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第八章 終末のようなものについて
第九十八話 消えゆく爪痕 前編
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あれもこれも分からないと言われつつ、何とか前世についての説明を終えた俺達は、この内容を、仲間内のみ共有されるべき秘密として、口外を禁じた。
そして王都へ戻り、マーズさんをカバラ医院へ送った俺達は、ひとまずウェンディル学園へ戻ることにした。
応急処置のおかげで、マーズさんの容体は何とか落ち着いていたものの……やはり、一度病院で診てもらった方が良いというメイラークム先生からの提案があったため、専門家の意見は聞いておくべきだということで、マーズさんを病院に置いていくことになったのである。
メイラークム先生曰く、「本当なら自分が診察したかったが、学園の閉鎖中に手をつけることができなかった仕事が山のように降りかかるため、そちらに割く時間が無い」とのことであった。
美少女好きなメイラークム先生が、マーズさんの診療を拒む程の仕事量とは……。
先生達には、しばらく苦労をかけることになるだろう。
馬車がウェンディル学園の校門前を通りかかると、「じゃあ、私ここで降りるわ!じゃあね!」と残し、メイラークム先生は荷台を飛び降り、大急ぎで保健室へ向かっていってしまった。
こうして、メイラークム先生が大忙しで書類の整理をしていることにも、一度はベルメリア邸へ戻ることも出来たであろう俺達が、こうしてへ急いで王都へ戻ってきたことにも、実は共通の理由がある。
何を隠そう、フラッグ革命団との戦いによる被害を受けたウェンディル学園は、三日後に学園としての機能を仮ではあるが取り戻し、講義を再開するのである。
俺達も、ブライヤ村でメイラークム先生から学園の情報について聞いた時は驚いたものだ。
特例として、遠方で冒険者としての活動をしていたり、公務があったりした場合は公欠として単位には影響しないという話もあったため、遅れたから何だという話では無いのだが……やはり、久しぶりの学園なのだ。
再開したての雰囲気というものは、味わっておかなければ損というものだろう。
それに、色々と先生達やギルドなど、各方面に頼んでおきたいこともある。
馬車で王都へ移動している間に、ロディアが特に行動を起こしていない以上、ベルメリア邸に帰るのは、まず王都でやるべきことを済ませてからでも問題無いだろう。
実家であるということから、それがありがたいことであるということは大前提としても、学園の再開を前に、当然ながら足止めを食らう可能性もある。
俺達は学園前で、メイラークム先生よりも遅れて馬車を降り、学内の学生向けギルドへ向かう。
「あっ!皆様、お待ちしておりました!」
すると、いつも俺達の応対をしてくれる受付嬢が駆け寄ってきた。
そして、彼女に「ロディアが裏切って魔物になった」ということを説明し、彼のパーティ脱退に関する処置を進めてもらいつつ、現在のギルド事情について、大まかに聞き出すことにした。
話をまとめると、押さえておくべき点は「王都を含む主要都市は元の姿を取り戻しつつある」ということと、「魔物の動きが活発になっている」ということだった。
前者については、単純に復興が進んでいると考えれば良いだろう。
しかし後者については……ロディアが関係している可能性がある以上、そう気楽に考えている場合では無い。
俺達はギルドを出て、訓練場へ向かう。
ここからは、有事の協力者を募る時間である。
無論のこと、主な目的はロディアの動きに対して即座に対応するための臨時パーティをいつでも結成できるよう、準備を求めるものであった。
メイラークム先生は個人としても貴族家の人間としても協力してもらえるとして、次に望みがあるのは、ムーア先生である。
そろそろギックリ腰も治っていることだろう。
そして訓練場の扉を開くと、そこには、やはり人間離れしたスピードで剣を振る、ムーア先生の姿があった。
そして王都へ戻り、マーズさんをカバラ医院へ送った俺達は、ひとまずウェンディル学園へ戻ることにした。
応急処置のおかげで、マーズさんの容体は何とか落ち着いていたものの……やはり、一度病院で診てもらった方が良いというメイラークム先生からの提案があったため、専門家の意見は聞いておくべきだということで、マーズさんを病院に置いていくことになったのである。
メイラークム先生曰く、「本当なら自分が診察したかったが、学園の閉鎖中に手をつけることができなかった仕事が山のように降りかかるため、そちらに割く時間が無い」とのことであった。
美少女好きなメイラークム先生が、マーズさんの診療を拒む程の仕事量とは……。
先生達には、しばらく苦労をかけることになるだろう。
馬車がウェンディル学園の校門前を通りかかると、「じゃあ、私ここで降りるわ!じゃあね!」と残し、メイラークム先生は荷台を飛び降り、大急ぎで保健室へ向かっていってしまった。
こうして、メイラークム先生が大忙しで書類の整理をしていることにも、一度はベルメリア邸へ戻ることも出来たであろう俺達が、こうしてへ急いで王都へ戻ってきたことにも、実は共通の理由がある。
何を隠そう、フラッグ革命団との戦いによる被害を受けたウェンディル学園は、三日後に学園としての機能を仮ではあるが取り戻し、講義を再開するのである。
俺達も、ブライヤ村でメイラークム先生から学園の情報について聞いた時は驚いたものだ。
特例として、遠方で冒険者としての活動をしていたり、公務があったりした場合は公欠として単位には影響しないという話もあったため、遅れたから何だという話では無いのだが……やはり、久しぶりの学園なのだ。
再開したての雰囲気というものは、味わっておかなければ損というものだろう。
それに、色々と先生達やギルドなど、各方面に頼んでおきたいこともある。
馬車で王都へ移動している間に、ロディアが特に行動を起こしていない以上、ベルメリア邸に帰るのは、まず王都でやるべきことを済ませてからでも問題無いだろう。
実家であるということから、それがありがたいことであるということは大前提としても、学園の再開を前に、当然ながら足止めを食らう可能性もある。
俺達は学園前で、メイラークム先生よりも遅れて馬車を降り、学内の学生向けギルドへ向かう。
「あっ!皆様、お待ちしておりました!」
すると、いつも俺達の応対をしてくれる受付嬢が駆け寄ってきた。
そして、彼女に「ロディアが裏切って魔物になった」ということを説明し、彼のパーティ脱退に関する処置を進めてもらいつつ、現在のギルド事情について、大まかに聞き出すことにした。
話をまとめると、押さえておくべき点は「王都を含む主要都市は元の姿を取り戻しつつある」ということと、「魔物の動きが活発になっている」ということだった。
前者については、単純に復興が進んでいると考えれば良いだろう。
しかし後者については……ロディアが関係している可能性がある以上、そう気楽に考えている場合では無い。
俺達はギルドを出て、訓練場へ向かう。
ここからは、有事の協力者を募る時間である。
無論のこと、主な目的はロディアの動きに対して即座に対応するための臨時パーティをいつでも結成できるよう、準備を求めるものであった。
メイラークム先生は個人としても貴族家の人間としても協力してもらえるとして、次に望みがあるのは、ムーア先生である。
そろそろギックリ腰も治っていることだろう。
そして訓練場の扉を開くと、そこには、やはり人間離れしたスピードで剣を振る、ムーア先生の姿があった。
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