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第二章 駆け出し冒険者、兼、学生

第十四話 パーティ

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 入学二週間目にして、初の実戦。

 相手は非力なものがほとんどとはいえ、本物の魔物。

 俺は騎士として、更には武士や日本兵として戦ったことがあるからまだしも、ズブの素人出身の学生もいるだろう。
 そんな学生達からしてみれば、冒険者学校へ入学する以上、まだ右も左も分からない……という程ではないにしろ、本当に右か左か、その片方程度しか分からない状態で、魔物との実戦に挑戦させられるというのは、中々に酷な話ではないだろうか。

 楽なのは最初だけだろうとは分かっていたが、それは的中どころか予想を超えてきてしまった。

「序盤も序盤から飛ばしてくるねぇ、実戦だってさ」

「全くだよ」

 全員が冒険者として登録しているとはいえ、流石に数週間前まで「冒険者志望だった子供」を買い被り過ぎではなかろうか。

 ガラテヤ様も然りだが、肉体年齢十二歳の子供だって何人かいるというのに。

「問題のパーティだけど……どうだい?僕と組んでみる気は無いかい?」

「俺はいいけど……これでも、ガラテヤ様の騎士だからさ。ガラテヤ様と俺のパーティに、ガラテヤ様から許可が出たらロディアも入るって感じじゃダメ?」

「いいよ。それじゃ、例のガラテヤ様を探そうか」

 そして、誰かしらとパーティを組もうと教室内をごった返す人々をかき分け、ガラテヤ様を探すこと一分。

「ジィン!こっちこっち!」

 手招きしながら、こちらを呼ぶガラテヤ様へピントが合った。

「ガラテヤ様!俺の友達、パーティに入れてもいいですか?」

「大丈夫よ。私も、同じことを聞く予定だったし。貴方がジィンから話に聞いたロディアさんかしら?」

「ええ。いかにも、僕が『ロディア・マルコシアス』です。お目にかかれて光栄でございます、ガラテヤ様」

「よろしく、ロディアさん。ウチのジィンと、これからも仲良くしてあげてね」

 あの小さい身体から出てくるとは思わなかった以外な言葉に、思わずたじろぐロディア。
 成長期真っ只中でありながらも、未だ子供っぽさが抜けない少女の口から出たセリフとしては、やはり似合わな過ぎたのだろうか。

「……何かお母さんみたいだね。君のご主人様」

 うーん、惜しい。
 正解はお姉さんだが、初見でここまで見抜けたのは大したものである。

「ね、ホント敵わないよ」

 そうこうしている内に、ガラテヤ様も例の友人を連れてきた。

「お待たせ。彼女が、私がパーティに入れようとしてる友達よ」

「やあ、初めまして。私は『マーズ・バーン・ロックスティラ』。代々、絶対に一人以上は王国騎士団に騎士を輩出しているでお馴染み、ロックスティラ家が長女だ。よろしく頼む。そちらの騎士は、ガラテヤから話に聞くジィン君だな。で、こっちは……」

「魔術師ロディアだよ。よろしく」

「ああ、よろしく」

 互いに自己紹介を済ませた俺達は、四人で冒険者としての身分を証明する冒険者カードを見せ合って、今回の実習もとい実戦に挑む四人組として、仮のパーティ表へ各々順番に名前を書く。

 そして紙を提出した俺達は他の学生達がパーティを組み終わるまで待ち、それから、引率のアン先生、リゲルリット先生に加え、かつて王国騎士団の騎士を務めていた「エレクトス・ハルドロ・ムーア」先生も同伴し、実戦の舞台である裏山、リーシェントール岳へと移動した。

 十数台の馬車に乗せられての移動で、高まる緊張感の中。

 何故かロディアだけは、とても楽な姿勢で座っていた。

 それから数十分後。

 裏山というだけあって、王都からそこまで離れていない場所にあるリーシェントール岳へ馬車が到着するまで、そう長くはかからなかった。

 そして引率する先生ごとに学生達の乗った馬車は三班に分けられ、南側へ王都を見下ろすリーシェントール岳に対し、それぞれリゲルリット先生率いる第一班は北東、エレクトス先生が引率する第二版は北西、そして俺達のパーティを始めとした九パーティが振り分けられた、ケーリッジ先生率いる第三班は、そのまま王都から直進して南側から山へアタックすることとなった。

「さあ、到着よ。この学校に入って二週間目の貴方達に実習は重いかもしれないけど……。ここにいるのは、入学試験でゴーレムと戦えた人達だけなはずだから、きっと大丈夫。でも、もし何かあったら私に言って。現役時代のようにはいかないけど、貴方達を守れるくらいには動けると思うから」

 そう言うケーリッジ先生だが、やはり肉体に障害が残ってしまっているためか、話に聞く現役時代に使っていたらしい長弓ロングボウは持ってきていない。
 しかし、しっかりと弓術使いらしくハンディサイズのクロスボウと矢をこちらに見せつけた後、再びそれを下ろして岩の上へと座りこんだ。

 しかし、どのパーティも魔物に怯えているのか、中々出発しようとしない。

 ケーリッジ先生が溜め息をつき、俺達には悟られないように隠しているつもりなのだろうが、右手の人差し指で岩肌をコンコンと叩いており、明らかに苛立っているのが見てとれる。

「そろそろ……行きましょうか?」

 ここは第三班で唯一、爵位持ちが四人の内二人いる上、騎士の娘もいるパーティの俺達が先陣を切らなければ。

「ええ、そうね。皆、行かないみたいだし……」

 続けてガラテヤ様も指を鳴らしながら前進、隣を歩き始める。

 そして、その後ろをロディアとマーズが追うように、俺達のパーティは木々の隙間へと消えていった。
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