18 / 33
覚醒
しおりを挟む
「会長、次は殺しますよ、私は速くこの町から出たいんです、それは会長も同じでしょう?」
「いやまあそれはそうだが…」
市上にそう言い、金谷は攻撃用の透明人間を扉の側に配置する、できれば殺傷などの行為は避けたい市上、この緊急時では仕方ないかと思っている糸田川と渡辺、そして殺すことに何のためらいも持たない金谷、彼らの仲には僅かながら亀裂が生まれ始めていた
「あっまた来ましたよ」
渡辺が小林が駆けてくるのをみて全員に伝える、小林が部屋に飛び込むと同時、糸田川の糸が小林に向かって飛ぶ、しかしこの暗い洞窟の中やってきた人物が大人だと思っていた糸田川は少し高めの位置に糸を放っていた
糸は小林の頭上を通過し
「えっ?」
小林のすぐ後を追っていた加賀を捉えた
「そおらぁっ!」
しかし暗闇の中、糸田川は自分が先頭を走ってきた人物を捉え損ねたとは気づかない、気にすることなく加賀を引っ張る、そして引っ張られた先に待機するのは金谷の攻撃用の透明人間
「がっ…はっ…あれ…?」
透明人間の腕は容赦なく加賀の胸を貫いた
加賀の返り血は透明人間と小林に降りかかり、透明人間にその赤い姿を、小林の幼い心に大きな傷を与えた
◇
「はる…にゃん…?」
突如後ろから加賀に突き飛ばされ、地面に転がった小林が起き上がり目にしたのは、胸に穴が開いた加賀とその血を浴びて現れた赤いマネキンのような人間だった
「くそっ!廉渡!見るな!」
「うっおえ…うああああ…」
駆け付けた逆鐘が小林の目を塞ぐがとき遅く、小林は目の前の現実を突きつけられたことで胃の中のものを吐き出し、それでもなおまだ気持ち悪さに襲われていた。
「チッ複数いたのか」
とても女性とは思えない口調で金谷が愚痴り、攻撃用の透明人間を逆鐘に襲わせる
「そう簡単にやられるかよ!」
しかし逆鐘もデコピンで応戦、自分の指のことを一切厭わない正しく人外と言える威力のデコピンが透明人間の体を抉り飛ばす、しかし能力によって作られた透明人間は動きを止めない
透明人間と逆鐘の戦いは続く、それを金谷は防御用の透明人間に自身を守らせ冷たい目で見つめていた
◇
(おやおやあ?あれは俺の銃を一個ダメにしてくれた兄ちゃんじゃねえか、クククちょうどいい仕返しってのも面白い)
「会長、どうします?このままだと」
「糸田川くん、こうなったら金谷さんの透明人間ごと相手を拘束するんだ、このままだと戦いに我々も巻き込まれかねない」
「金谷さん、こちらのことなんて眼中にないみたいですしね…」
糸に繭にされている南沢は能力のターゲットを糸田川から市上に変更、そして…
「いや~群れて人様を罠にはめるなんてゲスには銃殺がお似合いだと思わない?結局なんも食えてないしさ」
「なっ」
繭から抜け出した南沢は市上のこめかみに銃を当て躊躇いなく引き金を引いた、突然の声に驚く市上だったが声を上げる間もなくその頭から赤い花を咲かせた
「うおわ!」
「えっきゃああああああ!!!」
能力のターゲットになっていない二人には突然市上の頭が爆ぜたように見えただろう、しかしそれを南沢は気にも留めずターゲットを逆鐘に変更、軽い引き金を引く
「ほな、さいなら~」
◇
「あれはっ!」
透明人間とほぼ互角に戦っていた逆鐘だったが突如視界に現れた南沢に気づき少し動きが鈍る、そして南沢の存在が拮抗していた戦況に変化をもたらすこととなる
「今!」
逆鐘の動きが鈍ったのを好機とみた金谷は透明人間に指令を飛ばす、南沢からは銃弾が逆鐘に向かってくる、逆鐘は考える、両方を回避することは不可能、そしてどちらも当たれば簡単に逆鐘の命を奪うだろう、この状況で何を優先させるべきか…銃弾は背後にいる小林にあたる可能性がある、かと言って透明人間にやられても小林の命はない、ならば
「くっ!うおおおおおおおお!」
透明人間の腕を逆鐘は横からデコピンではじく、あまりの威力のデコピンに体を少し右へと倒す透明人間、これだけなら透明人間は何の問題もなく体勢を戻し逆鐘に襲い掛かっただろう、しかし、体勢を整えようとする透明人間の体を鉛玉が貫いた
逆鐘は透明人間を盾に、両方の攻撃をやり過した。
が、倒れる透明人間の赤い体で逆鐘は一瞬、南沢の姿を見失った
「アンタが1発の銃弾で仕留められるとは思ってねえよ、あの大男も銃弾弾いてたしな」
(隠し弾か…!)
透明人間の体を3発の銃弾が貫通し、逆鐘の体を貫いた
(ん?なんか光ってやがんな…ヤバそうだし撤収撤収♪)
◇
「にい…ちゃん…」
銃弾に撃たれた逆鐘だったがまだほんの少しだけ息があった、彼は加賀のすぐ隣に倒れ、その側では小林が泣いている、そして小林の周囲には仄かに青白い光が駆けまわっている
「ごふっ…ごめんな…廉渡…はるにゃんも…」
逆鐘の目は焦点が合っていない、彼がもうじき死ぬであろうことは誰の目から見ても明白だった
悲しい別れ、しかし金谷はそれを見て何か思うような心は持っていない、市上が死んだことも気にせず防御用の透明人間に彼ら二人の命を奪うように指令を出す
「いかないでよ…」
「悪い…お前は…家に帰るんだ…お前には力がある…使いたくはないかもしれないけど…もう俺はお前を守れない…」
残り少ない二人の時間、そこに背後から近づく透明人間、逆鐘がこと切れると同時、決して攻撃用のものほどではないがそれでも強力な透明人間の腕が小林へと振るわれ…
ドォオオオオン!
雷鳴が轟き、透明人間を消し炭に変えた
「あははははははは、ばちばちしてて、花火みたいだ…」
防御用の透明人間が一撃でやられたのを見た、金谷たちは逃げ出そうとする、特に金谷は浮遊用の透明人間を使い素早く移動している
「おいっアンタ卑怯じゃねえかソレ!」
「金谷さん私も乗せてください」
「嫌よ、世の中は弱肉強食、遅い人からやられるだけだもの、せいぜい時間稼ぎでもしてくださいな」
「ってめえ!」
先頭を逃げる金谷、しかし雷はその金谷を正確に狙い落ちてきた
「なっ」
幸い浮遊用の透明人間が犠牲になり、自身は雷に打たれることはなかった金谷だったが、彼女は地面に投げ出されたときに足をくじいていた
「お願いっ!足をくじいてしまったみたい、助けて!」
「知るかよ、世の中弱肉強食なんだろ…」
「すいません金谷さん」
糸田川は一瞥もくれず、渡辺はすまなさそうな表情をしつつも足を止めることなく逃げていく
「あははははは、ねえおばさん、きれいな花火見せてよ!」
雷神の裁きが、始まる。
「いやまあそれはそうだが…」
市上にそう言い、金谷は攻撃用の透明人間を扉の側に配置する、できれば殺傷などの行為は避けたい市上、この緊急時では仕方ないかと思っている糸田川と渡辺、そして殺すことに何のためらいも持たない金谷、彼らの仲には僅かながら亀裂が生まれ始めていた
「あっまた来ましたよ」
渡辺が小林が駆けてくるのをみて全員に伝える、小林が部屋に飛び込むと同時、糸田川の糸が小林に向かって飛ぶ、しかしこの暗い洞窟の中やってきた人物が大人だと思っていた糸田川は少し高めの位置に糸を放っていた
糸は小林の頭上を通過し
「えっ?」
小林のすぐ後を追っていた加賀を捉えた
「そおらぁっ!」
しかし暗闇の中、糸田川は自分が先頭を走ってきた人物を捉え損ねたとは気づかない、気にすることなく加賀を引っ張る、そして引っ張られた先に待機するのは金谷の攻撃用の透明人間
「がっ…はっ…あれ…?」
透明人間の腕は容赦なく加賀の胸を貫いた
加賀の返り血は透明人間と小林に降りかかり、透明人間にその赤い姿を、小林の幼い心に大きな傷を与えた
◇
「はる…にゃん…?」
突如後ろから加賀に突き飛ばされ、地面に転がった小林が起き上がり目にしたのは、胸に穴が開いた加賀とその血を浴びて現れた赤いマネキンのような人間だった
「くそっ!廉渡!見るな!」
「うっおえ…うああああ…」
駆け付けた逆鐘が小林の目を塞ぐがとき遅く、小林は目の前の現実を突きつけられたことで胃の中のものを吐き出し、それでもなおまだ気持ち悪さに襲われていた。
「チッ複数いたのか」
とても女性とは思えない口調で金谷が愚痴り、攻撃用の透明人間を逆鐘に襲わせる
「そう簡単にやられるかよ!」
しかし逆鐘もデコピンで応戦、自分の指のことを一切厭わない正しく人外と言える威力のデコピンが透明人間の体を抉り飛ばす、しかし能力によって作られた透明人間は動きを止めない
透明人間と逆鐘の戦いは続く、それを金谷は防御用の透明人間に自身を守らせ冷たい目で見つめていた
◇
(おやおやあ?あれは俺の銃を一個ダメにしてくれた兄ちゃんじゃねえか、クククちょうどいい仕返しってのも面白い)
「会長、どうします?このままだと」
「糸田川くん、こうなったら金谷さんの透明人間ごと相手を拘束するんだ、このままだと戦いに我々も巻き込まれかねない」
「金谷さん、こちらのことなんて眼中にないみたいですしね…」
糸に繭にされている南沢は能力のターゲットを糸田川から市上に変更、そして…
「いや~群れて人様を罠にはめるなんてゲスには銃殺がお似合いだと思わない?結局なんも食えてないしさ」
「なっ」
繭から抜け出した南沢は市上のこめかみに銃を当て躊躇いなく引き金を引いた、突然の声に驚く市上だったが声を上げる間もなくその頭から赤い花を咲かせた
「うおわ!」
「えっきゃああああああ!!!」
能力のターゲットになっていない二人には突然市上の頭が爆ぜたように見えただろう、しかしそれを南沢は気にも留めずターゲットを逆鐘に変更、軽い引き金を引く
「ほな、さいなら~」
◇
「あれはっ!」
透明人間とほぼ互角に戦っていた逆鐘だったが突如視界に現れた南沢に気づき少し動きが鈍る、そして南沢の存在が拮抗していた戦況に変化をもたらすこととなる
「今!」
逆鐘の動きが鈍ったのを好機とみた金谷は透明人間に指令を飛ばす、南沢からは銃弾が逆鐘に向かってくる、逆鐘は考える、両方を回避することは不可能、そしてどちらも当たれば簡単に逆鐘の命を奪うだろう、この状況で何を優先させるべきか…銃弾は背後にいる小林にあたる可能性がある、かと言って透明人間にやられても小林の命はない、ならば
「くっ!うおおおおおおおお!」
透明人間の腕を逆鐘は横からデコピンではじく、あまりの威力のデコピンに体を少し右へと倒す透明人間、これだけなら透明人間は何の問題もなく体勢を戻し逆鐘に襲い掛かっただろう、しかし、体勢を整えようとする透明人間の体を鉛玉が貫いた
逆鐘は透明人間を盾に、両方の攻撃をやり過した。
が、倒れる透明人間の赤い体で逆鐘は一瞬、南沢の姿を見失った
「アンタが1発の銃弾で仕留められるとは思ってねえよ、あの大男も銃弾弾いてたしな」
(隠し弾か…!)
透明人間の体を3発の銃弾が貫通し、逆鐘の体を貫いた
(ん?なんか光ってやがんな…ヤバそうだし撤収撤収♪)
◇
「にい…ちゃん…」
銃弾に撃たれた逆鐘だったがまだほんの少しだけ息があった、彼は加賀のすぐ隣に倒れ、その側では小林が泣いている、そして小林の周囲には仄かに青白い光が駆けまわっている
「ごふっ…ごめんな…廉渡…はるにゃんも…」
逆鐘の目は焦点が合っていない、彼がもうじき死ぬであろうことは誰の目から見ても明白だった
悲しい別れ、しかし金谷はそれを見て何か思うような心は持っていない、市上が死んだことも気にせず防御用の透明人間に彼ら二人の命を奪うように指令を出す
「いかないでよ…」
「悪い…お前は…家に帰るんだ…お前には力がある…使いたくはないかもしれないけど…もう俺はお前を守れない…」
残り少ない二人の時間、そこに背後から近づく透明人間、逆鐘がこと切れると同時、決して攻撃用のものほどではないがそれでも強力な透明人間の腕が小林へと振るわれ…
ドォオオオオン!
雷鳴が轟き、透明人間を消し炭に変えた
「あははははははは、ばちばちしてて、花火みたいだ…」
防御用の透明人間が一撃でやられたのを見た、金谷たちは逃げ出そうとする、特に金谷は浮遊用の透明人間を使い素早く移動している
「おいっアンタ卑怯じゃねえかソレ!」
「金谷さん私も乗せてください」
「嫌よ、世の中は弱肉強食、遅い人からやられるだけだもの、せいぜい時間稼ぎでもしてくださいな」
「ってめえ!」
先頭を逃げる金谷、しかし雷はその金谷を正確に狙い落ちてきた
「なっ」
幸い浮遊用の透明人間が犠牲になり、自身は雷に打たれることはなかった金谷だったが、彼女は地面に投げ出されたときに足をくじいていた
「お願いっ!足をくじいてしまったみたい、助けて!」
「知るかよ、世の中弱肉強食なんだろ…」
「すいません金谷さん」
糸田川は一瞥もくれず、渡辺はすまなさそうな表情をしつつも足を止めることなく逃げていく
「あははははは、ねえおばさん、きれいな花火見せてよ!」
雷神の裁きが、始まる。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる