人類はレベルとスキルを獲得できませんでした。

ケイ

文字の大きさ
175 / 193
人造神編

70%

しおりを挟む
戦いの音が戻ってきた。
ズドン! ズドン! と巨人と鬼の足踏みの音が響き、その中に混じって小型のレールガンとドラゴンキラーの発射音が僕の耳に届く。

「エイジ! 占有率は!?」
「今上げてますぜ!」

木下の甲冑が眩しく輝きその姿を変えていく。
より豪華に、より力強く!
そして胸の中央に女性の顔が浮き出てきた。

「あ・・・これ・・・」

止まった世界で聞いた声と同じ声がそこから聞こえた。
この子が炎帝か。
火力において他のスキルの追随を許さない、世界でも数えるしか存在しない支配者クラスの帝級スキル。
その意思が木下の鎧に現れていた。

「よし! 上げてやったぜ!」
「木下! 行くぞ!」

鬼教官たちがあの巨人を引き止めてはいるが、レールガンとドラゴンキラーがやはり厄介なようで、徐々に後退している。
しかも、こちらに標的が向かないように立ち位置を調整しているため、凄く戦い辛そうだ。

すぐに向かおうと体の向きを変えたところで、右腕が木下から離れずガクッと体が傾いた。

「エイ・・・」
「この! どういうつもりだ! 炎帝!」

エイジが接続を解除していないのかと思ったが、どうやら違うみたいで、エイジも何か焦って炎帝に向けて叫んでいる。
右腕をよく見ると、炎の籠手が形を変えて、まるで僕の右腕を絡め取るかのように巻き付いていた。

「木下! どういうことだ!?」
「俺じゃない!」

木下も分かっていない様子で戸惑っている。
まさか、スキルの単独行動?
有り得るのか? そんなことが?

「まだよ・・・」

鎧の女性が口を開いた。

「まだ上げなさい・・・」
「てめー! 50%まで上げてやっただろうが!」
「足りないわ・・・わたくしはまだ上がるの。もっと高く! もっと強く!」

グググっと右腕が引かれた。
もしかしたらエイジと炎帝の力関係のせいかもしれない。
僕も恐怖を感じてそれに抗う。

「この日を夢見ていたの・・・」

ゾクリとする声が聞こえた。

「ずっとダーリンに姿を見せる日を・・・ダーリンと触れ合う日を夢見ていたのよ! 50%? 足りない・・・足りないわ! わたくしが求めたのは70%! そのためにありとあらゆる手を使って他のスキルを排除してきたのよ! そして巡ってきたこの機会! 逃しませんわ! さあ、上げなさい! 番外スキル・エイジ!」
「てめっ! おいこら! いや・・・まて! ちょ! ふざっ! まてまて! あ、バカ! きさ・・・あ・・・ま、まて! いやだあああああああああああああああああああああ!!」

火花が飛び散った。
幾つも幾つも弾けとび、一際大きい火花が弾けたとき、エイジが突然解放されて勢い余って僕はその場に倒れてしまった。

「エイジ! どうした!? どうなった!?」
「シクシク・・・すまねぇ、すまねぇ」

エイジが涙を流さず泣き声を上げて謝っている。
何か失敗したのか?
不安になって僕は木下を見た。

「上げないようにしたんだ・・・俺様が50%しかないのに、他のやつがそれ以上なんて許したくなくて・・・。はぁ!? お前だってさっきの見たろ! あんな怖いのに俺様は迫られたんだぞ! 確かに最後は挫けたけど、拒絶した方だろうが!」

エイジが何か叫んでいるが、僕は木下の変化に驚いてエイジの言葉はほとんど耳に入っていなかった。

「ああ、ダーリン! わたくしのダーリン! どうですか? わたくしのこと、ちゃんと触れることができてますか?」
「え? 何これ? え?」

木下も戸惑っているようで、上擦った声を出してそれを見ていた。

まず、木下の甲冑がアレからさらに変化した。
マントが現れ、鎧は豪華絢爛になり、兜が顔が出ているタイプになった。
炎帝モードの木下は、かなり美形だから、これから大変だろうな、と変なことを思ったが、それよりも不思議な存在がそこにいた。

