月曜日の巫女

桜居かのん

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欠けてゆくもの

欠けてゆくもの11

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「藤原、言ったんです、巫女は嫌いだって」


私はぎゅっと右手で左腕を掴む。
俯いていて先生の表情はわからない。


「それは・・・・・・」


「先生が本当の事、知らないだけです!ちゃんと本人から聞いたんです!
 私が巫女だとわかっ、たら、嫌いに、なるって・・・・・・!」


ぼたぼたと涙が落ちだして、私は必死にその涙を手で拭う。
あっという間にその手からも涙が落ちて、鼻水まで出てきて、喉が苦しい。
最後は途切れ途切れになりながらも、必死に言葉を出した。

部屋には私の押し殺した泣き声だけが響く。
それがやたらと自分の耳に届いて、余計に涙が出てくる。
気がつけば俯いた私の目の前に、ハンカチが差し出されていた。


「綺麗ですから。使って下さい」


私は目の前が涙でぐにゃりとしたまま、じっとそれを見た後、受け取って目に当てた。
先生が側に来て、私の背中をゆっくりとさする。
既に泣いているというのに、私の涙はまた酷く流れてきた。
泣いて泣いて、自分の身体が細かく震える。
息がなかなかできなくて、とても苦しい。
葛木先生は優しくさすりながら、そんな私にずっと付き合ってくれた。

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