ありふれた異能バトル~リレー式~

やすいケンタウロス

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地雷原

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「まあこんな状況じゃ仕方ねえかもしれねえが、怖いもんだな裏切りってのは」

 痛たた、と言いながら難波は5人で昼ご飯を食べていた

「…それじゃあダメですよ、こんな状況だからこそ信頼は大切にしなきゃいけないと思います」

「うん、僕も小倉さんに同意かな、あっハンバーガーお代わりあるよ」

 そういって鎧坂は大量のバーガーを袋から取り出す、しかし北神と柊はなかなかとろうとしない

「でも、やっぱりショックですよ…俺は出会ったばっかりだったけど錦川さんを信頼してたんです、それをこんな形で…」

「私も、北神君と同じかな…」

 北神と柊により空気が落ち込む、平気そうなのは変わらないペースでバーガーを口に放り込む鎧坂のみだった。

「落ち込んでても仕方ないさ、とりあえずこれからの行動を決めよう、辛いかもしれないけどこういうのは思い悩むより行動した方がいいさ、それに悲しくてもお腹はすくよ、ほら食べて食べて」

「まあ、俺らはショックも少ないからな、誰もやらないんなら仕切らせてもらうぜ、あと太嗣、お前は食うのをやめろ食料が尽きる」

 いまだ食べ続ける鎧坂と足を擦りながら話し始める難波に、特に誰も否定の意を示さなかった

「よし、まずこの場所のことだが、俺と太嗣はここに来る途中、一回目の転移で寝たきりの男を見た、太嗣が食料に埋もれてる状態だったから食料を確保しようとして転送させたんだろう、まあすぐに別の場所に飛ばされたがな」

「つまりこの空間はその寝たきりの人が能力で作った可能性が高いね、おそらく彼をどうにかしないと僕らはここから出ることはできないと思うよ」

「そんな…じゃあここはその人が作った処刑場ってことじゃないですか!」

「そんなのどうすれば…」

「うえええええん…」

 怒りを露にする北神に暗い顔をする柊、また泣き出してしまう小倉、しかしそれらを気にすることなく難波達は話を続ける

「そう悲観することはねえと思うぜ、あいつは俺らを見るなり別の場所に飛ばした、まあ単に他の奴らとぶつけるためって可能性もあるかもしれねえが、そんな回りくどいことするくらいなら俺らの体の一部だけ飛ばして切断しちまえばいい。つまりあいつが直接攻撃してくることはねえと考えていい」

「逆に気をつけなきゃいけないのは分断されることだね、こんな状況だから飛ばされてもいいように全員で固まって行動した方がいいと思う、まあ無差別攻撃には注意しなきゃいけないけどそこは北神君の能力とかで頑張っていこう、万が一飛ばされたら柊さんの能力で全員の安否を把握するんだ」

 見かけよりも頼りになるデブに思わず「おおっ」となる3人だった

 ◇

「よっし、とりあえず外を目指そうぜはるにゃん」

「れっつご~!」

「だからはるにゃんと呼ぶなと…はぁ、まあいいわ言っても聞きそうにないし」

 小林を肩車した逆鐘は加賀とともに洞窟の中を歩いていた

「で、そんなこと言ってもどこに向かってるのよ?カンとか言ったらぶっ飛ばすわよ」

「おおこわいこわい、助けて廉渡えも~ん!」

「ふん!」

「ぐへぇ!」

「うわあ!」

「あっごめん廉渡君、つい…」

「ううん、大丈夫、でも今度からはぼくが乗ってないときにしてね」

「ありがと」

「あれ~、俺は?ねえねえ俺は?」

「死ね」

 二回目の加賀の攻撃をさらりと躱す逆鐘、加賀のストレスは溜まるばかりである

「ふう、まあどこに向かってるかって話だったな、簡単だ、風の吹いてくる方向に向かっているんだ、そこに出口かはわからないが風の吹きこむ何かがあるはずだ」

「…驚いた、アンタまともな思考ができたのね」

「ぼくもびっくり」

「あれれれれ?なぜか目から汗が止まらないや…」

 道のわきに座り込み、膝を抱え不貞腐れる逆鐘を小林が慰める、もはやどちらが子供だかわからない光景であった

「でもそんなことする必要はないわよ、私の能力があればすぐに…かはわからないけど地上には着くと思うわよ」

「ん~、それはなぁ~」

「あぶないとおもうよはるにゃん」

「どういうことよ?」

「上に水とかが溜まってた場合とかもあるんだが一番のは…」

「おい!お前ら逃げろ!そっちに銃を持った奴が向かってるだろ!」

「は?」

 3人が話しているとそこに錦川が現れる、実際には南沢も近くに…ちょうど3人の目の前にいるのだが能力を使っている南沢は3人に干渉することはできず、気づかれることはない

「あっ、あいつやばいかも」

 錦川は南沢を追いかけるために強く大地を踏み込み、南沢に飛びかかろうとする、その時だった

「ぐああああああああ!!!」

 強く大地を蹴った錦川が突如炎上した。







「あっ、ポイント増えてる…一人引っかかっちゃったか、本当に申し訳ないよなコレ」

 No.42 炭村 太一
 ―地雷原―
 30分に一回自身の周囲2mのどこかに地雷が設置される、地雷は強い衝撃でしか爆発しないが威力はその分高い、地雷は能力者本人にも有効

「俺もどこにあんのかわかんねえし迂闊に走れねえよコレ…」









「はあああああああ!?」

「なんか地雷みたいなのあるみたいなんだよね、歩いてるくらいじゃ発動しないみたいなんだけど、ああやって強い衝撃で発動するっぽい、あっ廉渡は見ちゃダメよ~」

 逆鐘は小林の目を右手で塞ぎつつ加賀に説明する

「それと…お兄さん銃は危ないと思うな!」

 逆鐘はすぐ後ろで銃を構えていた南沢の手を左手のデコピンで弾き飛ばす、もちろん加賀には南沢が見えていないが宙を舞う銃はしっかりと見ることができた

「あらら~失敗失敗、そいじゃさいなら~」

 南沢は逃走、小林の目を塞いでいた逆鐘は追うことはできなかった。

「何よ今のも!?」

「暗殺者かな?ははははは」

 逆鐘は変わらない様子でふざける、加賀の逆鐘に対する認識が少し変わった瞬間だった。



 地下帝国、南の広場。ここに4人の中年の男女が拠点を築いていた。

「早く町内会に出席しないと私の町会長としての立場が……。皆さん、協力してポイントを集めますよ。」

 No.45 市上 徳雄
 ー職人気質ー
 全身を鋸やスコップなどに変えて周囲の木や土を材料に様々な物を作り出す。

 町内会に行く道すがら突然連れ去られたおじさん、おばさん達。彼らの協力体制は既に何十年も続いているものであった。

 No.82 渡辺 陽子
 ー匂いの魔術師ー
 あらゆる種類の匂いを周囲の生物に感知させる。匂いを嗅がせれば150ポイント消費ごとに1人に対して1時間の幻覚を見せることも可能。

 No.33 糸田川 武
 ー蜘蛛の糸ー
 両手からまぁまぁ強力な粘着性の糸を噴出する。

 No.84 金谷 由希子
 ー見えない助手ー
 浮遊用・攻撃用・防御用の3人の透明人間が常に使用者の周りに控え、命令に従う。

「で、渡辺さん。どうやって他の参加者を倒すって?」

「もう、あんた何回か聞いたら気がすむのよ!?
 いい、よく聞きなさいよ。
 1、私の匂いで参加者をこの広場におびき寄せる。
 2、会長が作った扉を3つとも閉めて出口を失くす。
 3、あなたの能力で目標を確保。
 4、で、金谷さんの“攻撃用”で止めをさす。
 分かった?糸田川!!」

「分かりましたよ渡辺さん……。まったくもっと優しい言い方があるんじゃ無いですかねぇ。」



「さてと、あのふざけた集団の位置も、デブいやつとかがいた位置も大体分かった……。しかしあの大男を殺った能力、一体誰の物なのか。地面を強く踏まないようにいかないと。」

 逆鐘達から逃れ、南沢は1人洞窟を進んでいた。

「それにしても腹減ったなぁ。ここら辺全然食い物落ちてねぇし、別のエリアに行かないとなぁ~。ん?これはカレーの匂いか?なんでそんな匂いが……。まぁ誰かが作ってやがるんだろ。なら、ポイント貰いついでにカレーも貰っちまうか、へへっ。」

 南沢が右の角を曲がり広場に足を踏み入れた瞬間、町内会の作戦は始まった。

「来ましたよ!会長。」

 突然閉まる通路、南沢はあっという間に閉じ込められる。

 シュパッッ

 間髪入れずに両手が塞がれる。

「うおおおおおい!!ちょっと待ってくれ。あんたらそんな簡単に人を殺そうってのか!?やめてくれよ、俺非戦闘員で通ってんだぜ?ここへ来たのもたまたまで……。とにかくこんな風に人の命を奪っていいはずが無い、そうだろう?」

「……どうする町長?由希子さん今にも殺したそうな顔してるけど。」

「そうですねぇ。彼は糸で完全に動きを封じてることですし、取り敢えず生かしておきましょうか。」

 そう言うと市上は広場の通路を開けた。
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