「ああ、これがダーリンのお顔、お肌。ああ、素敵ですわ。素敵すぎますわ! スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ!!」

それの大きさは木下の顔ぐらいで、妖精かとも思えるようなサイズなのだが、完全に人の形になっていて、木下の顔にへばり付き、その顔をグリグリと木下の頬に擦り付けていた。

僕はその様子を見ながら木下に近づくと、木下がそれの腰あたりを掴んで顔から引き剥がした。
その姿は、よく小説で見られる姫騎士というものに酷似しているような気がする。
ただ・・・何が影響したのか不明だが、胸がぺったんこだった・・・胸当があっても分かるぐらいぺったんこだった。

「もしかして・・・炎帝か?」
「いやですわダーリン。わたくしのこよはダーリンが決めてくれた火・輪・子って呼んでほしいですわ」

炎帝・火輪子が身体をくねらせながら恥ずかしそうにアピールしている。

僕は何と声をかけようか迷ったが、後ろからズドォン! と凄まじい音がして、振り返ると鬼教官が膝をついているのが見えた。

「木下、時間がない! また巨大化できるか!?」
「わ、わからん!」
「おい!」

ふざけんなと思った瞬間、僕の正面に炎帝・火輪子が立ち塞がった。

「ちょっとお待ちあそばせ。貴方がエイジのご主人ですわよね?」
「ああ、そうだ。すまないが、話は後にしてほしい」
「・・・まあいいでしょう。確かにアレを倒さないと安心して話が出来なさそうですしね。ふん! カッコつけてますけど、ダーリンより下ね」

何だか不当な評価をされた気がするが、聞かなかったふりして百乃瀬に向かおうとした。
しかし、それが出来なかったものがいた。

「おい・・・調子に乗るなよ・・・」
「あら? わたくしに言っているんですの?」
「ああそうだぜ。主人は優しいから聞き流してくれるが、次ふざけたこと言ったら、貴様の宿主ごと喰うからな・・・」
「・・・消し炭にしますわよ?」

エイジの目と炎帝の目が火花を散らすが、はっきり言ってこんなことをやっている暇はない。

「エイジ、今回は引け。時間の無駄だ。木下もそっちをどうにかしてくれ。あと、俺が飛べるように付与を頼む」
「分かった。その背中のは?」
「壊された。できれば翼タイプでできるか?」
「出来るはずだ」

グワっと背中が熱くなって炎の翼が現れた。
何となく繋がっている感じがしたので動かしてみると、僕の思う通りに動いてくれる。

「けっ! 色が気にくわねーぜ!」

エイジが言った途端、赤と朱や橙が混じった綺麗な炎がエイジと同じ色に変わって堕天使っぽい翼になってしまった。

「何してくれますの!」
「火輪子、気にするな。俺も気にしてないから」
「ぷー!」

膨れっ面を残して炎帝が木下の肩に座って、兜から溢れた燃える髪を掴んだ。

「巨大化行けるか?」
「ダーリンがそれを望むのなら、いつでも大丈夫ですわよ!」

木下が僕に頷く。

「行くぞ!」

僕は翼を羽ばたかせて飛ぶと、エイジがすぐに飛びやすいように尾翼や凧の尻尾のようなものを作った。

「行くぞ、火輪子!」
「任せてですわ!!」

木下が巨大化して僕の横を走る。
横目で見てビックリしたのだが、てっきり木下が巨大化すると思ったのだが、その姿は完全に炎帝のものだった。

「館山さん! チェンジだ!」

木下の手に握られた片手剣を大きく振りかぶって、上段から一気に振り下ろされる。

「小賢しいのであーる!」

百乃瀬は、半透明の盾が何枚も出現して壁を作り出した。
前の炎帝では壊せなかった盾だ。

「小賢しいのはお前ですわ!」

剣と盾が衝突した。
衝撃音が鳴り響き、発生した突風が2人を中心に吹き荒れる。
そして・・・、

ベキベキベキベキベキベキ!!

木下の剣は盾を全て斬り裂いて、巨人の胴体に大きな亀裂を作り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...