ありふれた異能バトル~リレー式~

やすいケンタウロス

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異能生存体

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 オカマの意図しない襲撃によって既に瀕死の徳永達に、さらに雷による追撃が襲う、何というオーバーキルだろうか
 しかし、小林少年の雷撃は思わぬ結果を生むこととなる

「はあっはあっ…儂、生きてる…」

 小林の落とした雷は徳永♂の体を通り、ちょうどAEDのような働きをし、徳永達の心臓は再び正常な鼓動を刻み始めたのである。そして起き上がった徳永♂は小林のトラウマを再発させることとなる

「うわあああああ!なんでなんでなんでだよぉ!アブクマも赤ん坊とおっさんも水男ものっぽもなんでばちばちきかないの!?」

「よくやった小僧!無事か妾?」

「とおにいだいじょうぶ~?」

 髪がアフロになっただけでぴんぴんしている徳永♂、そこに徳永♀と関が駆けつける、しかし、彼らに錯乱した小林の雷が襲い掛かる

「くるなくるなくるなくるなぁあああああ!!!」

「「ほぎゃあああああああああ!!!」」

「ふぉえ~?」

 徳永たちには容赦なく雷が降り注ぎ、関は無意識のうちに体の周囲に舞う微生物を成長、強化することで雷を免れていた

「「あばばばばばばばば!!!」」

「ははははは!ばちばちは最強なんだ!」

 小林が落ち着きを取り戻し、雷を止める、後には黒焦げになった…

「けふっ」

「ごほっごほっ」

 黒い煙のような息を吐きだし、せき込むだけで後は服がすすだらけで髪がアフロになった程度の徳永達がいた

「うわああああああいやだあああああああああああ!!!」

「ねえねえだいじょうぶ?」

 絶叫する小林の後ろから関が声をかける、しかし今の小林にとって雷を落とした相手が生きていることは恐怖にしかなりえない

「くるなああぁぁぁああ!」

 小林はすぐさま関から距離をとる、そしてこの場にいる全員に最大出力の雷を落とそうとし

「このクソガキ!妾が飴でもやろうと思ったら調子に乗りおってぇ!」

「儂の命を救ったことには感謝しよう、じゃが人の髪に勝手にパーマ当てたらいけないと親に教わらなんだかぁ!」

「「怒りの拳骨じゃあああああ!!!」」

 徳永たちの拳が小林の頭に当たる、そしてそのタイミングで雷が落ち…

「「「はぎゃああああああああああああ!!!」」」

「ほわ~」

 小林を巻き込み3人仲良く感電した。
 残されたのは落雷の後を呆然と眺める関に子供くらいの大きさの炭、そして…

「「げほぇ、しぬ…」」

 死ぬとか言いながらまだまだ死にそうにない徳永たちの姿があった

 No.29 徳永 十衛門♂
 ―一身幾重―

 No.29 徳永 十衛門♀
 ―ギャグ補正―
 ほんわかふざけた空気を維持する限り、自身に対する攻撃を軽減し、ギャグみたいな被害だけで生き残る

 ◇

「ああ~なんで私能力使っちゃったのかしら…」

 巨人が文字通りひっくり返した瓦礫の街の中、星野は自身の能力によって発生したレンゴン君ロボットに囲まれていた。絶体絶命、10位の身体能力を持つ星野であったがさすがに1~3位のような化け物じみた戦闘力は持っていない、ロボットたちは星野に襲い掛かり…

「オンナのコに集団で手を出すなんて最低よ!」

 一瞬で現れた阿武隈に弾き飛ばされた

「大丈夫かしら?助けに来たわよ」

「あ、ありがとう、だけど安心しちゃダメ!」

 弾き飛ばされたロボットたちは完全に破壊され動かない、しかし星野の能力でロボットたちは無尽蔵に沸いてくる、このままでは阿武隈たちは負けることもないが勝つこともできないだろう、ロボットたちが追ってくるかもしれない以上迂闊に逃げることもできない

「あらあら、ロボットといえどしつこい男は嫌われるわよ♪」

「そんなこと言ってる場合ですか!?今にもロボットが」

「…ようはこのロボットの発生を止めればいいんですよね?」

「「!?」」

 突如現れたのは坊主頭の筋肉質な少年、芥子川であった

 No.17 芥子川将太
 ―和の心―
 正座をしている間誰にも知覚されない↓
 自身の感情が最高に冷静なときのみ、物理的もしくは概念的な非生物の『動き』を完全に停止させる

 芥子川はあっさりとロボットの出現と動きを停止させ、阿武隈と星野の方を向く、星野の顔は青かった。

「これで停止しました…なんかご褒美もらってもいいですかお姉さん!」

「アンタ…なんで…」

「あらぁ?ここに美しいオネエさんがいるってのに無視かしら♪」

「いや俺性別が女じゃないとお姉さんとは認めないんで」

「え~、でもいい男じゃない、ところでこの娘を任せてもいいかしら?」

「もしかして娘さんを俺に任せてくれる的なあれですか!?」

「違うわよ、この娘を安全地帯に連れて行ってあげてちょうだい、アタシは救助活動を続けるわ、もし手を出したらぁ…わかるわよね」

 阿武隈の凄みに芥子川は顔を青くする、それでも彼の能力は解除されない

「了解っす、オネエさんもいい男っすね」

「あらやだお上手、でもこういう時はいいオカマって呼んで頂戴、マコトでもいいわよぉ?」

「ははは遠慮しておくっす」

「あらつれないわね、じゃあこの娘のこと頼んだわよ」

 またもや阿武隈の姿が掻き消える、後には芥子川と星野が残される。

「さ、行きましょうかお姉さん」

「なんで…そんなに笑顔なのよ…」

 震える声で星野が問う、芥子川は星野の言葉が何を意味しているのか思案するがすぐに納得したような表情をして答える

「美人に出会えたら笑顔に」

「そんなはずないでしょッ!」

「…」

 怒鳴る星野に芥子川は少しため息をつき、真面目な顔で星野の顔を見つめる

「お姉さんは俺らを襲った連中ですよね、少しですが見かけたことがあるからわかりますよ」

「…」

「そして、お姉さんは仲間を殺された俺がお姉さんに対して冷静に接していることに不気味さ…いや恐怖を感じている」

「そこまで分かってるんならなんで!」

 恐怖に顔を青くして喚き散らす加害者に、眉一つ動かさずに冷静に話し尚且つ助けようとまでする被害者、奇妙な構図が出来上がっていた

「ん~何と言いますか」

 少し顎に手を当て言葉を考える

「あれですね、部長っていうのは心の奥底では常に冷静でないといけないんですよ」

「…は?」

 想像していた事とは全く違うことを話す芥子川に星野はさらに恐怖を覚える
「チームが負けそうなとき、部長まで焦ったらチームの志気はがた落ちです、逆に圧倒してる時も部長が傲慢になったら敵チームの手痛い反撃をもらうことにつながります」

「なにをいって…」

「もちろん、常に冷静な様子でいたら部員は思いっきり叫べないはしゃげない、だから心の底から一緒に楽しんだり悔しがったりします、けどそれでも一番底はどっしりと構えてるんです」

「…」

「当たり前ですが嵐山、叢雨、風霧…ああ、俺の仲間の名前です。彼らとの別れは辛い、彼らのことを悲しみましょう、悼みもしましょう、しかしそれで足を止めていては甲子園なんて夢のまた夢なんです。立ち止まったら俺はあいつらに申し訳が立たない、悔しさをバネにって言葉あるじゃないですか、あれですよ」

「もう…やめて…」

「あと、貴女が女性だというのもあります、あいつらは基本女の子に暴力をふるうことを許しませんし、それ以前にあいつらは復讐とかする暇があったら野球やるか女の子見てる馬鹿です」

「もう…いいから…」

 星野は静かに芥子川を抱きしめる、芥子川の表情は変わらない。

「ありがとうございます。こんな美人に抱きしめて貰ったなんて、あいつらに自慢できますね」

「ッ!…うぅ…うわああああぁぁぁぁ…」

 芥子川の精神は揺らがない、星野は罪悪感で胸がいっぱいで苦しんでいるというのにそれを救えるであろう被害者の芥子川は全く彼女を責めるそぶりを見せない、これが彼の復讐なのだろうか?それは芥子川以外の誰にもわからない、もしかすると芥子川本人もわかっていないのかもしれない…
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