サイファ ~少年と舞い降りた天使~

冴條玲

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第四章 叶わない願いはないと信じてる

第112話 天使みたいだと思ってた

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「はじめまして、サイファ」

 唐突に、デゼルの傍にいたはずの神様が、僕の前に現れてた。
 何が起きたんだろう。
 まるで、時が凍りついたみたいに、僕と神様とエトランジュの他に動くモノはないみたい。

「デゼルの最後の願いを聞く前に、君に確かめておきたいことがあってね。デゼルが君とエトランジュの復活を願ったら、君は復活したい?」
「それはできないって――」
「私の願いがすべて叶うようにと、デゼルが願った。だから、願いのルールの変更だ。叶わない願いはない」

 僕は知らないうちに、エトランジュと見詰め合ってた。
 あ。
 目をまん丸にしたエトランジュも可愛い。
 ――あれ?
 何の話だっけ。

「……君ね。君達は死んだわけじゃない。神に捧げられ、天使になる資格を得たんだ。それは、この神界で不老不死を得て、天使として永遠の命を生きることを意味する」
「……」
「復活してしまうと、その資格を失うわけだけど、君はどちらを望む? 君が復活を望むとしても、望まないとしても、デゼルは君の意志に従うだろう」
「……」

 エトランジュもデゼルも天使みたいに可愛いと思ってたら、本物の天使になれるみたい。

 永遠――

 デゼルにとって、永遠にデゼルであることは、いつか、苦しみや悲しみになってしまわないかな。
 忘却レーテーをかけたとしても、十歳の時に刻まれた傷を、永遠に抱えるの? それって――
 何だろう、泣きたくなる。
 いつか、この命が終わって、デゼルも僕もいなくなるのはとても寂しいけど。

 でも――

「天使って、子供は?」

 僕は人間に生まれたから、男の子も欲しかったなとか、エトランジュの成長が楽しみとか、あるんだけどな。

「成せないよ。永遠の命を持つ存在に子を成す能力を与えたら、必ず、居場所が足りなくなって、殺し合わなければならなくなる。それでは、永遠の命を与えた意味がないからね。新しい命が生まれるためには、何かが始まるためには、何かが終わらなければならない」

 やっぱり、そうだよね。
 ここは永遠に、不変にして不滅の世界みたいだもの。

「人間である僕の魂は、『永遠』に耐えられるでしょうか?」

 なんとなく、耐えられないような気がするんだ。
 そのうち壊れてしまいそう。
 永遠に存在する前提で創造つくられていない感じがするんだ。

「耐えられるように創造り変えることはできるけれど」

 ああ、そうか。
 でも、それってもう、きっと、僕じゃないしデゼルじゃないんだ。
 だって僕は、僕がいないとどうにもならない、デゼルの頼りないところが大好きなんだから。
 僕がいなくても泣かないデゼルなんて、デゼルじゃないよね。
 それに――

「復活します。何も知らないデゼルがそれを望んでいるし、僕も、量産型エトランジュを見てみたいから」

 限りある命って、とても優しい永遠。
 僕とデゼルが愛し合ったことは、永遠に続いてゆくんだ。
 いつか、僕が死んでしまっても、デゼルが死んでしまっても。
 エトランジュの中にその奇跡は残って、次の世代に受け継がれてゆく。
 それって、とても素敵な永遠。

 神様が笑った。

「量産型エトランジュ? それって、ちょっと脅威を感じるな」
「?」

 脅威って、何のことだろう。

「わかった、君がそう望むなら、すべて、デゼルの願い通りに叶えよう。君が神界で見聞きしたことは、復活したらすべて忘れてしまうけれど――君と話すのは、なかなか、楽しかったよ」
「こちらこそ。僕とデゼルにすべてを与えて下さって、ありがとう」

 遠くなる、葉擦れの音、せせらぎの音、鳥の声。
 まばゆい光が溢れて、美しく優しいすべての光景が吞み込まれていった。
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