る参列者。そして絨毯の伸びた先には、ステファンと同じ、白い豪華な衣装に身を包んだリュシアンが立っていた。
ベール越しに目が合うと、リュシアンはふわりと微笑んだ。スタスタと歩き、ステファンの横に立ったリュシアンは、腕を突き出してきた。
「あの……これは……何かの冗談では?」
「何を言っている? 私と同じ気持ちだと言っただろう。ステファンの気が変わらないうちに、帰ったらすぐ式を挙げるように準備させていた」
人は思いもよらぬことが起こると、頭の中が真っ白に染まり、何も考えられなくなってしまうらしい。ステファンは目眩を覚え、体がフラついてしまった。しかし、掴まったのがリュシアンの腕だったので、エスコートの体勢が完成してしまった。
「さぁ行こう。俺の花婿」
リュシアンと結婚するのはアナスタシアだった。確かに、そんなアナスタシアを逃した騎士ではあるが、自分が代わりに結婚するなんて聞いていない。
「……てない……聞いてない! 聞いていないです――――――!!」
ステファンが叫んだ声は、参列者の拍手と歓声、そして盛大に鳴り始めた音楽で見事にかき消された。
(第一章 終)
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