悪役令嬢と十三霊の神々

冴條玲

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第三章 願いの枠が余ったので

第83話 悪役令嬢は神様のゲームをクリアしたい

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 丸一日ゆっくりやすんだら、もやがかかったようだった心が晴れて、すっきりと整理がついたの。
 知らなかった。
 考えるより、やすんだ方が、心が答えに辿り着くことがあるのね。

「サイファ様、私、魔物に変えられてしまった人達を元に戻したい。サイファ様が一緒に来て守って下さるなら、月齢の首飾りをかけて欲しいの」
「デゼル、僕、月齢の首飾りはかけないと言ったよね」

 サイファが少し、怖い顔をしたけど、私は首を横にふった。

「今の私には、サイファ様を私の闇主から解放する力があるの。サイファ様が月齢の首飾りをかけて下さらなければ、いざという時、私は私の身を守ることより、サイファ様を私の闇主から解放することを優先するもの。それで、闇主の力をなくしたら、サイファ様はもう、私を守れなくなるよ」

 サイファが絶句して私を見た。

「だから、月齢の首飾りをかけて欲しいの。最後まで、諦めずに私を守って欲しい」

 私を真っ直ぐに見詰めたサイファが、利き手を口許にあてて目を落とした。
 真剣な顔で考えて、考えて。
 やがて、嘆息して、かぶりをふったの。

「――わかった。待ってて、ユリシーズから、返してもらってくるから」

 私がサイファに微笑みかけると、サイファも微笑み返してくれた。
 私、サイファを危険な目に遭わせる覚悟をしたの。
 サイファも、私を危険な目に遭わせる覚悟をしてくれたの。

 私達、今、それを確かめあった。

 ゲームのデゼルの気持ちがわかる気がするの。
 ヒロインが『二人とも見逃す』を選んでくれても、すべてのフラグが立っていない限り、死の運命に抗おうとしないデゼルの気持ちが。

 クライマックスのデゼルは、魔物に変えられてしまった人達をすべて元に戻し終えているもの。
 だから、あとは、自分さえいなくなれば愛する人を救えることに、気がついていたんだと思う。

 悪役令嬢であるデゼルの最後の仕事は『悪役として死ぬこと』よ。

 魔物に変えられたりして、つらい思いをしてきた人達には、悪役が必要なの。
 誰かが悪役として、断罪されなければならないの。

「みんなデゼルが悪かったのだ。そしてデゼルは滅ぼされた。めでたし、めでたし」

 わかりやすい物語が必要なの。

 悪役として断罪されるはずだった闇の十二使徒の闇落ちを、私が阻止してしまったもの。
 ネプチューンが悪役として断罪されたら、ユリシーズと京奈が泣くもの。

 ユリシーズの名を借りて、ひとつの村を呪いから解放した日、疲れたけど、向けてもらえた感謝と好意が、とても、心地好かった。

 デゼルでは駄目なの。
 デゼルが同じことをしても、向けられるのは嘲笑と中傷。
 それは、サイファやエトランジュにまで降りかかって、サイファはお母さんとなかば、絶縁してしまったんだもの。

 私が生きている限り、何をしても、この迫害からは逃れられない。

 だから、悪役には私がなるしかないの。
 私が断罪されればいいの。
 デゼルには両親もいない。縁者もいない。

 悪役令嬢が死ねば、モブリーダーをすべての呪いから解放できるの。

 魔物にされてしまった人達を元に戻し終えたら、私はどうしても、最後に、サイファを救いたい。
 私は十年も、サイファの傍で幸せに満たされた時を過ごせたもの。
 今度は、サイファとエトランジュに幸せを享受して欲しい。


 ――でもね、ただ一筋だけ。
 すべてのフラグが立って、ヒロインが『二人とも見逃す』を選ぶ時。
 その時だけは、生きてみたいと思うの、ゲームのデゼルと同じように。

 すべてのフラグ、十二霊の承認。
 私は十二霊の祝福と、十一霊の承認を集めた。
 京奈が『二人とも見逃す』を選んでゲームをクリアしてくれて、テュケー様の承認を得られる時まで、私が十一霊の承認を維持していられたら。

 私、神様とのゲームに勝ちたい。
 十三番目の神がどんな存在かわからないけど、挑むよ。

 神様に『世界からあらゆる呪いと悪意を拭い去って下さい』と願って叶えてもらえば、もう、私が生きていても、サイファもエトランジュも、嘲笑されたり中傷されたりしないよね。誰かを悪役にして断罪しなくても、きっと、ハッピーエンドを迎えられるよね。

 私、神様とのゲームをクリアできるなんて、夢にも思わなかった。
 でも、気がついたら、ここまできてた。

 神様とのゲームをクリアしたいと思ったの。
 今、はじめて。
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