人類はレベルとスキルを獲得できませんでした。

ケイ

文字の大きさ
174 / 193
人造神編

口撃戦

しおりを挟む
白黒の世界で声だけが聞こえる。

「先に言います。貴方だけに例外は許しません!」
「それは母さまが決めることだ。お前じゃない!」

初手からお互いが火花を散らし合う。
僕は終わらない痛みをこらえながらエイジが説得することを祈った。

「お父様が出てきたとしても、今回のことはお認めにならないでしょう。ソウルイーターが他者のスキルの不可侵領域に手を加えるなどあってはならない」
「母さまなら絶対認めてくれるぜ。何故なら、これは俺様に与えられたスキルの解釈範囲内だからだ」
「何処が解釈範囲内なのですか? 貴方の元は魂を喰う存在のはず。なのに、何故魂を喰わずに接触しているのか? 食べるべきでしょう?」
「これだから石頭はダメなんだぜ。いいか? 俺様は魂喰いから進化した存在なんだぜ。つまり、魂を食べずに接触だけしても何も問題ないはずだぜ。だって、そういうふうに進化したんだからな。この進化については母さまがちゃんと認めてるぜ。お前がギャーコラ言う筋合いはないんだぜ!」
「それだと、他のスキルも拡大解釈を求めてきます。第六感など1番あり得そうですし、霊感や鎮魂なども言ってくるでしょう。私は全てに公平でなければならない。よって、貴方の今回の行動は却下です」
「そいつらが進化の実を使ったのなら文句があるかもしれないぜ。でも、現状進化の実を使ったのは主人だけで対象は俺様だけのはずだぜ。そんな中で文句が出るはずがないんだぜ。それにシステムも気づいているはずだ。そんな文句が出たら、進化の実を使ってから言え、で終わる話だってな!」
「その一手間をかけてスキル全体に周知するよりも貴方を却下したほうが早いのですよ」
「それは俺様に対して公平じゃないだろ!」

激痛と共にエイジの大声が僕の頭に響く。
かなり痛い・・・せめてゆっくりと話してほしい。
だが、そうも言っていられないのか2人の口撃は勢いを増していく。

「そもそも貴方が特殊すぎて他から苦情が出ているんですよ。贔屓しているのかって。前回お父様がお許しくださったから見逃しましたが、本当なら大覚醒も禁止したかったのです。でも、あれは貴方の主人が保有しているスキルのみに影響があったから何も言わなかっただけです。今回は違います。貴方は別の保有者のスキルの占有率まで手を伸ばした。私の権限ではっきり言います。認めません!」
「うぐっ! この・・・石頭め!」

マズイ!
システムの口撃にエイジが耐えれていない!
このままシステムに言い負かされると巨人を攻略する術がなくなる!
僕が介入しようにも、全く何も動かせない!

「あーら、無様な姿を晒していますのね。これがお母様から最初に進化を認められたスキルだなんて情けない限りですわー」

何とかしなければ、と必死に口を動かそうとしていると、エイジでもシステムでもない声が割って入ってきた。
しかも、かなり高圧的な上から目線の物言いに誰だ? と戸惑ったが、2人がすぐに答えを出した。

「炎帝・・・」
「貴方も私に意見があるのですか? 炎帝」
「あるに決まっているじゃない。わたくしの占有率ことを話しているのに、当事者であるわたくしを除け者にするなんてあり得ませんわ」
「いいでしょう。もう結論は見えていますが、念のため貴方の意見をお聞きしましょうか」
「そのすまし顔。ギャフンと言わせてみせますわ。覚悟なさい」

止まった空間に緊張が走る。
システムの判断は、全て炎帝に託されたと考えていいだろう。

「まずですが、今回このおバカがやったことは、特別なことでも何でもありませんわ」
「ほう」
「おい」
「おバカは黙ってなさいね」

反論しようとしたエイジを炎帝が先に抑える。
力関係なのか場の空気なのか、エイジは炎帝の言葉に大人しく従った。

「このおバカがわたくしのダーリンの魂に接触してきたことは確かですわ。でも、おバカが占有率を上げようとしているのではありませんわ。わたくしが占有率を上げようとしていますのよ」
「・・・無理がある理屈ですね」
「何処がですの? 言っておきますが、わたくしはそこのバカが無遠慮にダーリンの魂にアクセスしていたら、遠慮なく弾いていましたわよ。ですが、わたくしはそれを望まず受け入れましたわ。それに、他のスキルの占有率をこのおバカだけの力で増減できるなんてちゃんちゃらおかしな話ですわよ。1番重要なのはわたくしの意志。わたくしが占有率の増を望み、そのタイミングをおバカが作った・・・。これが今回の真実ですわ。だから、今回の行為に特別なことは一つもなく全てルールに則って行われていることですわよ」

場の空気が変わりだす。
炎帝の言葉にシステムが迷っている空気が伝わっているのだ。

「ふむ・・・。しかし、不公平さは残っていますね。今の状態は特別なスキルが1から2に変わっただけです。他のものたちを貴方は納得させることができるのですか?」
「・・・ふふふ」

システムの言葉に、炎帝が不敵に笑った。

「貴方たちはそれでいいんですのー?」

炎帝が高らかに声を響かせた。

「本当にいいんですのー? この石頭の言う通り、この場でわたくしたちの行為を認めなかったら、今後二度と占有率を上げることができなくなりますわよー?」

周囲を煽るように、笑みを浮かべるかのように炎帝が伝える。

「わたくしたちという前例があれば、今後同じようなことがあったとき、この石頭は絶対にその前例を踏襲しますわ。もし貴方たちがお気に入りの人を見つけたとき、占有率を上げれるタイミングがあったら上げたいと思いませんこと?」

空気が変わっていく。
他の何かのざわめきが聞こえだす。
システムの戸惑いを感じる。
この場はもう・・・炎帝のものだ。

「さあ、システム! 答えを聞かせなさい! 今、ここにある公平は! 何を指し示しているのですか!」

シーンっと静寂が止まった世界に降りる。
誰も喋らず、喋れず。
そして・・・その言葉が聞こえた。

「許可する」

機械のように感情がなく、あくまで公平に伝えたその言葉に、エイジが「よっしゃ!」と歓喜の声を上げた。
そして、もう1人嬉しそうに声を上げる存在がいた。

「ふふふ・・・ようやく・・・ようやくですわ。ああ、ダーリン。わたくしのダーリン。一緒に最強を目指しましょう。一緒に最高を目指しましょう! さあ、世界よ、わたくしたちに注目なさい! わたくしの時代が! キマシタワーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

その言葉は、世界中に宣言するかのように止まった世界に響き渡り・・・そして時間はゆっくりと戻って色と音が戻ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...