17 / 22
第二章 魔術学院へようこそ
第十六話 逃げた少女の生き方
しおりを挟む
翌朝。
「なぁ、プラティエ」
受験者向けの宿舎は閉じられ、俺が実技試験の結果を見に部屋を出ると、そこにはベルリナちゃんが立っている。
「おはよう、ベルリナちゃん。昨日はよく眠れた?」
「アンタが部屋に送り届けてくれたおかげでな。……すまねぇ。アタシ、どうかしてた」
そして人目もあろうというのに、俺の前で伏せ、手の平と膝を地に突いた。
「ホントだよ。俺の脳みそほじくり出そうと下時はびっくりした」
「ああ……。すまねぇな。アタシ、ちょっとおかしいんだ」
いやいや、たまにはそういう気分の時もあるよね。
「うん、言われなくても分かってるよ」
「言ってることと思ってることが逆じゃねぇか」
「おっと、しまった」
「まあ、今のアタシには何を言う権利もねぇよ。だがよ、プラティエ。一つ、聞いて欲しい話があるんだ」
「何?昨日言ってたこと?」
「ああ。二人で受かってたら……話、聞いてくれるか?」
「分かった。じゃあ、行こうか」
俺はベルリナちゃんに手を繋がれ、そのまま引かれるように試験結果が張り出される教室棟前へ向かった。
結果は、俺もベルリナちゃんも合格。
大丈夫だろうとは思っていたが、やはり大丈夫だった。
しかし、特に危機感は抱いていなかったが、実際に結果を見てみると、少し安心した。
それはベルリナちゃんも同じだったようで。
「はぁー……!良かった!プラティエも合格だってよ!」
「そうだね。おめでとう、ベルリナちゃんと俺」
「ああ!おめでとう!……それで、なんだけどよ」
「うん、分かってる。あっちで軽い手続きだけ終わらせたら、喫茶店にでも行こうか」
「カフェ……いいな!でも、話すことが話すことだからな。人が少ないところで頼むぜ?」
「うん、調べておくよ」
今度は俺がベルリナちゃんを連れ、合格者が書類を受け取るためのデスクへ向かう。
そして簡単な手続きを済ませ、昨日の散歩中に目をつけていた、旧市街のカフェ、「喫茶イボルテ」へ向かった。
赤と青を基調としたエンブレムが扉に下げられた、しかしそれ以外は懐かしの純喫茶といった様子の店構えである。
「邪魔するぜー!二人だ、空いてるか?」
何故ベルリナちゃんが先導するんだろうかという疑問はともかく、俺も扉の奥へ。
「ああ、空いてるよ!見ての通りガラガラでね、好きなとこ座ってよ」
随分とフランクな店主さんのようだ。
俺達はカウンターから離れた席につき、店のオリジナルブレンドコーヒーを、ベルリナちゃんはホットココアを注文する。
「話は……飲み物が届いてからにするか」
「そうだね」
「お待たせ!こちらが当店オリジナルのブレンドコーヒー、こっちがホットココアね!」
「ありがとうございます」
「おう!ありがとな、マスター!」
「おっ、僕をマスターと呼ぶとは!喫茶店に憧れてるのかい?」
「いや、特に憧れてるとかじゃあねーなー。喫茶店なら地元にもあるしな!でも、良いとこだってのは知ってるぜ!」
「おっと、そうなのかあ!」
「はい。これからしばらく居る街なので、今のうちに喫茶店開拓でもしようかと」
「それでコーヒーを!オトナだねぇ」
「いえいえ、それ程でも」
実際、中身は大学生以上ですし。
「アタシはまだコーヒーの美味さが分からなくてなー」
「うんうん。君もいずれ、コーヒーの美味しさが分かる日が来るよ!その時を、楽しみにしてるよ」
……随分と陽気なマスターのようだ。
「じゃあ、いただきます」
「おっと、そうだね。冷める前に飲むと良いよ、じゃあ、あとは若いお二人で!」
……随分とお喋りなマスターのようだ。
そそくさとカウンターへ戻るマスターを横目に、俺はコーヒーを一口飲み、ベルリナちゃんに話を切り出してもらうことにした。
コーヒーの味は、砂糖を入れていないハズなのに甘く感じる、腕の良さが分かるものであった。
「じゃあ、ベルリナちゃん。本題を、話してもらおうかな」
「ああ。……アタシは北部の出身でな。ついこないだまで、北部の集落で暮らしてたんだ」
「北部……どこ?」
「アピルラタ村……って、分からねぇよな。昔は魔術が少し栄えてたんだがよぉ、今はもうそんなことはねぇ、そんな村だ」
「よくある寒い地域の田舎って感じ?」
「ああ。まだ赤ん坊の頃に越してきて、それからずっとだ。……ま、田舎あるあるだとは思うんだがよ、閉鎖的な村だったんだ。でも、家族はアタシを優秀な魔術師にしたかったみたいなんだ。魔術師向きの体質だったからな。アタシを有名にして、アピルラタ村に魔術文化を復活させたかったんだってよ」
「親の意志を、子供にねぇ」
そういうのは決まって良くないと、相場は決まっているものだ。
「そうだ。どうせ本音を聞いたら、あの排他的な村に馴染むためだとか、言い出すだろうけどな。でも、アタシは狩人になりたかった。狩人になって、魔物と動物を借りながら、アピルラタ村以外の地域で結婚して、幸せに暮らしたかったんだ」
「ま、夢は人それぞれだよね。必ずしも、子が親の思い通りになるのは違うと思うよ」
「そう、だよな。……でも、アタシの親も、村の連中も、プラティエとは違う意見だった。生まれた家と育った村に、自分の才能を使って貢献しろって、そう言うんだ」
「あー、典型的な……」
典型的な、令和を生きた俺からしてみれば古い考えである。
「恩返しってのはもっともだと思うぜ?でも、アタシにもやりたい事はある」
「それはそうだね」
子供の人生は子供の人生、親であっても、それを強制する権利など無いものだ。
「勿論、アタシは意志を示した。でも、そしたら……飛んできたのは、応援でも激励でもなく、なんなら止める言葉でもねぇ。拳だったんだ」
「うわぁ……」
「アタシはボコボコにされたよ。今はだいぶマシになったが、身体中アザだらけだった。アタシが肌を見せる服を着るようになったのは、あえて布で守らないことで、拳に抗う意志を示すためだ」
そういえば、試験会場で初めて会った時も、傷跡が何箇所か見えたような。
あれは戦闘……どころか、今の説明を聞く限り、リンチの跡だったということなのだろう。
何ということだろうか、こんな美少女の身体に、名誉でもない傷をつけるとは。
「許せないな」
「ああ、アタシもだ。だから、魔術師は魔術師でも、せめて戦魔術師になることにした。そうすれば、狩人として魔物も動物も狩れるし、集落の奴らみたいな、腐った人間だって、狩ろうと思えば狩れる。アタシにピッタリだろ?」
「ピッタリ……だけど……今の理由を聞くと、素直には頷けないかな」
復讐に囚われるのもまた、本人の枷になるのであれば、よろしくないものだろう。
「……まあ、そうだよなぁ。でも、アタシはそうなりたいんだよ。戦士も、戦魔術師も、狩人も……下手を踏めば死ぬ仕事だ。でもよ、それで、この辛い過去に支配される人生が終わるなら、それも悪くねぇって思ってるんだ」
「友達が死ぬのは後味が悪いけど……ベルリナちゃんがそう思ってるなら、俺は応援するよ。死なないで大成するのが一番だけど」
「ああ。ただ戦魔術師になって、死んでやるつもりはねぇよ。もしもの話だからな。……聞いてくれてありがとな、プラティエ。少し、気持ちが楽になった」
「そう?それなら良かったけど。俺も知れて良かったよ。ベルリナちゃんのこと」
「そうか?えへへ……嬉しいじゃねぇか。……アタシ、初めて人を好きになったんだ。ほら、今話したみてぇによ、村の連中ってば、ロクでもねぇからな。外の野郎と話す機会なんて、滅多に無かったからな。頑張って、決心して話しかけたんだぜ?」
「あ、そうだったんだ。そうは思えなかったけど」
いきなりフレンドリーに話しかけてきたものだから、てっきり社交的、或いはそれに慣れている人なのだと思っていた。
「いやあ、村の外の人間とまともに話すのは、アンタが初めてだぜ。それで、アタシが筆記試験でやらかしたと思ってた時に、心配してくれたのも……嬉しかった。あの時は見るなとか何とか言っちまったけどよ、嬉しかったんだよ」
「そうだったんだ」
「そうだぜ。学院に入れなかったら、村に引き戻されるところだったからな。まだ子供だから、もし迎えから逃げおおせたとしても、どこで生きていける訳でもねぇし」
「そういえば子供だったね、俺達」
「ああ。……だから……話せて良かった。……好きだぜ、プラティエ。好きだから襲うってのは間違ってるって分かってるし、実際に襲っちまった以上、惚れてもらえるとは思ってねぇがよ。それでも、好きだ」
「そう、かぁ……ありがと、う?」
前世では小学生の頃を除いてモテた事が無かったせいだろうか、俺は返答に困ってしまった。
「いつでも、旦那の席は残してるぜ」
「今は遠慮しときます」
「将来の話だよ。相手に困ったら言えよな」
「君はそれで良いのか」
都合の良い女みたいで、ちょっと気が引ける。
「ああ。今はな。……じゃあ、行くか。ココアも飲み終わったし」
「そうだね。俺ももう飲み終わるし」
俺は少し気まずいと思いながらも、会計を済ませる。
「おっ、ジェントルマン。会計は君持ちかい?」
「ええ。今日くらいはと思って」
「じゃあ、そんなジェントルマンに免じて、ちょっとオマケしておかないとね」
十の位から下を切り捨てて会計をしてくれたマスターに感謝を伝えながら、店を去る。
その後、俺はベルリナちゃんと共に、学院へ戻った。
合格者に用意された宿舎の部屋が、そろそろ用意されているからである。
「なぁ、プラティエ」
受験者向けの宿舎は閉じられ、俺が実技試験の結果を見に部屋を出ると、そこにはベルリナちゃんが立っている。
「おはよう、ベルリナちゃん。昨日はよく眠れた?」
「アンタが部屋に送り届けてくれたおかげでな。……すまねぇ。アタシ、どうかしてた」
そして人目もあろうというのに、俺の前で伏せ、手の平と膝を地に突いた。
「ホントだよ。俺の脳みそほじくり出そうと下時はびっくりした」
「ああ……。すまねぇな。アタシ、ちょっとおかしいんだ」
いやいや、たまにはそういう気分の時もあるよね。
「うん、言われなくても分かってるよ」
「言ってることと思ってることが逆じゃねぇか」
「おっと、しまった」
「まあ、今のアタシには何を言う権利もねぇよ。だがよ、プラティエ。一つ、聞いて欲しい話があるんだ」
「何?昨日言ってたこと?」
「ああ。二人で受かってたら……話、聞いてくれるか?」
「分かった。じゃあ、行こうか」
俺はベルリナちゃんに手を繋がれ、そのまま引かれるように試験結果が張り出される教室棟前へ向かった。
結果は、俺もベルリナちゃんも合格。
大丈夫だろうとは思っていたが、やはり大丈夫だった。
しかし、特に危機感は抱いていなかったが、実際に結果を見てみると、少し安心した。
それはベルリナちゃんも同じだったようで。
「はぁー……!良かった!プラティエも合格だってよ!」
「そうだね。おめでとう、ベルリナちゃんと俺」
「ああ!おめでとう!……それで、なんだけどよ」
「うん、分かってる。あっちで軽い手続きだけ終わらせたら、喫茶店にでも行こうか」
「カフェ……いいな!でも、話すことが話すことだからな。人が少ないところで頼むぜ?」
「うん、調べておくよ」
今度は俺がベルリナちゃんを連れ、合格者が書類を受け取るためのデスクへ向かう。
そして簡単な手続きを済ませ、昨日の散歩中に目をつけていた、旧市街のカフェ、「喫茶イボルテ」へ向かった。
赤と青を基調としたエンブレムが扉に下げられた、しかしそれ以外は懐かしの純喫茶といった様子の店構えである。
「邪魔するぜー!二人だ、空いてるか?」
何故ベルリナちゃんが先導するんだろうかという疑問はともかく、俺も扉の奥へ。
「ああ、空いてるよ!見ての通りガラガラでね、好きなとこ座ってよ」
随分とフランクな店主さんのようだ。
俺達はカウンターから離れた席につき、店のオリジナルブレンドコーヒーを、ベルリナちゃんはホットココアを注文する。
「話は……飲み物が届いてからにするか」
「そうだね」
「お待たせ!こちらが当店オリジナルのブレンドコーヒー、こっちがホットココアね!」
「ありがとうございます」
「おう!ありがとな、マスター!」
「おっ、僕をマスターと呼ぶとは!喫茶店に憧れてるのかい?」
「いや、特に憧れてるとかじゃあねーなー。喫茶店なら地元にもあるしな!でも、良いとこだってのは知ってるぜ!」
「おっと、そうなのかあ!」
「はい。これからしばらく居る街なので、今のうちに喫茶店開拓でもしようかと」
「それでコーヒーを!オトナだねぇ」
「いえいえ、それ程でも」
実際、中身は大学生以上ですし。
「アタシはまだコーヒーの美味さが分からなくてなー」
「うんうん。君もいずれ、コーヒーの美味しさが分かる日が来るよ!その時を、楽しみにしてるよ」
……随分と陽気なマスターのようだ。
「じゃあ、いただきます」
「おっと、そうだね。冷める前に飲むと良いよ、じゃあ、あとは若いお二人で!」
……随分とお喋りなマスターのようだ。
そそくさとカウンターへ戻るマスターを横目に、俺はコーヒーを一口飲み、ベルリナちゃんに話を切り出してもらうことにした。
コーヒーの味は、砂糖を入れていないハズなのに甘く感じる、腕の良さが分かるものであった。
「じゃあ、ベルリナちゃん。本題を、話してもらおうかな」
「ああ。……アタシは北部の出身でな。ついこないだまで、北部の集落で暮らしてたんだ」
「北部……どこ?」
「アピルラタ村……って、分からねぇよな。昔は魔術が少し栄えてたんだがよぉ、今はもうそんなことはねぇ、そんな村だ」
「よくある寒い地域の田舎って感じ?」
「ああ。まだ赤ん坊の頃に越してきて、それからずっとだ。……ま、田舎あるあるだとは思うんだがよ、閉鎖的な村だったんだ。でも、家族はアタシを優秀な魔術師にしたかったみたいなんだ。魔術師向きの体質だったからな。アタシを有名にして、アピルラタ村に魔術文化を復活させたかったんだってよ」
「親の意志を、子供にねぇ」
そういうのは決まって良くないと、相場は決まっているものだ。
「そうだ。どうせ本音を聞いたら、あの排他的な村に馴染むためだとか、言い出すだろうけどな。でも、アタシは狩人になりたかった。狩人になって、魔物と動物を借りながら、アピルラタ村以外の地域で結婚して、幸せに暮らしたかったんだ」
「ま、夢は人それぞれだよね。必ずしも、子が親の思い通りになるのは違うと思うよ」
「そう、だよな。……でも、アタシの親も、村の連中も、プラティエとは違う意見だった。生まれた家と育った村に、自分の才能を使って貢献しろって、そう言うんだ」
「あー、典型的な……」
典型的な、令和を生きた俺からしてみれば古い考えである。
「恩返しってのはもっともだと思うぜ?でも、アタシにもやりたい事はある」
「それはそうだね」
子供の人生は子供の人生、親であっても、それを強制する権利など無いものだ。
「勿論、アタシは意志を示した。でも、そしたら……飛んできたのは、応援でも激励でもなく、なんなら止める言葉でもねぇ。拳だったんだ」
「うわぁ……」
「アタシはボコボコにされたよ。今はだいぶマシになったが、身体中アザだらけだった。アタシが肌を見せる服を着るようになったのは、あえて布で守らないことで、拳に抗う意志を示すためだ」
そういえば、試験会場で初めて会った時も、傷跡が何箇所か見えたような。
あれは戦闘……どころか、今の説明を聞く限り、リンチの跡だったということなのだろう。
何ということだろうか、こんな美少女の身体に、名誉でもない傷をつけるとは。
「許せないな」
「ああ、アタシもだ。だから、魔術師は魔術師でも、せめて戦魔術師になることにした。そうすれば、狩人として魔物も動物も狩れるし、集落の奴らみたいな、腐った人間だって、狩ろうと思えば狩れる。アタシにピッタリだろ?」
「ピッタリ……だけど……今の理由を聞くと、素直には頷けないかな」
復讐に囚われるのもまた、本人の枷になるのであれば、よろしくないものだろう。
「……まあ、そうだよなぁ。でも、アタシはそうなりたいんだよ。戦士も、戦魔術師も、狩人も……下手を踏めば死ぬ仕事だ。でもよ、それで、この辛い過去に支配される人生が終わるなら、それも悪くねぇって思ってるんだ」
「友達が死ぬのは後味が悪いけど……ベルリナちゃんがそう思ってるなら、俺は応援するよ。死なないで大成するのが一番だけど」
「ああ。ただ戦魔術師になって、死んでやるつもりはねぇよ。もしもの話だからな。……聞いてくれてありがとな、プラティエ。少し、気持ちが楽になった」
「そう?それなら良かったけど。俺も知れて良かったよ。ベルリナちゃんのこと」
「そうか?えへへ……嬉しいじゃねぇか。……アタシ、初めて人を好きになったんだ。ほら、今話したみてぇによ、村の連中ってば、ロクでもねぇからな。外の野郎と話す機会なんて、滅多に無かったからな。頑張って、決心して話しかけたんだぜ?」
「あ、そうだったんだ。そうは思えなかったけど」
いきなりフレンドリーに話しかけてきたものだから、てっきり社交的、或いはそれに慣れている人なのだと思っていた。
「いやあ、村の外の人間とまともに話すのは、アンタが初めてだぜ。それで、アタシが筆記試験でやらかしたと思ってた時に、心配してくれたのも……嬉しかった。あの時は見るなとか何とか言っちまったけどよ、嬉しかったんだよ」
「そうだったんだ」
「そうだぜ。学院に入れなかったら、村に引き戻されるところだったからな。まだ子供だから、もし迎えから逃げおおせたとしても、どこで生きていける訳でもねぇし」
「そういえば子供だったね、俺達」
「ああ。……だから……話せて良かった。……好きだぜ、プラティエ。好きだから襲うってのは間違ってるって分かってるし、実際に襲っちまった以上、惚れてもらえるとは思ってねぇがよ。それでも、好きだ」
「そう、かぁ……ありがと、う?」
前世では小学生の頃を除いてモテた事が無かったせいだろうか、俺は返答に困ってしまった。
「いつでも、旦那の席は残してるぜ」
「今は遠慮しときます」
「将来の話だよ。相手に困ったら言えよな」
「君はそれで良いのか」
都合の良い女みたいで、ちょっと気が引ける。
「ああ。今はな。……じゃあ、行くか。ココアも飲み終わったし」
「そうだね。俺ももう飲み終わるし」
俺は少し気まずいと思いながらも、会計を済ませる。
「おっ、ジェントルマン。会計は君持ちかい?」
「ええ。今日くらいはと思って」
「じゃあ、そんなジェントルマンに免じて、ちょっとオマケしておかないとね」
十の位から下を切り捨てて会計をしてくれたマスターに感謝を伝えながら、店を去る。
その後、俺はベルリナちゃんと共に、学院へ戻った。
合格者に用意された宿舎の部屋が、そろそろ用意されているからである。
0
あなたにおすすめの小説
四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜
最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。
一つ一つの人生は短かった。
しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。
だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。
そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。
早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。
本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが
初
ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる