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第四章 ゲームの終わり
1、元悪役令息の蜜月は……
「だめっ……だめだって」
「大丈夫だって、少しくらい」
「だっ……んっんん」
アスランの唇はいつもその硬い体に似合わないくらい柔らかい。
一度重なってしまえば、二度や三度、止めることなくずっとそのままでいたくなってしまう。
でもだめなのだ。
だってここは邸の玄関なのだから。
「おいっ、アスラン! いい加減にしろ!」
バチーンと頭を叩くいい音が響いた。
俺を玄関の壁に押し付けてキスをしていたアスランの頭を叩いたのは、アルフォンスだった。
「貴様、この俺が滞在中によくもまあ、シリウスにそんな事を! しかも玄関で見せつけるなんて!」
「イタタ……。アルフォンス様、力が強すぎて……せっかく治ったのにまた……」
頭を押さえて痛がるアスランを見たら、俺の体は一気に冷えてしまった。
「お兄様! 強く叩くなんて……、また寝込んだらどうするんですか!!」
「シリウス、コイツが寝込んだのはひと月も前だろう。しかも意識が戻った翌日には回復して剣を振り回していた男だぞ。猛獣並みの体をしているくせに、何が力が強すぎて、だ。だいたい、勝手に俺の公認を取ったみたいにどこでもイチャイチャしやがって!」
シリウスは渡さんと言いながら、アルフォンスは俺を掴んで自分の胸の中に入れてしまった。
「だいたい、もう少ししたら父上が帰ってくるからな。二人のことを知ったら絶対厳しいことを言われるだろう。心しておけよ!」
アルフォンスのアスランへの態度は、年を経ても変わらず厳しい。
お気に入りの玩具を取られた子供のようなアルフォンスに呆れてしまうが、それはそれでこの二人は激しく衝突することもなく上手いことやってきた気がする。
そしてもう一人の家族、領地を回ってなかなか帰って来なかった父の、ブラッドフォード伯爵がもうすぐ戻ってくるというので、邸内は少しピリついた空気だった。
ゲーム内のキャラ、悪役令息シリウスとして生きなければと、真面目に演じ続けてきた俺だったが、ついにゲームの舞台がスタートしたら、失敗続きで何も上手くいかず、結局悪役令息の道は閉ざされてしまった。
ならばアスランのために生きようと決意したが、その過程で俺は、自分自身で必死に違うと蓋をしてきたアスランへの恋心に気が付いてしまう。
それでもまだ残っているのか分からないゲームの影響力を確認しようと思っていたら、俺とオズワルドで、ゲームの閉じ込められイベントが発生してしまう。
そこに助けに来たのがアスランだったが、逆に怒りと不安の感情が振り切ってしまい、潜在能力だった聖力が強制的に発動してしまった。
意識を失い寝込んでしまったアスラン。
アスランをなくしてしまうかもしれないという恐怖と、気持ちを伝えることができなかったという後悔が殻に閉じこもっていた俺を変えた。
ゲームではもう一人の悪役位置にいるシモンのおかげでアスランは目覚めることができた。
そして俺は喜びの勢いそのまま、アスランに愛の告白をした。
アスランにゲームの影響力はかけらもなく、俺の勘違いと、アスランもまた長く俺に片想いをしていたことが発覚して、この度、無事両想いとなって、付き合い始めたのだった。
オズワルドの元婚約者候補達も、新たな相手との婚約を発表し始めたので、タイミング的にはちょうど良く、アスランが俺と付き合い始めたと宣言したので、その話はあっという間に広がった。
ただ俺が恋人とかそんな話よりも、アスランの能力が開花したという方がビッグニュースだったわけで、みんなの関心ごとはそっちだった。
アスランは騎士団候補生でもあるので、聖騎士が誕生するかもしれないと、学校中、いや、今は町の方でもその話で持ちきりだった。
俺を腕の中に捕らえたアルフォンスは、頬にキスをしようとしてきたが、アスランのムキムキ腕で簡単に防がれて俺はまたアスランの腕の中に戻された。
「伯爵様には、帰宅したらすぐにでもご挨拶するつもりです。ご心配なく」
そう言ってアスランは俺の手を掴んで玄関から外へ出た。
残されたアルフォンスはきぃぃーと言いながら地団駄を踏んでいた。
「アスラン、二週間だろう。すぐだよ」
「だって……、せっかく両想いになったばかりで、シリウスと離れたくないのに……」
聖力が使えるようになったアスランだったが、まだそれをどう使うかは全く理解できていない。
どうも頭よりも体で覚えないといけないものらしく、今日から神官達数名と、ゾウ神山と呼ばれる場所に行って、山頂の神殿で聖力の訓練を受けることになった。
順調にいけば二週間くらいで帰れると聞いていた。
とにかく、また前のように暴走してしまったりしたら怖いので、一刻も早く使い方を身につけて欲しかった。
豪傑な見た目をしてアスランは寂しがり屋だ。
馬車が到着しても俺の手を握って離さないので、安心させるように手を伸ばして頬を撫でた。
「シリウス、その……戻ったら、伯爵様に二人のことを話して……」
「うん、そうだな」
「あと、その……シリウスと、最後まで……したい」
「うん、そうだ………えっ」
勢いでそのまま同意していたが、その意味が頭に入ってきたら、心臓が飛び出しそうになった。
「さ、最後までって……」
お互い真っ赤になってしまったが、微笑んだアスランは俺の口に行ってきますのキスをして、迎えの馬車に乗り込んでいった。
アスランの乗る馬車を見送ったが、赤くなった顔はなかなか元に戻らず、仕方なく俺はその場でしばらく立ち尽くしていた。
校舎に鐘が鳴り響き、みんながガタガタと席を立って帰り支度を始めた。
俺は机に座ってぼけっとしていたら、隣の席のイクシオが俺を見てフフンと笑ってきた。
「なんかあった? 今朝」
「え?」
「今日ずっとうわの空だったでしょう。確か今日からアスランくん、山登りだったよね」
「うん、寂しいけど、必要なことだし……」
「ふーん、で、なんでそんな顔赤いの? なんか、あったでしょう?」
さすがイクシオだ。
誰が誰と付き合ったとか、そっちの色恋のことには恐ろしく鋭い。
アスランと付き合いだした時も、何も言わずとも一番最初に反応してきたのはイクシオだった。
「あ……朝ね、見送る時にちょっと……」
「ちょっとって何? もしかしてキスでその動揺っぷりなわけ?」
「ううっ、キスでって……」
アスランとのキスはもう何度も、数えきれないくらいしている。それでも恥ずかしいと思ってしまうけど、今回はその先に行きたいと言われてしまって、俺は動揺していたのだ。
授業すらうわの空でずっとそのことばかり考えていた。
「そもそも、二人はどこまで進んでいるの? まさか、本当にキス止まり?」
「キスだけってわけじゃ………って、これ友人同士の会話なのか?」
「当たり前じゃん、ベッドのことは友人同士で話を共有して知識を蓄えていくものだよ。行為については、授業もやったし、理解しているよね?」
友人との話でそんな詳しい話題を出すなんて、理解できないのだが、この世界では普通のことなのだろうか。
前の世界でそんなやり取りを気軽に話せる友人などいなかったので、何が正解なのか分からない。
「そ……そうだな、知識としては……ある程度」
「なるほど。で、順番としてはどの辺り?」
イクシオは興味津々の顔でぐいぐい体を寄せてきた。この歳の男ならこういった話に興味があるのは分かる。
この世界では男も女も、貴族であっても相性が大事だからと、結婚前から気軽にそういったことをお試し感覚でする人が普通だとも聞いた。
妊娠に関しては、双方に愛情があり、ゾウ神に祝福を受けたカップルのみ子が授けられるというファンタジーな設定になっているので、その辺りの心配もないということだろう。
「僕だって経験はないけど、元候補として色んな人に話を聞いてきたし勉強してきたから、知識はバッチリ。さあ、話してみてよ」
「え……ええと、あの、お互いアレを合わせて……」
「抜き合いね、ほうほうそこか」
「ちょっ、声大きいって」
イクシオが日常会話の声量で返してきたので、俺は慌ててイクシオの口に手を当てた。
