135 / 139
第四章 叶わない願いはないと信じてる
【Side】 レーテー ~可愛い顔してるのに~ 【前編】
しおりを挟む
うわぁ、サイファって、可愛い顔してるのに怖いッ!
主神に人の子が捧げられたのは、ぼくが知る限り初めてのこと。
神界に近い世界、人間が天国と呼ぶ世界に迎えられる人なら、それなりにいるんだよ。だけど、その天国にだって、サイファみたいに子供を守ろうとして死んだのに、ああまで落ち着いて「あの、ここは天国ですか?」なんて聞いた人は、いないんじゃないかな。
天寿をまっとうした人ならともかく、ああいう『非業の死』を遂げるとね。
とりわけ、まだ幼い子供を守ろうとして死んだ人は、たいてい、亡くなってすぐは混乱してるか錯乱してるか、最悪の場合、くぐれるはずだった天国の門を見逃してしまうのに、サイファってただ者じゃないよね。
死んでも、エトランジュのこと、大切に抱き締めてた。
エトランジュが大切な、大切な、宝物なんだね。
「あの、僕の声って、デゼルに届きますか?」
サイファはすごく冷静で、落ち着いて理性的な様子なんだけど、この辺、天然だよね。
死んじゃったの、わかってるようでわかってないみたい。
「届きません。あなたは死んでしまったから」
「そうですか……」
サイファ、しょんぼり。
よく、わからないなぁ。
死んじゃったの、わかってないようでわかってるみたい?
「そうだ、デゼル、こっちにおいでよ。僕のところにおいで。そう願ってみて?」
――えぇえ!?
ぱあっと、いいこと思いついたって顔で、何を思いついたのかなと思ったら!
あんまりいないよ!?
天国に迎えられるくらいの人で、まだ生きてる愛してた人に「こっちにおいで」って言い出す人!
悪霊になって、それ言い出す人ならたくさんいるけど!
よりによって、神界に捧げられたサイファがそれ言っちゃうの!?
すっごく得意そうだよ!?
マルスもアフロディーテもドン引き。
しかも、サイファの呼び声が第六感に届いたのか、デゼルが最後のお願いをそれに決めちゃったよ。
うんまぁ、これで、デゼルが『正しい願い』をかけられなくても、そう、ひどいことにはならなくなったけど。
主神に捧げられた『人』はね、ぼく達と同じ天使になるんだ。
一人で天使になって永遠の命を得るのは寂しいだろうからって、先に最愛の二人をサクリファイスに選んで、神界に迎えておくことにしたみたい。
いつだったか、主神がそう話してくれたよ。
だけど、サイファは主神のその真意を知らないのに、デゼルが泣きやんでよかったって、嬉しそう。
「よかったって、あなた、わかっているの? 今、デゼルに死ぬように言ったのよ?」
アフロディーテがズバっと言った。
僕もすごく気になる。サイファ、わかって言ってるのかな。
「――僕にとって生きるというのは、デゼルとエトランジュの傍にいられることで、死ぬというのは、デゼルの傍にもエトランジュの傍にもいられなくなることだから。デゼルも、僕と同じなんじゃないかと思って」
わ、サイファって死生観が独特なんだね。
しかも、デゼルとエトランジュのこと、そこまで愛してるんだ。
「……本当によろしいの? 聞こえたはずはありませんのに、デゼルが三人目のサクリファイスに彼女自身を選定し、あなたとエトランジュのところに逝きたいと願うことに決めましてよ?」
アフロディーテが念を押したら、サイファ、よかったって、すごく嬉しそうに微笑んだの。もう、びっくりだよ。
そうこうするうちに、デゼルが一つ目の願いをかけたけど、二つ目の願いが決まらない。
「デゼルはエトランジュなら何を願うか探していてよ?」
「エトランジュなら?」
それにしても、この三人って。
サイファとエトランジュの命を絶った主神を、三人とも、ちっともうらまないみたいなんだ。
デゼルなんて、魂が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい悲しんでて、サイファとエトランジュだって、そんなデゼルを心配してはいるんだよ?
「あの、僕とデゼルが出会えたのって、どなたのおかげなのかご存知でしょうか」
主神をちょっとジト目で見ながら指さしたら、みんなも思うところは同じだったみたい。
このゲーム、いくらなんでもデゼルに酷いんじゃないのかなって。
だけど、神様が出会わせてくれたんだって、納得したサイファは。
主神に人の子が捧げられたのは、ぼくが知る限り初めてのこと。
神界に近い世界、人間が天国と呼ぶ世界に迎えられる人なら、それなりにいるんだよ。だけど、その天国にだって、サイファみたいに子供を守ろうとして死んだのに、ああまで落ち着いて「あの、ここは天国ですか?」なんて聞いた人は、いないんじゃないかな。
天寿をまっとうした人ならともかく、ああいう『非業の死』を遂げるとね。
とりわけ、まだ幼い子供を守ろうとして死んだ人は、たいてい、亡くなってすぐは混乱してるか錯乱してるか、最悪の場合、くぐれるはずだった天国の門を見逃してしまうのに、サイファってただ者じゃないよね。
死んでも、エトランジュのこと、大切に抱き締めてた。
エトランジュが大切な、大切な、宝物なんだね。
「あの、僕の声って、デゼルに届きますか?」
サイファはすごく冷静で、落ち着いて理性的な様子なんだけど、この辺、天然だよね。
死んじゃったの、わかってるようでわかってないみたい。
「届きません。あなたは死んでしまったから」
「そうですか……」
サイファ、しょんぼり。
よく、わからないなぁ。
死んじゃったの、わかってないようでわかってるみたい?
「そうだ、デゼル、こっちにおいでよ。僕のところにおいで。そう願ってみて?」
――えぇえ!?
ぱあっと、いいこと思いついたって顔で、何を思いついたのかなと思ったら!
あんまりいないよ!?
天国に迎えられるくらいの人で、まだ生きてる愛してた人に「こっちにおいで」って言い出す人!
悪霊になって、それ言い出す人ならたくさんいるけど!
よりによって、神界に捧げられたサイファがそれ言っちゃうの!?
すっごく得意そうだよ!?
マルスもアフロディーテもドン引き。
しかも、サイファの呼び声が第六感に届いたのか、デゼルが最後のお願いをそれに決めちゃったよ。
うんまぁ、これで、デゼルが『正しい願い』をかけられなくても、そう、ひどいことにはならなくなったけど。
主神に捧げられた『人』はね、ぼく達と同じ天使になるんだ。
一人で天使になって永遠の命を得るのは寂しいだろうからって、先に最愛の二人をサクリファイスに選んで、神界に迎えておくことにしたみたい。
いつだったか、主神がそう話してくれたよ。
だけど、サイファは主神のその真意を知らないのに、デゼルが泣きやんでよかったって、嬉しそう。
「よかったって、あなた、わかっているの? 今、デゼルに死ぬように言ったのよ?」
アフロディーテがズバっと言った。
僕もすごく気になる。サイファ、わかって言ってるのかな。
「――僕にとって生きるというのは、デゼルとエトランジュの傍にいられることで、死ぬというのは、デゼルの傍にもエトランジュの傍にもいられなくなることだから。デゼルも、僕と同じなんじゃないかと思って」
わ、サイファって死生観が独特なんだね。
しかも、デゼルとエトランジュのこと、そこまで愛してるんだ。
「……本当によろしいの? 聞こえたはずはありませんのに、デゼルが三人目のサクリファイスに彼女自身を選定し、あなたとエトランジュのところに逝きたいと願うことに決めましてよ?」
アフロディーテが念を押したら、サイファ、よかったって、すごく嬉しそうに微笑んだの。もう、びっくりだよ。
そうこうするうちに、デゼルが一つ目の願いをかけたけど、二つ目の願いが決まらない。
「デゼルはエトランジュなら何を願うか探していてよ?」
「エトランジュなら?」
それにしても、この三人って。
サイファとエトランジュの命を絶った主神を、三人とも、ちっともうらまないみたいなんだ。
デゼルなんて、魂が壊れてしまうんじゃないかと思うくらい悲しんでて、サイファとエトランジュだって、そんなデゼルを心配してはいるんだよ?
「あの、僕とデゼルが出会えたのって、どなたのおかげなのかご存知でしょうか」
主神をちょっとジト目で見ながら指さしたら、みんなも思うところは同じだったみたい。
このゲーム、いくらなんでもデゼルに酷いんじゃないのかなって。
だけど、神様が出会わせてくれたんだって、納得したサイファは。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる