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ブラックは何色にも染まらない
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コツコツコツ。
執務室の磨き抜かれた木床は、靴音がよく響く。
これは相当怒っているなと思いながら、イシュマは椅子に座り、左右を行き来する靴を見ていた。
「聞いている? イシュマ」
「うん」
「本当に、何もなかったの?」
何度聞かれても、同じ答えしかできない。イシュマはまた安心させるように微笑み、静かに頷いた。
「おでこをぶつけたから、少し腫れているけど、医師にも診てもらって、問題ないと言われたし。エロイズ伯爵は申し訳ないからと、雨を凌ぐために自分の馬車を提供してくれたんだよ」
イシュマの説明に、ブルーノは腕を組みながら、また納得できないという表情をする。これではずっと堂々巡りだ。こんな時、まとめ役になってくれるユルビーが不在なのでもどかしい。
「イシュマ、世の中の男はみんな危険だ」
「何を言うかと思えば……」
「その中でも、グリーン・エロイズは最も危険だと言っていい」
言われなくとも分かっている。イシュマだって、近づきたくない人物だ。
「僕も上級会議や事業の関係で必要な時以外、話したくもない。仕事は冷酷で傲慢、派手な交遊関係、怪しげな団体との関係も噂されている」
「まさに、危険人物だね」
「その男が、イシュマと二人きりでいたんだ。心配しないはずがない!」
他のことは冷静に対処できるのに、イシュマのこととなると、ブルーノのネジは外れてしまう。ブルーノが頭を抱え座り込んだので、イシュマは椅子から立ち上がった。
「ブルーノ、心配しないで。俺はこの通り、元気だよ。馬車の中では他愛のない話をしただけ。ほら、いつもみたいに笑ってよ」
ブルーノの隣に膝をついたイシュマは、ふわふわの柔らかい髪を撫でる。イシュマの言葉に、ゆっくり顔を上げたブルーノの目は潤んでいた。
綺麗だ。
女性達が身に付ける宝石なんかよりも、ずっと澄んでいて綺麗だ。
「キスして」
「え?」
「イシュマがキスしてくれたら安心する」
告白に応えられないなら、軽々しく触れ合うべきではない。そう思うのに、涙で揺れるブルーノの目を見たら、突き放すことはできなかった。
イシュマは、ブルーノの長い前髪を後ろに流し、形のいい唇にチュッと口付けた。
「……したよ」
これでいいと思い離れようとしたイシュマの肩をブルーノが掴んだ。
「足りない」
ぐっと引かれて視界が回転する。
背中に硬いものを感じ、目を開けると天井が見えた。そこで視界に入ってきたのはブルーノだ。髪を耳へ掛けながら、ニコッと微笑む。いつも通り、ご機嫌なブルーノの笑顔だ。
「ん……」
ブルーノの顔が近づいてきて、唇が重なる。軽く触れてわずかに離れ、また重なる。そんなやり取りを何度か繰り返し、イシュマが息を吸い込んだ瞬間、ぐっと深く口付けられる。
「んっ……め……ぶる……の……、ううぅ……ああっ……」
全て飲み込まれ、頭は真っ白になり溶けてしまう。ダメだと言いたいのに、舌が入ってきた瞬間、待ち構えていたようにイシュマは舌を絡ませる。
冷たい床、濡れた唇、熱い舌。
全てが気持ちよくてたまらない。
ずっと離れていたものが、元の形に戻ったような、抗えない快感に身を震わせる。
「イシュマ……」
激しいキスの合間に、シャツのボタンが外され、平たい胸を弄られる。いつの間にか抵抗しようと伸ばしていた手はブルーノの背中に回り、誘うように抱きしめていた。
「あっ……んっ……ふ…………ブルーノ……」
「イシュマ……好き……好きだよ」
胸の尖りを舐められ、イシュマは背を反らせて喘ぎ声を漏らす。その瞬間、執務室のドアがバァァンと大きな音を立てて開いた。
「……なんだよ……これ」
入り口で目を見開き、驚愕の表情で立ち尽くしているのはユルビーだ。目が合い、イシュマはハッと息を呑む。慌ててシャツの前を合わせ立ちあがろうとしたが、ブルーノがそれを止めた。
「何って、見たままだよ。お前こそ、先に告白しただろう? 話し合うって約束したのに」
「それはっ……」
「おかげで僕も告白したんだ。イシュマに甘えていいって言われたから、今甘えているところ」
「ブルーノ……まっ……んんっ!」
ブルーノの懐から逃れようとしたが、体重をかけられて身動きが取れない。しかも、ブルーノはユルビーに見せつけるように、口付けてきた。
「だっ……、だめ……ぶる…………んっ……うぅ」
さっきより深く口内を舐められて、下半身が熱くなる。ユルビーの前で、彼に見られている。ダメだと思うと、もっと気持ち良くておかしくなる。
ガタンと音がしてドアが閉まると、すぐにバタバタと遠ざかる足音が聞こえてきた。ユルビーが走って行ったのだとわかった。
ようやく力が抜け、ブルーノの笑い声が聞こえてきた。
「ふふっ、ユルビーのやつ、怒ったかな」
「何をしているんだよ、ユルビーの前で……こんなこと、俺達は……兄弟なのに……」
「兄弟だと思っているのは、イシュマだけだよ」
その言葉にチクリと心臓が痛む。イシュマを見下ろすブルーノの目には、何の感情もこもっていないように見えた。
「僕達はずっとイシュマが好き。たぶん、二人とも、出会った時から……」
「なっ……そんな……嘘だ」
「嘘じゃない。イシュマはお父様に手を引かれて、不安そうな顔で歩いてきた。昨日のことのように思い出すよ。手を繋いだら、目に涙を溜め見つめてくれたよね。絶対僕が守らないとって思った」
「それは家族としての気持ちじゃ……」
「最初はね、そう考えたよ。だけど、天使のような君の寝顔を見る度に、自分の中に欲が生まれてくるのを感じた。年頃になっても、欲望を感じるのはイシュマだけ。だから僕達、誰とも噂になったことすらないだろう?」
華やかな外見から、社交界の薔薇と称されるブルーノ。ユルビーも有望な騎士として絶大な人気を誇っている。だが、確かに二人とも鉄壁と呼ばれ、近づく令嬢達をことごとく跳ね除けてきた。
貴族の男も女も、結婚前に遊ぶことはあまり良しとされない。それを忠実に守ることで誠実さが引き立ち、またたくさんの視線を集めてしまう。二人の元には毎日山のように縁談を求める手紙が届いていた。
「そんなの……もっとダメだよ。公爵家の跡取りなんだよ。一族として、子孫を残し、家を引き継いでいかないと。お父様だって、このことを知ってどんなに胸を痛めたか」
「イシュマも知っているだろう? 叔父のカーマインは色事好きで、各地に種を蒔いたから、子供が十人、いやそれ以上いるじゃないか。その中から優秀なやつを選べばいい。現にうちの会社で何人か働いている」
質問したのは自分なのに、ブルーノのが何を言っているのか、よくわからない。遺産相続を前にして、突然の告白。これは本当なのか、それとも嘘で自分は利用されて殺されるのか、どんどん想像が膨らみ手が震える。
ブルーノはイシュマの手を握り、チュッと甲に口付けた。
「恐がらないで。受け入れられなければそれでいい。イシュマは今のままでいいんだ。その代わり、どこにも行かないで。ずっと僕達の側にいるって約束して」
歪んでいる。
思い合うことなく、愛と呼べるのだろうか。
静かに息を吐いたイシュマは、少し考えさせてと言い、目を瞑った。
翌日、少しも仕事に集中できず、ミスばかりするイシュマに、上司は早く帰れと言って早退させた。週末ゆっくり寝れば治るだろう。そう言われて背中を叩かれたが、少しも気持ちは晴れない。
辻馬車を拾い一人で帰宅すると、まだ二人は帰宅していなかった。執事から手紙を受け取り、部屋に戻って開封する。差出人はエロイズ伯爵家だった。
「……体調はどうですか? できればお詫びをさせてください。週末の夜、パレットを予約しております。どうか来ていただけたら嬉しいです、……か。早速来たな」
あの事故は、エロイズ伯爵と知り合うためのゲームの展開だったように思える。そして、ゲームの流れ通りに、これから反政府への誘い、反皇帝思想の洗脳が始まるのだろう。イシュマは、プリンプ公爵家という大きな看板を背負っている。つまり、イシュマを駒として取り込むことで、反逆者達は支持勢力を増やそうという魂胆だろう。
「グリーンにとっては、自分に矛先が向かわないための、いい風除けになるってことだ。それだけは避けないと……。何度も勧誘されたら嫌だし、キッパリ言わないと」
いかにも紳士でいい人そうに見えたが、裏の顔なんて分からない。問題はどうやって会いに行くか、だ。
ブルーノがこのことを知ったら、絶対に家から出してもらえないだろう。
頭を悩ませていると、コンコンとノックの音がした。どうぞと言うと、ドアが開き、執事が部屋に入ってきた。
「旦那様から連絡が入りました。視察先の領地で山崩れがあり、被害状況確認と復旧手配が数日かかるそうです。戻りは週明けになるかと」
「それは大変だ。ブルーノや公爵家の者達に怪我はない?」
「ええ、旦那様も他の皆も無事です。ユルビー様は夜勤続きなので、週末は兵舎に泊まられるそうです」
「そう……珍しいな。俺一人か……」
