ありふれた異能バトル~リレー式~

やすいケンタウロス

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 ※今回の話で阿武隈の小林に対する態度が厳しめですが、これは地下編が後から作られたためです。この時点での小林君は倫理感の無いクソガキでした





 =地上=

「うわっなにあれ」

 高層マンションの最上階、蜂音は巨人を見つけ顔を青くした。しかし何かを決意したように蜂音の目が鋭くなる。

「あんなのが来たらおしまいじゃない、だったら…」

「あの巨人がすべてを終わらせる前にポイントを稼ぎきるッ!」

 その口元は恐怖と狂気が混じり合い、怪しく歪んでいた。



「ねえねえみちまさ、しんのすけ、わかじぃにはいつあえるのかな?」

 笑顔で二人に問いかける関、先ほどの蜂音とは違い天使のほほえみであった。だが二人の表情は暗い。

「…纐纈さん、先生はどのくらい持つかな?」

「そうね、冷静に分析するなら半日くらいかしら、だけど私たちにできることなんて何もないわよ」

 阿武隈と違いなぜか似合っているオネェ言葉、いやオカン口調で話す纐纈の返答に、押し黙る高普。纐纈はため息をついた後再び話し始める。

「今あの巨人と多くの人が戦ってる、皆お互い協力しなきゃいけないことはわかってるはずよ。それに若月さんは今木乃香の作った樹の上にいるわ、大丈夫あの大きさの巨木ならなかなか倒れたりしないわよ」

「なら俺たちも加勢にっ!」

 纐纈のセリフに希望が見え、提案する高普だったがそれにすぐさま待ったが入る。

「だめよ、私は若月さんにあなたたちを頼まれたの、それにあなたはともかく木乃香はまだ幼い、現状すらわかっていないのよ。私たちは弱い、一人でも欠けたら生き残れないわ」

「でもっ!」

「ねえねえあれなあに?」

 関の言葉にはっとする二人、関の指さす先には蜂のような人型の化け物がこちらに向かってきていた。

「木乃香は戦えない、逃げなきゃ!」

「無理ね、囲まれたわ」

 周囲にはおよそ八体の蜂人間、それぞれが逃走経路をふさいでいた、そして二体が纐纈たちに襲い掛かる。

「う、うわあああああ!!」

「きゃ~♪」

 慌てる高普に事態を理解していない関、しかしもう遅い、蜂人間が彼らへと迫り…

「私の子どもたちには指一本触れさせはしないわよ!」

 纐纈に投げ飛ばされる

「昔取った杵柄ね、合気道の業、見せてあげるわ」



「どうしたものかしら?素晴らしい演奏が止まってから無粋な輩が来てしまいましたわ。素敵なジェントルマンも眠ってしまいましたし、嗚呼、ばあやのお茶が恋しいわね」
(あわわわわわ…演奏が止まってから巨人が動き出しちゃった、みんなどんどんやられてる、演奏してたおじいさんも疲れ切って倒れちゃったし…おばあちゃん、お昼ご飯まだかな…っといけない現実見ないと!)

 巨人より少し大きいくらいの大樹の上のステージ、佐伯は助けた二人とともに若月を介抱しつつも途方に暮れていた。

「おいおっさん!あんた上位ランカーだろ、これ使ってあいつを止めてくれねえか?」

「失礼な吾輩を誰だと心得る!」(おおおおおっさん!?私まだ二十代だし女の子だよ!?)

「うっ、すまねえ旦那」

 新田に謝られ、佐伯は今の自身の能力のことを思い出し若干落ち込みながらも冷静さを取り戻す。

「えっとぉ、新田くんに星野ちゃんだったかしらぁ?一体何するのぉ?」(えっと、新田さんに星野さんでしたよね、私は何すればいいんですか?)

「私と貴方でこのワイヤーをあの巨人の周囲に張り巡らせるのよ!このワイヤーは新田の能力によるものだから新田が違う武器を出さない限りどこまでも伸ばせるわ!」

「ああ、俺はなんもできねえが頼む!あの巨人は動くほどにバラバラになってワイヤーを巻き込んで再生する、周囲に縫い付けられるはずだ!もし動きは止められなくても中に異物が入ってんだ、前ほど早くは動けなくなる!」

「…心得た、時は金なり、だ」(わかったよ!早速行ってくるね!)

「私も行ってくるわ!」

「あんたは特に気をつけろよ!3位の旦那とはちげえんだ!」

 二人はワイヤーを片手に大樹を降りて行った。

「しかし、旦那はともかく女に頼るしかねえってのも情けないもんだな…」

「うっ…」

「おっといけねえ!大丈夫かじいさん!」








 =地下帝国=

「阿武隈さん、本当に大丈夫ですか?」

「マコト、無理はしないでね」

「大丈夫よ、晴美ちゃんと冥慈ちゃんが看病してくれたお陰ね♪」

 三人は地下の道を談笑しながら歩いていた

「にしてもこんなところがあったなんて…このゲームの運営の人たちが作ったんでしょうか?」

「おそらく違うわね、人がいた形跡が少なすぎるわ。ところで晴美ちゃん、別に構わないんだけどどうしてそんなに先々行くの?危ないわよ」

「馬には蹴られたくありませんから♪」

「?」

「~!ハルミ、別に気を使わなくても…///」

 阿武隈の左腕にぴったりとくっついている月夜見、しかしその気持ちは全く伝わっていない。心配されているのだろうと思われている。
 曲がり角にかかった時だった。

「…冥慈ちゃん、少しの間腕を離してくれるかしら」

「ん、わかったよ。どうしたんだい?」

「アブクマさん見~つけた!」

「えっ?」

 曲がり角を先行していた久保の頭上に突如雷が発生した

「晴美ちゃん危ない!」

 阿武隈が右腕で久保を突き飛ばす、しかし阿武隈でも雷速には追い付けない。
 結果、雷は久保に触れている阿武隈の右腕に落ち、腕を焦がし久保に感電した。

「冥慈ちゃん!すぐに晴美ちゃんに心肺蘇生!アタシがこいつの相手をするわ!」

「うん!ハルミしっかりして!」

「くすくす、やっぱりびりびりおもしろいなぁ、さっきの人が頼りになるって言ってたアブクマさんもいっぱつだ、でもたしかに綺麗なおねえさんだったね」

 暗闇から小林が現れる、そこで小林ははじめて阿武隈という存在を知覚した。

「あら、人違いよ。坊やがさっき狙ったのは久保晴美ちゃん、でもアタシよりも魅力的な乙女であることは間違いないわね…」

 小林は動けない、阿武隈のもつ凄みに圧倒されているのだ

「でも坊や、いくら綺麗なオンナのコを見かけたからっていきなりアタックするのは嫌われちゃうわよ、それに名前を間違えるなんてもっての他、男以前に人としてどうかしてるわね」

 小林は足をガクガクと震わせ、歯をガチガチとうちならしている、目には涙が溢れている。

「でも坊やみたいな外側だけでも可愛いコがアタシに会いに来てくれたっていうのは素直に嬉しいわね、でも」

「あっ…あっ…う…」

 小林の口から声にならない声がもれる

「中身が不細工でマナーもなってない坊やにはちょっと、おしおきが必要ねぇ」

「うわあああ!!!」

 小林の能力で阿武隈に無数の雷が落ちる、しかし阿武隈はそれを全く気にするそぶりも見せず、ゆっくりと小林に近づいていく

「何で…何で…おかしいよこんなのぉ!」

「ええ、坊やの頭がね…まあ、こんな子どもに危険なおもちゃを与えた奴らも悪いんだけど…」

「そ、そうだよ!ボクは悪くない!」

「だけど、坊やはお母さんに教わらなかったのかしら、人にされて嫌なことはしちゃいけないって、あと坊やは悪者よ、そんな責任感のないセリフ赦されるわけないじゃない」

「ランキング上位の能力は役に立たないんじゃないの!?こんなのふこうへいだ!」

「だまらっしゃい!そんな不満は社会には通じないのよ、それに坊やの雷が効かないのわね、能力のお蔭じゃなくて坊やのお蔭なのよぉ?」

 ついに阿武隈が小林のすぐ前に立つ、小林は失禁した。

「な…んで…」

「良いこと教えてアゲル、恋する乙女と誰かを守る漢と子どもを叱る大人に子ども思いの親、そしてオカマはね…」




「最強なのよ」




 阿武隈の炭化し使い物にならなくなった右腕が全力で振るわれ大地を砕く、しかしそこには小林の姿はない

「逃がしちゃったわね…いけない!冥慈ちゃん!晴美ちゃんは!?」

 月夜見達のもとへ戻る阿武隈、そこには血を吐きながらもかろうじて意識を保つ久保の姿があった。

「マコト、ハルミの血がとまらないんだ…」

 青い顔をしている月夜見、血を吐き目が虚ろな久保、そんな中阿武隈は冷静に久保を診る
(吐血、おそらくアタシの腕から流れた電気が背中から入って肺をひどく焼いたわね、脳は無事だけどたぶんいくつか重要な臓器まで損傷してる)

「こふっ…めい…じ…ちゃ…」

「ハルミッ!しゃべっちゃダメだ!」

「冥慈ちゃん、聞いてあげて…晴美ちゃんはもう…ながくない…」

「ッ!」

「わた…こと…気にし…いで…、がんば…て…ね…」

「あ、ああ、うああ…」

「あ…ぶ…さ…めい…ちゃ…も…」

「何かしら晴美ちゃん、ほら冥慈ちゃんあなたも呼ばれてるわよ…」

 久保は二人に手を伸ばす、そして二人に触れると同時、にっこりと笑って、力尽きた。

「うう、あ、うわぁぁぁぁぁん!」

「晴美ちゃん…ありがとうね、必ず冥慈ちゃんとこの街を抜け出してみせるわ…」

 悲しみの声が地下に響く、地上では雨が降り始めた



「いい雨だ、ちと不安だったがこれなら行けるな」

「さて、今巨人を除いた最多ポイント保持者は…」

「95位か」


 No.5 早川 すばる
 ―雨男―

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