95 / 139
第四章 叶わない願いはないと信じてる
第83話 君はきっと天使
しおりを挟む
幸せな時間って、過ぎるのが本当にはやい。
デゼルと初めて出会ったのが、昨日のことのように思えることすらあるのに、あっという間に、出会ってから十年が過ぎてしまって。
僕、デゼルと結婚式を挙げて、もう子供も生まれたんだ。
とっても可愛い女の子で、一歳になるエトランジュ。
デゼルにそっくりなんだけど、瞳だけが僕と同じ綺麗な翠で、ああ、僕とデゼルの子供なんだって。すごく、不思議な気持ち。
逆に、デゼルには僕そっくりに見えるらしくて「サイファ様そっくり! 可愛い!」だって。
デゼルったら、エトランジュを幸せそうな顔で眺めてたと思えば、わぁあ、わぁあ、泣き出したよどうしようって、右往左往して、僕やユリシーズに泣きついてくるから、毎日、たいへん。
デゼルもエトランジュも可愛すぎるよね。
僕が笑ってあげると、二人とも、目をまぁるくして、すごく喜ぶんだ。
だから僕は、エトランジュは中身もデゼルに似てると思うんだけどな。
ネプチューン様とユリシーズの間に生まれた、三歳になるルーカス皇子をまだ一歳のエトランジュが泣かせる度に、ユリシーズが「やっぱり中身がサイファよねぇ」って、深々とため息を吐くんだ。
居合わせた近衛隊士なんかも、「隊長にそっくりな娘さんで」って、遠い目をするし。
たぶん、お世辞のつもりなのかな?
僕、そんな、友達を泣かせたりしないんだけどな……。
闇の使徒のうち、クライス様をはじめ四名は、デゼルの勧めに従って、すでに、ネプチューン様の配下を抜けてくれた。
闇の使徒が命を落とす予定も、破滅の予定と同じでデゼルが最後なんだって。
七年前みたいに、その時がきたら何の予兆も脈絡もなく、運命が予定通りに動き出すのかもしれないことが、僕にはすごく、心配だったけど。
デゼルが十七歳になってすぐ、デゼルが光の聖女に征伐される物語の始まり、すべての引き金となる、大惨事が起きたんだ。
正直、ほっとした。
七年前の悪夢はあんまり滅茶苦茶で、また、あんな風になるなら、守りようがないと思っていたから。
でも、今度は。
予兆も脈絡もあるんだ。
光の聖女にまともな大義名分があって、デゼルが征伐されてしまうのなら。
デゼル以外の闇の使徒の破滅を阻止できたみたいに、きっと、デゼルの悲劇も阻止できる。
僕、今度こそ、デゼルを守ってみせるよ。エトランジュもね。
**――*――**
「サイファ」
ネプチューン様が珍しく、行き合った僕に声をかけてきたのが、たぶん、運命の輪が回った瞬間だった。
見知らぬ光の聖女のための物語の幕開けは、悪役にされる僕達にとっては、とても、理不尽だった。
デゼルと初めて出会ったのが、昨日のことのように思えることすらあるのに、あっという間に、出会ってから十年が過ぎてしまって。
僕、デゼルと結婚式を挙げて、もう子供も生まれたんだ。
とっても可愛い女の子で、一歳になるエトランジュ。
デゼルにそっくりなんだけど、瞳だけが僕と同じ綺麗な翠で、ああ、僕とデゼルの子供なんだって。すごく、不思議な気持ち。
逆に、デゼルには僕そっくりに見えるらしくて「サイファ様そっくり! 可愛い!」だって。
デゼルったら、エトランジュを幸せそうな顔で眺めてたと思えば、わぁあ、わぁあ、泣き出したよどうしようって、右往左往して、僕やユリシーズに泣きついてくるから、毎日、たいへん。
デゼルもエトランジュも可愛すぎるよね。
僕が笑ってあげると、二人とも、目をまぁるくして、すごく喜ぶんだ。
だから僕は、エトランジュは中身もデゼルに似てると思うんだけどな。
ネプチューン様とユリシーズの間に生まれた、三歳になるルーカス皇子をまだ一歳のエトランジュが泣かせる度に、ユリシーズが「やっぱり中身がサイファよねぇ」って、深々とため息を吐くんだ。
居合わせた近衛隊士なんかも、「隊長にそっくりな娘さんで」って、遠い目をするし。
たぶん、お世辞のつもりなのかな?
僕、そんな、友達を泣かせたりしないんだけどな……。
闇の使徒のうち、クライス様をはじめ四名は、デゼルの勧めに従って、すでに、ネプチューン様の配下を抜けてくれた。
闇の使徒が命を落とす予定も、破滅の予定と同じでデゼルが最後なんだって。
七年前みたいに、その時がきたら何の予兆も脈絡もなく、運命が予定通りに動き出すのかもしれないことが、僕にはすごく、心配だったけど。
デゼルが十七歳になってすぐ、デゼルが光の聖女に征伐される物語の始まり、すべての引き金となる、大惨事が起きたんだ。
正直、ほっとした。
七年前の悪夢はあんまり滅茶苦茶で、また、あんな風になるなら、守りようがないと思っていたから。
でも、今度は。
予兆も脈絡もあるんだ。
光の聖女にまともな大義名分があって、デゼルが征伐されてしまうのなら。
デゼル以外の闇の使徒の破滅を阻止できたみたいに、きっと、デゼルの悲劇も阻止できる。
僕、今度こそ、デゼルを守ってみせるよ。エトランジュもね。
**――*――**
「サイファ」
ネプチューン様が珍しく、行き合った僕に声をかけてきたのが、たぶん、運命の輪が回った瞬間だった。
見知らぬ光の聖女のための物語の幕開けは、悪役にされる僕達にとっては、とても、理不尽だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
34
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる