賢者様の仲人事情

冴條玲

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第四章 王子と姫君

4-1. いつもと同じ朝

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 朝。
 いつものように、ティリスはレオンの腕の中で目を覚ましていた。
 結局、カムラに来てからいつも一緒に寝ているのだ。問題のある、カタリーナにはとても言えない状況ながら、何だか慣らされてしまって、違和感がなくなっていた。

 ――まずいよな~。

 気持ちいいなとレオンの胸にもたれながら、こいつ、どうするつもりなのかなあと、ティリスは少し物思った。
 正直、最近ではあまり、国に帰りたくなかった。
 ん、と小さな声を出して、レオンがティリスを抱え直した。そろそろ起きる頃だけれど、まだ、目を覚ます気配はない。

 うう、気持ちいいよう~。
 帰りたくない。ここにいたい。レオン、カムラの皇太子なんてやめればいいのに。
 なあ?
 それっていいと思わないか?
 そんでさ、二人して冒険者とかになるんだよ。そんでオレは伝説の剣匠に、レオンは史上初の英雄な死霊術師になってさ。うん。

「……ん……」

 ティリスがなんだかわくわくしてきたのが、伝わったのだろうか。
 レオンが目を開けた。

「あ……おはよ」

 にこりと微笑みかけると、レオンも笑ってティリスを捕らえ、軽く口付けてきた。
 いつもと同じ、朝。

 ――うう、悪かったな、おはようのキスとかしてるよ! だって、レオンがするんだよ!

「朝か?」
「朝だぞ」

 そうかと頷くと、レオンは何事もなかったかのように、ぱたりと倒れた。

「……おまえなあ。また寝るんなら、何のために確かめてんだよっ」
「……朝かと思って」

 目も開けないで、寝ぼけた声で答える。ティリスは苦笑して、寝台から起き出した。

「オレ着替えるから、おまえもそろそろ起きろよな? 遅れるぞ?」

 そう言い残して、パジャマを替えに脱衣所へと向かう。でも、多分、起きやしない。着替えて戻ってみると、案の定、レオンは寝台に起き上がっただけで、まだ何の行動も起こしていなかった。
 仕方がないのでレオンの着替えも取って、持って行く。
 うん、この辺はまともに従者の仕事だ。

「眠いぞ」
「はいはい。でも朝だぞ~。起きろ~」

 寝起きの悪いレオンに軽くはっぱをかけながら、てきぱきと着替えをさせる。最初は途惑ったけど、これも、慣れた。
 おまえのいい匂いがする、まだ寝るぞとか、どうして起きなきゃいけないんだとか、朝からぶつぶつ言っているのはほっといて。
 こいつ、ほんとに寝起き悪いんだよ。朝は機嫌悪いし。

「ほら、できたぞ。朝飯にしようぜ」
「ん……ああ、できたな」

 ここまで何にもしてないヤツが、じゃあ、起きてやるから靴、とかなんとか偉そうに言う。――いや、実際に偉いんだけど、世襲制ってどうかと思うよな、こういう時。
 靴の紐も当然オレが結ぶとして、その前に窓を開けなきゃなんない。

「――ティリス」

 背中から抱き締められて、どきっとした。
 最近よく、こういうことがある。
 外でこういうことしない条件で、中では怒らないって、言ったけど――
 だからって、毎朝やられても、困るっていうか。
 だいたい、こいつ怠慢で、そのまま話すもんだから、耳元に囁かれる形になるんだよ。困る。すげー困る。

 ――何か、ほんとにオレばっかり意識してるよな。くそう。

「ティリス、おまえ、僕が好きか?」
「……す、好きだぞ?」

 少し笑って、レオンが首筋に口付けてくる。
 うわー、うわー、うわー。

「……やっ……」
「ティリス、靴」
「~! 先に離せっ」

 ――これが、当たり前になってたから。
 だから、心のどこかで期待してたのかもしれない。


 自分があんなことで泣くなんて、思わなかった。
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