焦って周りを見てみたが、ほとんど帰宅済みで、残っている生徒もこっちの会話に気を取られている様子はなかったのでホッとした。
「シリウス、大事なことだよ。受け入れる側は準備したり心構えが必要なんだから」
「そうだな……受け入れ……ん? 俺が受け入れる?」
「………二人の感じからして、そうだと思ったけど、アスランってソッチだったの?」
「そっ、そんなこと、話したこともないし。俺、は……どうしたらいいか……」
あまりに何も考えていなかった俺に、イクシオは呆れた顔になってから小さく息をついて腕を組んだ。
「オーケー、じゃあ、シリウスが受け入れる方だと仮定して進めるよ。後ろの準備の方は知ってるよね?」
「うん……、だ……男根を挿れるから……だろう?」
話していて、俺は何を口にしているのかと、恥ずかしくて真っ赤になった。
「男同士の場合、後ろは勝手に濡れてくれないから、ある程度の歳になると、そういう時用の物を身につけておくのがマナーだよ。僕も持っているし」
イクシオはポケットの中から、ハンカチとともに小さな丸いケースを取り出した。
パカっと蓋を開けると、そこには透明なクリームのようなものが入っていた。
「女の子が持つリップクリームみたいだな」
「基本的にはそんなようなもの、植物のオイルで作られた全身に使えるクリームね。これを使って準備するわけ」
「へぇ……、そうなんだ」
「そうなんだって……、痛い思いしたくないならちゃんと準備しないとだめだよ」
「痛い? 痛いのか?」
「当たり前だよ。見たことないけど、アスランくんのって大きそうだし……、それをね……」
イクシオの言葉に俺はハッとして、アスランのソレを思い出してしまった。
確かに俺のと違いすぎて、びっくりしたが、アレをアンナところに……。
「ど……どうしよう! 俺、痛いの苦手だし、アスランのすごいんだよ!」
「そこは想像させないで。とりあえず落ち着いて、そういった場合の対処法も先輩方から教えてもらっているから」
「対処法? どうすればいいんだ?」
「それはね………」
イクシオはニコッと微笑んでから、俺の耳に口を寄せてきた。
□□□
「大丈夫だって、少しくらい」
「だっ……んっんん」
アスランの唇はいつもその硬い体に似合わないくらい柔らかい。
一度重なってしまえば、二度や三度、止めることなくずっとそのままでいたくなってしまう。
でもだめなのだ。
だってここは邸の玄関なのだから。
「おいっ、アスラン! いい加減にしろ!」
バチーンと頭を叩くいい音が響いた。
俺を玄関の壁に押し付けてキスをしていたアスランの頭を叩いたのは、アルフォンスだった。
「貴様、この俺が滞在中によくもまあ、シリウスにそんな事を! しかも玄関で見せつけるなんて!」
「イタタ……。アルフォンス様、力が強すぎて……せっかく治ったのにまた……」
頭を押さえて痛がるアスランを見たら、俺の体は一気に冷えてしまった。
「お兄様! 強く叩くなんて……、また寝込んだらどうするんですか!!」
「シリウス、コイツが寝込んだのはひと月も前だろう。しかも意識が戻った翌日には回復して剣を振り回していた男だぞ。猛獣並みの体をしているくせに、何が力が強すぎて、だ。だいたい、勝手に俺の公認を取ったみたいにどこでもイチャイチャしやがって!」
シリウスは渡さんと言いながら、アルフォンスは俺を掴んで自分の胸の中に入れてしまった。
「だいたい、もう少ししたら父上が帰ってくるからな。二人のことを知ったら絶対厳しいことを言われるだろう。心しておけよ!」
アルフォンスのアスランへの態度は、年を経ても変わらず厳しい。
お気に入りの玩具を取られた子供のようなアルフォンスに呆れてしまうが、それはそれでこの二人は激しく衝突することもなく上手いことやってきた気がする。
そしてもう一人の家族、領地を回ってなかなか帰って来なかった父の、ブラッドフォード伯爵がもうすぐ戻ってくるというので、邸内は少しピリついた空気だった。
ゲーム内のキャラ、悪役令息シリウスとして生きなければと、真面目に演じ続けてきた俺だったが、ついにゲームの舞台がスタートしたら、失敗続きで何も上手くいかず、結局悪役令息の道は閉ざされてしまった。
ならばアスランのために生きようと決意したが、その過程で俺は、自分自身で必死に違うと蓋をしてきたアスランへの恋心に気が付いてしまう。
それでもまだ残っているのか分からないゲームの影響力を確認しようと思っていたら、俺とオズワルドで、ゲームの閉じ込められイベントが発生してしまう。
そこに助けに来たのがアスランだったが、逆に怒りと不安の感情が振り切ってしまい、潜在能力だった聖力が強制的に発動してしまった。
意識を失い寝込んでしまったアスラン。
アスランをなくしてしまうかもしれないという恐怖と、気持ちを伝えることができなかったという後悔が殻に閉じこもっていた俺を変えた。
ゲームではもう一人の悪役位置にいるシモンのおかげでアスランは目覚めることができた。
そして俺は喜びの勢いそのまま、アスランに愛の告白をした。
アスランにゲームの影響力はかけらもなく、俺の勘違いと、アスランもまた長く俺に片想いをしていたことが発覚して、この度、無事両想いとなって、付き合い始めたのだった。
オズワルドの元婚約者候補達も、新たな相手との婚約を発表し始めたので、タイミング的にはちょうど良く、アスランが俺と付き合い始めたと宣言したので、その話はあっという間に広がった。
ただ俺が恋人とかそんな話よりも、アスランの能力が開花したという方がビッグニュースだったわけで、みんなの関心ごとはそっちだった。
アスランは騎士団候補生でもあるので、聖騎士が誕生するかもしれないと、学校中、いや、今は町の方でもその話で持ちきりだった。
俺を腕の中に捕らえたアルフォンスは、頬にキスをしようとしてきたが、アスランのムキムキ腕で簡単に防がれて俺はまたアスランの腕の中に戻された。
「伯爵様には、帰宅したらすぐにでもご挨拶するつもりです。ご心配なく」
そう言ってアスランは俺の手を掴んで玄関から外へ出た。
残されたアルフォンスはきぃぃーと言いながら地団駄を踏んでいた。
「アスラン、二週間だろう。すぐだよ」
「だって……、せっかく両想いになったばかりで、シリウスと離れたくないのに……」
聖力が使えるようになったアスランだったが、まだそれをどう使うかは全く理解できていない。
どうも頭よりも体で覚えないといけないものらしく、今日から神官達数名と、ゾウ神山と呼ばれる場所に行って、山頂の神殿で聖力の訓練を受けることになった。
順調にいけば二週間くらいで帰れると聞いていた。
とにかく、また前のように暴走してしまったりしたら怖いので、一刻も早く使い方を身につけて欲しかった。
豪傑な見た目をしてアスランは寂しがり屋だ。
馬車が到着しても俺の手を握って離さないので、安心させるように手を伸ばして頬を撫でた。
「シリウス、その……戻ったら、伯爵様に二人のことを話して……」
「うん、そうだな」
「あと、その……シリウスと、最後まで……したい」
「うん、そうだ………えっ」
勢いでそのまま同意していたが、その意味が頭に入ってきたら、心臓が飛び出しそうになった。
「さ、最後までって……」
お互い真っ赤になってしまったが、微笑んだアスランは俺の口に行ってきますのキスをして、迎えの馬車に乗り込んでいった。
アスランの乗る馬車を見送ったが、赤くなった顔はなかなか元に戻らず、仕方なく俺はその場でしばらく立ち尽くしていた。
校舎に鐘が鳴り響き、みんながガタガタと席を立って帰り支度を始めた。
俺は机に座ってぼけっとしていたら、隣の席のイクシオが俺を見てフフンと笑ってきた。
「なんかあった? 今朝」
「え?」
「今日ずっとうわの空だったでしょう。確か今日からアスランくん、山登りだったよね」
「うん、寂しいけど、必要なことだし……」
「ふーん、で、なんでそんな顔赤いの? なんか、あったでしょう?」
さすがイクシオだ。
誰が誰と付き合ったとか、そっちの色恋のことには恐ろしく鋭い。
アスランと付き合いだした時も、何も言わずとも一番最初に反応してきたのはイクシオだった。
「あ……朝ね、見送る時にちょっと……」
「ちょっとって何? もしかしてキスでその動揺っぷりなわけ?」
「ううっ、キスでって……」
アスランとのキスはもう何度も、数えきれないくらいしている。それでも恥ずかしいと思ってしまうけど、今回はその先に行きたいと言われてしまって、俺は動揺していたのだ。
授業すらうわの空でずっとそのことばかり考えていた。
「そもそも、二人はどこまで進んでいるの? まさか、本当にキス止まり?」
「キスだけってわけじゃ………って、これ友人同士の会話なのか?」
「当たり前じゃん、ベッドのことは友人同士で話を共有して知識を蓄えていくものだよ。行為については、授業もやったし、理解しているよね?」
友人との話でそんな詳しい話題を出すなんて、理解できないのだが、この世界では普通のことなのだろうか。
前の世界でそんなやり取りを気軽に話せる友人などいなかったので、何が正解なのか分からない。
「そ……そうだな、知識としては……ある程度」
「なるほど。で、順番としてはどの辺り?」
イクシオは興味津々の顔でぐいぐい体を寄せてきた。この歳の男ならこういった話に興味があるのは分かる。
この世界では男も女も、貴族であっても相性が大事だからと、結婚前から気軽にそういったことをお試し感覚でする人が普通だとも聞いた。
妊娠に関しては、双方に愛情があり、ゾウ神に祝福を受けたカップルのみ子が授けられるというファンタジーな設定になっているので、その辺りの心配もないということだろう。
「僕だって経験はないけど、元候補として色んな人に話を聞いてきたし勉強してきたから、知識はバッチリ。さあ、話してみてよ」
「え……ええと、あの、お互いアレを合わせて……」
「抜き合いね、ほうほうそこか」
「ちょっ、声大きいって」
イクシオが日常会話の声量で返してきたので、俺は慌ててイクシオの口に手を当てた。
焦って周りを見てみたが、ほとんど帰宅済みで、残っている生徒もこっちの会話に気を取られている様子はなかったのでホッとした。
「シリウス、大事なことだよ。受け入れる側は準備したり心構えが必要なんだから」
「そうだな……受け入れ……ん? 俺が受け入れる?」
「………二人の感じからして、そうだと思ったけど、アスランってソッチだったの?」
「そっ、そんなこと、話したこともないし。俺、は……どうしたらいいか……」
あまりに何も考えていなかった俺に、イクシオは呆れた顔になってから小さく息をついて腕を組んだ。
「オーケー、じゃあ、シリウスが受け入れる方だと仮定して進めるよ。後ろの準備の方は知ってるよね?」
「うん……、だ……男根を挿れるから……だろう?」
話していて、俺は何を口にしているのかと、恥ずかしくて真っ赤になった。
「男同士の場合、後ろは勝手に濡れてくれないから、ある程度の歳になると、そういう時用の物を身につけておくのがマナーだよ。僕も持っているし」
イクシオはポケットの中から、ハンカチとともに小さな丸いケースを取り出した。
パカっと蓋を開けると、そこには透明なクリームのようなものが入っていた。
「女の子が持つリップクリームみたいだな」
「基本的にはそんなようなもの、植物のオイルで作られた全身に使えるクリームね。これを使って準備するわけ」
「へぇ……、そうなんだ」
「そうなんだって……、痛い思いしたくないならちゃんと準備しないとだめだよ」
「痛い? 痛いのか?」
「当たり前だよ。見たことないけど、アスランくんのって大きそうだし……、それをね……」
イクシオの言葉に俺はハッとして、アスランのソレを思い出してしまった。
確かに俺のと違いすぎて、びっくりしたが、アレをアンナところに……。
「ど……どうしよう! 俺、痛いの苦手だし、アスランのすごいんだよ!」
「そこは想像させないで。とりあえず落ち着いて、そういった場合の対処法も先輩方から教えてもらっているから」
「対処法? どうすればいいんだ?」
「それはね………」
イクシオはニコッと微笑んでから、俺の耳に口を寄せてきた。
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