四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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第八章 終末のようなものについて

第百十七話 崩壊の始まり

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「アア、チョウド、良イ、トコロ、ニ……」

 現れたのは、左腕を失ったジョン。

「ジョン殿!この状況は……説明を、願えますかな」

「ツイ、先ホド、デス。悪魔ガ、現レマシタ」

「ムーア先生、説明は後よ。今は彼の手当てを」

 左腕には薬草が巻かれていたものの、もはや虫の息といった具合のジョンを見て、メイラークム先生は「バイタルスキャン」で容体を確認。
 携帯に便利な小型すり鉢とすりこぎを取り出して、薬草をすり潰し始めた。

「悪魔……ロディアね、きっと」

「あの裏切り者め……どこまでやりたい放題する気だ……!」

 それを聞いたマーズさんは拳を握り、石畳を殴りつけた。

 俺が蘇った時、バネラウス司教が言っていたような気がする。
 教典に、俺とガラテヤ様に似たケースが記されていると。

 彼らが信仰する神が蘇らせたという少女は、四十九日で蘇ったというが……その間に遺体が腐らないとは思えない。
 彼女の物語に関しては、編集者の誇張或いは捏造があったか、はたまた魔力を用いた何かしらで遺体の状態を保存していたか、はたまた両方か……そういった彼らなり事情があったのだろう。

 しかし教会が襲われたということは、ロディアからしてみれば何かしら「そういった物語」を正典として扱っている「信奉者たち」に、動かれては困る事情があったのだろう。

 何はともあれ、俺の場合は例の少女とは違い、蘇るまでの日数は四十九日ではなく三日後……もとい四日であったとはいえ、死んでから蘇ったという事実がロディアにとって警戒すべき要素であるということは、本人に聞くまでもなく推測できた。

「……よし、これで気休め程度にはなるかしら」

 気持ちを切り替える間も無く、メイラークム先生がジョンに薬を飲ませる。
 大気中の魔力によって治癒力を向上させる液体の薬……いわゆるポーションと、つい先ほどすり潰していた、滋養強壮に良いという薬草を混ぜたものらしい。

「ア、アリガトウ、ゴザイマス……チョット、眠ル前ニ……言ッテオキマス。教会ハ跡形モ無クナッテシマイマシタガ……教典ハ、アナタ達ニ届ケルヨウ、衛兵ニ頼ンデオキマシタ。生キテイテ、クレレバ……詰所デ渡シテクレル、ハズデス」

「ありがとう、ジョンさん。おいら、一足お先に見に行ってくる」

 ファーリちゃんは話を聞くなり、詰所へと駆け出していった。

「頼んだ、ファーリちゃん。メイラークム先生とムーア先生は、ジョンさんを病院へ送り届けてください。ケーリッジ先生は冒険者ギルドの状況確認をお願いします。

「ギルドなら任せて。私の身分を明かせば、すぐに取り合ってくれると思う」

「メイラークム先生。病院の場所へは……案内をお願いしますぞ」

「ええ。任せて頂戴、ムーア先生」

「マーズはファーリちゃんを追って。あの子一人だと、身分による信頼が得られないかも」

「了解した。すぐに追う!」

 それぞれ先生達は顔が利く先へ。
 マーズさんもファーリちゃんをサポートするかたちで詰所へ向かった。

「アタシはァ?武器の整備でもしておこうかしらン?」

「アドラさんは俺達と一緒に状況確認を。バグラディも頼む」

「おうよ。どの道、このままじゃあ手紙の解読にも手が回らねェだろうしな」

 そして俺、ガラテヤ様、バグラディ、アドラさんは消し飛んだ教会跡へ向かい、実況見分を始める。

 消し飛んだとはいえ、跡地に面した道には、建物のものであろう僅かな破片が散らばっていた。
 それらの破片から何か手がかりを得られないものだろうかと、跡地と周辺の道に落ちているものを漁り続けること数十分。

「うぅン?コレ……何かしらぁ。ねぇ、ジィンちゃん?見て欲しいものがあるんだケド」

 アドラさんが、すっかり砕け散った剣だったものを手に取り、俺の元へ持ってきた。

「剣の持ち手?あっ、何か書いてある」

 それには何か文字が刻まれている。
 しかし、そこに書かれていた文字列は、違和感を抱かざるを得ないものであった。

「ン?どうしたのジィンちゃん」

「これ……前世の言葉です。それも、俺とガラテヤ様が育った地域の」

 その剣には、この世界に存在しない言葉。
 あろうことか、日本語で「地の果てにて、友と待つ。ロディアより」と、記されていたのであった。
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