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12月15日【パレード】
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川はどこまでも続いています。最初に見たもののほかに橋はなく、対岸の街灯の明かりが、蜃気楼のように闇に連なっています。
さて、郵便局を離れてしばらく歩きますと、次にゆうちゃんたちが見つけたのは、電飾を施されたアーチでした。
それは、どうやら商店街の入り口を示すもののようです。
『商店街って、お店がたくさんあるんでしょ? 行ってみたいな』
ミトラが、ゆうちゃんを見上げました。
アーチの先にはアーケード街が続いていて、ここを行けば川からは離れてしまいます。けれど、また川に戻って来たければ、同じ道を辿れば良いだけなのです。ゆうちゃんは、商店街を歩いてみることにしました。
川沿いの道とおんなじに、商店街もやっぱり、建物に明かりはありません。けれどシャッターが下りているということもなく、どのお店にも、好きに入ることが出来ました。
無人の商店街は、薄暗いながら、奇妙に華やかです。パン屋さんには焼きたてのパンが並んでいますし、果物屋さんには新鮮な果物が山積みになっています。
それから、アーチをくぐってすぐの街灯に、色とりどりのヘリューム風船が括り付けられていました。プラスティックのプレートに、「ご自由にどうぞ」と書かれています。ですから、ゆうちゃんとミトラはご自由に、風船をいただくことにしました。
ゆうちゃんは、赤い風船。ミトラはちょっと欲張って、青い風船と、緑の風船。
風船はぷかぷか浮かんで、ゆうちゃんとミトラの後をお利口について来ます。
ミトラは、それが嬉しいのでしょう。何歩か行くごとに、ちらちら後ろを振り返って、風船がきちんとついて来ているのを見ては、くすくす笑いました。
しばらく風船を伴って歩いていますと、どこからか楽しげな音楽が聞こえてきました。リズムに合わせて手足を動かして、ついつい行進したくなるような陽気な音楽です。
一体、どこから聞こえてくるのでしょう? 街灯にくっついているスピーカーからでしょうか? いいえ、もっともっと上の方からです。
「あっ」
ゆうちゃんが、上を向いて声を上げました。
アーケードの天井、アーチの一番高い場所を、たくさんの風船たちが並んでいます。お尻にくっついたナイロンの紐をふりふり、踊りながら飛んでいるのです。
その行列を端から端まで見てみますと、まずは前の方は、鼓笛隊を先頭に、金管楽器を携えた風船のウサギたちが、空中を飛び跳ねています。それから、後ろの方。金ピカの衣装を着た、これもまた風船のイヌやネコたちが、歌ったり踊ったりしています。どうやら、へリューム風船のパレードです。
『わあ、良いな。楽しそうだな!』
ミトラは目をきらきら輝かせて、手に持っていた風船に『ねえねえ、ぼくをあそこに連れて行ってよ!』とお願いしました。青と緑のふたつの風船たちは、頷くように大きく揺れたあとで、浮力を増してひゅーんと高く飛び上がります。
『すごい、すごい! ゆうちゃんも早くおいでよ! 楽しいよ!』
楽隊の最後尾に加わって、ミトラが上から叫びました。ゆうちゃんは、どうしよう、と迷ったあとで、手に持っている風船を見つめました。風船も、ゆうちゃんを見つめ返します。
「私も、飛べるかな?」
赤い風船が、こっくりと頷きました。
右手が引っ張られると同時に、ゆうちゃんは、えいっと石畳を蹴りました。そうしましたら、プールに潜ってプールサイドの壁を蹴ったときのように、ゆうちゃんの体はすいーっと上へと昇っていったのです。
『ゆうちゃん!』
ミトラは嬉しそうに、ゆうちゃんの頬っぺたに抱きつきました。ゆうちゃんも嬉しくて、ミトラに頬ずりをしました。
ゆうちゃんとミトラが加わって、風船の楽隊はいっそう賑やかに、チャカポコどんちゃんぴーひゃらら、真っ暗な商店街を進んでいきます。
鼓笛隊のウサギに、ゆうちゃんは鍵盤ハーモニカを、ミトラはトライアングルを貰いました。白と黒の上に指をでたらめに置いて、吹口から息を吹き込みますと、ぷあー。ちょっとだけ気の抜けたような、可愛らしい音が鳴ります。そうしたらミトラが、すかさず、チャーン。トライアングルを叩きます。
ぷあー。チャーン。ぷあ、ぷあー。チャン、チャーン。
楽譜も指揮もない音楽って、なんて楽しいものなんでしょう。ゆうちゃんは夢中で、鍵盤ハーモニカを弾きました。ミトラも大はしゃぎしながら、トライアングルを鳴らしました。
今夜の夢は、ここでおしまい。
さて、郵便局を離れてしばらく歩きますと、次にゆうちゃんたちが見つけたのは、電飾を施されたアーチでした。
それは、どうやら商店街の入り口を示すもののようです。
『商店街って、お店がたくさんあるんでしょ? 行ってみたいな』
ミトラが、ゆうちゃんを見上げました。
アーチの先にはアーケード街が続いていて、ここを行けば川からは離れてしまいます。けれど、また川に戻って来たければ、同じ道を辿れば良いだけなのです。ゆうちゃんは、商店街を歩いてみることにしました。
川沿いの道とおんなじに、商店街もやっぱり、建物に明かりはありません。けれどシャッターが下りているということもなく、どのお店にも、好きに入ることが出来ました。
無人の商店街は、薄暗いながら、奇妙に華やかです。パン屋さんには焼きたてのパンが並んでいますし、果物屋さんには新鮮な果物が山積みになっています。
それから、アーチをくぐってすぐの街灯に、色とりどりのヘリューム風船が括り付けられていました。プラスティックのプレートに、「ご自由にどうぞ」と書かれています。ですから、ゆうちゃんとミトラはご自由に、風船をいただくことにしました。
ゆうちゃんは、赤い風船。ミトラはちょっと欲張って、青い風船と、緑の風船。
風船はぷかぷか浮かんで、ゆうちゃんとミトラの後をお利口について来ます。
ミトラは、それが嬉しいのでしょう。何歩か行くごとに、ちらちら後ろを振り返って、風船がきちんとついて来ているのを見ては、くすくす笑いました。
しばらく風船を伴って歩いていますと、どこからか楽しげな音楽が聞こえてきました。リズムに合わせて手足を動かして、ついつい行進したくなるような陽気な音楽です。
一体、どこから聞こえてくるのでしょう? 街灯にくっついているスピーカーからでしょうか? いいえ、もっともっと上の方からです。
「あっ」
ゆうちゃんが、上を向いて声を上げました。
アーケードの天井、アーチの一番高い場所を、たくさんの風船たちが並んでいます。お尻にくっついたナイロンの紐をふりふり、踊りながら飛んでいるのです。
その行列を端から端まで見てみますと、まずは前の方は、鼓笛隊を先頭に、金管楽器を携えた風船のウサギたちが、空中を飛び跳ねています。それから、後ろの方。金ピカの衣装を着た、これもまた風船のイヌやネコたちが、歌ったり踊ったりしています。どうやら、へリューム風船のパレードです。
『わあ、良いな。楽しそうだな!』
ミトラは目をきらきら輝かせて、手に持っていた風船に『ねえねえ、ぼくをあそこに連れて行ってよ!』とお願いしました。青と緑のふたつの風船たちは、頷くように大きく揺れたあとで、浮力を増してひゅーんと高く飛び上がります。
『すごい、すごい! ゆうちゃんも早くおいでよ! 楽しいよ!』
楽隊の最後尾に加わって、ミトラが上から叫びました。ゆうちゃんは、どうしよう、と迷ったあとで、手に持っている風船を見つめました。風船も、ゆうちゃんを見つめ返します。
「私も、飛べるかな?」
赤い風船が、こっくりと頷きました。
右手が引っ張られると同時に、ゆうちゃんは、えいっと石畳を蹴りました。そうしましたら、プールに潜ってプールサイドの壁を蹴ったときのように、ゆうちゃんの体はすいーっと上へと昇っていったのです。
『ゆうちゃん!』
ミトラは嬉しそうに、ゆうちゃんの頬っぺたに抱きつきました。ゆうちゃんも嬉しくて、ミトラに頬ずりをしました。
ゆうちゃんとミトラが加わって、風船の楽隊はいっそう賑やかに、チャカポコどんちゃんぴーひゃらら、真っ暗な商店街を進んでいきます。
鼓笛隊のウサギに、ゆうちゃんは鍵盤ハーモニカを、ミトラはトライアングルを貰いました。白と黒の上に指をでたらめに置いて、吹口から息を吹き込みますと、ぷあー。ちょっとだけ気の抜けたような、可愛らしい音が鳴ります。そうしたらミトラが、すかさず、チャーン。トライアングルを叩きます。
ぷあー。チャーン。ぷあ、ぷあー。チャン、チャーン。
楽譜も指揮もない音楽って、なんて楽しいものなんでしょう。ゆうちゃんは夢中で、鍵盤ハーモニカを弾きました。ミトラも大はしゃぎしながら、トライアングルを鳴らしました。
今夜の夢は、ここでおしまい。
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