男女比が偏った世界で生きたいように生きるだけ

aporof

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ep.04

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カレンさんが作るオムライスは最高においしかった。母さんがつくる料理も前世のレストランで食べるような美味しいのだが、カレンさんのオムライスはその点とても家庭的だった。

オムライスを食べながら俺は自然と涙を流していた。
前世での母の味を食べたような、そんな気分になっていたのだ。
前世で母は俺が10歳のころに世を去った。仕事で家を空けがちだった母のオムライスは数回しか食べた記憶がない。オムライスと答えた時にはこんなこと忘れていた。

「治くん!美味しくなかった!?ごめんなさいね?」

「すみません。いや、ほんとに美味しくって」

カレンさんは涙を流す俺を見て驚き、正反対な勘違いをしている。オムライスを食べて美味しくて泣くなんてそんな情けないところを見せてしまうのを恥ずかしいと思うと同時に、毅然とした態度なカレンさんが少しあわあわとしているのを見ると少し笑ってしまう。

「そう、ならよかったわ」

カレンさんは取り乱してしまったことを思い出してすこし赤面したあとそう言って、食べ終わった自分のお皿を片付けにキッチンへと向かった。


時刻は7時過ぎ、夕食を終え、リビングでくつろいでいるところである。
昼食後、カレンさんが買い物に行くというので、俺は留守番をするといって家の中を歩きまわってミッションを消化していた。夕食は唐揚げをリクエストした。これも美味しかったが流石に同じ失敗は繰り返すわけにいくまいと、涙を流すことはなかった。

片づけを終えたカレンさんがソファーの隣に座ってくる。今朝は対面に座っていたのに比べると距離が縮まったようで少しうれしい。

「治くん、ご飯も食べ終わったし眠くなる前に先にお風呂入りましょうか」

本日の一大イベント、お風呂大作戦の時間である。カレンさんは俺が一人でお風呂に入れると感じているようだが、俺には母さんや姉さんと一緒に入っているという実績があるので問題ない。ここは甘えるようにお願いすればいいのだ。

「カレンさんは、母様みたいに一緒に入ってくれないんですか?」

できるだけ弱弱しく、そして上目遣いでカレンさんに問いかける。
カレンさんを見て俺は確信した。完全に堕ちた。
赤面しているのはもちろんのこと、完全に動揺して目が泳いでいる。俺を男として意識してしまったのだろう。完全に俺の勝ちだ。

「治くんは普段、お母様と一緒にお風呂に入っているのね。なら仕方ないわね。一緒に入りましょう」

カレンさんは自分に言い聞かせるようにそう言って、俺とカレンさんは一緒にお風呂場へと向かう。
母さんは大きな会社をいくつも持っていてお金には苦労していないはずだが、うちの風呂はそこまで大きくない。子供とはいえ二人で入れば自然と身体が触れてしまうのだ。

俺は計画通りにお風呂でカレンさんにボディタッチすることができた。風呂場ステータスを確認するのはカレンさんには見えないとはいえ不自然なので確認はまた後だ。

ちなみに、カレンさんのは前も後ろもおっきくてすごかった。
5歳児最高である。

お風呂を出て、歯を磨くと5歳児の身体は不思議なもので眠気が襲ってくる。ふらふらと歩く俺を観てカレンさんは俺が眠たいということに気づいた。

「治くん、それじゃあ寝ましょうか。私はすこしお仕事があるから先に寝ててね」

「はい。分かりました。カレンさんおやすみなさい」

カレンさんに挨拶をして寝室に入った俺は、完全に寝てしまう前にカレンさんのステータスを確認する。
ステータスの閲覧は一度触れてしまえばその時点のステータスならいつでも閲覧できるのだ。ステータスに変更があればその都度触れる必要があるのだが、親密度が上がればいつでもどこでも最新のステータスが閲覧できるらしい。

~ステータス~
四葉 カレン
lv.1
体力 100
武力 40
知力 50
魅力 80
運   30

スキル
上級格闘術、中級棒術、中級料理

比較対象がほとんどいないので確証は得られないが、レベルを上げずにここまでのステータスというのはすごいのではないだろうか。
戦闘面に関しても、上級と中級の戦闘スキルを持っているのは心強い。これがどれだけすごいものかはまだわからないが、あの料理のレベルで中級なのだからきっと上級は期待してもいいだろう。

隣の部屋で仕事をするカレンさんが強くて美人であるということに安心した俺は、落ちるように深い眠りについた。
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みんなの感想(1件)

9aki
2021.09.30 9aki

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