136 / 139
第四章 叶わない願いはないと信じてる
【Side】 レーテー ~可愛い顔してるのに~ 【後編】
しおりを挟む
「ねぇ、デゼル。二つ目の願いは、神様の願いがすべて叶いますようにって願ってみたら? 僕たちの願いは、神様がすべて叶えて下さったから」
「「「えぇッ!!?」」」
そう考えるの!?
エトランジュなんてまだ一歳なのに。
サイファもデゼルも、エトランジュがどんな風に育つか、すごく楽しみにしてたのに。
出会わせてくれてありがとう、エトランジュを授けてくれてありがとうの感謝だけって。
「マジか……」
「うわ~……」
「このゲーム、クリアできる人の子いたんだ……」
「いや、サイファじゃメティスの祝福がとれない」
「それを言うならデゼルが風神の承認とれたの、ちょっとインチキじゃなかった?」
「いやあれバグだろ。承認とれなかったのがバグだろ」
でも、そっか。
サイファはね。
今だって、エトランジュをだっこしてデゼルの様子を見てるわけで、エトランジュが死んじゃった実感なんて、ないのかもしれない。
だけど、デゼルの方は違うよ。
サイファにもエトランジュにも、二度と会えないと思って、嘆き悲しんでるデゼルには、それを願うのは難しいんじゃないかなぁ。
智慧の女神の承認は『正しい願い』を持つ者に与えられるもの。
デゼルはサイファに出会う前から、転生する前から、『正しい願い』を持つ者ではあったんだ。
最初から、カギとなる願いをデゼルが持っていたから、主神に選ばれたんだけど。
「エトランジュごと殺されてデゼルと引き裂かれたのに、いいの?」
顔を見合わせたサイファとエトランジュが、可愛らしく、こくっとうなずきあった。
「デゼルとはすぐに、また会えると思います。死ぬのって、もっと怖くて寂しいことかと思ってたけど、そうじゃないみたいでよかった」
「――そうね、ふつうの人間の死と、あなた達の死は違う。タナトスはあれでも神の御使い。人間たちが天使と呼ぶ存在よ。あなた達は死んだのではなく、神に捧げられたのだから」
さすがに、サイファも驚いたみたい。
「――黒装束の骸骨だったから、てっきり、人間を地獄に連れ去る死神かと思いました」
「永遠の監獄には違いないかもしれなくてよ。世界で最も美しく、きよらかな場所だとしても」
アフロディーテの話を聞いて、サイファが考えたことに、ぼくはドキっとしたんだ。
『それって、悪くなる方向にしか、変われないってこと』
ぼく、そんな風には考えてみたこともなかったけど、確かに、そうかもしれない。
「しかし、なんだ。すぐにまた会えるって、可愛い奥さんが『すぐに僕を追って命を絶つはずだ』ってことに自信があるのはどうかと思うぜ?」
マルスがあきれた口調で言ったけど、サイファは嬉しそうに笑っただけ。
「うーわー。正統派ドS天使だー」
サイファって純粋で優しいけど、ナチュラルにすごいこと考えてるよね。
デゼルが追ってこなかったとしても、しょんぼりするだけで、追わせようとはしないだろうけど。
『――願いをかけます』
あ、デゼルが二つ目の願いを決めたみたいだよ。
『神様のご開運を。神様の願いがすべて叶い、神様の望む理想の世界が、すべての生命に幸いをもたらすものでありますことを』
わぁ。
ゲームクリアだ。デゼルおめでとう!
『最後の願いのサクリファイスを選定します――ターゲット・デゼル』
拭っても拭っても溢れる涙、声をわななかせてデゼルが宣言する姿は、すごく痛ましかったのに。
そう、それでいいって、サイファは冷酷に微笑んでいて。
魔的に輝く翠の瞳が、ぼくには何だか怖かった。
エトランジュは怖がってないかって?
怖がってるどころか、つられてるにしても、サイファとそっくりの表情をしてるよ。
エトランジュにもわかるんだ、デゼルがここに来るって。
綺麗な翠の瞳を魔的にキラキラ輝かせて、デゼルが傍に来るのを楽しみに待ってるの、可愛いんだけど怖いな、この天使たち……。
「「「えぇッ!!?」」」
そう考えるの!?
エトランジュなんてまだ一歳なのに。
サイファもデゼルも、エトランジュがどんな風に育つか、すごく楽しみにしてたのに。
出会わせてくれてありがとう、エトランジュを授けてくれてありがとうの感謝だけって。
「マジか……」
「うわ~……」
「このゲーム、クリアできる人の子いたんだ……」
「いや、サイファじゃメティスの祝福がとれない」
「それを言うならデゼルが風神の承認とれたの、ちょっとインチキじゃなかった?」
「いやあれバグだろ。承認とれなかったのがバグだろ」
でも、そっか。
サイファはね。
今だって、エトランジュをだっこしてデゼルの様子を見てるわけで、エトランジュが死んじゃった実感なんて、ないのかもしれない。
だけど、デゼルの方は違うよ。
サイファにもエトランジュにも、二度と会えないと思って、嘆き悲しんでるデゼルには、それを願うのは難しいんじゃないかなぁ。
智慧の女神の承認は『正しい願い』を持つ者に与えられるもの。
デゼルはサイファに出会う前から、転生する前から、『正しい願い』を持つ者ではあったんだ。
最初から、カギとなる願いをデゼルが持っていたから、主神に選ばれたんだけど。
「エトランジュごと殺されてデゼルと引き裂かれたのに、いいの?」
顔を見合わせたサイファとエトランジュが、可愛らしく、こくっとうなずきあった。
「デゼルとはすぐに、また会えると思います。死ぬのって、もっと怖くて寂しいことかと思ってたけど、そうじゃないみたいでよかった」
「――そうね、ふつうの人間の死と、あなた達の死は違う。タナトスはあれでも神の御使い。人間たちが天使と呼ぶ存在よ。あなた達は死んだのではなく、神に捧げられたのだから」
さすがに、サイファも驚いたみたい。
「――黒装束の骸骨だったから、てっきり、人間を地獄に連れ去る死神かと思いました」
「永遠の監獄には違いないかもしれなくてよ。世界で最も美しく、きよらかな場所だとしても」
アフロディーテの話を聞いて、サイファが考えたことに、ぼくはドキっとしたんだ。
『それって、悪くなる方向にしか、変われないってこと』
ぼく、そんな風には考えてみたこともなかったけど、確かに、そうかもしれない。
「しかし、なんだ。すぐにまた会えるって、可愛い奥さんが『すぐに僕を追って命を絶つはずだ』ってことに自信があるのはどうかと思うぜ?」
マルスがあきれた口調で言ったけど、サイファは嬉しそうに笑っただけ。
「うーわー。正統派ドS天使だー」
サイファって純粋で優しいけど、ナチュラルにすごいこと考えてるよね。
デゼルが追ってこなかったとしても、しょんぼりするだけで、追わせようとはしないだろうけど。
『――願いをかけます』
あ、デゼルが二つ目の願いを決めたみたいだよ。
『神様のご開運を。神様の願いがすべて叶い、神様の望む理想の世界が、すべての生命に幸いをもたらすものでありますことを』
わぁ。
ゲームクリアだ。デゼルおめでとう!
『最後の願いのサクリファイスを選定します――ターゲット・デゼル』
拭っても拭っても溢れる涙、声をわななかせてデゼルが宣言する姿は、すごく痛ましかったのに。
そう、それでいいって、サイファは冷酷に微笑んでいて。
魔的に輝く翠の瞳が、ぼくには何だか怖かった。
エトランジュは怖がってないかって?
怖がってるどころか、つられてるにしても、サイファとそっくりの表情をしてるよ。
エトランジュにもわかるんだ、デゼルがここに来るって。
綺麗な翠の瞳を魔的にキラキラ輝かせて、デゼルが傍に来るのを楽しみに待ってるの、可愛いんだけど怖いな、この天使たち……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
34
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる