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大爆破
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「渡辺さん!!あんた匂いで幻覚を出せるんだろ!?なんとかあいつを撹乱できないか?」
「そうね、今のポイントじゃ一回が限界だけど……1時間も見せればあの坊やも少しは落ち着くかも」
そう言って能力を発動した渡辺。幸か不幸か、これより小林は誰にも止められなくなった。
「あははははは!!みんなどこ行ったのかなぁ?あ、あそこに人が…… え、はるにゃん?にいちゃんも!!2人とも死んじゃったんじゃ……生きてたんだね!!まってよ、ぼくをおいていかないで!」
明後日の方向に走りだす小林。糸田川は標的を目前に走り去る小林の行動を気味悪く感じた。
「なに見せたんだ?」
「あの子と一緒にいた保護者?みたいな人たち。あれで私たちを忘れてくれればいいんだけどね……」
◇
1時間後、3日目午前11時。地下、中央の貯水池付近。
「2人ともどこかに行っちゃった……また誰かが隠したんだ。さがさないと」
フラフラと歩いていると突然、彼の身体を捕らえるものがあった。
「なに?これ、糸かな……苦しい」
「見ろよ渡辺!!所詮はガキだ。糸で1発だぜ!!」
「油断するんじゃないよ、その子は雷を……」
叫んでいる途中に渡辺は閃光に呑まれた。
「はるにゃんも、にいちゃんもぼくをおいていくわけない。おまえたちがかくしたんた!ふたりをかえせ!!」
小林の雷に恐れをなし糸田川は手の糸を切ると洞窟内を走り出した。小林も糸を解くと後を追う。しかし、子供の足であるなかなか追いつかない。小林は完全に見失い辺りをとぼとぼと歩きながら探すしかなくなった。
◇
貯水池でやっと糸田川を見つけると、彼は小林を迎え撃つための用意を済ませたようだった。壁から壁へ蜘蛛の糸が張り巡らされ1つの巨大な蜘蛛の巣が形成されている。
「来たか……。ここならまぁ糸で動きを止めた瞬間に止めを刺せる。いくらお前の雷が強かろうとよけられちゃ意味ねぇよな。」
小林は糸田川を無視して雷を放ち始める。
「うおおおお、危ねぇ!!」
蜘蛛の巣を駆け巡り回避していく糸田川。雷は標的を指定後発射まで間があるためうまく動き回れば当たることはない。
しかし、彼の足場はどんどん燃え尽きていく。新たに手から糸を出し、移動する糸田川だが雷の勢いに押されている。と、遂に糸田川の足場がなくなり水に落ちた。
「ハァハァ、くそっ。ここにいたら感電死しちまう……大体不公平なんだよ!!あんなガキに強能力持たせやがって!!」
糸田川が水から出たタイミングで雷が貯水池に落ちる。水は雷を糸田川の元まで運んだ。
バリッバリリリリィィィ
物凄い轟音と共に雷が明滅する。貯水池のドーム状の空間が音を反響させ洞窟の奥にまで音を届ける。
後には黒焦げの死体が浮かぶ湖が残っていた。
◇
「まってよおじさ~ん!ぼくのばちばちおもしろいんだよ!!」
南沢は走っていた。走って走って走って必死に他の参加者を探す。
くそっ一体皆どこに消えた?早く消えないとこいつに殺られる!!雷なんて回避のしようがねぇよ……。
全力疾走で何とか姿をくらませた南沢はこの間にと洞窟の分岐をめちゃくちゃに曲がり距離をとった。
しかし、ようやく引き離したと一息ついたのも束の間、小林は能力を発動した。
「走るの疲れちゃったなぁ~。あのおじさんにばちばちおちろーー!」
ドッコォォーーーン!
南沢の周囲の洞窟ごと雷は標的を抉った……
小林の能力は相手を指定することで発動する力。そのため、姿が離れようと小林が知らない人間だろうと小林が自分の意思で標的を指定すれば能力は発動した。
洞窟にこだまする雷鳴は地下の参加者を精神的にも追い詰めていた。逃げ場のない地下空間、急に止む悲鳴、減る足音。全員を対象殺すまで終われない、そう多くの人が決意するのに時間はかからなかった。
◇
「もう三日もここにいるにのに誰にも会わない…」
ときどき眩い光が辺りを照らす地下帝国、そこを炭村は独り、歩いていた
彼は誰かに会えることを願って地底湖の周囲を歩き続けていたのだが、幸か不幸か彼は一度も人に会えなかった
そんな彼も三日目にして人の気配を感じとるのだが…
「最初はひょっとして安全地帯に来れたのかとも思ってたけど、そんなこと無いよなぁ…」
「ぎゃああああ!」
「うわっ!またか…また誰かの悲鳴だよ…ああもうこええなあちくしょう…」
彼は青白い光と共に響く断末魔のような悲鳴に怯えていた、それでも独り言を吐き、彼はゆっくりとだが歩き続ける、辺りは暗く、ようやく見えた光は断末魔とともに…彼は立ち止まればそこで何もかもが終わってしまう気がしていた
彼のこれまでの行動はある意味正解で間違いでもあった
「ぐああああ!」
彼が聞いたのは南沢の悲鳴、しかし誰の声かなど彼には関係無い、問題は
「っ!今の悲鳴、ここからかなり近いぞ!地底湖のほうか!」
炭村は急いでその場から離れる、しかし彼の一つ目の間違い、独り言により自分がいることは気付かれていた。
「あははははは!ねえねえ待ってよ!綺麗な花火が見れないよ!」
「やっべえ!こっち来てる!」
追ってくるのは想像していたよりもずっと幼い声、それが炭村の恐怖をさらに掻き立てる
全力で逃走する炭村だったが、小林もこれまでの戦いで学習していた。小林は花火が綺麗だ、楽しいなどと言っているが、結局は二人を失ったショックを眩しくも残酷な光景、人殺しという行為で上書きし、自分の身と心を守っているにすぎない
しかしその行為もまた彼の心に傷を作っていることに気付いていない、いや気付いたところでさらに壊れてしまうだけだろう。
彼はもう人殺しを止められない。
とにもかくにも、小林は炭村を殺すのに炭村を目視する必要も見たいという欲求も無い、彼はただ殺すだけ、あらゆる意味で幼い自分を守るために
雷が炭村の頭上に発生し、落ちる
もはや自身の能力のことも忘れて走っていた炭村は背後に青白い光を見た、雷は彼のすぐ後ろに流れ
ドオオォォォォン!
彼の能力である地雷を貫き、爆風と熱で炭村を消し飛ばした、皮肉にも彼が最期に見たのは青と白の輝く光ではなく、赤と黒の鈍い光だった
炭村の行動で正解だったこと、それは三日もの間、地底湖の回りだけを歩き続けたことだった、地底湖周囲の環状の道に設置された地雷の数は132個、彼が逆鐘にも鎧坂にも市上にも出会わなかったからこそ密集して設置された地雷は次々と誘爆し…
「うわあああああああ!」
地底湖周辺を崩壊させた
「そうね、今のポイントじゃ一回が限界だけど……1時間も見せればあの坊やも少しは落ち着くかも」
そう言って能力を発動した渡辺。幸か不幸か、これより小林は誰にも止められなくなった。
「あははははは!!みんなどこ行ったのかなぁ?あ、あそこに人が…… え、はるにゃん?にいちゃんも!!2人とも死んじゃったんじゃ……生きてたんだね!!まってよ、ぼくをおいていかないで!」
明後日の方向に走りだす小林。糸田川は標的を目前に走り去る小林の行動を気味悪く感じた。
「なに見せたんだ?」
「あの子と一緒にいた保護者?みたいな人たち。あれで私たちを忘れてくれればいいんだけどね……」
◇
1時間後、3日目午前11時。地下、中央の貯水池付近。
「2人ともどこかに行っちゃった……また誰かが隠したんだ。さがさないと」
フラフラと歩いていると突然、彼の身体を捕らえるものがあった。
「なに?これ、糸かな……苦しい」
「見ろよ渡辺!!所詮はガキだ。糸で1発だぜ!!」
「油断するんじゃないよ、その子は雷を……」
叫んでいる途中に渡辺は閃光に呑まれた。
「はるにゃんも、にいちゃんもぼくをおいていくわけない。おまえたちがかくしたんた!ふたりをかえせ!!」
小林の雷に恐れをなし糸田川は手の糸を切ると洞窟内を走り出した。小林も糸を解くと後を追う。しかし、子供の足であるなかなか追いつかない。小林は完全に見失い辺りをとぼとぼと歩きながら探すしかなくなった。
◇
貯水池でやっと糸田川を見つけると、彼は小林を迎え撃つための用意を済ませたようだった。壁から壁へ蜘蛛の糸が張り巡らされ1つの巨大な蜘蛛の巣が形成されている。
「来たか……。ここならまぁ糸で動きを止めた瞬間に止めを刺せる。いくらお前の雷が強かろうとよけられちゃ意味ねぇよな。」
小林は糸田川を無視して雷を放ち始める。
「うおおおお、危ねぇ!!」
蜘蛛の巣を駆け巡り回避していく糸田川。雷は標的を指定後発射まで間があるためうまく動き回れば当たることはない。
しかし、彼の足場はどんどん燃え尽きていく。新たに手から糸を出し、移動する糸田川だが雷の勢いに押されている。と、遂に糸田川の足場がなくなり水に落ちた。
「ハァハァ、くそっ。ここにいたら感電死しちまう……大体不公平なんだよ!!あんなガキに強能力持たせやがって!!」
糸田川が水から出たタイミングで雷が貯水池に落ちる。水は雷を糸田川の元まで運んだ。
バリッバリリリリィィィ
物凄い轟音と共に雷が明滅する。貯水池のドーム状の空間が音を反響させ洞窟の奥にまで音を届ける。
後には黒焦げの死体が浮かぶ湖が残っていた。
◇
「まってよおじさ~ん!ぼくのばちばちおもしろいんだよ!!」
南沢は走っていた。走って走って走って必死に他の参加者を探す。
くそっ一体皆どこに消えた?早く消えないとこいつに殺られる!!雷なんて回避のしようがねぇよ……。
全力疾走で何とか姿をくらませた南沢はこの間にと洞窟の分岐をめちゃくちゃに曲がり距離をとった。
しかし、ようやく引き離したと一息ついたのも束の間、小林は能力を発動した。
「走るの疲れちゃったなぁ~。あのおじさんにばちばちおちろーー!」
ドッコォォーーーン!
南沢の周囲の洞窟ごと雷は標的を抉った……
小林の能力は相手を指定することで発動する力。そのため、姿が離れようと小林が知らない人間だろうと小林が自分の意思で標的を指定すれば能力は発動した。
洞窟にこだまする雷鳴は地下の参加者を精神的にも追い詰めていた。逃げ場のない地下空間、急に止む悲鳴、減る足音。全員を対象殺すまで終われない、そう多くの人が決意するのに時間はかからなかった。
◇
「もう三日もここにいるにのに誰にも会わない…」
ときどき眩い光が辺りを照らす地下帝国、そこを炭村は独り、歩いていた
彼は誰かに会えることを願って地底湖の周囲を歩き続けていたのだが、幸か不幸か彼は一度も人に会えなかった
そんな彼も三日目にして人の気配を感じとるのだが…
「最初はひょっとして安全地帯に来れたのかとも思ってたけど、そんなこと無いよなぁ…」
「ぎゃああああ!」
「うわっ!またか…また誰かの悲鳴だよ…ああもうこええなあちくしょう…」
彼は青白い光と共に響く断末魔のような悲鳴に怯えていた、それでも独り言を吐き、彼はゆっくりとだが歩き続ける、辺りは暗く、ようやく見えた光は断末魔とともに…彼は立ち止まればそこで何もかもが終わってしまう気がしていた
彼のこれまでの行動はある意味正解で間違いでもあった
「ぐああああ!」
彼が聞いたのは南沢の悲鳴、しかし誰の声かなど彼には関係無い、問題は
「っ!今の悲鳴、ここからかなり近いぞ!地底湖のほうか!」
炭村は急いでその場から離れる、しかし彼の一つ目の間違い、独り言により自分がいることは気付かれていた。
「あははははは!ねえねえ待ってよ!綺麗な花火が見れないよ!」
「やっべえ!こっち来てる!」
追ってくるのは想像していたよりもずっと幼い声、それが炭村の恐怖をさらに掻き立てる
全力で逃走する炭村だったが、小林もこれまでの戦いで学習していた。小林は花火が綺麗だ、楽しいなどと言っているが、結局は二人を失ったショックを眩しくも残酷な光景、人殺しという行為で上書きし、自分の身と心を守っているにすぎない
しかしその行為もまた彼の心に傷を作っていることに気付いていない、いや気付いたところでさらに壊れてしまうだけだろう。
彼はもう人殺しを止められない。
とにもかくにも、小林は炭村を殺すのに炭村を目視する必要も見たいという欲求も無い、彼はただ殺すだけ、あらゆる意味で幼い自分を守るために
雷が炭村の頭上に発生し、落ちる
もはや自身の能力のことも忘れて走っていた炭村は背後に青白い光を見た、雷は彼のすぐ後ろに流れ
ドオオォォォォン!
彼の能力である地雷を貫き、爆風と熱で炭村を消し飛ばした、皮肉にも彼が最期に見たのは青と白の輝く光ではなく、赤と黒の鈍い光だった
炭村の行動で正解だったこと、それは三日もの間、地底湖の回りだけを歩き続けたことだった、地底湖周囲の環状の道に設置された地雷の数は132個、彼が逆鐘にも鎧坂にも市上にも出会わなかったからこそ密集して設置された地雷は次々と誘爆し…
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地底湖周辺を崩壊させた
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