月曜日の巫女

桜居かのん

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来訪者

来訪者5

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日曜日になっても藤原達からなんの連絡も無かった。
夜になり時計を見る。
先週はこの時間に葛木先生と出かけ、
あの出来事があったことを思い出す。
しかし一週間も経つと、
自分の見聞きしたことが本当にあったのか、
自信が無くなってきていた。
せめて幽霊とか見えたり、
式神でも扱えたなら自分に起きたことが現実だったとわかるのに。
しかし現実は藤原達と話しも出来なければ、
自分には何の変化もない。


「今日もあんな事してるのかな」


ベットでごろごろしながら浮かぶのは藤原の顔。
無表情であんな大変な事を今日もしているのかと思うと、
私も誘ってくれたら良かったのに、
なんて思ってしまう。

もう一度あの非現実な時間を過ごしてみたい。
また巫女って言ってもらいたい。

偶然手に入った特別な世界が夢だったのではと私は心配になった。


「藤原達の連絡先なんて知らないし」


スマホを見たってメールが来る訳でもない。
でももしかしたら今日も凄く疲れたら私を頼ってくれるかも、
という期待が膨らんだ。
そうだ、今度こそ会えるかも知れない。
私は希望がもてたような気がして眠りについた。







「今日転校生が来るんだって!」


月曜日の朝教室に入ると、その話題で教室は盛り上がっていた。


「おはよう。転校生来るの?」


輪になってうきうきと話す女子達に私は声をかけた。


「さっき日直が職員室行ったら先生から言われたんだって!」


「男子って話しだよ!」


「イケメンかなぁ!」



そうやって盛り上がる女子達とは正反対に、
男子達は、何だよ、男かよ、
と肩を落としている。

こんな中途半端な時期に転校なんて大変だろうなぁなんて思いつつ、
やはり昼休みに藤原が来てくれるのか、
来なかったら直接行ってやろうという事のほうが私の心を占めていた。
それにまた体調が悪いのを我慢しているのならそれこそ心配だ。
きっと私が必要になってるはず。

藤原が消耗していることを喜んでしまっている自分を、
私はあまり悪いことのようには思えていなかった。
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