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第七章 もう一度
第九十四話 悪性解放
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それは、全高四メートル程の巨体。
腕や脚は勿論のこと、胴体の太さから爪の大きさまで、確実に人間のそれでは無い。
広間の崩れた天井を突き破らんとする、その姿。
狼男のような顔の額からは山羊に似た形の角が二本生え、巨大な口には、鋭い牙が生えている。
「……ロディアお前、人間やめたのか?」
俺は構えを崩さず、口を開いた。
「いいや、僕はこっちが本来の姿だよ。『悪魔マルコシアス』。聞いたこと無い?」
すると、あっさりと正体を明かすロディア。
「お前、悪魔だったのか。ずっと、ずっと、味方どころか人のフリをして……よくもヌケヌケと」
その口ぶりは、ロディアが俺達に近づいたのは、最初から仲間になるためでは無かったということが、改めて判明したということを確認させてくれる。
「まあ、悪魔だからね。それくらいはするよ。それに『ロディア』っていうのは、ただの自分につけた名前さ。ゲームの主人公に、自分とは違う名前つける人……いるでしょ?そういうの」
「ムカつくのはさておき、やっぱり何でお前そんなこと知ってんだ……」
「簡単な話だよ。君やガラテヤが前に生きていた世界に、僕も存在していたからさ」
「……悪魔としてか?」
「うん。地震の後、天使の軍勢が僕達のような悪魔を始末しに来ちゃってね。それで命からがら、こっちの世界に逃げてきたんだよ」
俺やガラテヤ様、もとい尊姉ちゃんが生きていた世界で、地震の後にそんなことがあったとは……あのクダリ仙人からは聞かされていなかった。
「それで……何でそこまでして、俺達につきまとうんだ?パーティに加入したと思ったら、突然殺しにかかってきて……かと思えば、こうしてわざわざ正体を明かして会話をしているし……お前が何なのか分かんなくなってきたよ」
「僕は君達を始末しておきたいだけさ。もっとも、目的が全くもって相反するとも限らないんだけどね」
「目的?」
「おっと、これ以上は言えないなぁ。仮に目的が同じだったとしても、僕のような悪魔と人間とでは、色々と違うからね。企業秘密ってやつだよ」
「そうか……残念だな」
「うん、残念だね。じゃあ……死のうか」
ロディアは右手の平をこちらに向け、闇の魔力を固めたエネルギー弾を放ってくる。
「ハッ、ご冗談を」
それを掻い潜り、俺は全身に霊の魔力を纏い、構えを変えながら距離を詰めた。
「最初から霊の力を……!」
「ああ……!逃げる時間さえ、与えないッッッ!」
五秒も経たない内に、巨大化したロディアの右脚へ迫った俺は、身体を回転させながら飛び上がる。
「流石、速いね……!」
「これで仕留める……【曲威裂】!」
そして、二振りの刀に魔力を集中させ、ロディアの腹部を抉った。
「うぐぐぐぐががががぎぎぐゥゥッ!」
「【闢雷】」
「ぐがッ!」
「今度こそ逃がさない……」
間髪入れず、ファーリちゃんも雷を纏わせたナイフで、ロディアの左腕を切りつける。
「痛いじゃないか……。相変わらず、その若さに見合わないくらい強いね……人間にしては、だけど」
しかし、俺とファーリちゃんによる渾身の一撃は、思ったよりも通っていないらしく。
「嘘だろ……ぐぇっ」
俺など、反動ですっかり身体に力が入らなくなってしまったと言うのに、紙で少し指を切ってしまった程度のダメージしか入っていないようであった、
「うっ……!?ジィン、あの霊の力……出来る限り使わないでもらえるかしら」
「な、何かあったんですか、ガラテヤ様?」
どうせ使えてもあと一発か二発だが、やけに焦っているガラテヤ様の顔を見て、普通ではないと察した。
「多分だけれど、霊の力を使った反動の一部が……私に分散している気がするの」
「そういえば、反動がいつもより軽いような」
肉体に力は入らないが、痛みに襲われるでも、立っていられない程になってしまうでもないような気がする。
「貴方を生かすために、ある程度の魔力が共用になっていると思うのだけれど……そこから持っていかれている魔力の分だけ、反動があったんじゃあないかしら」
「……マジですか」
そして、反動が分散してしまうとも知らずに負担が大きな力を使ってしまったがために、ガラテヤ様の動きも鈍くなり、一瞬で俺達は劣勢に立たされてしまったのであった。
腕や脚は勿論のこと、胴体の太さから爪の大きさまで、確実に人間のそれでは無い。
広間の崩れた天井を突き破らんとする、その姿。
狼男のような顔の額からは山羊に似た形の角が二本生え、巨大な口には、鋭い牙が生えている。
「……ロディアお前、人間やめたのか?」
俺は構えを崩さず、口を開いた。
「いいや、僕はこっちが本来の姿だよ。『悪魔マルコシアス』。聞いたこと無い?」
すると、あっさりと正体を明かすロディア。
「お前、悪魔だったのか。ずっと、ずっと、味方どころか人のフリをして……よくもヌケヌケと」
その口ぶりは、ロディアが俺達に近づいたのは、最初から仲間になるためでは無かったということが、改めて判明したということを確認させてくれる。
「まあ、悪魔だからね。それくらいはするよ。それに『ロディア』っていうのは、ただの自分につけた名前さ。ゲームの主人公に、自分とは違う名前つける人……いるでしょ?そういうの」
「ムカつくのはさておき、やっぱり何でお前そんなこと知ってんだ……」
「簡単な話だよ。君やガラテヤが前に生きていた世界に、僕も存在していたからさ」
「……悪魔としてか?」
「うん。地震の後、天使の軍勢が僕達のような悪魔を始末しに来ちゃってね。それで命からがら、こっちの世界に逃げてきたんだよ」
俺やガラテヤ様、もとい尊姉ちゃんが生きていた世界で、地震の後にそんなことがあったとは……あのクダリ仙人からは聞かされていなかった。
「それで……何でそこまでして、俺達につきまとうんだ?パーティに加入したと思ったら、突然殺しにかかってきて……かと思えば、こうしてわざわざ正体を明かして会話をしているし……お前が何なのか分かんなくなってきたよ」
「僕は君達を始末しておきたいだけさ。もっとも、目的が全くもって相反するとも限らないんだけどね」
「目的?」
「おっと、これ以上は言えないなぁ。仮に目的が同じだったとしても、僕のような悪魔と人間とでは、色々と違うからね。企業秘密ってやつだよ」
「そうか……残念だな」
「うん、残念だね。じゃあ……死のうか」
ロディアは右手の平をこちらに向け、闇の魔力を固めたエネルギー弾を放ってくる。
「ハッ、ご冗談を」
それを掻い潜り、俺は全身に霊の魔力を纏い、構えを変えながら距離を詰めた。
「最初から霊の力を……!」
「ああ……!逃げる時間さえ、与えないッッッ!」
五秒も経たない内に、巨大化したロディアの右脚へ迫った俺は、身体を回転させながら飛び上がる。
「流石、速いね……!」
「これで仕留める……【曲威裂】!」
そして、二振りの刀に魔力を集中させ、ロディアの腹部を抉った。
「うぐぐぐぐががががぎぎぐゥゥッ!」
「【闢雷】」
「ぐがッ!」
「今度こそ逃がさない……」
間髪入れず、ファーリちゃんも雷を纏わせたナイフで、ロディアの左腕を切りつける。
「痛いじゃないか……。相変わらず、その若さに見合わないくらい強いね……人間にしては、だけど」
しかし、俺とファーリちゃんによる渾身の一撃は、思ったよりも通っていないらしく。
「嘘だろ……ぐぇっ」
俺など、反動ですっかり身体に力が入らなくなってしまったと言うのに、紙で少し指を切ってしまった程度のダメージしか入っていないようであった、
「うっ……!?ジィン、あの霊の力……出来る限り使わないでもらえるかしら」
「な、何かあったんですか、ガラテヤ様?」
どうせ使えてもあと一発か二発だが、やけに焦っているガラテヤ様の顔を見て、普通ではないと察した。
「多分だけれど、霊の力を使った反動の一部が……私に分散している気がするの」
「そういえば、反動がいつもより軽いような」
肉体に力は入らないが、痛みに襲われるでも、立っていられない程になってしまうでもないような気がする。
「貴方を生かすために、ある程度の魔力が共用になっていると思うのだけれど……そこから持っていかれている魔力の分だけ、反動があったんじゃあないかしら」
「……マジですか」
そして、反動が分散してしまうとも知らずに負担が大きな力を使ってしまったがために、ガラテヤ様の動きも鈍くなり、一瞬で俺達は劣勢に立たされてしまったのであった。
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