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第四章 叶わない願いはないと信じてる

【Side】 レーテー ~可愛い顔してるのに~ 【後編】

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「ねぇ、デゼル。二つ目の願いは、神様の願いがすべて叶いますようにって願ってみたら? 僕たちの願いは、神様がすべて叶えて下さったから」
「「「えぇッ!!?」」」

 そう考えるの!?
 エトランジュなんてまだ一歳なのに。
 サイファもデゼルも、エトランジュがどんな風に育つか、すごく楽しみにしてたのに。
 出会わせてくれてありがとう、エトランジュを授けてくれてありがとうの感謝だけって。

「マジか……」
「うわ~……」
「このゲーム、クリアできる人の子いたんだ……」
「いや、サイファじゃメティスの祝福がとれない」
「それを言うならデゼルが風神の承認とれたの、ちょっとインチキじゃなかった?」
「いやあれバグだろ。承認とれなかったのがバグだろ」

 でも、そっか。
 サイファはね。
 今だって、エトランジュをだっこしてデゼルの様子を見てるわけで、エトランジュが死んじゃった実感なんて、ないのかもしれない。
 だけど、デゼルの方は違うよ。
 サイファにもエトランジュにも、二度と会えないと思って、嘆き悲しんでるデゼルには、それを願うのは難しいんじゃないかなぁ。

 智慧の女神メティスの承認は『正しい願い』を持つ者に与えられるもの。
 デゼルはサイファに出会う前から、転生する前から、『正しい願い』を持つ者ではあったんだ。
 最初から、カギとなる願いをデゼルが持っていたから、主神に選ばれたんだけど。

「エトランジュごと殺されてデゼルと引き裂かれたのに、いいの?」

 顔を見合わせたサイファとエトランジュが、可愛らしく、こくっとうなずきあった。

「デゼルとはすぐに、また会えると思います。死ぬのって、もっと怖くて寂しいことかと思ってたけど、そうじゃないみたいでよかった」
「――そうね、ふつうの人間の死と、あなた達の死は違う。タナトスはあれでも神の御使い。人間たちが天使と呼ぶ存在モノよ。あなた達は死んだのではなく、神に捧げられたのだから」

 さすがに、サイファも驚いたみたい。

「――黒装束の骸骨だったから、てっきり、人間を地獄に連れ去る死神かと思いました」
「永遠の監獄には違いないかもしれなくてよ。世界で最も美しく、きよらかな場所だとしても」

 アフロディーテの話を聞いて、サイファが考えたことに、ぼくはドキっとしたんだ。
 『それって、悪くなる方向にしか、変われないってこと』
 ぼく、そんな風には考えてみたこともなかったけど、確かに、そうかもしれない。

「しかし、なんだ。すぐにまた会えるって、可愛い奥さんが『すぐに僕を追って命を絶つはずだ』ってことに自信があるのはどうかと思うぜ?」

 マルスがあきれた口調で言ったけど、サイファは嬉しそうに笑っただけ。

「うーわー。正統派ドS天使だー」

 サイファって純粋で優しいけど、ナチュラルにすごいこと考えてるよね。
 デゼルが追ってこなかったとしても、しょんぼりするだけで、追わせようとはしないだろうけど。

『――願いをかけます』

 あ、デゼルが二つ目の願いを決めたみたいだよ。

『神様のご開運を。神様の願いがすべて叶い、神様の望む理想の世界が、すべての生命に幸いをもたらすものでありますことを』

 わぁ。
 ゲームクリアだ。デゼルおめでとう!

『最後の願いのサクリファイスを選定します――ターゲット・デゼル』

 拭っても拭っても溢れる涙、声をわななかせてデゼルが宣言する姿は、すごく痛ましかったのに。
 そう、それでいいって、サイファは冷酷に微笑んでいて。
 魔的に輝く翠の瞳が、ぼくには何だか怖かった。

 エトランジュは怖がってないかって?

 怖がってるどころか、つられてるにしても、サイファとそっくりの表情カオをしてるよ。
 エトランジュにもわかるんだ、デゼルがここに来るって。
 綺麗な翠の瞳を魔的にキラキラ輝かせて、デゼルが傍に来るのを楽しみに待ってるの、可愛いんだけど怖いな、この天使たち……。
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