ポツリと呟いてから、グリーンの所へ向かえるように、事態が動いていることに気づく。二人が両方とも家を空けることは滅多にない。これが悲劇への運命を断ち切るチャンスかもしれない。
不確定な情報に振り回されるな。
やるべきことをやろう。
イシュマは引き出しから紙を取り出し、簡単にグリーンへの返事を書いた。
「執事長、これを送ってほしい」
「かしこまりました」
執事が部屋を出て行った後、イシュマは窓辺に立ち夕陽で赤く染まった空を見上げた。
グリーンが指定した店パレットとは、帝国で今一番予約が取れないと言われているレストランだ。一等地に店を構え、黒を基調としたハイセンスな内装、シックな店内に映えるような彩り豊かな料理と酒。
一階席は軽食用にテーブルが並び、二階は完全個室の造りとなっている。店に入ったイシュマが名前を言うと、当然のように二階へ案内される。
選ばれた者だけが入れると言われているので、階段へ向かうイシュマに視線が注がれる。
「あれ? イシュマ?」
ガタンと音がして聞き覚えのある声がした。振り返ると、従兄弟のダイタイ立っていた。ダイタイはユルビーと同じ歳、オレンジ色の大きな目と、同色でくるくるパーマの髪がよく似合うとにかく明るいやつだ。彼はブルーノが経営する店で働いている。知り合いに会うのはマズいと思ったが、もう遅い。
「久しぶりだね。俺は招待券が当たってここに来られたんだけどイシュマは? 一族の懇親会にもあまり顔を出さないから、会いたいと思っていたんだ。ほら、俺達、小さい頃はよく遊んだのに……」
ペラペラとよく喋るダイタイの口元に指を当て、静かにするように目配せをする。これ以上、注目を集めたくない。
「ダイタイ、お願いだ。ここに来たことはブルーノには言わないで」
「え……?」
「心配かけたくないんだ。過保護なことはよく知っているだろう?」
「わかったよ。でもイシュマは誰と――」
ダイタイがそう言いかけた時、階下の客達があっと声を上げる。階段の上に、グリーンの姿が見えたからだ。これで完全に見せ物になってしまったと、イシュマは額に手を当てる。
「イシュマ、もしかして……」
「急いでいるから、ごめんね」
ダイタイはよく喋るが、約束を破るようなタイプではない。軽く手を上げたイシュマは、グリーンが待っている二階に向かうため、階段を上った。
「来てくれて嬉しいです。その服も……よく似合っている」
「……ありがとうございます」
店の雰囲気に合わせたのか、グリーンは黒のコートに黒いシャツ、全身を黒で揃えている。イシュマも無難な黒いコートを選んだが、大人の色気溢れるグリーンと並ぶと、恥ずかしくなった。
「美しい君をもっと飾りつけたい。じっとしていて」
グリーンはイシュマの胸元に何かを取り付けた。高そうな黒光りする宝石のついたラペルピンだ。
「これは、ブラックダイヤですか!? こんな高価なものをいただけません!」
「怪我をさせてしまったお詫びです。貴方に似合うと思い、持ってきました。これくらいさせてください」
まるで首に枷を付けられたような気分だ。どうにかして返したいが、ここで揉めても仕方ない。後で送り返そうと決める。小さく頷くと、微笑んだグリーンはイシュマの背中に手を回し歩き始める。
二階は一階よりもシンプルに造られていたが、個室に入るとその豪華さに驚いた。中央の丸テーブルにある花瓶には、様々な色の花が一同に集められており、目が眩むような華やかさだ。そして、その花々に負けない料理が、所狭しとテーブルに並べられている。
「す……すごい豪華ですね」
「さぁ、遠慮しないで。たくさん食べてください」
給仕ではなく、グリーンが直接椅子を引き座らされた。しかもナプキンまで広げてくれるので、裏を感じて怖くなる。
イシュマはすぐに話を切り出すつもりだった。用意されていた料理に手をつけていいものか、警戒心が湧き出てくる。
「一流シェフに旬のものを揃えさせました。どうか一口でも食べていただけると嬉しいです」
部屋の入り口にはシェフが立っており、期待がこもった目でじっと見られている。玄関ホールでは大勢に姿を見られており、さすがに毒殺はないだろうと考えた。
恐る恐る目の前にある料理を口にする。複雑過ぎて味がよく分からないが、美味しいと感想を述べた。シェフは嬉しそうな顔になり、ありがとうございますと言った。
気がつくとグリーンまで嬉しそうにこちらを見つめている。
そこでシェフが料理の説明をしてくれた。旬の果物である、オレンジのソースがかかったステーキに炒め物、たくさんのフルーツを使ったケーキやタルト、色とりどりで全て美しい。
見ているだけでお腹いっぱいだ。
パレットの名物だというパンを勧められて食べることになる。緊張して水分を持っていかれたので、近くにあったワインを口に含み、やっと喉に落とした。
「あの……伯爵は、召し上がらないのですか?」
「ええ。少し手違いがあったみたいです。苦手としている食材がありまして」
「すみません、私だけ……」
「いえ、いいのです。令息の食べる姿は可愛らしいですから」
微笑んだグリーンがウィンクしてきたので、ゾワゾワと寒気がした。そろそろ勧誘が始まりそうだ。こちらから先に線を引いておくべきだ。
イシュマはフォークとナイフを置き、背筋を伸ばした。
「あの、期待をさせてしまう前に、ハッキリ言わせていただきたいのですが……」
そう言うとグリーンは右眉を上げ、意味ありげに微笑んだ。
「あの……わ、私は、政治には関心がありません!」
驚いたように目を開いたグリーンの表情を見て、イシュマはもう一歩だと勢いをつけた。
「今の仕事に満足していますし、環境に不満はありません。必要とあらば家を出て、一人で暮らす用意もできています。私は……とにかく、争いが嫌いで、静かに生きたい、それだけなんです!」
全部言い切ったイシュマは、肩で息をしながら緊張でゴクリと唾を飲み込む。情けない男だと罵倒されることも覚悟した。
すると、グリーンは考えるように眉を寄せた後、プッと噴き出して大きな口を開けて笑い出した。
「くくっ……くっ、ははははっ! なんて面白い人なんだ」
「はい?」
「私が令息を、反政府組織にでも勧誘するのかと思っていたのですか?」
グリーンは腹を抱えて笑うので、何がそんなにおかしいんだと混乱してしまう。
今自分で言ったその通りじゃないか、という言葉が喉から出そうになる。ゲームの流れを変えようと思ったのに、グリーンの反応が変だ。何を間違えたのか、それとも初めからおかしかったのか。
唖然としたイシュマがパクパクと口だけ動かしていると、ゴホンと咳払いをしたグリーンは軽く手を上げた。
「私は多方面と繋がりがありますので、もしそういった活動に興味があれば、紹介することもできます」
「あの、それは本当に……」
「ええ、興味がない、そういうことですよね?」
グリーンの言葉にイシュマは静かに頷く。
もしかしたらゲーム内でのイシュマは、現状に不満があり、誘われたからというより、自ら積極的に反政府思想に傾倒していったのではないか。グリーンは仲介役として動きながら、美味しいところを持っていこうとしていた。
馬車の事故はある程度仕組まれたものだと考えられる。グリーンは誘いをかけたが、反応が悪かったため、組織への紹介を選択肢から外した。そう考えると腑に落ちた。
「あの……では、今夜お誘いいただいたのは、本当に事故のお詫びをということですか……?」
「もちろんです。まさか、私がよからぬことを企んで貴方をここへ呼び出したと?」
「……ええと……まぁ……はい」
ただ誰にも迷惑をかけず生き残りたいと思っていただけなのに、何もかもが思い通りにいかない。養父の死や遺産の謎、義兄と義弟からの告白、そして死へ繋がる糸を切ろうとしたのに、空振りになってしまった。
いよいよ混乱が深まり、食事の席から立ち上がったイシュマは、部屋に備えられていたソファーに座った。これは、自分の行動により、すでに死の運命から解放されたと思っていいのだろうか。
「大丈夫ですか? ご気分が優れませんか?」
ソファーの隣が沈み、横にグリーンが座ったことに気がつく。ワインを軽く飲んだが、そのくらいで酔うタイプではない。この混乱のせいなのか、やけに頭が熱くなり、酔いが深くなった気がする。
「すみません、少し飲み過ぎたようです」
ソファーの背にもたれて天井を見ていると、グリーンはイシュマの手に触れてきた。
「実を言うと、悪いことを、考えていなかったわけではありません」
「……え?」
「貴方はプリンプ公爵家の次男、その肩書きを持ち、多くのものを手にする可能性のある男。利用して、全て奪ってやろうかと……」
「……悪い人ですね」
マズいと思った瞬間、心臓がドクドクと鳴り、身体中が熱くなる。歪む視界の中で、グリーンの口元が近づいてきた。
「そう思っていたのですが、誤算でした。イシュマ、貴方がこんなに魅力的な人だとは……」
「え?」
「あの二人が輝いているから目立ちませんが、貴方はとても美しい……。話しながら頬を染め、目を細めて笑う顔は、胸を射抜くように可憐で可愛らしい。特にこの両眼の下にある二つ黒子……これが私の心を捉えて離さない」
あぁまた、おかしい。
考えもしない場所へ落とされる。
