四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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第九章 在るべき姿の世界

第百二十四話 秘薬

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 翌日。

 メイラークム先生が作ったオリジナルの、いわゆる元気が出る魔法薬……もとい栄養剤的なソレが身体に合うのか否かをテストすべく、俺達はそれを少し摂取して様子を見ることにした。

「……ほほう、これが例の魔法薬、でこざいますかな」

「やっぱり過酷な場所での冒険には、こういう道中をサポートしてくれるものが必須よね~」

「何で今まで準備してこなかったんだ、とでもいいたげな口調じゃあねェか、ケーリッジ先生よォ?」

「そりゃあそうよ!……でも、メイラークム先生やムーア先生もいるのにこうなってるってことは……多分、何か現行の薬には問題があったんでしょ?」

「ええ。他のどの薬も、過度な発熱とか、効き目が切れた後に反動で体力を急激に消耗するとか……そういう、特に戦闘が控えているかもしれない旅には、重すぎる副作用が多くて。私の作った……『ホット・バニーズ』とでも名前をつけておきましょ、合う人と合わない人がいるこの薬でも、まだマシな方なのよ」

「全員、合えば良い。でも、合わなかったら……いろいろ寒いところでの過ごし方、考えなきゃ」

「そうだな。だが安心しろ、ファーリちゃんは命にかえても私が温めてやろう」

「ん。……ん?よ、よろしく……?」

 マーズさんの目が妙に輝いていた気がしたが……ツッコんで話を広げるべきではないと判断し、俺はスルーを決め込むことにした。

「マ、とりあえず試してみまショ!アタァシのムキムキなカラダでも、この寒さはキツいワ!おハダが荒れちゃう」

「じゃあアドラさんの肌のためにも、まずは試してみましょうか。俺はすり抜けるかも知れませんけど」

 そして、いよいよ例の秘薬もとい「ホット・バニーズ」を半分に割って飲むことにした。

 もし元気が出なくなる副作用が出ても、元々少しここで休憩するつもりなのだ。
 その副作用で受ける旅での不都合は少ないと考えて良いだろう。

 それから十数分後。
 効果が聞き始める瞬間を今か今かと楽しみに待っていた面々は、温まる体に顔を緩める者と、脱力感に顔をしかめる者の二つに分かれた。

 例の魔法薬、「ホット・バニーズ」の副作用が出なかった俺、ガラテヤ様、ファーリちゃん、ムーア先生、ケーリッジ先生、そして当然のメイラークム先生は、効き目の通り、身体が温まる感覚をおぼえた。

 しかし、マーズさん、バグラディ、アドラさんの三人はどうやら身体に合わなかったらしく、「何で自分に限ってこんなことに」とでも言いたげな目をしながら、地面に寝そべるばかりであった。

 また、俺の胴体を薬がすり抜けるという現象には見舞われず、特に誰かや何かしらの物との接触ができなくなることは無かった。

 アロザラ町ではちょくちょく出たり出なかったりしていた謎のすり抜け現状だが、逆にあの町よりも北に位置するここでは、まだ一度も出ていない。
 一概に、北に行けば行くほど俺がすり抜けやすくなるということでは無いらしい。
 何か霊脈のような、魔力や魔物が発生する場所に関係したりしなかったりするのだろうか。

 その後、メイラークム先生は身体に合う人のみに秘薬を配り、副作用が出てしまった三人の回復を待つため、もう一晩を丘の上で過ごすことになった。

 いつになく元気が無いアドラさんの顔は、今までのエネルギッシュな彼のイメージを覆すものであり、これは当分忘れられないと、そう密かに思うのであった。
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