ありふれた異能バトル~リレー式~

やすいケンタウロス

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 町に突如現れた巨人、その存在はほぼ全ての参加者に認知された。

 No.3 佐伯 千歳
 一度はこの町から脱出しようとしたんだけど、門の前に黒い檻があって通ることができなかった。
 檻の中にいた斎藤さんっていう人に事情を聞いて、檻の能力者の人を探してたんだけど…
「ほう、是非もなし…ばあやが恋しいのう…」(大きすぎるよぉ!!助けておばあちゃぁぁぁん!!)

 現在建物の屋根から屋根へ飛び移って逃走中です。
 ん、前の方に誰かいる。



 No.29 徳永 十衛門

「なあ儂よ、なんかすぐそこにばかでかいのが見えるんじゃが…」

「奇遇じゃの、妾もじゃ」

「そうか…なればすることは一つ」

「うむ」

「「逃げるぞ儂(妾)!!」」

 ―一身幾重―
 一日一体まで、自身のX染色体の情報を元に自分自身を作り出す。別れた体は離れて行動できる。それぞれ独立した思考をもつが五感の情報、ポイント、負傷は共有される。

「というか何で能力を使ったのじゃ妾!X染色体って時点で身体能力が劣るおなごの体になるに決まっとるじゃろうが!余計なリスク増やしおって!」

「うっさいわ儂!そもそもぬしも生まれたときは戦力が二倍になったとかほざいておったじゃろうが!」

「ふん!どうせおなごに囲まれたかったんじゃろうが、使う前にそもそも自分自身に抱かれたい者がいるか気づけぃ!虚しいだけじゃろう!」

「…」

「どうした妾?図星か?図星なのじゃろう?ん?」

「儂とてキサマのような体だと知っておったら使わんかったわぁ!ツラもどこか見覚えあって気色悪いし、第一儂は小さいおなごが好きなんじゃあ!」

「キサマの遺伝子のツラ、身長じゃあああ!」

 徳永 十衛門、身長実に192cmである。

 ドォン!

「「うわ来たあああああ!!!」」

 十衛門達のすぐ後ろに巨人の足が迫る。今にも潰されるその時

「失礼するアル!」(ちょっと痛いかも!)

 割って入った佐伯が二人を両脇に抱え脱出した。

「「助かった!」」

「まだ安心は出来ぬ、あやつはどうやら人を見ているわけでは無いらしい、だが…あの巨体だ」(まだだよ!あの巨人は明確にこっちを狙ってる訳じゃないけど…あれだけ大きいと)



「うわあああ!!」

 巨人が蹴り飛ばした建物から人が舞う、中に隠れていたようだ

「嫌だ死にたくない!死にたくない!」

 No.37 八丈島 俊一
 ―木偶人形―
 自身の体を木材に変える

 宙に舞う八丈島は自身の体を黒檀へと変化させる、しかし…
 ゴシャ!
 ただ道に木片が散るのみであった。

「「ひぃ!」」

「Sorry….I couldn't help you….」(助けられなくて…ごめんなさい…)



 No.1 レール・サスキンソン

「やばい!やばいっすレール様!」

「ああ?なんだぁ?」

 ショッピングモールにて縛り上げられ地面に転がる野球部と立方体一つの前、食事をとっていたレールたちだったが、このチームにしては平和な時間は一瞬で崩された。

 ドオォォォォオオォォオオオン!!!

 巨人の襲撃、ショッピングモールは一瞬のうちに半壊した。中にいた彼らは半数以上が死に絶えた。
 しかし瓦礫の中から飛び出す影が一つ、意識を失った堂之内とそれを抱えるレールである。

「チッ!どうなってやがる」

 無傷のレールであったが、その光景を見てさすがに愕然とした。

「なんだぁありゃあ?」

 レールの上に大きな影ができる、巨人の足が迫る

「ふん!」

 レールは巨人の足をちぎりとる、が巨人の歩みは一向に止まらない、レールに巨人の右腕が迫る。

「はっ、おせえ!」

 右腕を同じくパンチではじき返し、巨人を吹き飛ばす、しかし…

「グゥオオオオオオオオ!!!!」

 巨人は何度でも甦る。

「切りがねえな、仕方ねえずらかるか…」



 No.27 椎塚 孝樹

「いてててて、いきなりなんなんだよ」

 レールが去ってほんの少しあと、レールに従っていた男、椎塚が気絶から目を覚ました。

「あれか?」

 椎塚は遠方に巨人を発見する、しかし、その顔は恐怖ではなく歓喜に染まっていた。

「ふむふむ、大木と勝馬、あととらえてた野球部連中が何人か死んでるな、野球部は可哀想だったけど、あいつらマジうざかったからなぁ、レールレールって、宗教かよ怖いわ!」

「レールのやつも話聞かねえ暴君だったが、あいつが必要としてたのは堂之内だけ見てえだったからなあ、まあともかく俺は自由だ!」

 椎塚が闇に消える、あたりには静寂のみが広がった

 ―主なき影―
 目視した相手の影の伸びている方向に転移する、転移後5秒硬直する↓
 暗闇の中に潜り込む、潜っている間は移動しかできない、自身が入っている暗闇が光などで消されると消滅する、暗闇に潜り込むには10秒かかる。




「先生大変だ!でかいのが来てる!」

「はいぃ?」

 住宅街のはずれにある神社、その中で何人かが食事をとっていると、一人の少年が息を切らして入ってきた。

「なにー?どうしたのー?」

 成熟しきった体を持った女性が幼いあどけない口調で尋ねる。

 No.94 関 木乃香
 ―速攻!徳用肥料―
 生き物を急速に成長させる、参加者以外の成長した生き物は能力使用者を決して傷つけない。

「またゴキブリが出たとかはやめなさいね、それよりごはんできてるわよ」
 あきれたような表情で、疲れ切ったサラリーマンのような顔の男が愚痴る。

 No.11 纐纈 慎之助
 ―おかん―
 ありとあらゆる家事、家庭的なことをパーフェクトかつ短時間でこなす、また性格、口調にも影響を及ぼす。

「ちがいます!とにかくここにいたらやばい!みんな早く外に出て!」

 慌てた口調で話すのは主人公っぽい容姿、性格、言動を持ち、自己紹介が「俺はどこにでもいる普通の…」で始まりそうな少年

 No.46 高普 通正
 ―主人公補正―
 身体能力、決断力、トラブルに遭う確率が1.2倍になる

「どうしたんだね?」

 のっそりとした動作で立ち上がる先生と呼ばれた老人、その様子は枯れ木のようだったが老人の目だけは若木のように凛としていた。
 4人は寺の外に出て、その光景を眺める、そこにあったのはゆっくりながらもまっすぐこちらに進んでくる巨人の姿であった。

「これは…」

「わぁおっきい~!」

「木乃香、そんな場合じゃないわ」

「すぐに準備して逃げよう、幸いあの巨人はゆっくり歩いてる」

 逃げる準備をしようとする高普、しかしそれを纐纈と老人が止めた。

「うん、あの巨人は確かにゆっくりとした動作だが一歩が大きい、準備なんてしていたら逃げられんよ」

「同感ね、準備なんてできる時間はないわ、それに今から逃げても間に合うかしらね?」

「じゃあどうするんだよ!」

「どうすんの~」

「それは…」

 言い淀む纐纈、どうやら彼には考えがあるようだが、それを言うのを躊躇っているように見られた。

「それは?」

「それは~?」

「…」

「私が足止めする、そういうことだろう纐纈クン」

「なっ」

「ッ~!!」

「あしどめ~?」

 高普は驚愕の表情を、纐纈はつらそうな表情を見せ、関は事態を理解できていなかった。老人は二人の態度を意にも介さず、関に話しかける。

「木乃香や、私は高いところでお月さまが見たくてね、大きな木を育ててくれないかい?」

「わかじぃ、おつきさま出てないよ?」

「おやおや、私としたことが、じゃあおひさまを近くで見たいんだ、お願いできるかい?」

「はーい!」

 元気よく返事して、能力を発動させようとする関、しかしそこに待ったが入る

「まて木乃香!何考えてんだよわかじぃ!」

「通正クン、君のいわんとすることはわかる、が私はもう年だ、足を引っ張るだけさ…木乃香、頼むよ」

「くっ…」

 高普は自分自身に憤りを感じていた。老人のいう通り、一緒に逃げても老人は途中で動けなくなってしまうだろう。しかし高普も纐纈も老人を抱えて逃げられるほどあの巨人は遅くないだろう。

「さあ木乃香、私のお友達も呼びたいからね、大きくてみんなが座れるくらいのを頼むよ」

「わかじぃ、おわかれなの?」

 関も高普と老人の会話から何かを感じ取ったのだろう、不安そうに老人に問いかける

「大丈夫、すこし演奏してくる、それだけさ」

「…わかった」

「纐纈クン君、私を除けば君が一番年長だ。高普クンと木乃香を頼むよ」

「はい…」

 なにも言わず、冷静に事態を把握していた纐纈はただそれだけ返事した。
 関が能力を発動させ、老人の足元から若葉が生え、大樹へと成長していく。大樹が成長を止めると、樹の天辺は人が300人ほどは入れそうなお盆状になっていた、そこで一人、老人が叫ぶ

「さあ開演の時!観客は『一人』!だが一人でも一切手は抜くな!全力で奏で!皆で酔え!さあお客人!閉幕の時までお付き合い願う!暫しの時『足を止め、唯聞き惚れるがいい』!」

 老人の叫びに応えるように、樹の上のステージに次々と楽器を持った性別、国籍様々な老人や骸骨が現れる。

「目を見開き音に聞け!誇り高き我らが旋律を!」

 町中に美しい演奏が響き渡る、その音を聞いた巨人はその足を止めた。

 No.96 若月 源三郎 
 ―プロッフェショナル~荘厳なる泡沫楽団~―
 能力者の職業によって能力が変化する、無職に能力は無い
 ~荘厳なる泡沫楽団~
 かつて自身が指揮をとったオーケストラを召喚する。演奏開始前に観客を指定、演奏効果を指定することで効果を観客に反映する、演奏効果は音楽が及ぼす範囲の効果しか選択できない。(例 身体強化、回復、魅了、混乱、幻覚など)



(私も老いたな…あとどのくらい体力が持つだろうか?)
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