肩を押されたイシュマは、すでに体の力をなくしており、簡単にソファーに転がってしまう。ギシギシと音がして、グリーンが興奮した目で見下ろしてきた。
「力が……入らない……」
「ワインに少しだけ気分が良くなる薬を入れました。薬に関しては、プリンプ家の方が手広くやってますが、うちも色々と揃えています。大丈夫です。感度が良くなるくらいで、毒ではありません」
「あ……っ……」
シャツの前を開かれ、そこにグリーンの手が侵入してきた。直接胸に触れられただけで、電流が走ったように快感が流れる。
「やめろ! こんなこと……遊ぶ相手なんてたくさんいるじゃな……か」
「満たされないんですよ。誰を抱いても心が動かない。けれど、イシュマに会った時、話しているだけで、興奮して心臓が壊れそうでした。貴方はどこまでも真っ白で……ああ……こんなに美しいのに、この中に、私のモノが挿入ったら、どうなるのでしょう? 汚してみたい……ドロドロに……」
「はっ……なせ、変態!!」
何とか動かした足は虚しく空振り、もっと深く沈んでしまう。のしかかってきたグリーンは、膨張したモノを押し付けてきた。イシュマはグリーンの肩を叩き、押し返そうとしたが、その手を掴まれ、頭の上で縫い付けられてしまう。
「ああ……想像以上だ。興奮し過ぎて……達してしまいそう。こんなことは初めてだ」
「いや……いやだっ! やめろ!!」
嫌悪感が肌から溢れる。ブルーノやユルビーに触れられた時とは違う。吐き気がする恐怖に全身が悲鳴を上げた。
その瞬間。
「イシュマ!!」
ドアが開け放たれ、係員に押さえられながら、部屋に飛び込んでくる人が見える。大きな影はすぐにグリーンを引き剥がし、部屋の壁に叩きつけた。そんなことができるくらい力が強い男は一人しかいない。
「ゆ……ユルビー……」
「イシュマ、あぁ……なんてことだ。あんなやつにこんなことを……」
ソファーまで走ってきたユルビーは、自分の上着を脱ぎ、抱き起こしたイシュマを隠すように包んだ。
「ユルビー……どうして……仕事は?」
「仕事なんてどうでもいい。ダイタイから連絡がきた。イシュマがエロイズの野郎と会っているって」
ダイタイには、ブルーノに言わないよう口止めをしたのを思い出す。それを守ってユルビーに伝えたようだ。
「彼……は、エロイズ伯爵は……?」
「壁に当たって倒れている。気を失っているんだろう。行くぞ、話は後で聞く」
「う、うん……でも足が……」
立とうとしても力が入らない。イシュマの様子を見て、ユルビーが舌打ちをした。怒られる、そう思った時、ふわりと体が浮いた。
ユルビーはイシュマを横抱きにして軽々と持ち上げた。
「体が熱い、家まで辛抱してくれ」
「ん……」
どれくらい時間が経っているだろうか。来た時と同じ、店の階段を下りて外へ出る。ガヤガヤとした店内、人の視線が集まっているのは間違いない。だが、ユルビーがかけてくれた上着で、その様子は見えなかった。
イシュマは朦朧とした意識の中、馬車で運ばれて邸に到着した。中へ運ばれた後、水を大量に飲まされて、それを全部戻したところまでは覚えている。
おそらく大騒ぎだったはずだが、次にイシュマが目を覚ますと、まだ暗い空が見えた。辺りは静かで落ち着いた空気に包まれている。
「うぅ……」
「……起きたか?」
わずかに声を漏らすと、すぐ近くで声がした。隣でユルビーが寝ていたようだ。
「ユルビー、ごめん……俺……」
「急に起き上がるな。大丈夫か? 水は?」
体を起こすとユルビーに背中をさすられる。少し眠れたことで、船酔いのような気持ち悪さは消えていた。
「大丈夫。本当にごめん……俺、なんてことを……」
「いい、分かっている。アイツは蛇のような男だ。事故を利用して、詫びをしたいとか上手いこと言って近づいたんだろう。クソ……気をつけていたのに……」
言わなくても全て筒抜けのような状態だ。誰もが分かるような罠に引っかかったのだと思うと、また頭痛を感じた。
「きっと……俺を辱めて、ブルーノを脅す材料にでもするつもりだったんだよ。それに、言っていることがおかしくて、変なやつだった」
窓から入る明かりに照らされたユルビーは、困ったような目をしてイシュマを見ていた。あまりに軽率だったので呆れているのかもしれない。
「本当ごめん」
「いいよ……無事でよかった」
不甲斐なさに項垂れていると、後ろからふわりと抱きしめられた。背中からユルビーの温もりが伝わり、張り詰めていた気持ちが緩んでいく。
ユルビーはイシュマの頭に顔を埋める。クンクンと鼻を鳴らしてくるのでくすぐったい。そういえば子供の頃からよく匂いを嗅がれたのを思い出す。お前は犬かと言って笑ったが、そういうところは大きくなっても変わらない。
「ユルビー、あのことだけど……」
「ん?」
「ほら、俺のこと……その……好きだって……」
「ああ、そのことか」
あんな熱烈な告白をしておいて平然と返される。イシュマの方が意識してしまい、頬が熱くなった。
「いつから……そういう気持ちだったの? 俺、全然気づかなくて……」
「そうだな……子供の頃、ブルーノと俺で、どっちがイシュマを好きかで喧嘩になった。その時には、多分、そういう好きだって、何となく気がついていた」
「そんな昔から? 喧嘩までしたの?」
「そうだ。お互いそれだけは絶対に譲らなくて、仕方がないから認めることにした。これ以上喧嘩をしたら、二人とも嫌いになるって言ったのは、イシュマだぞ」
「ええっ……?」
言われてみれば、ここに来てしばらく経った頃、ブルーノとユルビーが、取っ組み合いの喧嘩をしていたことを思い出した。引っ掻いて殴って傷だらけになってもやめなかった。理由を聞いても二人は絶対言わないというばかりで、公爵は途方に暮れていた。
兄弟のいなかったイシュマは、男兄弟とはここまで激しく喧嘩をするのかと驚いたが、後にも先にも、二人があれほど傷つけ合ったのはその時だけだ。
みんながお手上げ状態だったため、イシュマが仲裁に入った。どうにか仲良くしてほしくて、こんな喧嘩をするなら、二人とも嫌いになると言ったことを思い出す。まさかそれが、ここまで尾を引くことになるとは、思いもしなかった。
「イシュマに嫌われたくないから、ブルーノのことだけは認める。だけど、他のやつはダメだ。絶対に渡さない」
「ちょっ……ユルビー……あっ、ん、んっ」
急に強く抱きしめられ、シャツのボタンを外されて、ユルビーの大きな手が入ってくる。胸を弄られ、尖りを指で挟まれた。
「ユルビー、まっ……待って」
「待たない。ブルーノには触れさせたじゃないか。エロイズの野郎まで……。イシュマは何も分かってない」
「あっ、ひぃっ」
両方の尖りを指でつままれ、ぐっと上に引っ張られた。薬を盛られた影響が残っており、強烈な快感でピリリと痺れる。
「あの男に、どんな風にやられた? 吸われて、噛まれたのか?」
「あっ……んっ、な……ない、ちょっと触れられたく……らい」
「そうか……。じゃあ、ここは?」
「あっ、まっ……ん、んんっ!」
ズボンの紐が解かれ、ユルビーの手が下着の中へするりと侵入してきた。ソコはすでに反応しており、根本を掴まれると一気に硬くなってしまう。
「何だよ、こんなにして……」
「だっ……だって」
「おい、溢れてきたぞ。早過ぎないか?」
「んっ……あ……あっ、ううっ」
イシュマのモノはユルビーの大きな手に包まれたら、オモチャのように見えてしまう。先端を少し弄られただけで、先走りが溢れてきた。
「まだ完全に抜けてないな。ほら、イケ。辛いだろう?」
「んっ、あっ……あっ、あっ……いっ……んっ」
ブルーノに触れられる時とはまた違う。無骨で容赦のない動きは少し痛いくらいだ。それでも、ユルビーに握られているのだと思うと、どうしようもなく熱くなり、気持ちが良くなってくる。
「んっー、まっ……待って、そんなに激しくしたら……」
「イシュマ、こっちを向け。顔を見せてくれ……お前のイク時の……」
片方の手で下を扱かれ、もう片方の手で髪を掴まれる。振り向く形で背後にいるユルビーの方を向くと、燃えるようなユルビーの目が見えた。
「あっ、ふっっ……も……だめ……んっんんんっ」
快感が体を貫き、頭が真っ白になる。先端を擦られた瞬間、イシュマは欲望を吐き出した。
こんなに間近で達する顔を見られるなんて恥ずかしい。何とか声を漏らさないようにするのが精一杯だった。白濁は最初だけ勢いよくシーツの上に飛んだが、残りはユルビーが手の中で受け止めた。
「ん……はぁ……ハァハァ……あ……ふっ……」
気怠さと興奮の狭間で、ただ息を吸って吐くことしかできない。力が抜けて、イシュマはぐったりとシーツへうつ伏せになる。ユルビーがゴソゴソと動く気配がして、衣服が床に投げられた。
「ん……ユルビー?」
ベッドが軋み、ユルビーが上にのしかかってきた。お尻に硬いものを当てられ、それがなんだか分かったイシュマは、鼻から息を吸い込んだ。
「悪い、もう限界だ。挿入はしないから、ここを使わせてくれ」
「えっ……? え?」
足を揃えられて、尻と太ももの間に太くて大きなモノがねじ込まれた。痛くはないが変な感覚だ。すぐにピストンが始まり、熱くて荒い息遣いか耳元に降り掛かる。
「ふっ……、ふ……っ、……くっ……」
ユルビーが感じている声。低くて腹に響く声に、艶が増して、聞いているだけでイシュマも熱くなってきた。
「あっ……う……はぁ……」
ユルビーのソコは長く反り返っており、深く差し込まれるとイシュマのモノに触れる。わずかに擦れる感覚がたまらなく気持ちいい。イシュマはたまらず、先端をシーツに擦り付ける。
「イシュマも……気持ちいい……のか?」
「う…………んっ……気持ち……い」
そう言うとユルビーは腰を持ち上げ、激しく打ち付けてきた。まるで本当に挿入されているかのような動きに、興奮して腰が揺れてしまう。
もっと、もっと、深く繋がりたい。
溢れ出してくる欲求に溺れそうになりながら、イシュマはシーツを掴んだ。
「イシュマ……イシュマ……」
パンパンと肉のぶつかる音と共に、ユルビーが名前を呼んでくる。快感が増しておかしくなりそうになる。もう声を堪えていられなかった。
「ああっ……あっ、あっ、はぁ……ああっ……ユルビー……気持ちい……いいっ、も……め……」
「イシュマ……うぅ……くっ……ううっ」
深く腰を沈めたユルビーがぶるりと震え、まもなくイシュマも達した。シーツの上に白濁が飛び散っている。どちらが放ったものかわからないくらい混じり合って、雄の匂いを放っていた。
「イシュマ……好きだ……愛している」
懇願するような声とともに、後ろから強く抱きしめられる。
この関係を何と呼ぶのかわからない。
もうとっくに兄弟の一線を超えてしまった。
ただ、いつまでも仲の良い兄弟でいたかった。もう戻れないと知って、イシュマは目を閉じる。小さな滴が、目元のホクロの上をこぼれ落ちていった。
ひとりはたまらなく寂しい。
ずっとひとりだったから。
三人でいることの幸せを知ってしまったから。
死にたくない、生き残りたい。
そう思って生きてきたけれど、気づけばいつもブルーノとユルビーが隣にいて、一緒に歩いてきた。
楽しく遊んだ時も、怒られた時も、寒くて寂しい夜も……。
一本なら簡単に折れてしまうのはその通りだ。
ブルーノとユルビーがいてくれたから、ここまで歩いてくることができた。
彼らを応援したい。幸せになってほしい。
このままでは壊れてしまう。どうすればいいのか、ますます深い森に入り込んでしまった。
イシュマの心の中とは違い、空は雲ひとつなく、よく晴れている。澄んだ空気を感じながら、カップを口へ運ぶ。一口飲んだお茶はひどく苦く感じる。
今日も仕事がろくに手につかず、うわの空だったので、お使いの仕事に回された。外の空気を吸えば気分も違うだろうと思ったが、変わらない。書類を届け終え、一休みするため、オープンテラスのカフェに入った。
席に置かれていた新聞が目に入り、また気分が重くなる。
注目の若手貴族として、ブルーノとユルビーが載っていたのだ。しっかり似顔絵入りで書かれているのは、縁談の相手を探すため、この新聞を利用する貴族が多いからだ。二人には毎日のように手紙が届くが、これでまた増えるだろう。
二人のことを考えると胸が痛い。
エロイズに襲われた一件があり、ブルーノとユルビーから一週間の外出禁止が言い渡された。とりあえず休暇をとって家にいたが、ずっと仕事を休むわけにもいかないので、二人の許可も出て、ようやく今日復帰した。
護衛を付けられており、今も呼べば数人駆けつけてくる。
レストランパレットで何があったのか、二人に細かいところまで詳しく話した。ブルーノは始終真顔だったので、まだ怒っているのかもしれない。
心配してくれる姿は、周りからは仲の良い兄弟に見えるだろう。
どこでおかしくなってしまったのか。
僕達、家族になろうよと言って、ブルーノが手を差し出してくれた。その手を取った時から、間違ってしまったのだろうか。
義理とはいえ、兄弟で淫らな関係を持つなんて正気じゃない。拒絶できず、流されるままに、受け入れてしまった。心の中で後悔が雨となり降り続いている。
健全だった二人の人生を壊してしまった。ゲームの流れと同じように、彼らを冷たく拒むべきだった。
テラス席ではお茶を楽しむ男女の姿がある。男同士の恋愛は社会的に受け入れられない。ましてや、兄弟の間でなど許されない。
ことが公になれば、教会から破門、出世の道は閉ざされ、多くの事業や財産を失うことになるだろう。
ブルーノは公爵家の主人として、ユルビーには帝国の騎士として、約束された輝かしい未来が待っている。二人には後ろ指さされるような人生を送ってほしくない。前世でも今世でも、孤独だった自分を救ってくれたから……。
「俺が……いなければ……」
カップの中に、どこかから飛んできた花びらが落ちた。今にも沈んでいきそうな小さい花びらを眺めていると、人の気配がした。
「……しつこいですね」
「それが仕事なものですから」
顔を上げると、前に接触してきた記者が立っていた。糸目をもっと細くして笑った記者は、許可をもらうことなく、勝手に対面の椅子に座った。
「お待ちしていましたが、連絡が来なかったので。お力になりたいと言った件、ご検討いただけましたか?」
イシュマはチラリと記者を見た後、首を横に振った。
「考えてみたよ。君が言った守ってくれる人物だけど、あれはエロイズ伯爵のことだね?」
記者の表情は変わらない。笑顔を貼り付けたままで、返事だけがない。
「私だって馬鹿じゃない。伯爵が君の会社に大きな出資をしていることも知っている。政府に批判的な記事を載せているよね。怪しい組織との繋がりもありそうだ」
ゲームの流れからして、記者の登場は決められたものだったと推測できる。違いがあっても、誘い文句や、どこで話に乗るかくらいだろう。
「私があまりに目立たないから、兄弟に虐げられているとでも思った? 今の仕事に不満はないし、家を出ることになっても構わない。遺産なんてもらうつもりはないから、骨肉の争いなんてありえないね。だって……」
小さな花びらがお茶の海に沈んでいく。まるで自分みたいだなとイシュマは思った。
「彼らは私を救ってくれた。二人のためなら死んだってかまわない」
記者は息を呑み、大きく目を開いた。
「話は終わりだ。これ以上付きまとうなら、私も容赦はしないから」
イシュマは椅子を引いて立ち上がり、記者に背を向けて歩き出す。しかし、クスリと笑う声がして足を止めた。
「私にも仕事がありましてね。流れが別の方向へ進んだら、それを正すかどうか見極めなければならないのです。イシュマさんの言葉が本当かどうか。じっくり確かめさせていただきます」
「なっ……、何だって!?」
意味深なことを言われ、急いで振り返ると、もうそこに記者の姿はなかった。冷たい風が吹き抜けていく。イシュマは寒気がして自分の肩を抱いた。
嫌な予感が足元から這い上がってくる。それを振り払うようにイシュマは走り出した。
「イシュマ様、大変です」
邸に戻るとすぐ、執事長が青い顔をして走ってきた。いつも静かな彼が焦っている姿を見て、心臓が大きく揺れる。
「ブルーノ様が、帝国軍の治安部隊に連行されました」
「なっ! なんだって!? 何でそんなことに?」
「事業資金から裏金を作り、それを反政府組織に流していると告発があったそうです。先日、大規模な組織に捜査が入り、貴族が捕まったのですが、そこにプリンプ家から資金提供を示す証拠があったそうです」
「ありえないっ、捏造だよ! そんなことがあるわけない!」
ありえないことだと頭の中で繰り返す。反政府思想に傾倒し、先頭に立って反乱を起こすのはイシュマのはずだ。ブルーノは皇帝に忠実で、相談役も務める優秀な人物だったと書かれていた。それともこれもまた、自分のせいで流れがおかしくなってしまったのだろうか……。
「落ち着いてください。まだ聴取の段階で、ブルーノ様は協力を示すために連行されたのです。イシュマ様へ伝言があります。大丈夫だから、必ず帰るから、家で大人しくしているようにと」
「そんなっ……大人しくなんて……。ユルビー? ユルビーはどこに?」
混乱と恐怖で手が震え、一人で立っていられなくなる。ユルビーを探して辺りを見回していると、ガタンと大きな音が響き、玄関のドアが開けられた。
ユルビーが知らせを聞き帰ってきたのかと思ったが、入ってきたのはユルビーの部隊の騎士だった。
「緊急のため無礼をお許しください! 先ほど、プリンプ卿が帝国軍捜査課の求めで、殺人事件の容疑者として連れて行かれました」
「なっ……なっ……」
次々と頭を殴られ、正気を失いそうだ。今度はユルビーが災いに巻き込まれている。信じられない事態に声が出てこない。
「殺人事件とは? いったい誰の……」
イシュマの代わりに、執事が騎士へ問いかけると、彼は気まずそうな表情になった。
「……お父様です。前公爵閣下の事故が再調査され、他殺の可能性があると……。プリンプ卿は強い動機を持っているとされ……」
「イシュマ様!」
絶望に押しつぶされ、イシュマは床に座り込んだ。冷たくなった体、震える心。恐怖の中に落とされ、どこにも逃げ場などない。
いつも大丈夫だと言って手を引き、導いてくれた二人がいない。頭は真っ白になり、イシュマは震える手で冷たい床に触れた。
「どうすれば……、どうすればいいんだ」
運命に逆らった代償なのか。
大きな影が迫り、イシュマを飲み込もうとしていた。
執務室の磨き抜かれた木床は、靴音がよく響く。
これは相当怒っているなと思いながら、イシュマは椅子に座り、左右を行き来する靴を見ていた。
「聞いている? イシュマ」
「うん」
「本当に、何もなかったの?」
何度聞かれても、同じ答えしかできない。イシュマはまた安心させるように微笑み、静かに頷いた。
「おでこをぶつけたから、少し腫れているけど、医師にも診てもらって、問題ないと言われたし。エロイズ伯爵は申し訳ないからと、雨を凌ぐために自分の馬車を提供してくれたんだよ」
イシュマの説明に、ブルーノは腕を組みながら、また納得できないという表情をする。これではずっと堂々巡りだ。こんな時、まとめ役になってくれるユルビーが不在なのでもどかしい。
「イシュマ、世の中の男はみんな危険だ」
「何を言うかと思えば……」
「その中でも、グリーン・エロイズは最も危険だと言っていい」
言われなくとも分かっている。イシュマだって、近づきたくない人物だ。
「僕も上級会議や事業の関係で必要な時以外、話したくもない。仕事は冷酷で傲慢、派手な交遊関係、怪しげな団体との関係も噂されている」
「まさに、危険人物だね」
「その男が、イシュマと二人きりでいたんだ。心配しないはずがない!」
他のことは冷静に対処できるのに、イシュマのこととなると、ブルーノのネジは外れてしまう。ブルーノが頭を抱え座り込んだので、イシュマは椅子から立ち上がった。
「ブルーノ、心配しないで。俺はこの通り、元気だよ。馬車の中では他愛のない話をしただけ。ほら、いつもみたいに笑ってよ」
ブルーノの隣に膝をついたイシュマは、ふわふわの柔らかい髪を撫でる。イシュマの言葉に、ゆっくり顔を上げたブルーノの目は潤んでいた。
綺麗だ。
女性達が身に付ける宝石なんかよりも、ずっと澄んでいて綺麗だ。
「キスして」
「え?」
「イシュマがキスしてくれたら安心する」
告白に応えられないなら、軽々しく触れ合うべきではない。そう思うのに、涙で揺れるブルーノの目を見たら、突き放すことはできなかった。
イシュマは、ブルーノの長い前髪を後ろに流し、形のいい唇にチュッと口付けた。
「……したよ」
これでいいと思い離れようとしたイシュマの肩をブルーノが掴んだ。
「足りない」
ぐっと引かれて視界が回転する。
背中に硬いものを感じ、目を開けると天井が見えた。そこで視界に入ってきたのはブルーノだ。髪を耳へ掛けながら、ニコッと微笑む。いつも通り、ご機嫌なブルーノの笑顔だ。
「ん……」
ブルーノの顔が近づいてきて、唇が重なる。軽く触れてわずかに離れ、また重なる。そんなやり取りを何度か繰り返し、イシュマが息を吸い込んだ瞬間、ぐっと深く口付けられる。
「んっ……め……ぶる……の……、ううぅ……ああっ……」
全て飲み込まれ、頭は真っ白になり溶けてしまう。ダメだと言いたいのに、舌が入ってきた瞬間、待ち構えていたようにイシュマは舌を絡ませる。
冷たい床、濡れた唇、熱い舌。
全てが気持ちよくてたまらない。
ずっと離れていたものが、元の形に戻ったような、抗えない快感に身を震わせる。
「イシュマ……」
激しいキスの合間に、シャツのボタンが外され、平たい胸を弄られる。いつの間にか抵抗しようと伸ばしていた手はブルーノの背中に回り、誘うように抱きしめていた。
「あっ……んっ……ふ…………ブルーノ……」
「イシュマ……好き……好きだよ」
胸の尖りを舐められ、イシュマは背を反らせて喘ぎ声を漏らす。その瞬間、執務室のドアがバァァンと大きな音を立てて開いた。
「……なんだよ……これ」
入り口で目を見開き、驚愕の表情で立ち尽くしているのはユルビーだ。目が合い、イシュマはハッと息を呑む。慌ててシャツの前を合わせ立ちあがろうとしたが、ブルーノがそれを止めた。
「何って、見たままだよ。お前こそ、先に告白しただろう? 話し合うって約束したのに」
「それはっ……」
「おかげで僕も告白したんだ。イシュマに甘えていいって言われたから、今甘えているところ」
「ブルーノ……まっ……んんっ!」
ブルーノの懐から逃れようとしたが、体重をかけられて身動きが取れない。しかも、ブルーノはユルビーに見せつけるように、口付けてきた。
「だっ……、だめ……ぶる…………んっ……うぅ」
さっきより深く口内を舐められて、下半身が熱くなる。ユルビーの前で、彼に見られている。ダメだと思うと、もっと気持ち良くておかしくなる。
ガタンと音がしてドアが閉まると、すぐにバタバタと遠ざかる足音が聞こえてきた。ユルビーが走って行ったのだとわかった。
ようやく力が抜け、ブルーノの笑い声が聞こえてきた。
「ふふっ、ユルビーのやつ、怒ったかな」
「何をしているんだよ、ユルビーの前で……こんなこと、俺達は……兄弟なのに……」
「兄弟だと思っているのは、イシュマだけだよ」
その言葉にチクリと心臓が痛む。イシュマを見下ろすブルーノの目には、何の感情もこもっていないように見えた。
「僕達はずっとイシュマが好き。たぶん、二人とも、出会った時から……」
「なっ……そんな……嘘だ」
「嘘じゃない。イシュマはお父様に手を引かれて、不安そうな顔で歩いてきた。昨日のことのように思い出すよ。手を繋いだら、目に涙を溜め見つめてくれたよね。絶対僕が守らないとって思った」
「それは家族としての気持ちじゃ……」
「最初はね、そう考えたよ。だけど、天使のような君の寝顔を見る度に、自分の中に欲が生まれてくるのを感じた。年頃になっても、欲望を感じるのはイシュマだけ。だから僕達、誰とも噂になったことすらないだろう?」
華やかな外見から、社交界の薔薇と称されるブルーノ。ユルビーも有望な騎士として絶大な人気を誇っている。だが、確かに二人とも鉄壁と呼ばれ、近づく令嬢達をことごとく跳ね除けてきた。
貴族の男も女も、結婚前に遊ぶことはあまり良しとされない。それを忠実に守ることで誠実さが引き立ち、またたくさんの視線を集めてしまう。二人の元には毎日山のように縁談を求める手紙が届いていた。
「そんなの……もっとダメだよ。公爵家の跡取りなんだよ。一族として、子孫を残し、家を引き継いでいかないと。お父様だって、このことを知ってどんなに胸を痛めたか」
「イシュマも知っているだろう? 叔父のカーマインは色事好きで、各地に種を蒔いたから、子供が十人、いやそれ以上いるじゃないか。その中から優秀なやつを選べばいい。現にうちの会社で何人か働いている」
質問したのは自分なのに、ブルーノのが何を言っているのか、よくわからない。遺産相続を前にして、突然の告白。これは本当なのか、それとも嘘で自分は利用されて殺されるのか、どんどん想像が膨らみ手が震える。
ブルーノはイシュマの手を握り、チュッと甲に口付けた。
「恐がらないで。受け入れられなければそれでいい。イシュマは今のままでいいんだ。その代わり、どこにも行かないで。ずっと僕達の側にいるって約束して」
歪んでいる。
思い合うことなく、愛と呼べるのだろうか。
静かに息を吐いたイシュマは、少し考えさせてと言い、目を瞑った。
翌日、少しも仕事に集中できず、ミスばかりするイシュマに、上司は早く帰れと言って早退させた。週末ゆっくり寝れば治るだろう。そう言われて背中を叩かれたが、少しも気持ちは晴れない。
辻馬車を拾い一人で帰宅すると、まだ二人は帰宅していなかった。執事から手紙を受け取り、部屋に戻って開封する。差出人はエロイズ伯爵家だった。
「……体調はどうですか? できればお詫びをさせてください。週末の夜、パレットを予約しております。どうか来ていただけたら嬉しいです、……か。早速来たな」
あの事故は、エロイズ伯爵と知り合うためのゲームの展開だったように思える。そして、ゲームの流れ通りに、これから反政府への誘い、反皇帝思想の洗脳が始まるのだろう。イシュマは、プリンプ公爵家という大きな看板を背負っている。つまり、イシュマを駒として取り込むことで、反逆者達は支持勢力を増やそうという魂胆だろう。
「グリーンにとっては、自分に矛先が向かわないための、いい風除けになるってことだ。それだけは避けないと……。何度も勧誘されたら嫌だし、キッパリ言わないと」
いかにも紳士でいい人そうに見えたが、裏の顔なんて分からない。問題はどうやって会いに行くか、だ。
ブルーノがこのことを知ったら、絶対に家から出してもらえないだろう。
頭を悩ませていると、コンコンとノックの音がした。どうぞと言うと、ドアが開き、執事が部屋に入ってきた。
「旦那様から連絡が入りました。視察先の領地で山崩れがあり、被害状況確認と復旧手配が数日かかるそうです。戻りは週明けになるかと」
「それは大変だ。ブルーノや公爵家の者達に怪我はない?」
「ええ、旦那様も他の皆も無事です。ユルビー様は夜勤続きなので、週末は兵舎に泊まられるそうです」
「そう……珍しいな。俺一人か……」
ポツリと呟いてから、グリーンの所へ向かえるように、事態が動いていることに気づく。二人が両方とも家を空けることは滅多にない。これが悲劇への運命を断ち切るチャンスかもしれない。
不確定な情報に振り回されるな。
やるべきことをやろう。
イシュマは引き出しから紙を取り出し、簡単にグリーンへの返事を書いた。
「執事長、これを送ってほしい」
「かしこまりました」
執事が部屋を出て行った後、イシュマは窓辺に立ち夕陽で赤く染まった空を見上げた。
グリーンが指定した店パレットとは、帝国で今一番予約が取れないと言われているレストランだ。一等地に店を構え、黒を基調としたハイセンスな内装、シックな店内に映えるような彩り豊かな料理と酒。
一階席は軽食用にテーブルが並び、二階は完全個室の造りとなっている。店に入ったイシュマが名前を言うと、当然のように二階へ案内される。
選ばれた者だけが入れると言われているので、階段へ向かうイシュマに視線が注がれる。
「あれ? イシュマ?」
ガタンと音がして聞き覚えのある声がした。振り返ると、従兄弟のダイタイ立っていた。ダイタイはユルビーと同じ歳、オレンジ色の大きな目と、同色でくるくるパーマの髪がよく似合うとにかく明るいやつだ。彼はブルーノが経営する店で働いている。知り合いに会うのはマズいと思ったが、もう遅い。
「久しぶりだね。俺は招待券が当たってここに来られたんだけどイシュマは? 一族の懇親会にもあまり顔を出さないから、会いたいと思っていたんだ。ほら、俺達、小さい頃はよく遊んだのに……」
ペラペラとよく喋るダイタイの口元に指を当て、静かにするように目配せをする。これ以上、注目を集めたくない。
「ダイタイ、お願いだ。ここに来たことはブルーノには言わないで」
「え……?」
「心配かけたくないんだ。過保護なことはよく知っているだろう?」
「わかったよ。でもイシュマは誰と――」
ダイタイがそう言いかけた時、階下の客達があっと声を上げる。階段の上に、グリーンの姿が見えたからだ。これで完全に見せ物になってしまったと、イシュマは額に手を当てる。
「イシュマ、もしかして……」
「急いでいるから、ごめんね」
ダイタイはよく喋るが、約束を破るようなタイプではない。軽く手を上げたイシュマは、グリーンが待っている二階に向かうため、階段を上った。
「来てくれて嬉しいです。その服も……よく似合っている」
「……ありがとうございます」
店の雰囲気に合わせたのか、グリーンは黒のコートに黒いシャツ、全身を黒で揃えている。イシュマも無難な黒いコートを選んだが、大人の色気溢れるグリーンと並ぶと、恥ずかしくなった。
「美しい君をもっと飾りつけたい。じっとしていて」
グリーンはイシュマの胸元に何かを取り付けた。高そうな黒光りする宝石のついたラペルピンだ。
「これは、ブラックダイヤですか!? こんな高価なものをいただけません!」
「怪我をさせてしまったお詫びです。貴方に似合うと思い、持ってきました。これくらいさせてください」
まるで首に枷を付けられたような気分だ。どうにかして返したいが、ここで揉めても仕方ない。後で送り返そうと決める。小さく頷くと、微笑んだグリーンはイシュマの背中に手を回し歩き始める。
二階は一階よりもシンプルに造られていたが、個室に入るとその豪華さに驚いた。中央の丸テーブルにある花瓶には、様々な色の花が一同に集められており、目が眩むような華やかさだ。そして、その花々に負けない料理が、所狭しとテーブルに並べられている。
「す……すごい豪華ですね」
「さぁ、遠慮しないで。たくさん食べてください」
給仕ではなく、グリーンが直接椅子を引き座らされた。しかもナプキンまで広げてくれるので、裏を感じて怖くなる。
イシュマはすぐに話を切り出すつもりだった。用意されていた料理に手をつけていいものか、警戒心が湧き出てくる。
「一流シェフに旬のものを揃えさせました。どうか一口でも食べていただけると嬉しいです」
部屋の入り口にはシェフが立っており、期待がこもった目でじっと見られている。玄関ホールでは大勢に姿を見られており、さすがに毒殺はないだろうと考えた。
恐る恐る目の前にある料理を口にする。複雑過ぎて味がよく分からないが、美味しいと感想を述べた。シェフは嬉しそうな顔になり、ありがとうございますと言った。
気がつくとグリーンまで嬉しそうにこちらを見つめている。
そこでシェフが料理の説明をしてくれた。旬の果物である、オレンジのソースがかかったステーキに炒め物、たくさんのフルーツを使ったケーキやタルト、色とりどりで全て美しい。
見ているだけでお腹いっぱいだ。
パレットの名物だというパンを勧められて食べることになる。緊張して水分を持っていかれたので、近くにあったワインを口に含み、やっと喉に落とした。
「あの……伯爵は、召し上がらないのですか?」
「ええ。少し手違いがあったみたいです。苦手としている食材がありまして」
「すみません、私だけ……」
「いえ、いいのです。令息の食べる姿は可愛らしいですから」
微笑んだグリーンがウィンクしてきたので、ゾワゾワと寒気がした。そろそろ勧誘が始まりそうだ。こちらから先に線を引いておくべきだ。
イシュマはフォークとナイフを置き、背筋を伸ばした。
「あの、期待をさせてしまう前に、ハッキリ言わせていただきたいのですが……」
そう言うとグリーンは右眉を上げ、意味ありげに微笑んだ。
「あの……わ、私は、政治には関心がありません!」
驚いたように目を開いたグリーンの表情を見て、イシュマはもう一歩だと勢いをつけた。
「今の仕事に満足していますし、環境に不満はありません。必要とあらば家を出て、一人で暮らす用意もできています。私は……とにかく、争いが嫌いで、静かに生きたい、それだけなんです!」
全部言い切ったイシュマは、肩で息をしながら緊張でゴクリと唾を飲み込む。情けない男だと罵倒されることも覚悟した。
すると、グリーンは考えるように眉を寄せた後、プッと噴き出して大きな口を開けて笑い出した。
「くくっ……くっ、ははははっ! なんて面白い人なんだ」
「はい?」
「私が令息を、反政府組織にでも勧誘するのかと思っていたのですか?」
グリーンは腹を抱えて笑うので、何がそんなにおかしいんだと混乱してしまう。
今自分で言ったその通りじゃないか、という言葉が喉から出そうになる。ゲームの流れを変えようと思ったのに、グリーンの反応が変だ。何を間違えたのか、それとも初めからおかしかったのか。
唖然としたイシュマがパクパクと口だけ動かしていると、ゴホンと咳払いをしたグリーンは軽く手を上げた。
「私は多方面と繋がりがありますので、もしそういった活動に興味があれば、紹介することもできます」
「あの、それは本当に……」
「ええ、興味がない、そういうことですよね?」
グリーンの言葉にイシュマは静かに頷く。
もしかしたらゲーム内でのイシュマは、現状に不満があり、誘われたからというより、自ら積極的に反政府思想に傾倒していったのではないか。グリーンは仲介役として動きながら、美味しいところを持っていこうとしていた。
馬車の事故はある程度仕組まれたものだと考えられる。グリーンは誘いをかけたが、反応が悪かったため、組織への紹介を選択肢から外した。そう考えると腑に落ちた。
「あの……では、今夜お誘いいただいたのは、本当に事故のお詫びをということですか……?」
「もちろんです。まさか、私がよからぬことを企んで貴方をここへ呼び出したと?」
「……ええと……まぁ……はい」
ただ誰にも迷惑をかけず生き残りたいと思っていただけなのに、何もかもが思い通りにいかない。養父の死や遺産の謎、義兄と義弟からの告白、そして死へ繋がる糸を切ろうとしたのに、空振りになってしまった。
いよいよ混乱が深まり、食事の席から立ち上がったイシュマは、部屋に備えられていたソファーに座った。これは、自分の行動により、すでに死の運命から解放されたと思っていいのだろうか。
「大丈夫ですか? ご気分が優れませんか?」
ソファーの隣が沈み、横にグリーンが座ったことに気がつく。ワインを軽く飲んだが、そのくらいで酔うタイプではない。この混乱のせいなのか、やけに頭が熱くなり、酔いが深くなった気がする。
「すみません、少し飲み過ぎたようです」
ソファーの背にもたれて天井を見ていると、グリーンはイシュマの手に触れてきた。
「実を言うと、悪いことを、考えていなかったわけではありません」
「……え?」
「貴方はプリンプ公爵家の次男、その肩書きを持ち、多くのものを手にする可能性のある男。利用して、全て奪ってやろうかと……」
「……悪い人ですね」
マズいと思った瞬間、心臓がドクドクと鳴り、身体中が熱くなる。歪む視界の中で、グリーンの口元が近づいてきた。
「そう思っていたのですが、誤算でした。イシュマ、貴方がこんなに魅力的な人だとは……」
「え?」
「あの二人が輝いているから目立ちませんが、貴方はとても美しい……。話しながら頬を染め、目を細めて笑う顔は、胸を射抜くように可憐で可愛らしい。特にこの両眼の下にある二つ黒子……これが私の心を捉えて離さない」
あぁまた、おかしい。
考えもしない場所へ落とされる。
肩を押されたイシュマは、すでに体の力をなくしており、簡単にソファーに転がってしまう。ギシギシと音がして、グリーンが興奮した目で見下ろしてきた。
「力が……入らない……」
「ワインに少しだけ気分が良くなる薬を入れました。薬に関しては、プリンプ家の方が手広くやってますが、うちも色々と揃えています。大丈夫です。感度が良くなるくらいで、毒ではありません」
「あ……っ……」
シャツの前を開かれ、そこにグリーンの手が侵入してきた。直接胸に触れられただけで、電流が走ったように快感が流れる。
「やめろ! こんなこと……遊ぶ相手なんてたくさんいるじゃな……か」
「満たされないんですよ。誰を抱いても心が動かない。けれど、イシュマに会った時、話しているだけで、興奮して心臓が壊れそうでした。貴方はどこまでも真っ白で……ああ……こんなに美しいのに、この中に、私のモノが挿入ったら、どうなるのでしょう? 汚してみたい……ドロドロに……」
「はっ……なせ、変態!!」
何とか動かした足は虚しく空振り、もっと深く沈んでしまう。のしかかってきたグリーンは、膨張したモノを押し付けてきた。イシュマはグリーンの肩を叩き、押し返そうとしたが、その手を掴まれ、頭の上で縫い付けられてしまう。
「ああ……想像以上だ。興奮し過ぎて……達してしまいそう。こんなことは初めてだ」
「いや……いやだっ! やめろ!!」
嫌悪感が肌から溢れる。ブルーノやユルビーに触れられた時とは違う。吐き気がする恐怖に全身が悲鳴を上げた。
その瞬間。
「イシュマ!!」
ドアが開け放たれ、係員に押さえられながら、部屋に飛び込んでくる人が見える。大きな影はすぐにグリーンを引き剥がし、部屋の壁に叩きつけた。そんなことができるくらい力が強い男は一人しかいない。
「ゆ……ユルビー……」
「イシュマ、あぁ……なんてことだ。あんなやつにこんなことを……」
ソファーまで走ってきたユルビーは、自分の上着を脱ぎ、抱き起こしたイシュマを隠すように包んだ。
「ユルビー……どうして……仕事は?」
「仕事なんてどうでもいい。ダイタイから連絡がきた。イシュマがエロイズの野郎と会っているって」
ダイタイには、ブルーノに言わないよう口止めをしたのを思い出す。それを守ってユルビーに伝えたようだ。
「彼……は、エロイズ伯爵は……?」
「壁に当たって倒れている。気を失っているんだろう。行くぞ、話は後で聞く」
「う、うん……でも足が……」
立とうとしても力が入らない。イシュマの様子を見て、ユルビーが舌打ちをした。怒られる、そう思った時、ふわりと体が浮いた。
ユルビーはイシュマを横抱きにして軽々と持ち上げた。
「体が熱い、家まで辛抱してくれ」
「ん……」
どれくらい時間が経っているだろうか。来た時と同じ、店の階段を下りて外へ出る。ガヤガヤとした店内、人の視線が集まっているのは間違いない。だが、ユルビーがかけてくれた上着で、その様子は見えなかった。
イシュマは朦朧とした意識の中、馬車で運ばれて邸に到着した。中へ運ばれた後、水を大量に飲まされて、それを全部戻したところまでは覚えている。
おそらく大騒ぎだったはずだが、次にイシュマが目を覚ますと、まだ暗い空が見えた。辺りは静かで落ち着いた空気に包まれている。
「うぅ……」
「……起きたか?」
わずかに声を漏らすと、すぐ近くで声がした。隣でユルビーが寝ていたようだ。
「ユルビー、ごめん……俺……」
「急に起き上がるな。大丈夫か? 水は?」
体を起こすとユルビーに背中をさすられる。少し眠れたことで、船酔いのような気持ち悪さは消えていた。
「大丈夫。本当にごめん……俺、なんてことを……」
「いい、分かっている。アイツは蛇のような男だ。事故を利用して、詫びをしたいとか上手いこと言って近づいたんだろう。クソ……気をつけていたのに……」
言わなくても全て筒抜けのような状態だ。誰もが分かるような罠に引っかかったのだと思うと、また頭痛を感じた。
「きっと……俺を辱めて、ブルーノを脅す材料にでもするつもりだったんだよ。それに、言っていることがおかしくて、変なやつだった」
窓から入る明かりに照らされたユルビーは、困ったような目をしてイシュマを見ていた。あまりに軽率だったので呆れているのかもしれない。
「本当ごめん」
「いいよ……無事でよかった」
不甲斐なさに項垂れていると、後ろからふわりと抱きしめられた。背中からユルビーの温もりが伝わり、張り詰めていた気持ちが緩んでいく。
ユルビーはイシュマの頭に顔を埋める。クンクンと鼻を鳴らしてくるのでくすぐったい。そういえば子供の頃からよく匂いを嗅がれたのを思い出す。お前は犬かと言って笑ったが、そういうところは大きくなっても変わらない。
「ユルビー、あのことだけど……」
「ん?」
「ほら、俺のこと……その……好きだって……」
「ああ、そのことか」
あんな熱烈な告白をしておいて平然と返される。イシュマの方が意識してしまい、頬が熱くなった。
「いつから……そういう気持ちだったの? 俺、全然気づかなくて……」
「そうだな……子供の頃、ブルーノと俺で、どっちがイシュマを好きかで喧嘩になった。その時には、多分、そういう好きだって、何となく気がついていた」
「そんな昔から? 喧嘩までしたの?」
「そうだ。お互いそれだけは絶対に譲らなくて、仕方がないから認めることにした。これ以上喧嘩をしたら、二人とも嫌いになるって言ったのは、イシュマだぞ」
「ええっ……?」
言われてみれば、ここに来てしばらく経った頃、ブルーノとユルビーが、取っ組み合いの喧嘩をしていたことを思い出した。引っ掻いて殴って傷だらけになってもやめなかった。理由を聞いても二人は絶対言わないというばかりで、公爵は途方に暮れていた。
兄弟のいなかったイシュマは、男兄弟とはここまで激しく喧嘩をするのかと驚いたが、後にも先にも、二人があれほど傷つけ合ったのはその時だけだ。
みんながお手上げ状態だったため、イシュマが仲裁に入った。どうにか仲良くしてほしくて、こんな喧嘩をするなら、二人とも嫌いになると言ったことを思い出す。まさかそれが、ここまで尾を引くことになるとは、思いもしなかった。
「イシュマに嫌われたくないから、ブルーノのことだけは認める。だけど、他のやつはダメだ。絶対に渡さない」
「ちょっ……ユルビー……あっ、ん、んっ」
急に強く抱きしめられ、シャツのボタンを外されて、ユルビーの大きな手が入ってくる。胸を弄られ、尖りを指で挟まれた。
「ユルビー、まっ……待って」
「待たない。ブルーノには触れさせたじゃないか。エロイズの野郎まで……。イシュマは何も分かってない」
「あっ、ひぃっ」
両方の尖りを指でつままれ、ぐっと上に引っ張られた。薬を盛られた影響が残っており、強烈な快感でピリリと痺れる。
「あの男に、どんな風にやられた? 吸われて、噛まれたのか?」
「あっ……んっ、な……ない、ちょっと触れられたく……らい」
「そうか……。じゃあ、ここは?」
「あっ、まっ……ん、んんっ!」
ズボンの紐が解かれ、ユルビーの手が下着の中へするりと侵入してきた。ソコはすでに反応しており、根本を掴まれると一気に硬くなってしまう。
「何だよ、こんなにして……」
「だっ……だって」
「おい、溢れてきたぞ。早過ぎないか?」
「んっ……あ……あっ、ううっ」
イシュマのモノはユルビーの大きな手に包まれたら、オモチャのように見えてしまう。先端を少し弄られただけで、先走りが溢れてきた。
「まだ完全に抜けてないな。ほら、イケ。辛いだろう?」
「んっ、あっ……あっ、あっ……いっ……んっ」
ブルーノに触れられる時とはまた違う。無骨で容赦のない動きは少し痛いくらいだ。それでも、ユルビーに握られているのだと思うと、どうしようもなく熱くなり、気持ちが良くなってくる。
「んっー、まっ……待って、そんなに激しくしたら……」
「イシュマ、こっちを向け。顔を見せてくれ……お前のイク時の……」
片方の手で下を扱かれ、もう片方の手で髪を掴まれる。振り向く形で背後にいるユルビーの方を向くと、燃えるようなユルビーの目が見えた。
「あっ、ふっっ……も……だめ……んっんんんっ」
快感が体を貫き、頭が真っ白になる。先端を擦られた瞬間、イシュマは欲望を吐き出した。
こんなに間近で達する顔を見られるなんて恥ずかしい。何とか声を漏らさないようにするのが精一杯だった。白濁は最初だけ勢いよくシーツの上に飛んだが、残りはユルビーが手の中で受け止めた。
「ん……はぁ……ハァハァ……あ……ふっ……」
気怠さと興奮の狭間で、ただ息を吸って吐くことしかできない。力が抜けて、イシュマはぐったりとシーツへうつ伏せになる。ユルビーがゴソゴソと動く気配がして、衣服が床に投げられた。
「ん……ユルビー?」
ベッドが軋み、ユルビーが上にのしかかってきた。お尻に硬いものを当てられ、それがなんだか分かったイシュマは、鼻から息を吸い込んだ。
「悪い、もう限界だ。挿入はしないから、ここを使わせてくれ」
「えっ……? え?」
足を揃えられて、尻と太ももの間に太くて大きなモノがねじ込まれた。痛くはないが変な感覚だ。すぐにピストンが始まり、熱くて荒い息遣いか耳元に降り掛かる。
「ふっ……、ふ……っ、……くっ……」
ユルビーが感じている声。低くて腹に響く声に、艶が増して、聞いているだけでイシュマも熱くなってきた。
「あっ……う……はぁ……」
ユルビーのソコは長く反り返っており、深く差し込まれるとイシュマのモノに触れる。わずかに擦れる感覚がたまらなく気持ちいい。イシュマはたまらず、先端をシーツに擦り付ける。
「イシュマも……気持ちいい……のか?」
「う…………んっ……気持ち……い」
そう言うとユルビーは腰を持ち上げ、激しく打ち付けてきた。まるで本当に挿入されているかのような動きに、興奮して腰が揺れてしまう。
もっと、もっと、深く繋がりたい。
溢れ出してくる欲求に溺れそうになりながら、イシュマはシーツを掴んだ。
「イシュマ……イシュマ……」
パンパンと肉のぶつかる音と共に、ユルビーが名前を呼んでくる。快感が増しておかしくなりそうになる。もう声を堪えていられなかった。
「ああっ……あっ、あっ、はぁ……ああっ……ユルビー……気持ちい……いいっ、も……め……」
「イシュマ……うぅ……くっ……ううっ」
深く腰を沈めたユルビーがぶるりと震え、まもなくイシュマも達した。シーツの上に白濁が飛び散っている。どちらが放ったものかわからないくらい混じり合って、雄の匂いを放っていた。
「イシュマ……好きだ……愛している」
懇願するような声とともに、後ろから強く抱きしめられる。
この関係を何と呼ぶのかわからない。
もうとっくに兄弟の一線を超えてしまった。
ただ、いつまでも仲の良い兄弟でいたかった。もう戻れないと知って、イシュマは目を閉じる。小さな滴が、目元のホクロの上をこぼれ落ちていった。
ひとりはたまらなく寂しい。
ずっとひとりだったから。
三人でいることの幸せを知ってしまったから。
死にたくない、生き残りたい。
そう思って生きてきたけれど、気づけばいつもブルーノとユルビーが隣にいて、一緒に歩いてきた。
楽しく遊んだ時も、怒られた時も、寒くて寂しい夜も……。
一本なら簡単に折れてしまうのはその通りだ。
ブルーノとユルビーがいてくれたから、ここまで歩いてくることができた。
彼らを応援したい。幸せになってほしい。
このままでは壊れてしまう。どうすればいいのか、ますます深い森に入り込んでしまった。
イシュマの心の中とは違い、空は雲ひとつなく、よく晴れている。澄んだ空気を感じながら、カップを口へ運ぶ。一口飲んだお茶はひどく苦く感じる。
今日も仕事がろくに手につかず、うわの空だったので、お使いの仕事に回された。外の空気を吸えば気分も違うだろうと思ったが、変わらない。書類を届け終え、一休みするため、オープンテラスのカフェに入った。
席に置かれていた新聞が目に入り、また気分が重くなる。
注目の若手貴族として、ブルーノとユルビーが載っていたのだ。しっかり似顔絵入りで書かれているのは、縁談の相手を探すため、この新聞を利用する貴族が多いからだ。二人には毎日のように手紙が届くが、これでまた増えるだろう。
二人のことを考えると胸が痛い。
エロイズに襲われた一件があり、ブルーノとユルビーから一週間の外出禁止が言い渡された。とりあえず休暇をとって家にいたが、ずっと仕事を休むわけにもいかないので、二人の許可も出て、ようやく今日復帰した。
護衛を付けられており、今も呼べば数人駆けつけてくる。
レストランパレットで何があったのか、二人に細かいところまで詳しく話した。ブルーノは始終真顔だったので、まだ怒っているのかもしれない。
心配してくれる姿は、周りからは仲の良い兄弟に見えるだろう。
どこでおかしくなってしまったのか。
僕達、家族になろうよと言って、ブルーノが手を差し出してくれた。その手を取った時から、間違ってしまったのだろうか。
義理とはいえ、兄弟で淫らな関係を持つなんて正気じゃない。拒絶できず、流されるままに、受け入れてしまった。心の中で後悔が雨となり降り続いている。
健全だった二人の人生を壊してしまった。ゲームの流れと同じように、彼らを冷たく拒むべきだった。
テラス席ではお茶を楽しむ男女の姿がある。男同士の恋愛は社会的に受け入れられない。ましてや、兄弟の間でなど許されない。
ことが公になれば、教会から破門、出世の道は閉ざされ、多くの事業や財産を失うことになるだろう。
ブルーノは公爵家の主人として、ユルビーには帝国の騎士として、約束された輝かしい未来が待っている。二人には後ろ指さされるような人生を送ってほしくない。前世でも今世でも、孤独だった自分を救ってくれたから……。
「俺が……いなければ……」
カップの中に、どこかから飛んできた花びらが落ちた。今にも沈んでいきそうな小さい花びらを眺めていると、人の気配がした。
「……しつこいですね」
「それが仕事なものですから」
顔を上げると、前に接触してきた記者が立っていた。糸目をもっと細くして笑った記者は、許可をもらうことなく、勝手に対面の椅子に座った。
「お待ちしていましたが、連絡が来なかったので。お力になりたいと言った件、ご検討いただけましたか?」
イシュマはチラリと記者を見た後、首を横に振った。
「考えてみたよ。君が言った守ってくれる人物だけど、あれはエロイズ伯爵のことだね?」
記者の表情は変わらない。笑顔を貼り付けたままで、返事だけがない。
「私だって馬鹿じゃない。伯爵が君の会社に大きな出資をしていることも知っている。政府に批判的な記事を載せているよね。怪しい組織との繋がりもありそうだ」
ゲームの流れからして、記者の登場は決められたものだったと推測できる。違いがあっても、誘い文句や、どこで話に乗るかくらいだろう。
「私があまりに目立たないから、兄弟に虐げられているとでも思った? 今の仕事に不満はないし、家を出ることになっても構わない。遺産なんてもらうつもりはないから、骨肉の争いなんてありえないね。だって……」
小さな花びらがお茶の海に沈んでいく。まるで自分みたいだなとイシュマは思った。
「彼らは私を救ってくれた。二人のためなら死んだってかまわない」
記者は息を呑み、大きく目を開いた。
「話は終わりだ。これ以上付きまとうなら、私も容赦はしないから」
イシュマは椅子を引いて立ち上がり、記者に背を向けて歩き出す。しかし、クスリと笑う声がして足を止めた。
「私にも仕事がありましてね。流れが別の方向へ進んだら、それを正すかどうか見極めなければならないのです。イシュマさんの言葉が本当かどうか。じっくり確かめさせていただきます」
「なっ……、何だって!?」
意味深なことを言われ、急いで振り返ると、もうそこに記者の姿はなかった。冷たい風が吹き抜けていく。イシュマは寒気がして自分の肩を抱いた。
嫌な予感が足元から這い上がってくる。それを振り払うようにイシュマは走り出した。
「イシュマ様、大変です」
邸に戻るとすぐ、執事長が青い顔をして走ってきた。いつも静かな彼が焦っている姿を見て、心臓が大きく揺れる。
「ブルーノ様が、帝国軍の治安部隊に連行されました」
「なっ! なんだって!? 何でそんなことに?」
「事業資金から裏金を作り、それを反政府組織に流していると告発があったそうです。先日、大規模な組織に捜査が入り、貴族が捕まったのですが、そこにプリンプ家から資金提供を示す証拠があったそうです」
「ありえないっ、捏造だよ! そんなことがあるわけない!」
ありえないことだと頭の中で繰り返す。反政府思想に傾倒し、先頭に立って反乱を起こすのはイシュマのはずだ。ブルーノは皇帝に忠実で、相談役も務める優秀な人物だったと書かれていた。それともこれもまた、自分のせいで流れがおかしくなってしまったのだろうか……。
「落ち着いてください。まだ聴取の段階で、ブルーノ様は協力を示すために連行されたのです。イシュマ様へ伝言があります。大丈夫だから、必ず帰るから、家で大人しくしているようにと」
「そんなっ……大人しくなんて……。ユルビー? ユルビーはどこに?」
混乱と恐怖で手が震え、一人で立っていられなくなる。ユルビーを探して辺りを見回していると、ガタンと大きな音が響き、玄関のドアが開けられた。
ユルビーが知らせを聞き帰ってきたのかと思ったが、入ってきたのはユルビーの部隊の騎士だった。
「緊急のため無礼をお許しください! 先ほど、プリンプ卿が帝国軍捜査課の求めで、殺人事件の容疑者として連れて行かれました」
「なっ……なっ……」
次々と頭を殴られ、正気を失いそうだ。今度はユルビーが災いに巻き込まれている。信じられない事態に声が出てこない。
「殺人事件とは? いったい誰の……」
イシュマの代わりに、執事が騎士へ問いかけると、彼は気まずそうな表情になった。
「……お父様です。前公爵閣下の事故が再調査され、他殺の可能性があると……。プリンプ卿は強い動機を持っているとされ……」
「イシュマ様!」
絶望に押しつぶされ、イシュマは床に座り込んだ。冷たくなった体、震える心。恐怖の中に落とされ、どこにも逃げ場などない。
いつも大丈夫だと言って手を引き、導いてくれた二人がいない。頭は真っ白になり、イシュマは震える手で冷たい床に触れた。
「どうすれば……、どうすればいいんだ」
運命に逆らった代償なのか。
大きな影が迫り、イシュマを飲み込もうとしていた。
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