127 / 177
第八章 終末のようなものについて
第百十七話 崩壊の始まり
しおりを挟む
「アア、チョウド、良イ、トコロ、ニ……」
現れたのは、左腕を失ったジョン。
「ジョン殿!この状況は……説明を、願えますかな」
「ツイ、先ホド、デス。悪魔ガ、現レマシタ」
「ムーア先生、説明は後よ。今は彼の手当てを」
左腕には薬草が巻かれていたものの、もはや虫の息といった具合のジョンを見て、メイラークム先生は「バイタルスキャン」で容体を確認。
携帯に便利な小型すり鉢とすりこぎを取り出して、薬草をすり潰し始めた。
「悪魔……ロディアね、きっと」
「あの裏切り者め……どこまでやりたい放題する気だ……!」
それを聞いたマーズさんは拳を握り、石畳を殴りつけた。
俺が蘇った時、バネラウス司教が言っていたような気がする。
教典に、俺とガラテヤ様に似たケースが記されていると。
彼らが信仰する神が蘇らせたという少女は、四十九日で蘇ったというが……その間に遺体が腐らないとは思えない。
彼女の物語に関しては、編集者の誇張或いは捏造があったか、はたまた魔力を用いた何かしらで遺体の状態を保存していたか、はたまた両方か……そういった彼らなり事情があったのだろう。
しかし教会が襲われたということは、ロディアからしてみれば何かしら「そういった物語」を正典として扱っている「信奉者たち」に、動かれては困る事情があったのだろう。
何はともあれ、俺の場合は例の少女とは違い、蘇るまでの日数は四十九日ではなく三日後……もとい四日であったとはいえ、死んでから蘇ったという事実がロディアにとって警戒すべき要素であるということは、本人に聞くまでもなく推測できた。
「……よし、これで気休め程度にはなるかしら」
気持ちを切り替える間も無く、メイラークム先生がジョンに薬を飲ませる。
大気中の魔力によって治癒力を向上させる液体の薬……いわゆるポーションと、つい先ほどすり潰していた、滋養強壮に良いという薬草を混ぜたものらしい。
「ア、アリガトウ、ゴザイマス……チョット、眠ル前ニ……言ッテオキマス。教会ハ跡形モ無クナッテシマイマシタガ……教典ハ、アナタ達ニ届ケルヨウ、衛兵ニ頼ンデオキマシタ。生キテイテ、クレレバ……詰所デ渡シテクレル、ハズデス」
「ありがとう、ジョンさん。おいら、一足お先に見に行ってくる」
ファーリちゃんは話を聞くなり、詰所へと駆け出していった。
「頼んだ、ファーリちゃん。メイラークム先生とムーア先生は、ジョンさんを病院へ送り届けてください。ケーリッジ先生は冒険者ギルドの状況確認をお願いします。
「ギルドなら任せて。私の身分を明かせば、すぐに取り合ってくれると思う」
「メイラークム先生。病院の場所へは……案内をお願いしますぞ」
「ええ。任せて頂戴、ムーア先生」
「マーズはファーリちゃんを追って。あの子一人だと、身分による信頼が得られないかも」
「了解した。すぐに追う!」
それぞれ先生達は顔が利く先へ。
マーズさんもファーリちゃんをサポートするかたちで詰所へ向かった。
「アタシはァ?武器の整備でもしておこうかしらン?」
「アドラさんは俺達と一緒に状況確認を。バグラディも頼む」
「おうよ。どの道、このままじゃあ手紙の解読にも手が回らねェだろうしな」
そして俺、ガラテヤ様、バグラディ、アドラさんは消し飛んだ教会跡へ向かい、実況見分を始める。
消し飛んだとはいえ、跡地に面した道には、建物のものであろう僅かな破片が散らばっていた。
それらの破片から何か手がかりを得られないものだろうかと、跡地と周辺の道に落ちているものを漁り続けること数十分。
「うぅン?コレ……何かしらぁ。ねぇ、ジィンちゃん?見て欲しいものがあるんだケド」
アドラさんが、すっかり砕け散った剣だったものを手に取り、俺の元へ持ってきた。
「剣の持ち手?あっ、何か書いてある」
それには何か文字が刻まれている。
しかし、そこに書かれていた文字列は、違和感を抱かざるを得ないものであった。
「ン?どうしたのジィンちゃん」
「これ……前世の言葉です。それも、俺とガラテヤ様が育った地域の」
その剣には、この世界に存在しない言葉。
あろうことか、日本語で「地の果てにて、友と待つ。ロディアより」と、記されていたのであった。
現れたのは、左腕を失ったジョン。
「ジョン殿!この状況は……説明を、願えますかな」
「ツイ、先ホド、デス。悪魔ガ、現レマシタ」
「ムーア先生、説明は後よ。今は彼の手当てを」
左腕には薬草が巻かれていたものの、もはや虫の息といった具合のジョンを見て、メイラークム先生は「バイタルスキャン」で容体を確認。
携帯に便利な小型すり鉢とすりこぎを取り出して、薬草をすり潰し始めた。
「悪魔……ロディアね、きっと」
「あの裏切り者め……どこまでやりたい放題する気だ……!」
それを聞いたマーズさんは拳を握り、石畳を殴りつけた。
俺が蘇った時、バネラウス司教が言っていたような気がする。
教典に、俺とガラテヤ様に似たケースが記されていると。
彼らが信仰する神が蘇らせたという少女は、四十九日で蘇ったというが……その間に遺体が腐らないとは思えない。
彼女の物語に関しては、編集者の誇張或いは捏造があったか、はたまた魔力を用いた何かしらで遺体の状態を保存していたか、はたまた両方か……そういった彼らなり事情があったのだろう。
しかし教会が襲われたということは、ロディアからしてみれば何かしら「そういった物語」を正典として扱っている「信奉者たち」に、動かれては困る事情があったのだろう。
何はともあれ、俺の場合は例の少女とは違い、蘇るまでの日数は四十九日ではなく三日後……もとい四日であったとはいえ、死んでから蘇ったという事実がロディアにとって警戒すべき要素であるということは、本人に聞くまでもなく推測できた。
「……よし、これで気休め程度にはなるかしら」
気持ちを切り替える間も無く、メイラークム先生がジョンに薬を飲ませる。
大気中の魔力によって治癒力を向上させる液体の薬……いわゆるポーションと、つい先ほどすり潰していた、滋養強壮に良いという薬草を混ぜたものらしい。
「ア、アリガトウ、ゴザイマス……チョット、眠ル前ニ……言ッテオキマス。教会ハ跡形モ無クナッテシマイマシタガ……教典ハ、アナタ達ニ届ケルヨウ、衛兵ニ頼ンデオキマシタ。生キテイテ、クレレバ……詰所デ渡シテクレル、ハズデス」
「ありがとう、ジョンさん。おいら、一足お先に見に行ってくる」
ファーリちゃんは話を聞くなり、詰所へと駆け出していった。
「頼んだ、ファーリちゃん。メイラークム先生とムーア先生は、ジョンさんを病院へ送り届けてください。ケーリッジ先生は冒険者ギルドの状況確認をお願いします。
「ギルドなら任せて。私の身分を明かせば、すぐに取り合ってくれると思う」
「メイラークム先生。病院の場所へは……案内をお願いしますぞ」
「ええ。任せて頂戴、ムーア先生」
「マーズはファーリちゃんを追って。あの子一人だと、身分による信頼が得られないかも」
「了解した。すぐに追う!」
それぞれ先生達は顔が利く先へ。
マーズさんもファーリちゃんをサポートするかたちで詰所へ向かった。
「アタシはァ?武器の整備でもしておこうかしらン?」
「アドラさんは俺達と一緒に状況確認を。バグラディも頼む」
「おうよ。どの道、このままじゃあ手紙の解読にも手が回らねェだろうしな」
そして俺、ガラテヤ様、バグラディ、アドラさんは消し飛んだ教会跡へ向かい、実況見分を始める。
消し飛んだとはいえ、跡地に面した道には、建物のものであろう僅かな破片が散らばっていた。
それらの破片から何か手がかりを得られないものだろうかと、跡地と周辺の道に落ちているものを漁り続けること数十分。
「うぅン?コレ……何かしらぁ。ねぇ、ジィンちゃん?見て欲しいものがあるんだケド」
アドラさんが、すっかり砕け散った剣だったものを手に取り、俺の元へ持ってきた。
「剣の持ち手?あっ、何か書いてある」
それには何か文字が刻まれている。
しかし、そこに書かれていた文字列は、違和感を抱かざるを得ないものであった。
「ン?どうしたのジィンちゃん」
「これ……前世の言葉です。それも、俺とガラテヤ様が育った地域の」
その剣には、この世界に存在しない言葉。
あろうことか、日本語で「地の果てにて、友と待つ。ロディアより」と、記されていたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる