月曜日の巫女

桜居かのん

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一輪の薔薇

一輪の薔薇14

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いつも学校では笑って、くだらないことを生徒と話して。

だけど陰陽師として、その長として立つ藤原は全く私の知る藤原では無かった。

どっちが本当かなんてわからない。

でも陰陽師としての藤原は、長であることを仕方なく受け入れ、感情を殺し淡々と動いているようだった。

東京の陰陽師をまとめ、戦う時には一人最前線に立ち、そして巫女という呪いに縛られ、きっとそれから抜け出そうとしている。

不器用だ。

一人で何でも背負って。

その為にこんなにも心を凍らせていないといけないなんて、おかしい。

藤原はただきっと、真っ直ぐで必死に頑張っているだけなのに。


「・・・・・・違うよ」


私を冷たく見下ろす相手に、自分が思っていることを、素直に全て話さなければならないんだ。

そうしなきゃ、きっと藤原の心の奥には届かない。

私は、震えている身体に力を入れる。


「違う。私が信じたのは葛木先生じゃない、藤原だよ」


今度はしっかりと声が出た。

お願いだから私の声を、言葉を、聞いて欲しい。

私は瞳の中を覗くようにしっかりと見つめる。

私の言葉に、藤原の目の色が急に変わった気がした。

でもすぐにまた色のない目に戻っていく。

それに気がつきながらも、身体から、心から溢れてくる言葉を、私は必死に口に出す。


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